米長邦雄将棋連盟会長「名人戦移管決定」で粛清開始 反対した羽生、森内はどうなる 『週刊現代』2006年8月19・26日号(2006.8.19)

 

『週刊現代』Online  http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/

 

 

米長邦雄将棋連盟会長「名人戦移管決定」で粛清開始 反対した羽生、森内はどうなる 『週刊現代』2006年8月19・26日号(2006.8.15)

 

 「個人的には毎日新聞に続けてほしかった。そもそも(米長邦雄会長が3月28日に)『毎日新聞』に対して一方的に契約解除の通知を送るという、非常識なやり方を通したことから騒動になったわけです。納得のいかない票決でした」

 憮然とした様子で語るのは、「名人位」と並ぶビッグタイトル「竜王位」を持つ渡辺明竜王(22歳)だ。

 将棋界最大の権威を持つ名人戦は、8月1日の臨時棋士総会で棋士全員による投票の結果、101票対90票の僅差で、毎日新聞社から朝日新聞社に主催社が移管することが事実上決まった。冒頭の渡辺竜王をはじめ、羽生善治3冠(35歳)、森内俊之名人(35歳)などタイトルホルダーたちが軒並み毎日新聞支持に回る中で、理事会が強引に採決を行ったのだった。桐谷広人七段(56歳)が憤る。

 「米長会長(63歳)の本性を『週刊現代』誌上で5週にわたって暴露した私のところにまで、投票日前日には二人の理事から『毎日案否決』に投票しろという電話が来ました。米長会長の命を受けた7人の理事たちが、手分けして全棋士に圧力をかけたのでしょう。いまの将棋界が北朝鮮のようで、米長会長が金正日総書記だと思えば分かりやすい。これから反対派の大粛清が始まると、棋士たちは戦々兢々としています」

 すでに、粛清ののろしは上がっているという。語るのは、武者野勝巳六段(52歳)だ。

 「大手全国紙の観戦記で毎日新聞支持を表明した高段位棋士が、二つの棋戦の立ち会い係を降ろされました。別の中堅棋士は、5月の棋士会で正論を述べて、日本将棋連盟の機関誌『将棋世界』の連載を降ろされそうになりました。私も以前被害に遭いましたが、今回"反米長"に回った棋士たちは、連盟が振り分ける各種イベントの仕事を降ろされ、副収入の道を絶たれる恐れがあります。羽生、森内、渡辺らも危険です」

 昭和10年(1935年)に毎日新聞社が名人戦を創設した時から見続けている重鎮の丸田祐三九段(87歳)は、「米長一人の暴走のために将棋ファンが離れていくのが心配」と嘆息する。これ以上、将棋ファンが減らないことを祈るばかりだ。

 

(写真説明) 米長会長(右)は「すべて想定内」と自らのホームページで大ミエを切ったが、将棋界に大きなシコリを残した