(1)国旗国歌強制は違憲 「思想・良心の自由侵害」、(2)国旗・国歌訴訟 判決要旨、(3)「歴史的判決」どよめく、(4)教職員、全国で808人処分 00―04年度 東京突出、345人懲戒  『東京新聞』(2006.9.22)

 

 

(1)国旗国歌強制は違憲 『思想・良心の自由侵害』 「東京新聞」第1面トップ(2006.9.22)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060922/mng_____sya_____007.shtml 

 

 東京都立高校などの教職員ら四百一人が都と都教委を相手取り、入学・卒業式で日の丸掲揚と君が代斉唱に従う義務がないことの確認と、都教委による懲戒処分の禁止を求めた訴訟の判決が二十一日、東京地裁であった。難波孝一裁判長は「国歌斉唱などを強制するのは思想・良心の自由を保障した憲法一九条に違反する。都教委の通達や指導は、行政の教育への不当介入の排除を定めた教育基本法に違反する」と述べ、原告側全面勝訴の判決を言い渡した。都教委側は控訴する方針。 

 判決は、国旗掲揚の際の起立や国歌斉唱の義務がないことを認め、通達や校長の命令に従わなくても、懲戒処分をしてはならないと都教委に命じた。その上で都教委と都に対し、「原告に精神的苦痛を与えた」として、一人当たり三万円の慰謝料の支払いを命じた。

 教職員に対する「日の丸・君が代」の強制を違法とした判決は初めて。福岡地裁や広島地裁で係争中の同種の訴訟にも影響を与えそうだ。

 原告は都立高校と都立盲・ろう・養護学校の現・元教職員。二〇〇四年一月から順次提訴した。

 難波裁判長はまず「日の丸・君が代は第二次大戦終了まで、皇国・軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあり、現在でも国民の間で中立的なものと認められるまでには至っていない」と認定。「国旗・国歌に反対することも、思想・良心の自由を定めた憲法上、保護されるべきだ」と述べた。

 その上で「学習指導要領の国旗国歌条項は起立や斉唱・伴奏を義務づけていない。都教委の通達や指導と校長の職務命令は、教育の自主性尊重を趣旨とした教育基本法に違反している」とした。

 難波裁判長は「教職員は国旗・国歌に関する指導を生徒に行う義務があり、積極的な妨害や拒否をことさらにあおることは許されないが、嫌がる職員に強制することは、少数者の思想・良心の自由を侵害する行き過ぎた措置」と述べた。

 判決によると、都教育長は〇三年十月「国旗への起立や国歌斉唱の実施にあたり、各校長の職務命令に従わない場合は服務上の責任を問われる」との通達を出し、各校長は職務命令で、教職員に国旗への起立や君が代斉唱を強制した。

■判決の骨子

 一、国旗と国歌は強制ではなく、自然のうちに国民に定着させるというのが国旗国歌法の制度趣旨で、学習指導要領の理念でもある

 一、入学式や卒業式で国旗への起立、国歌斉唱を強制する東京都教育長の通達や各校長の職務命令は教育基本法に反し、思想・良心の自由を侵害する行き過ぎた措置

 一、原告教職員に国旗への起立、国歌斉唱、ピアノ伴奏の義務はなく、都教育委員会はしないことを理由として、いかなる処分もしてはならない

 一、職務命令による精神的苦痛への賠償は一人三万円を下らない

(写真説明) 国旗国歌訴訟で全面勝訴し、喜ぶ原告と支援者ら=21日午後、東京・霞が関の東京地裁前で(梅田竜一撮影)

 

【関連】『愛国心』教育に一石 「東京新聞」(1面)(2006.9.22)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060922/mng_____sya_____009.shtml 

<解説> 「日の丸・君が代」の強制を違法とした東京地裁判決は、「国旗・国歌は国民に対し強制するのではなく、自然のうちに定着させるというのが法の趣旨」と述べ、国旗国歌法を背景に、教職員の処分を強める都教委を強く批判している。

 卒業式などで日の丸・君が代に反対する教職員が処分される人数は、全国で都教委が突出して多い。強硬姿勢の背景には一九九九年に成立した国旗国歌法があるが、同法は日の丸・君が代を国旗・国歌と定めただけで、起立や斉唱を義務づけてはいない。

 判決は、式典での国旗掲揚や国歌斉唱は有意義としながらも、「憲法は相反する世界観や主義・主張に相互理解を求めている」と指摘。憲法が定める思想・良心の自由をもっと尊重すべきだと判示した。

 国旗国歌法の成立過程で「義務規定は盛り込むべきだった」と発言していた安倍晋三・自民党新総裁は、最近の著書でも「(日の丸などを)拒否する人たちもまだ教育現場にはいる。これには反論する気にもならない」と切り捨て、「愛国心」を前面に出す教育基本法の改正を推し進めようとしている。

 だが、相反する世界観や主義・主張に理解を示すことこそが、紛争の解決や平和の構築につながる。「国歌斉唱を拒否し、異なる世界観を持つ者に不快感を与えることがあるとしても、不快感で基本的人権を制約することは許されない」とした判決に、新総裁は耳を傾けるべきだろう。(社会部・北島忠輔)

 

(2)国旗・国歌訴訟 判決要旨 『東京新聞』9面(2006.9.22)

 

国旗掲揚や国歌斉唱をめぐる訴訟で、東京地裁が二十一日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 

【国旗、国歌をめぐる状況】

 日の丸、君が代は明治時代以降、第二次世界大戦終了まで、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあるのは否定し難い歴史的事実で、現在も国民の間で価値中立的なものと認められるまでには至っていない。

 このため、公立学校の入学式、卒業式で国旗掲揚、国歌斉唱に反対する者も少なからずおり、こうした人の思想良心の自由も公共の福祉に反しない限り、憲法上保護に値する権利というべきだ。

 【学習指導要領の国旗国歌条項に基づく義務】

 同条項の法的効力は、その内容が教育の自主性尊重、教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために、必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を定めるもので、教職員に対し一方的な理論や理念を生徒に教え込むことを強制しないとの解釈の下で認められる。

 同条項がこのような解釈を超えて、教職員に対し、国歌を斉唱しピアノ伴奏をする義務を負わせていると解することは困難だ。

 【都教育長通達に基づく義務】

 通達は国旗掲揚、国歌斉唱の具体的方法について詳細に指示し、各学校の裁量を認める余地はほとんどないほどの一義的な内容で、都立学校の各校長の裁量を許さず、これを強制するものと評価できる。原告ら教職員に対しても、各校長の職務命令を介し、国歌斉唱やピアノ伴奏を強制したものと評価できる。

 そうすると、通達やこれに関する都教育委員会の指導は、教育の自主性を侵害する上、教職員に対し一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとのそしりを免れない。

 従って、この通達や都教委の指導は、教育基本法が規定する「不当な支配」に該当し違法と解するのが相当だ。

 【校長の職務命令に基づく義務】

 原告ら教職員は国旗国歌法や都教育長通達などで、国歌を斉唱しピアノ伴奏をするまでの義務はなく、思想良心の自由に基づき、これらの行為を拒否する自由を有していると解するのが相当だ。

原告らが拒否しても、格別式典の進行を妨害することはない上、生徒らに対して国歌斉唱の拒否をことさらあおる恐れがあるとまではいえず、国旗国歌条項の趣旨である入学式、卒業式等の式典における国旗、国歌に対する正しい認識を持たせ、これを尊重する態度を育てるとの教育目標を阻害する恐れもない。

 原告らのうち音楽科担当教員は、授業でピアノ伴奏する義務は負うものの、式典での国歌斉唱の伴奏は授業と異なり、必ずしもピアノ伴奏で行わなければならないものではない。また、伴奏を拒否しても他の代替手段も可能だ。

 そしてこれを拒否した場合に、異なる主義、主張を持つ者に対しある種の不快感を与えることがあるとしても、憲法は相反する主張を持つ者に対しても相互の理解を求めており、このような不快感により、原告らの基本的人権を制約することは相当とは思われない。

 従って、各校長が原告ら教職員に対し、国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよとの職務命令を発することには、重大かつ明白な暇疵(かし)がある。

【小括】

 都教委が通達に基づく職務命令により原告ら教職員を懲戒処分とすることは、裁量権の範囲を超え、その乱用になると認められ、在職中の原告らが上記行為を行う義務がないことの確認のほか、都教委が懲戒処分等をしてはならない旨命ずるのが相当だ。

 【賠償請求】

 原告らは違法な通達などによって、国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱するか否か、ピアノ伴奏をするか否かの岐路に立たされたこと、あるいは自らの思想、良心に反して通達および職務命令に従わされたことで、精神的損害を被った。

損害額は、違法行為の態様、被害の程度等を総合考慮すれば、一人当たり三万円を下らないものと認定するのが相当だ。

 【結論】

 国旗国歌法が施行されている現行法下において、生徒に日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるとともに、国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ、それらを尊重する態度を育てるのは重要なことだ。

 しかし、国旗、国歌に対し、宗教上の信仰に準じた世界観や主義、主張から、国旗掲揚や国歌斉唱に反対する教職員、国歌のピアノ伴奏をしたくない教職員がいることもまた現実である。

 このような場合に、徴戒処分をしてまで起立させ、斉唱させることは、いわば少数者の思想良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置である。

 国旗、国歌は、国民に強制するのではなく、自然のうちに定着させるというのが国旗国歌法の制度趣旨であり、学習指導要領の理念と考えられ、都教育長通達や各校長による職務命令は違法であると判断した。

 

 

(3)「歴史的判決」どよめく 「国旗・国歌強制」違憲 通達・指導「不当な支配」 都教委を厳しく指弾 『東京新聞』社会面(27面)(2006.9.22)

 

「都教委の通達や指導は教育基本法が規定する『不当な支配』に当たり違法だ」。教職員に日の丸への起立や君が代斉唱の義務がないことを認めた二十一日の東京地裁判決は、式典での「日の丸・君が代」の完全実施をもくろんで処分を連発してきた東京都教育委員会を厳しく指弾した。「愛国心」を強調する形での教育基本法改正を掲げる安倍晋三氏が自民党新総裁に選出された直後の判決とあって、弁護団からは「基本法改正反対の機運を盛り上げていきたい」との声も上がった。(❶面参照)

 

 「やった」。二十一日午後、東京地裁から「勝訴」「国歌斉唱義務なし」と書かれた旗を持った弁護士が走り出ると、門の外で待ち構えていた約百五十人の原告や支援者から大きなどよめきが起きた。

 判決後の記者会見で、尾山宏弁護団長は興奮を抑えるように「教育裁判の歴史上、最もすぐれた判決の一つだ」と評価。副団長の澤藤統一郎弁護士は、都立高校改革を掲げて都教委の一連の処分も「妥当」と支持してきた石原憤太郎都知事の姿勢に矛先を向け、「石原教育行政の横暴をストップさせる力を持った判決だ」と声を震わせた。

 都教委が二〇〇三年十月二十三日に入学式や卒業式での「日の丸・君が代」の厳格実施を求める通達を出して以降、不起立などで都教委から懲戒処分を受けた教職員は、〇四年春の卒業式と入学式で計二百三十三人に上ったが、翌年は六十三人、今年は三十八人に減少した。

 処分者数の減少は、一回の戒告処分でも退職までに受け取る給料や期末手当などの合計が約九十万円減るため、弁護団が原告らに無理な不起立を避けるよう呼び掛けた結果でもあった。それだけに原告らは裁判の勝利を切実に願ってきた。

 原告の一人で、都立高校で国語を教える川村佐和教諭は「思想・信条に反し、罪悪感にさいなまれながら君が代斉唱時に起立してきた教諭は多い。判決は本当によかった」と話した。

 「日の丸・君が代」問題での都教委の懲戒処分をめぐっては、都人事委員会への不服申し立ての審理や、退職教員が再雇用取り消しを違憲として処分無効を求める裁判が続いており尾山弁護団長は「この判決を武器に、明日から都教委への攻勢を強める」と話した。

 

国旗国歌めぐる動き

1870年 明治政府が船舶に掲げる国旗を「日の丸」と定める

93年 「君が代」が小学校唱歌に

1958年 学習指導要領に「国旗を掲揚し、君が代を斉唱させることが望ましい」と定める

77年 同要領の「君が代斉唱」を「国歌斉唱」と改定

87年 沖縄国体のソフトボール会場で商店経営者が日の丸焼く

89年 新学習指導要領で「国旗掲揚」と「国歌斉喝」の指導強化

99年2月 卒業式での日の丸・君が代をめぐり広島県立世羅高の校長自殺

3月 野中広務官房長官が校長の自殺を受け、法制化の必要性指摘

8月紅国旗国歌法成立、野中官房長官が個人に強制しない見解示す

2003年10月 東京都教育長が入学・卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱について通達

04年1月 都立高教職員らが国歌斉唱義務の不存在確認などを求めて提訴(05年5月まで順次続く)

2月 都教育委員会が国歌斉喝時に起立しなかったなどとして都立高教員らlO人を戒告(06年5月までに延べ345人処分)

10月 天皇陛下が園遊会で、都教育委員に「(国旗国歌は)強制でないことが望ましい」と発言

05年4月 福岡地裁が国歌斉唱を拒んだ教諭への減給処分を「重すぎる」と取り消す

06年5月 国歌斉唱をめぐり、卒業式を混乱させたとして威力業務妨害罪に問われた都立板橋高の元教諭に対し、東京地裁が罰金の有罪判決

7月 国旗掲揚に抗議するリボンを着けて卒業式に出席し、処分された東京都国立市立小教諭が損害賠償を求めた訴訟で東京地裁が請求棄却の判決

9月2日 同じ市立小の元教諭が処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁が請求棄却の判決

21日 国歌斉唱義務の不存在確認訴訟で、東京地裁が原告勝訴の判決

 

 画期的判決、評価できる 高橋哲哉・東大大学院教授(哲学)の話

 教育基本法の改正を目指す動きも活発化する中、国旗・国歌の強制は教育に対する不当な支配にあたり、教育の自由の確保が不可欠とした判決は画期的だ。日の丸、君が代の歴史にも触れ、異論を持つ少数派の思想や自由が保障されるべきだと指摘しており、評価できる。教育現場での日の丸・君が代の強制、小泉純一郎首相による靖国神社参拝の正当化といった一連の流れに、歯止めをかけるべきだとの裁判官の問題意識がにじみ出ている。

 

 都教委は適切な行動を 坂田仰(たかし)日本女子大学助教授(公教育制度論)の話

 妥当な判決だと思う。数百人もの処分を出す東京都教委のやり方はやりすぎだと、裁判官も感じたのではないか。ただし都教委は高裁、最高裁判決が出るまで、今後も通達を改めないだろう。不利益を恐れる教員が今後も起立して国歌を歌い続ける、という意味では都教委は判決で負けて、政治的には勝ったともいえる。そんな教職員の自主性がないままでは、教育効果は上がらない。都教委は今回の判決を教育現場への警鐘と受け止めて、適切な行動をとってほしい。

 

現場の姿を調べたのか ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の話

 「思想・良心の自由」以前に、国旗・国歌を尊重する心はどこの国でも当たり前のこと。教育の基本は何より「よき日本人」を育てることで、そのためには長い歴史の中で続いてきた国旗・国歌には重要な意味があると思う。教育の現場では実際には君が代などに反対する立場の人たちからの逆の介入も多かった。「思想・良心の自由」の侵署というが教育現場の本当の姿を裁判官はしっかり調べたのだろうかという思いがする。

 

都教委衝撃「予想しなかった」

 「従わなければ懲戒処分」という全国でも異例の強硬な姿勢で、起立し君が代を斉唱することを教職員に強制してきた東京都教育委員会。このやり方を教育基本法違反と初めて断じた二十一日の東京地裁判決に、都教育庁幹部は「予想しなかったこと」と衝撃を隠せなかった。都教委が進める都立高校改革の根幹にかかわるだけに、担当課は緊急の会議を開くなど今後の対応に追われた。

 都教委は二〇〇三年十月、入学式や卒業式での日の丸の掲揚場所や生徒の立ち位置、教職員の服装などを細かく規定。これに伴って、都教委の「処分」も相次いだ。

 君が代斉唱時に不起立だったりピアノ伴奏を拒否したりしたとして、戒告や減給などの懲戒処分を受けた教職員は延べ三百四十五人。うち九人は定年退職後の嘱託再雇用を取り消された。懲戒処分を受けた教職員は、そのたび再発防止研修が義務づけられた。研修を受けたある女性教員は「研修中にトイレに行くにも担当者がついてくる。思想改造のための強制収容所のようだ」と話す。

 「日の丸・君が代」に関する強制は、その後、生徒への指導の現場にも拡大。今年三月には、ある都立高定時制の卒業式で生徒の大半が不起立だったことを受け、都教委は教職員に対して生徒への指導徹底を求める通達を出した。都教委は一九九七年から都立高校改革を急ピッチで進めており、「日の丸・君が代」をめぐる一連の強制と処分は、教育現場を統制する手段としても利用してきた側面がある。

 〇四年十月の秋の園遊会では、棋士で都教育委員の米長邦雄さんが「日本中の学校で国旗を揚げ国歌を斉唱させるのが私の仕事です」と語った。これに対して天皇陛下が「やはり強制になるということでないことが望ましいですね」と異例の発言をする場面もあった。

 

認められず遺憾 中村正彦東京都教育長の話 主張が認められなかったことは、大変遺憾だ。判決内容を詳細に確認して、今後の対応を検討したい。

 

国旗国歌への敬意 「法律以前の問題」 首相

 小泉純一郎首相は二十一日夜、教職員が国旗に向かって起立し国歌を斉唱する義務はないとした東京地裁判決について「判決は聞いてないが人間として国旗や国歌に敬意を表するのは法律以前の問題だ」と述べた。

 国歌斉唱などを強制することについても「法律以前に人格や人柄、礼儀の問題だ」と強調した。

 国歌斉唱しないことなどを理由とした教職員の処分については「これは裁判をやっている。裁判でよく判断してほしい」と述べた。

 

 

(4)教職員、全国で808人処分 00―04年度 東京突出、345人懲戒 『東京新聞』社会面(26面)(2006.9.22)

 

 文部科学省の集計によると、入学・卒業式での日の丸掲揚や君が代斉唱をめぐり、指導に従わなかったとして全国の教育委員会から懲戒処分や訓告を受けた教職員は二〇〇〇―〇四年度の五年間で延べ八百八人に上る。

 東京都では起立斉唱を明確に求めた〇三年十月の通達以降、今年までに三百四十五人が懲戒処分となるなど突出。延べ二百八十七人が都人事委員会に処分不服を申し立てている。

 文科省によると、減給や戒告など懲戒処分を受けた教職員は二〇〇〇年度が三十二人、〇一年度九十四人、〇二年度二十六人だったが、〇三年度には百九十四人に急増。〇四年度は東京や広島、鳥取、福岡の四都県で計百二十五人が処分を受けた。

 懲戒処分より軽い訓告などは、二〇〇〇年度二百三十三人に上ったが、懲戒処分者数と反比例するように減り、〇四年度では十人だった。

 

「思想・良心の自由」訴え退ける傾向

 教育現場での「日の丸・君が代」をめぐる訴訟は、東京の別の訴訟や福岡、京都などでも起こされており、憲法が定めた思想・良心の自由についての訴えを退けるケースが多かった。

 君が代のピアノ伴奏を拒否して処分された東京都内の小学校教諭が、都教委に処分取り消しを求めた訴訟では、一、二審とも「公務員は思想・良心の自由も制約されることがある」とした。

 卒業式で日の丸掲揚に反対するリボンを服につけ、処分を受けた国立市

の小学校教諭が起こした訴訟でも、今年七月の東京地裁判決は「公務員は表現の自由について制約を受ける」との判断を示している。

 君が代斉唱の拒否をめぐる昨年四月の福岡地裁判決は、北九州市教委の指導を「校長の自主的判断をゆがめる恐れがある」と指摘したが、信教、思想・良心の自由を侵害しているとの原告側主張には「斉唱は特定のイデオロギーを教え込むものではなく、宗教的行為でもない」として、憲法違反には当たらないと述べた。