教員評価制度に関する質問書に対する当局の回答が手交されました 横浜市立大学教員組合週報組合ウィークリー(2006.9.6)

 

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横浜市立大学教員組合週報

  組合ウィークリー

2006.9.6

 

もくじ

● 教員評価制度に関する質問書に対する当局の回答が手交されました

 

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教員評価制度に関する質問書に対する当局の回答が手交されました

  先の組合ニュースでお知らせいたしましたように、教員組合は8月15日、教員評価制度に関する質問書を当局に提出しましたが、これに対する当局側の回答が9月1日に手交されました。

その回答内容の多くは、当方の質問に正面から答えていない、極めて不十分なものと言わざるを得ませんが、まずは取り急ぎ、以下の通り組合員の皆様にお知らせいたします。

今後教員組合では、この回答書、および評価制度問題全般に関する対応方針の検討を進めてきます。またその内容については、組合ニュース等で改めて皆様にお知らせいたします。

 

 

 

平成18年9月1日

公立大学法人横浜市立大学

「教員評価制度に関する質問事項」に対する回答

8月15日、横浜市立大学教員組合から提出された教員評価制度に関する質問事項に対し、下記のとおり回答します。

なお、8月3日に教員組合に情報提供としてお示しした本学「教員評価制度案」は、現在教員評価プロジェクトにおいて検討を進めている過程にあるものであり、今後行う試行結果を踏まえて必要な見直しを行っていく予定のものです。また、下記の回答は、法人としてのこれまでの考え方や教員評価プロジェクトで出された様々な意見や要望を踏まえて回答するものです。

 

− 記 −

 

1 評価制度と学問の自由の保障との関係について

     「評価制度案」は学問の発展・蓄積に貢献すべき社会的存在たる大学の使命について明確にしておらず、この使命を果たす上で不可欠な憲法上の理念たる「学問の自由」を具体的に担保するあり方を明記していない。逆に、知的ユニバースの一員としての社会的責務を果たすべき教員の研究について「学長、学部長の立てた目標にもとづく」としており、さらに、具体的手続きにおいても、コース長等の評価者との面談における確認を要求し、目標変更に関しても同様の手続きを想定している。これらは制度上、「学問の自由」を侵害するおそれのある内容となっている。「学問の自由」を担保する制度上の保障はどこにあるのか、説明を求める。

 

(回答)

「学問の自由」とは、研究・講義などの学問的活動において外部からの介入や干渉を受けない自由であると認識しています。現在プロジェクトで検討している教員評価制度案は、教員一人ひとりの目標設定に基づいて、その達成状況を評価の対象とするものであり、学問の自由を妨げるものではないと考えます。

また大学においては、教育・研究といった様々な学問的活動が保障される一方で、「教育重視」「学生中心」「地域貢献」といった大学の基本理念に、教員一人ひとりが応えていくことが求められています。その理念を大学内の各組織や教員各自が認識し、個々の目標にブレークダウンした上で、その目標に対する成果を客観的に把握していくことが、教員一人ひとりのスキルアップにつながり、大学自らが掲げた理念に一層近づいていくことになるものと考えます。

 

 

2 評価制度の内容について

2-1  評価対象について

     評価対象となる事項については、被評価者としての各教員が自ら責任を負うことが可能な事項に限定される必要がある。しかしながら制度案で提示されている事項の中には、それに反する事項も存在する。例えば担当科目の受講者数はカリキュラム編成の如何に影響されるし、入試委員等の学内業務は各教員が主体的に決められるものではない。こうした個々の教員の権限の及ばない事項について評価の対象とすることは適切でない。こうした点につきどのように考えているのか、説明を求める。

 

(回答)

本学教員評価制度案では、あくまでも教員の自己申告をベースとして評価を行います。自己評価シートに記載する項目については「教員評価 自己申告記述項目例」で例示しているように、評価を受ける教員が、自らの業績のうち評価の対象として欲しいと考える項目を選択し、記載することが可能となっています。なお、カリキュラム編成などやむを得ない状況がある場合については、個別の評価において考慮されていくものと考えます。

 

 

2-2  目標の設定について

     2-2-1  「評価制度案」においては、教員が学長、学部長等の指示をふまえて教育・研究・診療・地域(社会)貢献・学内業務に関する目標を設定し、期末に自己評価することとされている。各教員はこれまで自主的に、大学人として目指すべき理想と現実的な計画実現性とを勘案して目標設定を実施してきており、その具体的なあり様は個性に富んでいて多様である。また本来、目標とは、ある程度高いところに設定するものであり、「目標を大きく上回る」(A評価)ということは一般的には考えにくい。そこから、A評価を得ようとして、目標を意図的に低く設定することに誘導してしまう可能性も排除できない。このように、「評価制度案」は、個々人の目標設定の仕方に不自然な要素を持ち込ませるだけでなく、それが結果として評価の優劣に影響を与えてしまうという問題点がある。さらにこれは、大学教員の知的営為に悪影響を及ぼすおそれが強い。この制度上の問題点についてどのように考えているのか、説明を求める。

 

(回答)

先にも触れたように、本学教員評価制度案は、教員の自己申告をベースとして評価を行います。これは教員一人ひとりのスキルアップを目的とするものであるからです。したがってSelf Developmentシート(以下「SDシート」)に記載する内容は、「大学人として目指すべき理想と現実的な計画実現性とを勘案して」設定された目標とその目標の達成状況であり、その具体的な記述内容は、まさに個性に富み、多様であるべきだと考えます。

本来、目標とは自身の更なる向上を目指すものであり、目標を達成する(または達成に向けて努力する)ことにより、教育、診療、研究等における何らかのアウトプット(効果)が期待できるはずです。従って目標設定の妥当性については、その目標が横浜市立大学教員としてふさわしいものであるかは、自らも検討すべきであり、また一次評価者との面談においても調整されるものと考えています。

評価結果の公正性、適正性については教員評価部会や教員評価委員会など複数の視点による評価を経ていくことで担保していきたいと考えています。

 

 

     2-2-2  評価目標設定における各項目のウェイトの設定について、教員が評価者から修正を強制されることがあるのか、説明を求める。

 

(回答)

ウェイト設定についても、教員の自己申告を基本としますが、教員は「教育」「研究」「診療」「地域(社会)貢献」「学内業務」といった様々な領域での活動を期待されていることから、例えば「研究」が100%でその他が0%というような極端なウェイト設定であった場合には、その理由や考え方等を本人と一次評価者の双方で確認し、必要に応じて調整をすることもあると考えています。

 

 

2-3  評価の方法について

     「評価制度案」の「4.評価の視点と評価結果について」の後半部分で言及されている、評価の点数化および総合化が、評価制度の目的として謳われている「教員一人ひとりの恒常的能力向上」とどのように結びつくのか、具体的な説明を求める。

 

(回答)

評価の数値化は、領域ごとになされた評価結果(ABC)にウェイトを勘案して、総合評価を導き出すために行うものです。毎年度の総合評価が、どのように変化しているかを見ることにより、教員一人ひとりのスキルアップを示す目安にしていただけるものと考えています。

 

 

2-4  評価の公正性について

     2-4-1  「評価制度案」において、評価の公正性はどのように担保されているのか。例えば、一次評価者・二次評価者が各教員の個人評価を相対化する際の基準、異議申し立て制度の有効性、Web上での内容公開の基準、などについて具体的に説明を求める。また、評価作業全般に関する公正性の検証がどのようにおこなわれるのか、説明を求める。

 

(回答)

評価の公正性については、一次評価者、二次評価者、教員評価部会、教員評価委員会といった複数の過程を経ることで、担保していきたいと考えています。それぞれの評価プロセスにおける評価基準や自己評価内容の公開基準については、今後のプロジェクトやワーキングの中で議論していくこととなります。

評価作業全般の公正性については、教員評価委員会や教員評価不服審査委員会に外部有識者を加え、外部からの意見も取り入れながら、公正性を高めていく必要があると考えています。

 

 

     2-4-2  評価制度の公正性を担保すべき評価者の研修についてどのように考えているのか、また評価実施者としての適性がどのように担保されているのか、具体的な説明を求める。

 

(回答)

評価者に対する研修、とりわけ教員との面談を行う一次評価者への研修は重要であると考えています。評価者に対しては、一般教員への説明会とは別に、評価者向け説明会や研修会を開催するなど、適正な評価を実施するための取り組みを行っていきます。

 

 

     2-4-3  医学部教員の声によれば、教室を単位とする研究費配分が実施されているため、各教員が教育研究を自主的におこなうための重要な前提条件たる教育研究費の適正な配分が必ずしも実施されていない実態がある。こうした問題点を放置すれば、個々の教員にとって研究の自由の最小限の保障さえも失われてしまう。この状態で個人別評価が実施されることは公正な制度設計とはいえない。こうした点についてどのように考えるのか、説明を求める。

 

(回答)

医学部への教育研究費は、研究を共有する研究室群を単位に配分しておりますが、個人で研究活動に使用できる経費として一人あたり10万円を確保するよう通知しています。各教室において個々の教員へ適正に配分がなされるよう、引き続き大学としても働きかけていきたいと考えております。

チームで行う研究などに対する評価のあり方については、制度を実施する中で検討を進めていく必要があるものと考えますが、チームを構成する教員個々の役割に対し目標を設定し、自己評価を行っていただくことを考えています。

 

 

・ 2-4-4 長期の病気療養、産前産後休暇、育児・介護休業などの必要が生じた場合、そのことが直ちに不利な評価結果につながるべきではないと考える。このことがどのように担保されるのか、具体的な説明を求める。

 

(回答)

長期の病気療養、産前産後休暇、育児・介護休業などを取得した教員の評価の取り扱いについては、別途検討していきます。

 


 

. 人事処遇との関係について

     3-1  評価制度の目的について、「評価制度案」は「大学全体の教育・研究を活性化し、教員一人ひとりが常に能力向上を図る」としている。一方、大学当局は教員評価を反映させた処遇制度についても団体交渉の場などで正式に言及してきた。このことは教員評価制度と教員処遇が連動していることを意味しているものであり、したがって、処遇への反映のさせ方をどのようにおこなうのかについての協議・交渉と切り離して、評価制度を論じることはできない。この点の確認を求める。

 

(回答)

本学教員評価制度案の冒頭「教員評価制度の目的と位置づけ」でも説明しているとおり、教員評価制度は、教員一人ひとりの自己点検、自己分析によるスキルアップ、個人目標と成果の共有化を目的とする制度です。教員一人ひとりがスキルアップすることによって、大学における教育、研究、診療、地域(社会)貢献、学内業務が充実、向上し、学生や市民にとって魅力ある大学を作っていくことにつなげていく制度として位置づけています。

処遇への反映は、教員評価を行うことで得られた評価「結果」の活用の一つであり、処遇制度については、今後の協議の対象であると認識しております。

 

 

     3-2  仮に、評価を賃金水準や再任の可否などの処遇と連動させるというのであれば、教員の職務内容について評価の対象となる事柄が、適切かつ公正に設定にされねばならない。適切とは、教員それぞれの職務特性を反映させたという意味であり、公正とは、職務特性の差異が不利な評価とこれに基づく不利益な処遇をもたらさない、という意味である。この原則の確認を求める。

 

(回答)

「職務特性の差異」を学部や病院といった部局ごとの特性であると捉えた場合、現在、教員評価プロジェクトやワーキングにおいては、部局ごとの特性や違いを踏まえた議論が行われ、それぞれの特性に応じた評価者、自己申告記述項目例等が検討されており、必要に応じ見直しを行っていく予定です。

また、教員一人ひとりの特性の差異については、質問2−1の回答の中でご説明したとおりです。

 

 

4. 教員評価制度の導入手続きについて

     4-1  「評価制度案」においては、教育に関する事項が評価対象の一つとされている。教育に関する重要事項は教授会の管掌事項であるが、本件に関する教授会での審議または説明についてどのように考えているのか、説明を求める。

 

(回答)

教員評価制度は、FDなど教育の質の向上にも関わる制度であるため、実施にあたっては教育研究審議会に諮っていく必要があると考えています。また制度について、教員一人ひとりに理解していただくことが重要ですので、様々な機会を捉えて十分説明を行っていきたいと考えています。

 

4-2  「評価制度案」は1年の期間で実施することを想定するものであるので、その試行期間も、少なくとも実際のタイムスケジュールに合わせた、同等の期間を設定する必要がある。この点の確認を求める。また仮に、その必要はないとするのであれば、その論拠について明確な説明を求める。

 

(回答)

教員評価制度は、教員一人ひとりの自己点検・自己評価を行うことを目的とするものであり、実施をする中で、検証を行い、必要に応じて見直しをし、より良い制度としていくことを前提としています。そのためにも、試行の結果を踏まえて、できるだけ早期に全教員が参加し、実施していくことが重要であると考えております。

 

     4-3  評価制度実施に至る手続きに関して明確な説明を求める。すなわち、試行結果についての検討方法、試行を踏まえた手直しの手順、それが教員および教員組合に提示される手順、処遇への反映に関する手続き等について具体的な説明を求める。

 

(回答)

評価制度の見直しについては、本年度秋から行う試行実施の結果を、教員評価プロジェクトで検証、見直しを行ってまいります。見直しの結果については、教員説明会や学内専用WEB、サイボウズなどを通じて各教員にお知らせしていきますとともに、見直しの状況につきましても、教育研究会議、経営会議をはじめとする学内会議など様々な機会を捉えて、適宜、情報提供を行ってまいります。

また、処遇への反映に関しては、交渉事項であると認識しておりますので、教員組合への提示につきましては、今後検討をしてまいります。

 

5. 総括的質問

     総じて、このような煩雑な制度を導入・運用することによって、結果的に「評価のための評価」に陥る、本末転倒といった事態も十分に予想される。このような評価制度を実施する現実的効果について説明を求める。

 

(回答)

今回の制度案は教員評価プロジェクトにおいて、制度として煩雑にならないことを重視し、何度も議論を重ね検討してきた結果として、お示ししたものであり、煩雑なものであるとは考えておりませんが、実際の運用において生じる問題点は、引き続き検証し、見直しを行っていく必要があります。

教員評価制度の目的は質問3−1の回答の中でご説明したとおりですが、教員一人ひとりがこの制度に真摯に取り組むことによって、本学が学生や市民にとって魅力ある大学として発展し、制度として現実的な効果を発揮できるものと考えています。

 

以上

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発行 横浜市立大学教員組合執行委員会

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