小泉首相と安倍官房長官に問う 森田実の言わねばならぬ[288](2006.8.21)

 

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森田実の言わねばならぬ[288]

小泉首相と安倍官房長官に問う――小泉首相と安倍官房長官、自民党執行部の「テロとの戦い」はホンモノなのか。加藤紘一氏へのテロ攻撃には知らぬ顔で通そうとするのか。ブッシュ大統領にのみ忠実で、日本の政治家へのテロ攻撃には無関心なのか。

「人間は、他のものを苦しめたいという以外のどんな目的ももたずにそれを痛みつける、唯一の動物だ」(ショーペンハウエル)


 8月18日付け日本経済新聞の政治面(2面)中央の記事「加藤氏実家 脅迫目的で放火か/政府・与党反応鈍く/首相らコメントなし」を読まれた方は少なくないと思う。大変重要な記事である。読まれていない方のために、以下、要点(日経記事のママ)を記す。
 【1】小泉純一郎首相の靖国参拝を批判した自民党の加藤紘一氏の実家と事務所が全焼した火災は、現場にいた男性が右翼団体に属していたことが分かり、言論封殺を狙った脅迫目的の放火との見方が強まっている。だが、政界の反応は鈍く、政府・与党で事件に言及する発言は少ない。
 【2】加藤氏の盟友の山崎拓氏は17日の自派総会で「アジア外交に関し、暴力で言論を封じる風潮の顕在化と見る向きもある。重大な問題だ。アジア外交のあり方について超派閥で討議していきたい」と提唱した。 【3】一方、首相や安倍官房長官が夏休み中の首相官邸は沈黙したまま。首相周辺は「コメントを出す予定はない」としており、留守番役の鈴木政二官房副長官も記者団に「まだきちんと掌握していないので、いろいろと調整している」と述べただけだった。
 【4】野党は「言論を封じるために家に火をつけるのはテロであり、許されない」(との談話を各党が出した)。
 【5】加藤氏は同日、「今の世の中の風潮が一方的に流れつつあるような感じがする。まずい世の中になってきた。私には発言を続けなければならない責務がある」と力説した。

 小泉首相は、ブッシュ大統領に言われれば「テロとの戦い」を繰り返し強調し、憲法第九条を踏みにじって自衛隊をイラクに派遣した。ところが、日本国内で起きた「テロ」には知らぬ顔を決め込んでいる。安倍官房長官も自民党執行部も知らぬ顔だ。これはどういうことか。小泉首相を批判した者への「テロ」を、まさか容認するというのではあるまい。
 加藤紘一氏は、小泉首相にとってかつてのYKKの盟友だ。幹事長や官房長官を務めた自民党の大幹部である。自民党としても、きちんと対処すべきである。
 自民党は自由と民主主義の政党であるはずだ。党内で言論の自由が保障されなければならない。事件の状況から判断して、この放火が加藤氏へのテロ攻撃であることは明らかである。自民党は自由と民主主義を捨てたのか、と問いたい。
 小泉内閣と自民党執行部の「テロとの戦い」はホンモノなのか――問いたくなる。小泉首相、安倍官房長官、自民党執行部の加藤氏への冷たい態度が、テロを野放しにすることにならないか、心配になる。
 
小泉首相の中国、韓国に対する露骨な挑発行為、産経新聞などの過激な右翼的論調、そして右翼テロリズムの高揚を見ると、日本が1930年代に逆戻りしつつあるとの感じを強くする。とくに、テロを誘発するような産経新聞などの一部の過激な小泉首相の靖国参拝し時報道は、大変に危険である。最近の自民党とマスコミは常軌を逸している。テロリストが日中友好を主張する政治家を次々と狙うような風潮を強めようとしているようにも見える。注意すべきである。
 
戦争だけはしてはならない。61年前の日本国民大多数の誓いを忘れてはならない。