横浜市立大学教員組合週報

組合ウィークリー

2006.10.20

  もくじ
●公立大学法人横浜市立大学の教員評価制度」に関する教員説明会 ― 組合員からの報告・意見 ―
●10月定例執行委員会報告
 (添付資料)

公立大学法人横浜市立大学の教員評価制度」に関する教員説明会 ― 組合員からの報告・意見 ―

「公立大学法人横浜市立大学の教員評価制度」に関する教員説明会が、大学当局により9月中旬から10月中旬にかけて各キャンパス、病院、センターでおこなわれ、組合員の方々から報告・意見が寄せられました。
以下に、その一部を掲載いたします。

* * *

(その1)
教員評価制度に関する当局の説明会が各キャンパスで実施されてきましたが、その出席状況は瀬戸キャンパス、福浦キャンパス(医学部)ともに2回合計で100名足らずの低調ぶりだったようです。瀬戸キャンパスの第1回説明会にそくして当局の説明を要約すると次のようなものでした。

<ストロナク学長>
今回の教員評価制度案は完成版ではない。試行を重ねながら進化させてゆく。本学においては研究と教育、学生のニーズ充足のバランスが大切である。各教員が自己の強みと弱点を、第三者の目を通して客観的に知り、研究教育能力向上に役立てることが教員評価制度の目的である。ピア・レビューPeer reviewの実施の見通しは立っていないが、試行実施段階に到達したと判断した。中期計画に記載された時期よりもすでに遅延しているので、すぐに試行を実施したい。

<松山人事課長>
関係人事制度について、現在の検討状況を情報提供という形でお伝えする。
<神内人事係長>
配布物に記載した内容で試行を今秋実施したい。できるだけ多くの参加者を期待する。評価結果は個々の参加者に通知するが、公開はしない。評価結果に関する不服申し立てについては今後の検討課題である。

<質疑応答における学長、馬来副学長の発言要旨>
試行への全員参加が原則だが、今回については自由参加とし、できるだけ多数の参加を期待することにする。ピア・レビューは今回できないし、来年についても未定である。現時点で評価制度のシミュレーションが十分できているとはいえない。個々の教員の研究に関する評価は別として、教育、診療、地域貢献については大学当局が定める組織目標に基づいて評価できる。評価制度が円滑に機能しているかどうかについては法人評価委員会で検討されることになる。

<感想とコメント>
当局は今回説明した評価制度案は未だファイナル・バージョンではないことを繰り返し強調した。今秋に試行を行い、その結果を踏まえて修正版をつくり、新年度に本格実施する方針を強く示唆した。
教員組合が9月上旬に提出した今回の評価制度案に関する質問事項に何らまともに答えないまま、試行を強行し本格実施に結び付けようとする当局の姿勢は拙速かつ理不尽と評さざるを得ない。
当局は評価結果を賃金や任期更新などの処遇に反映する予定であることを明言した。それにもかかわらず、評価基準など制度の根幹に関わる内容を明示しないのは制度導入における労使間の信義原則に反している。
評価の具体的な基準、評価者研修の内容など制度の前提条件が不明確なままでは、被評価者の教員は評価シートにどのように記入するべきか疑心暗鬼にならざるを得ない。
当局の説明を聞く限り「記入対象となる項目は列挙してあるが、全項目について記入しなくても良い。教員の自主的判断で自由にシートに書き込んでくれれば良い」というように聞こえた。そして記入された内容をどのような基準で評価するかについては何の説明もなかった。被評価者の教員だけでなく、コース長等の第一次評価者もさぞお困りのことと想像される。要するに制度の根幹部分は未だに白紙状態に近いと断ぜざるを得ない。
公正性・公平性・透明性といった制度の正統性に関する原理的な説明は欠如していた。このような形で試行から本格実施へ突き進むとすれば、被評価者である教員の理解や納得が得られるはずがない。したがって制度の円滑な運用などはとても不可能である。
人事課長から年俸や任期に関するいくつかの点で「飴」の要素が検討されていることが「情報提供」された点は注目される。しかしこれは、評価制度の導入によって「鞭」を振るわれる教員の激痛を多少緩和する程度の意味しかもたないであろう。さらに本質的に言えば、上記の「飴」はそもそも教員評価制度の関連事項扱いで「情報提供」するような筋合いのものではないはずである。年俸制の設計がないまま給与を固定している現状は理不尽というしかない。
説明会に参加して明確に理解できたことは、中期目標に掲げた「教員評価制度」を計画通りに「実施した」ことにしたい当局の姿勢だけである。このような当座しのぎのやり方は大学の将来に大きな禍根を残すことになる。このままでは本学教員が安心して研究・教育に取り組むことが非常に困難になることは確実である。
その後、大学ホームページに最近掲載された学長をはじめとする各段階評価者たちの「目標」をみた。同僚に言われてはじめて知った次第で、まだ読んでいない人も多いだろうと思われる。コース長など第1次評価者の中には未記入の人もあり、足並みの乱れを感じさせた。また、各評価者が掲げる「目標」は多くが抽象的で、それをふまえて「目標シート」に何をどのように書くべきか、戸惑いを禁じえなかった。学部長、コース長は教育現場にも関わる人たちでもあるのだから、まず自分たちの「目標シート」を作成して例示するべきであろう。同時に評価者としての評価基準も提示すべきである。各教員に「自由に」記入させて提出させ、その後考えると言うのでは公正で透明な制度とは言えず、被評価者たちの納得を得ることはできないであろう。そもそも平成18年度の「目標」を10月に示し、評価基準も不明確なままで各教員に「年度計画」の立案を命じ、12月に自己評価シートを提出させ、その後で段階的に相対評価を導入して評価結果を出し、各教員に通知するが、不服申し立てへの対応システムは未定などというスケジュール自体が常軌を逸している。教員の心配や懸念を放置したままでは、本格的な制度試行の前提条件が整ったとはいえないことを当局は肝に銘じるべきである。

* * *

(その2)
10月2日(月)の教員評価説明会に出ました。教員の参加は少なく、閑散としていました。説明のあと何人かの教員が質問したり発言しました。ある教員が平成19年度の評価結果を20年度の処遇に反映させることがあるかと質問しました。馬来副学長がそのようなことはないとくり返し言明していました。(処遇に反映させる場合、どのように行うかは重大問題なので、民間企業でもかなり時間が必要で、あたりまえのことですが)。人事担当の言うことはあてになりませんが、馬来副学長の発言なので、あてにしたいところです。

* * *

組合員の方々から寄せられたこれらの意見が示すように、当局が提示してきた教員評価制度は評価の対象となる内容、導入方法に、決して無視できない、大きな問題を含むものです。組合執行部では引き続き、この評価制度の導入に慎重に対処していきたいと考えています。

10月定例執行委員会報告

10月19日(木)に10月定例執行委員会が開かれました。以下はその議事概要です。
  1. 組合加入申請
    東田 啓作氏(国際総合科学部) 承認
    なお、加入申請書には今後は所属学部に加えて所属コースも記入する欄を設けることとした。
  2. 最近の折衝状況および今後の対応方針について
    最近の折衝状況について書記長より報告があった。
    今後、課題となっている問題(賃金、教員評価制度と新人事処遇制度、昇任人事問題)を中心に折衝を行い、その後団体交渉に臨んでゆくことを確認した。
  3. その他
    1. 一組合員から、ISO講座のこれまでの経緯について説明があり、これに関して組合として今後どのように取り組んでいくかについて話し合った。
    2. 立命館アジア太平洋大学の常勤講師「雇い止め」事件の迅速で公正な地位保全仮処分命令を求める団体署名に関する要請(次ページ添付資料参照)に、団体として組合がこれに応ずることを確認した。
    3. 学内の公式ホームページに人事問題に関する資料が掲載されている問題につき、当局に善処を申し入れることを確認した。

(添付資料)
大分地方裁判所 民事第二部 
神野泰一裁判官 殿

立命館アジア太平洋大学の常勤講師「雇い止め」事件の
迅速で公正な地位保全仮処分命令を求める要請書


 立命館アジア太平洋大学(以下APUという)は、一応の任用期間が切れた常勤講師に対して、2006年3月31日をもって雇い止めを強行しました。
 この雇い止め事件は、開学前に常勤講師に対して「4年契約の後も契約を継続できる」と明確に約束したにも拘らず、昨年突然に、「2006年3月末に一応の任用期間が終わる常勤講師から次々と雇い止めする」と、APUが通知してきたことから起こった事件です。
 APUは2000年4月に開学しましたが、開学前の1999年10月24日に、就任予定の日本語教員を京都に集めての説明会で、常勤講師たちから寄せられた質問に応じるために事前に用意された『質問リスト』を配布しました。その質問リストの19項に「4年後の更新について知りたい」という項目があり、それに対して「一応任期はあるが、本人が望めば60歳の定年まで更新ができる。ただし昇格も昇給もない」と待遇条件も含めて明確に説明し、継続雇用を約束しました。
 この説明会に出席した常勤講師は、雇用契約の更新が約束されたことを確認して、他大学への応募を取りやめ、又は、他大学の職を辞してAPUに着任しました。
 このことは、この説明会に参加した常勤講師14名全員を含めた16名の教員が、「4年後も契約を継続できるが、条件・待遇は変わらない」「どうぞ定年までいて下さい」と説明を聞いたと、連名で署名していることからも、また数名の常勤講師が説明会の『質問リスト』に、説明内容をメモ書きで残していることからも明らかです。
 貴裁判所へ提出している常勤講師7名の「陳述書」でも、「継続雇用を確認して、退路を断って着任した。当時、その約束がなければ着任していなかった」と経緯を陳述しており、APUが開学前に『継続雇用』の約束をしたことは、まぎれもない事実です。
また、APUは今後4年間で学生数の1.5倍化を目指し、新たに上級講師・嘱託講師・任期5年の教員の募集もしており、依然として日本語教員の必要性が高いのです。この点からも、既に4年間の教育・研究経験を有する常勤講師の「雇い止め」が、理不尽で不当なものであることは明らかです。
 教育・研究の場を奪われることは大学教員としても生活者としても死活問題であり、約束に反して雇い止めにされた常勤講師の計り知れない苦痛に、私たちは深く心を痛めています。
 私たちは、貴裁判所が早急に公正な判断を行い、地位保全の仮処分命令を下されますよう要請いたします。

                     2006年  月   日

   住  所
   団 体 名                              ㊞
   代表者名                             ㊞

提出者代表: 大分地域労働組合 執行委員長 池本和之

以上


教員組合に皆様の声をお寄せください


発行 横浜市立大学教員組合執行委員会


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