主張 安倍氏語録 こんな歴史認識では危険だ 「しんぶん赤旗」(2006.8.25)

 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-25/2006082502_01_0.html

 

2006年8月25日(金)「しんぶん赤旗」

主張

安倍氏語録

こんな歴史認識では危険だ


 自民党総裁選は正式の告示(九月八日)を前に、安倍晋三官房長官の“独り勝ち”の様相を濃くしています。

 注目されるのはその安倍氏が、「新しい憲法制定を政治スケジュールにのせるべくリーダーシップを発揮していく」などと、“タカ派”むき出しの言動を重ねていることです。

“タカ派”発言重ねる

 「戦後生まれの私たちがしっかりと日本の国づくりに取り組まなければならない」(十二日、地元・下関市で)、「私たちの手で新しい憲法をつくっていく気持ちも持たなければいけない」(二十二日、横浜市で)、「(日米同盟強化のため)米国のNSC(国家安全保障会議)のような組織を首相官邸に」(同)等々

 総裁選に向けての安倍氏の発言では、憲法や教育基本法の改悪、日米同盟の強化などに踏み込む、積極的な意向が繰り返されています。

 五年余りにわたった小泉政権は、靖国参拝を重ね、海外派兵や自民党の改憲案づくりをすすめるなど、異常な侵略戦争肯定・アメリカと財界いいなりの政治を続けてきました。それでも改憲手続きのための国民投票法案や教育基本法改悪などは任期中最後の通常国会でも成立せず、継続審議となっています。

 改憲を「政治スケジュールにのせる」などという安倍氏の発言は、そうした小泉政治を引き継ぎ、改憲手続き法や教育基本法改悪の成立を急ぎ、さらには改憲の実現までをも推進しようという狙いをこめたものです。「自主的な国づくり」などを装いますが、要はアメリカいいなりの改憲の道をいっそう露骨に進めようとしているだけです。

 靖国参拝について安倍氏は、首相就任後の参拝では態度を明らかにしていませんが、自ら官房長官時代のことし四月参拝していたことが明らかになっています。もともとは「大切なのは何年も連続で(首相が)参拝することだ」(〇一年八月)と言い切る積極的な靖国参拝論者です。

 見過ごせないのは安倍氏の一連の主張の背景に、過去の侵略戦争を肯定し、二度と戦争はしないと誓って国際社会に復帰した戦後日本の再出発を否定する、独特の歴史認識があることです。憲法や教育基本法の改悪に執念を燃やすのも、それらの存在を「占領時代の残滓(ざんし)」と敵視し、「払拭(ふっしょく)することが必要」(昨年一月の自民党機関紙「自由民主」で)と丸ごと否定する、異常な歴史認識があるためです。

 最近発行した著書『美しい国へ』でも安倍氏は、「『A級戦犯』についても誤解がある」、「(憲法前文は)敗戦国としての連合国に対する“詫(わ)び証文”」、「自虐的な偏向教育の是正」などの、誤った歴史認識に立つ主張を書き連ねています。

歴史逆転、孤立の道

 安倍氏の、「教育基本法、憲法をつくり変えていくこと、それは精神的にも占領を終わらせることになる」(「自由民主」)という、戦後の出発点を否定し、占領時代の一掃が課題であるかのようにいう歴史認識は、通用するものではありません。

 安倍氏がこうした誤った歴史認識に立って政権を運営すれば、戦後日本がとってきた路線を文字通り戦前に向けて逆転させ、国際社会の一員としての日本の地位を、孤立に向かわせるものとなりかねません。

 こうした歴史認識は、与党第一党の総裁や国政に責任を負う首相としては危険このうえないものです。誤った歴史認識にもとづく政治は許されません。