「安倍報道と仏メディア」を読む 森田実の言わねばならぬ[394](2006.10.2)

 

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2006.10.2(その1)

森田実の言わねばならぬ[394]

 

マスコミを信用してはならない――日本のマスコミは政治権力と合体し国民を支配し圧迫する凶器と化した【12】

9月30日付産経新聞朝刊国際面「安倍報道と仏メディア」(パリ・山口昌子)を読む

 

「愛国者とは政治家に簡単にだまされるお人好しで、征服者のお先棒を担ぐ人間」(ピアス『悪魔の辞典』)

 

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 まず山口昌子記者(産経新聞パリ支局)の記事のポイントを紹介する。

 《安倍晋三新首相に対するフランスのメディアの報道も出そろった。保守系から左派系まで強弱の差こそあれ、首相の人物像が判で押したように一致している。

 「ナショナリスト」「タカ派」「超保守派」「戦犯の孫」といった活字が見出しなどを占めているのを見ると、なんだか怖くなってくる。日本を全く知らない人が、こういう先入観をもって日本と首相をみたら、どうなるのだろうと。》

 《もう一つ、フランスで強調されているのが、安倍氏は戦後生まれの初の首相という点だ。単に若いということではなく、過去、つまり第二次大戦中の日本に関して「コンプレックス」を持っていない点が、「平和憲法改正」や、「教育再生会議」の新設、皇室典範改正などに関する発言、あるいは著作「美しい国へ」での主張などと結びつけられ、「軍国主義の復活」を目指している、という結論と危惧を生んでいる。》

 《高級週刊紙といわれるヌーベル・オプセルバトゥールは先週、アジア特派員電で、「恐怖を生む男、安倍晋三」の見出しで安倍氏が権力の座に就くことに「北京とソウル」が「懸念」を示していると指摘。》

 《8月には国営教育テレビ・フランス5がドキュメンタリー番組、「過去の影」を放映した際に、インターネット上に流れた番組の紹介文は、日本で「手に負えないナショナリストが台頭」し、「攻撃的外交」で「排他的経済水域(EEZ)の拡大」を狙っているため、「中国や韓国が懸念している」とし、小泉純一郎前首相の靖国神社参拝などもあり、「こうした問題が発展する危険性」を問うのが番組の意図だ、と説明していた。》

 《リベラシオン紙も8月に小泉氏の靖国参拝に関して1面トップで「歴史修正主義者の挑発」という扇情的な見出しで報道。「数人の戦争犯罪者への敬意で中韓両国の怒りを引き起こした」と指摘している。》

「なお、フランスの報道の一部に、産経新聞に関連して一部不正確な報道があり、産経新聞パリ支局は訂正を求めている]

 

 フランスの新聞が、安倍新首相を「ナショナリスト」「タカ派」「超保守派」「戦犯の孫」と書いたことは事実そのものであり、間違いではない。当然の評価である。

 また、産経新聞が「極右」「反共主義」の牙城であることも事実である。産経新聞は反中国・排外主義を煽りつづけている「反共・反中国・極右」新聞であるとのフランスの紙誌の見方は間違っていない。 フランス、ドイツなどヨーロッパ諸国のマスコミから見れば、第二次大戦における日本軍国主義者の責任を否定する安倍首相は「極右」である。安倍首相を「極右政治家」と見ない日本のマスコミのほうがおかしいのである。安倍氏は極右政治家そのものである。

 問題の根源は、日本のマスコミは「井の中の蛙」になってしまっていて、世界の流れを的確につかむことができなくなっているところにある。

 日本のマスコミ全体が世界の流れから完全に取り残されてしまっている。世界のジャーナリズムから相手にされなくなってしまっているのだ。

 おそらく、産経新聞は間もなく極右新聞として世界のジャーナリズムから見放されるだろう。産経新聞の孤立は、次の段階ではジャーナリズムが持つべき批判精神を失った日本の大新聞が世界の信用を失い、さらに産経新聞が支持しつづける安倍極右内閣の世界からの孤立に至るだろう。

 安倍首相は「ブッシュ化」することによって窮状を乗り切ろうとするだろう。

 だが、全世界から「戦争屋」として見られているブッシュ大統領が、米国内からも見放されるのは時間の問題だろう。

 ブッシュ大統領に隷属した小泉政権を「ヨイショ」した日本のマスコミの責任は大きい。いまさら「安倍政権への懸念」を表明したところで遅い。