改革とは何か? ―市大改革に見る欺瞞― 全国国公私立大学の事件情報(2006.8.31)

 

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2006年08月31日

改革とは何か? ―市大改革に見る欺瞞―

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ●横浜市立大学の未来を考える『カメリア通信』第42号(2006年8月26日)
横浜市立大学を考える市民の会 blog

改革とは何か? ――市大改革に見る欺瞞――

国際総合科学部
一楽重雄

 言葉は力.確かに言葉には力がある,魔力がある.「改革」と言いさえすれば,何事も実行することができる.それも中味の検討なしに.市大改革もその例に漏れない.

 「大学の自治」を踏みにじって「生まれ変わる」とした市大改革.教授会から自治を取り上げ「生まれ変わった」大学は,どんな大学になったのであろうか.

 多くの関係者が真摯な努力を積み重ねているとしても,いまだ光は見えない.掛け違ったボタンをはずすことなしに,掛け違いを直すことはできない.

 教授会から人事権を奪うことの意味は,外部からの委員も入った人事委員会で人事を行うことによって「透明性」を高めることとされていた.「外部の委員を入れることによって透明性が確保される」という単純極まりない議論は,単純なるがゆえに世の中をまかり通り,そのまま実行された.果たして透明性が高まったのだろうか.教授会で審議をしていた頃より透明で公平になったのであろうか.決して,否である.

 そもそも大学教員の人事が教授会で行われていたのには理由があった.教員の仕事である研究・教育は高度な専門性がその特徴である.そして学問研究は権力から独立しなけれならないというのが,人類が歴史から学んだことであった.

 営利を目的とする通常の企業であれば,ひとつの尺度で人を評価することも可能かも知れない.また,その観点から経営者が人事権を持つのも当然であるかも知れない.しかし, 大学では,その根本が違う.

 横浜市大では大学改革から一年が経ち,凍結状態であった昇任人事がやっと行われた.大学の自治を否定した人事の始まりである.各管理職が候補者を学長に推薦し,学長が人事委員会に諮問し,その結果を学長から理事長に報告し,最終的に理事長が昇任の発令を行うということであった.そのとおりに実行されたらしい.しかし,私たち教員は昇任した教員名が記されただけのホームページによって,その結果のみを知りうるのみである.昇任の決定にあたって,誰がどのような審査を行ったのか,その前に誰がどのようにして候補者を絞ったのか,このような点はまったく明らかにされていない.人事委員会に外部委員が入っているといっても,実際の選考は人事委員会に諮問される前になされるのであり,人事委員会の審議はほとんど儀式に過ぎない.

 このようなやり方のどこに「透明性」があるのか.また,どこに公平性があるのか.また,法律上も疑義のある教員の「全員任期制」を強行するために,昇任の資格がある教員でも任期に同意しない限り発令しないという暴挙を行った.これは,何よりも同じ仕事をして同じように資格審査を通ったにもかかわらず,給与・身分に差がつくということを意味し,公平平等の原則に反している.このようなことは,法律を待つまでもなく,真に大学運営に責任を持つ経営者なら決してするはずがない.
 「生まれ変わった」大学の実態を多くの人々に知ってもらい,市大が一刻も早く,権力から独立した真の独立行政法人になって,教授会の自治を回復し,正常な大学になることを願うばかりである.

人事の透明性公平性に関する質問状

平成18年8月24日


ストロナク
横浜市立大学学長殿

国際総合科学部教員有志
一楽重雄 永岑三千輝
吉岡直人 市田良輔

 先般,国際総合科学部における昇任人事が発表されました.この人事は,国際総合科学部においては新制度での初めての昇任人事です.新制度は,外部委員も交えた人事委員会で人事を行うことによって,これまでより透明性を高めるということが眼目とされていました.しかし,実際には人事委員会の決定の結果のみがホームページに発表されるだけで,むしろ,透明性が著しく低くなったと思われます.

 今回の人事では,昇任の資格ありとされた内定者のうち任期制に同意しなかった人々は昇任されませんでした.これは法律上も実際の大学運営上も重大な問題を引き起こすものと思います.

 これらの点を中心とした以下の質問に文書でお答えいただきたく,お願いする次第です.

1.当初,4月に発令が予定されていた人事が3ヶ月ほど遅れた理由を説明してください.

2.人事委員会に昇任人事案を提出したのは誰でしたか.

3.各管理職はどのような基準と手順で昇任の候補者を決定したのでしょうか.漏れはないと言えるのでしょうか.

4.昇任内定者の決定の経過について教えてください.各候補者について,以前各教授会におかれた審査委員会で行ったことに相当する専門的な審査は行われたのでしょうか.行われたとすれば,それを担当したのはどのような人々であったのでしょうか.その審査担当者をどのような基準で選びましたか。また,それは誰が行いましたか。その審査結果はどのように発表されましたか.

5.以前の制度に比して同じ程度の透明性を確保するには,上記,3項と4項の内容が学部の教員全員に対して知らされるべきであると思いますが,この点いかがお考えでしょうか.

6.昇任の資格ありとされた内定者のうち任期制に同意しなかった人々は昇任されませんでした.これは明らかに任期を同意しなかった人々に対する実質的な労働条件の不利益変更と思われますが,この点どのようにお考えですか.

7.ほぼ同じ仕事を行い,同じような経歴で,同じように業績等の昇任の審査を受けて,昇任が内定した人が任期制に同意しないだけの理由で昇任しないことによって,身分と給与に大きな差が生じることについて,どのようにお考えでしょうか.このようなことを放置すれば,教員の士気は下がり,大学運営に悪影響を与えることは必至です.この点について,どうお考えでしょうか.

以上

 

投稿者 管理者 : 20060831 00:01