小泉首相靖国参拝 批判続く あ然とする歴史観に首相が保証を与えた 「しんぶん赤旗」(2006.8.17)

 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-17/2006081706_01_0.html

 

 

2006年8月17日(木)「しんぶん赤旗」

小泉首相靖国参拝 批判続く

あ然とする歴史観に首相が保証を与えた


仏マスコミ

 【パリ=浅田信幸】小泉首相が終戦記念日の十五日に靖国神社に参拝したことをフランスのマスコミはこぞって批判しました。

 十六日付リベラシオン紙は、靖国神社を訪問する小泉首相の写真を第一面に載せ、「修正主義的挑発」の見出しを掲げて報道しました。フランス語で歴史修正主義は、ナチスによるユダヤ人虐殺を否定したり、ガス室の存在を否定する主張を指し、きわめて強い批判がこめられています。

 同紙社説は、小泉首相をナチス擁護の発言で欧州各国から批判を受けたオーストリア自由党のハイダー元党首と同列に置き、「両者に共通するウルトラ自由主義と懐古趣味的郷愁との混合に、人類に対する犯罪を弁護する傾向が付随している」と指摘しました。

 十六日付保守系紙フィガロも同様の写真を一面に載せ、国際面で「日本首相、北京とソウルの怒りを引き起こす」と報道しました。記事は、小泉首相は中韓両国がプロパガンダに靖国参拝問題を利用していると主張するが、「日本の死者を弔う祭礼を利用しているのは靖国神社当局だ」とし、同神社が「あ然とする二十世紀の日本史観」に立っていると指摘。「首相が保証を与え、あるいは少なくとも弁護しようとしているのは、悔い改めようとしないこの愛国史観である」としています。

 また十五日午後発売のルモンド紙(十六日付)は国際面で「小泉氏の新たな靖国訪問は北京とソウルに挑戦するものだ」と報じました。


戦争への無理解を象徴

英・独各紙誌

 小泉首相が終戦記念日の十五日に靖国神社を参拝したことについて、欧州各紙は「アジア中の怒りを挑発」(英インディペンデント紙)などと厳しく批判しています。

 インディペンデント十六日付(電子版)は小泉首相の参拝は「彼のメディア劇場を演じる名人技」を示したものの、「その政治的な歌舞伎は中韓との関係悪化など日本に高い代償を払わせた」と指摘しました。

 同紙は、靖国神社内にある遊就館について、「中国と韓国への侵略を『防衛的』とする」など、「戦争の歴史を厚顔無恥に書き換えている」と指摘。「靖国はアジアにとって、中国人、朝鮮人その他の市民数百万人を殺した帝国主義者の戦争に日本が悔恨を欠き、十分に歴史を理解していないことを象徴的に示している」と伝えました。

 英フィナンシャル・タイムズ十六日付は「日本の犯罪を名誉としアジアでの日本の侵略を無視するこの記念碑(靖国神社)を小泉首相がしつこく参拝したことはアジアでの日本のリーダーシップの望みを傷つけ、日本の国連安保理常任理事国への支持を失わせた」と論評しました。

 同紙は次期首相に(1)遊就館の展示を根本的に変更するなど靖国神社を改革(2)東京裁判の正当性について疑念があるなら、日本みずからが戦争時の行為と責任を反省すること―を提言しています。

 ベルリンで発行されているターゲスシュピーゲル十六日付(電子版)では小泉首相の靖国参拝が「中国と韓国から激しい抗議を呼び起こした」と強調。日本がアジアで行った戦争犯罪について「中国と韓国は日本ファシズムの下、第二次大戦で苦しんだ。南京大虐殺だけで日本の兵士は十万人から三十万人の市民を虐殺」「朝鮮、中国、他のアジア諸国の数万人の女性をレイプし慰安婦にした」「日本人軍医が中国人を人体実験に使用し殺した」ことをあげました。

 独誌『シュピーゲル』十五日号(電子版)は戦争犯罪人をまつってある靖国神社への小泉首相の参拝は中国、韓国からの批判ばかりでなく、日本国内からも批判が出ているとコメントしました。次期首相に有力視される安倍氏は小泉氏の靖国参拝を擁護しており、「同氏が首相になっても議論の多い靖国参拝の伝統は続けるだろう」と見ています。(片岡正明)


人道主義への公然とした挑発

中国各紙

 【北京=菊池敏也】十六日付の中国各紙は、小泉首相の靖国神社参拝に強く抗議した中国外務省の声明などを大きく報じています。中国共産党機関紙の人民日報は三面で靖国参拝問題を特集して報道。同面の半分をさいて「靖国神社参拝から誤った歴史観をみる」と題した大型論評を掲載し、靖国参拝を正当化する小泉首相を批判しました。同論評は、「大きな是非にかかわる原則問題でわれわれの譲歩はありえない」と強調しました。

 新華社によると、日本軍による大虐殺事件があった南京市の南京大虐殺記念館は十五日、小泉首相の靖国神社参拝に対する抗議文を発表。朱成山館長が、「被害国の人民の感情を踏みにじり、国際的な人道主義精神に対する公然とした挑発行為。全世界の平和を愛する人びとから非難されるに違いない」と批判しました。