「意見広告の会」ニュース381(2006.12.8)、 (1)「基本法」 国会の公述人・参考人がアピール、12月6日、(2)「基本法改正案」は「自民党憲法草案」と一致、一党派の「憲法草案」との整合性をチェック、(3)「基本法」 群馬大学の取り組み、群馬大学教職員 九条・平和の会/教職員有志、(4)元小中校長56人、廃案求める声明/岩手、毎日新聞岩手版2006年12月7日付

 

 

「意見広告の会」ニュース381

  

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** 目次 **

1 「基本法」 国会の公述人・参考人がアピール

                  12月6日

2 「基本法改正案」は「自民党憲法草案」と一致

         一党派の「憲法草案」との整合性をチェック

2−1 改憲を先取りするような教育基本法「改正」案は許せない

         国立大学法人法反対首都圏ネットワーク 12/7

2−2 「教育基本法改正案は自民新憲法草案とも整合」文科相

        朝日新聞 12/5(本ニュースでは再掲)

2−3 12月5日の国会質疑詳細

         教育基本法「改正」情報センター http://www.stop-ner.jp/

3 「基本法」 群馬大学の取り組み

                  群馬大学教職員 九条・平和の会/教職員有志

4 元小中校長56人、廃案求める声明 /岩手

       毎日新聞岩手版200612月7日付

 

 

***

1 【アピール】公述人・参考人として教育基本法案の徹底審議を求めます

 

 私たちは、衆議院及び参議院の教育基本法に関する特別委員会において、参考人、地

方及び中央公聴会での公述人として意見を述べた者です。私たちはそれぞれ自分の研究

している専門的な立場から、政府の教育基本法案について様々な危惧や問題点を指摘し

ました。

 それらは、例えば次のような問題です。

1.政府法案は、「教育基本法(…)の全部を改定する」としていますが、なぜいま教

育基本法の全面改定が必要なのか、ということが何も明らかにされていません。さらに

、GHQによる押しつけなどという教育基本法制定史についての誤った認識が払拭され

ていません。

2.政府法案のように改定したら教育がどうなるのか、こんにち教育や学校が直面して

いる「いじめ」をはじめとした諸問題が政府案によって解決されるのか、また、それら

は現行教育基本法ではなぜ解決できないと考えているのか、などが何も明らかにされて

いません。

3.政府法案17条の教育振興基本計画には学力テストが盛り込まれることが予定されて

おりますが、これにともない、自治体の判断による各学校ごとのテスト成績の公表やテ

スト成績に基づく生徒一人当りの予算配分の制度なども導入されようとしています。こ

れらの政策が、学校選択の「自由化」とあいまって、教育をますます競争主義的なもの

とし、子どもの成長発達に今以上の歪みをあたえることは明白です。

4.現行の教育基本法は、教育の基本的な理念・原則・枠組と政治・行政の責務を規定

したものです。その特徴は、憲法第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判

官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という規定と同様、近代

立憲主義の原則に立ち、国家権力・行政権力を拘束する規範(権力拘束規範)になって

いるという点にあります。それに対して、政府法案は、子ども・家庭(保護者)・大学

などに命令する規範(国民命令規範)が目立つものとなっています。政府には、このよ

うな重大な変更を行う正当な理由を明示する責務がありますし、立法府には、その是非

を十分に審議検討する責務があります。

5.教育基本法のような理念法、教育の根本法規に「教育の目標」を規定すれば、その

達成度の評価を通じて、教育の自律性・自主性や個人の内心の自由が侵害される危険が

あります。しかも、「目標」には「愛国心」をはじめ20を超える徳目が盛り込まれてい

ますが、これは、国家が特定の「道徳規範」を強制することになります。

6.政府法案は現行法101項の「教育は不当な支配に服することなく」という規定を

残していますが、政府法案の「不当な支配」とは何を指すのか、誰の何に対する支配の

ことなのかが明確ではありません。現行法第101項の「(教育)は国民全体に対し直

接責任を負って行われる」の文言を削除し、「(教育は)この法律及び他の法律の定め

るところによって行われる」という規定に変えた政府法案は、国会で多数で決めれば政

府がどんなことでもできるようにしています。これは、国家・政府による教育への介入

を無制限に許すことにつながります。

7.政府法案は憲法に違反するのではないかと危惧される内容を多々含んでいます。憲

法との関係、子どもの権利条約との関係について、各条文の検証が必要です。特に、政

府は、法案161項の根拠として、76年の最高裁学テ判決を援用していますが、その援

用が最高裁学テ判決の理解としては誤っているばかりか、最高裁学テ判決に照らしても

違憲と判断されうる内容となっています。

8.政府法案第13条の「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれ

ぞれの役割と責任を自覚する」というのは、具体的には何を意味するのか不明です。

 

 以上に例示したことはほんの一部に過ぎません。私たちが述べた審議すべき重要な課

題について、衆議院の特別委員会ではほとんど審議されませんでした。中央公聴会の場

合は、私たちが述べたことは、一度も審議する時間もないままに与党のみによって法案

採決が行われました。

 教育基本法は教育に置ける根本法であり、憲法に準ずる大切な法律です。それを廃止

して新法を制定しようとするならば、国民の意見を十分に聴き、それを国会審議に反映

させるべきです。私たちが述べた意見は国民の意見の重要な構成要素だと確信していま

す。それについて、ほとんど議論がなされないままに法案が採決されるのは重大な問題

であり、将来に禍根を残すことになります。

 最近の世論調査でも、政府法案について、「今国会成立にこだわるべきではない」が

55%で、「今国会での成立が必要」というのは19%に過ぎません。自民党支持者でさえ

「今国会成立にこだわるべきではない」が53%で、「今国会での成立が必要」は25%で

す(日本経済新聞1128日)。また、教育基本法「改正」で教育はよくなると思うかと

いう質問に対して、「よくなる」と答えた人は4%、「悪くなる」が28%、「変わらな

い」が46%です(朝日新聞1125be)。国民の多数は今国会での成立を望んでいませ

んし、十分な時間をかけた徹底的な議論をこそ求めているといえます。

 与党の中には、「何時間やったのでもう議論は十分」という意見があると伝えられて

います。しかし、このような大切な法律の制定では、何時間ということよりも、何をど

のように議論したかということこそが問われなければなりません。参議院においても私

たちが指摘した法案の内容そのものについての議論はきわめて不十分だといわざるをえ

ません。

 以上のようなことから、私たちは十分な議論のないままの拙速な採決に反対します。

私たちは現行教育基本法と政府法案の関係、法案の各条文、条文と条文との関係などに

ついて、十分な時間をかけた徹底審議を要求するものです。

 

2006126

市川 昭午(国立大学財務・経営センター名誉教授、参考人)

岩本 一郎(北星学園大学教授、公述人)

尾木 直樹(評論家・法政大学教授、参考人)

高橋 哲哉(東京大学教授、公述人)

出口 治男(弁護士・日弁連教育基本法改正対策協議会議長、公述人)

中森 孜郎(宮城教育大学名誉教授、公述人)

成嶋 隆(新潟大学教授、参考人)

西原 博史(早稲田大学教授、公述人)

広田 照幸(日本大学教授、公述人)

藤田 英典(国際基督教大学教授、参考人)

堀尾 輝久(東京大学名誉教授、参考人)

世取山 洋介(新潟大学助教授、参考人)

   (200612月6日時現在)

 

 

2−1 改憲を先取りするような教育基本法「改正」案は許せない

       国立大学法人法反対首都圏ネットワーク 12/7

 

 下記の朝日新聞の報道によると、伊吹文部科学相は12月5日の参議院教育基本法特

別委員会で、政府与党案と自民党の憲法草案の「整合性をチェックしている」と述べた

と伝えられています。自民党憲法草案は、国が尊重し守るべき事項の定めの規定ではな

く、「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務

を共有し」(前文)とか、12条「常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受

し、権利を行使する責務を負う」とかの、「公秩序」と「国民の責務」の精神にあふれ

ています。このような規定の精神は「現行憲法」と根本的に食い違うのではないでしょ

うか。

 そうだとすると、教育基本法「改正」案は、現行憲法の精神に反していることになる

のではないでしょうか?

 そもそも、「一党派の私案に過ぎない憲法草案との整合性」を考慮すること自体が不

謹慎、国民と国会の無視ではないでしょうか。

 自民党の中にも、「憲法改正から着手すべき」という意見がありました。筋道として

は、そのほうが正論です。

 憲法改正を先取りするような教育基本法の改正は絶対に許せません。

 

 

2−2 「教育基本法改正案は自民新憲法草案とも整合」文科相

        朝日新聞 12/5(本ニュースでは再掲)

 

伊吹文部科学相は5日の参院教育基本法特別委員会で、政府提出の改正案を作成するに

あたって、現行憲法だけでなく、自民党が昨秋まとめた新憲法草案と「整合性をチェッ

クしている」と述べた。これに対し、神本美恵子氏(民主)は「自民党の憲法草案は現

行憲法と立場が違うのだから、問題ではないか」と批判した。

 

自民党の憲法草案は、前文に「国民は、国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支

え守る責務を共有する」と明記。「国民は、自由・権利には責任・義務が伴うことを自

覚しつつ」との文言も盛り込まれている。

 

朝日新聞 20061205日 1957

http://www.asahi.com/politics/update/1205/011.html

 

 

2−3 12月5日の国会質疑詳細

       教育基本法「改正」情報センター http://www.stop-ner.jp/

 

監視コメント(監視員名)

125

教育基本法に関する特別委員会 ■神本委員(民主)の質問に対する伊吹文科大臣の答

弁のなかで、教育基本法「改正」政府案は自民党憲法草案との整合性をチェック済みで

あるという、驚くべき事実が明らかにされた。

 

■伊吹大臣によれば、政府案と自民党憲法草案との整合性のチェックは、

@自民党・公明党の協議会案をもとに文科省が法(要綱)案をまとめた際に行われた。

A文科省だけでなく、自民党・公明党の協議会も独自に行っている。

B「自民党の憲法草案との間に大きな違いがあるのかないのか、そういうことはやはり

一応のチェックはするというのが立法者の当然の責任」である。

 

■一政党の私案に過ぎない自民党憲法案(改憲案)との整合性のチェックを行うことは

、日本国憲法に規定された憲法擁護尊重義務(99条)に反する言語道断の行為である。

文科省によるチェックが与党協議会からの要請で行われたのであれば、自公両党の国会

議員のみならず、文科省までもが憲法擁護尊重義務違反の行為に加担したことになる。

 

■のみならず、文科省のチェックは与党協議会からの要請のより行ったのではないかと

いう疑問も沸く。憲法草案を出した自民党ならともかく、それとは別に行われた文科省

のチェックは、自民党の政治圧力、すなわち、「不当な支配」によるものではないのか

。文科省はことの真相を国民の前に明らかにしなければならない。

 

■さらに、伊吹大臣は、このチェックは法案の提出者として当然の責務だと開き直り、

次のような発言までしている。

 

「法案の作成者としては、やはりあらゆる注意を払ってこの法案をつくっているわけで

すから、その過程で、例えば、帝国憲法とはこんなに違う、帝国憲法と突き合わせてみ

たらこんなにたくさん違うところがあるなということだって当然考える」

 

実定法として存在した帝国憲法と、たんなる一政党の私案とを同列に扱うことがそもそ

も誤りであるが、百歩譲って、それでは、政府案は帝国憲法とはどのように整合するの

かしないのか、と質問してみたらどうなるだろうか。政府案が自民党憲法草案と整合し

ているのなら、帝国憲法ともかなりの点で整合がとれているという結論が引き出される

に違いない。

 

■なお、安倍首相も今回の伊吹発言に符号するように、1030日の衆議院教基法特別委

員会において、「我々の既に出しているこの草案(自民党新憲法草案)と私どもが出し

ている改正案は、基本的にはそれによって矛盾が生じるものではない、こう認識をして

おります」と発言している。政府委員としての立場と自民党員としての立場を混同した

問題発言であるが、それはさておき、これが単なる「認識」の問題なのか、政府・文科

省のチェックを経ての「確信」なのか、それを命じたの誰なのか、参議院・教基法特別

委員会は首相を招致して問いただすべきだろう。

 

■以下、当日の審議の書き起こし

 

神本委員:まず、教育基本法、今回の政府案と憲法との関係についておうかがいします

。伊吹大臣は、この参議院での1127日の質疑の中でこういうふうに答弁していらっし

ゃいます。政府案を作成する段階で、現行憲法はもちろんのことでございますが、自民

党が作っております憲法草案との整合性も一応チェックして、そしてこの法案、教育基

本法の法案を提出していますが、というふうに御答弁なさっておりますけれども、自民

党の憲法草案との整合性をチェックしたという事実はあるんですか。

 

伊吹文科大臣:御答弁申し上げておりますように、まず現行の憲法との整合性は、当然

今は憲法改正は行われてないわけですから、国会に提出する限りは当然それとの整合性

をチェックをして、チェックをしてというか、現行憲法の下でこの法案を提出していま

す。しかし同時に、そのときの自民党と公明党の基本法の協議会の当時の出席者に私、

確かめておりますが、そのときも、それから文部科学省が正式にその案をいただいて、

それを文言に、字句に直したときも、一応自民党のつくっております憲法草案との間の

整合性はチェックいたしております。

 

神本委員:それは文科省がやったんですか。

 

伊吹文科大臣:この提案は内閣が提出しておりますが、原案は文部科学省が作成してお

ります。そして、その文部科学省が作成する原案の基本になっているのは、公明党と自

民党の与党協議で出てきた案です。その各々の場面で、文部科学省も、そして自民党、

公明党の与党協議会も自民党案との整合性はチェックいたしております。

 

神本委員:はっきりチェックされているんですね。私は、これは大問題ではないかと思

うんですが、政府案というのは内閣が閣法として提出する、それは当然のことながら現

行憲法の枠内で行われるべきことですよね。そうやって現行憲法の下でもつくられた法

案であるということですけれども、一つの政党の草案、憲法草案と整合性を図るという

ことは、これは政府としてやってはいけない行為ではないでしょうか。

 

伊吹文科大臣:それは全く違います。それは、立法過程においてできるだけ細心に注意

を払うべきことであって、現行憲法と整合性が取れていれば、一番最初に答弁したよう

に、現行憲法下で出すんですからそれは当然のことなんですよ。しかし同時に、念のた

めに自民党の案との間の整合性があるかどうかというのは、チェックするのはそれは立

法者としては当然のことじゃないですか。

 

神本委員:いえ、私が言っているのは、一政党の、一政党の草案ですよね。それと、や

ることは、政府としてやるというのは、憲法は九十九条でこの憲法重視ということを言

っていますよね。それを一政党の草案とチェックをするということは、これは問題じゃ

ないですか、官房長官。

 

塩崎官房長官:一つは、先ほど伊吹大臣から参考までに参照をしたと、こういうお話が

ありました。それと、自由民主党とはどっかの聞いたことない政党ではなくて与党の一

つの政党でございますので、自分たちが言っていること、与党と言っていることが全く

違うことを書いてあるような法律を出すというのも余り格好いい話ではありませんので

、それはきちっと見ておくというのがごくごく常識的な判断かなというふうに思います

 

神本委員:いや、与党だから許されるとかいうのはおかしいと思うんですよね。これは

やっぱり、政府として一つの政党と、参考にしたじゃなくて整合性をチェックしたとお

っしゃったんですよね。これはまた、まさか内閣法制局と一緒にやったわけではないで

すよね。

 

伊吹文科大臣:再三申し上げておりますように、現在、憲法が改正されてないわけです

から、現行憲法との整合性をチェックしてここへ出すのは当然なんですよ。しかし、当

たり前のことですよ、それは。しかし同時に、立法者としては細心の注意を払って、ど

うだこうだ、今の自民党の憲法草案との間に大きな違いがあるのかないのか、そういう

ことはやはり一応のチェックはするというのが立法者の当然の責任で、今度はそれチェ

ックをしてなかったら逆の攻め方を必ずされますよ。

 

神本委員:いや、逆の攻め方しようと思って言っているんではなくて、政府の行為とし

て憲法遵守義務があるにもかかわらず、その一部政党の草案とチェックをしたというこ

とについて私は問題にしているんです。これは、それこそ教育基本法第十条、「教育は

、不当な支配に服することなく」ということについて、帝国議会でも、この意味は何な

のかというと、従来、官僚とか一部の政党とかその他不当な外部的な干渉、ヨウカイと

申しますか、それによってつくられてはいけないということを言っているわけで、その

ことを自民党はといいますか、伊吹大臣は侵したのではありませんか。

 

伊吹文科大臣:御質問の趣旨がちょっとよく分かりませんが、提案者としては、提案者

というか、この法案の作成者としては、やはりあらゆる注意を払ってこの法案をつくっ

ているわけですから、その過程で、例えば、帝国憲法とはこんなに違う、帝国憲法と突

き合わせてみたらこんなにたくさん違うところがあるなということだって当然考えると

いうのは、立法者として当たり前のことなんじゃないんですか。

 

神本委員:しかも、私がなぜこんなに問題にしているかというと、自民党憲法草案は、

私も新聞記事とかで見ただけですけれども、その理解は今の現行憲法を尊重する立場に

はないというふうに思っています。大きく立場が違う内容になっていると思います。特

に、例えば自衛軍を創設するとか、それから、現行では基調になっている個人の尊重、

尊厳よりも、国家主義、公の秩序を維持するというような、理念が大転換するような憲

法草案と整合性をチェックしてやるということについて、私はこれは非常に、現行憲法

に基づいてやらなければいけない法律改正についてこういうやり方は大きな問題がある

と思うんですけれども、いかがですか。

 

伊吹文科大臣:現行憲法においてすら先生がおっしゃった国家主義というのはどこにあ

る言葉なのか、私は、自由民主党の憲法草案にもございませんし、どこにある言葉なの

かよく分かりません。しかし、現行憲法においても、個人の権利は公共の福祉の範囲の

中で尊重さると書いてあるわけでして、運用の問題として、どうもその公共の福祉はど

こかへ行っちゃってその個人の権利が強く出ているのは、バランスを取らなければなら

ないという考えはあるのかも分かりませんよ。しかし、全く、その国家主義だとかどう

だとかという言葉はどこに入っている言葉なのか、御教示をいただきたいと思います。

 

神本委員:官房長官、もう一度お尋ねしますけれども、こういう政府が一政党の草案と

整合性をチェックして提案するということについては、しかも、その憲法の下に、法律

は憲法との整合性を調べなきゃいけないのに、一政党の草案と整合性をチェックしてや

ったということについては問題はないのでしょうか。官房長官にお聞きします。

 

伊吹文科大臣:委員長の御指名ですから。一番大切なことは、憲法を尊重して、この現

行憲法を尊重してこの法案ができているかどうかということなんですよ、立法意図と提

出者の立場から言うと。それは完全にチェックをしてあるわけです。その上でなお念を

入れていろいろなものを参照にするということは、国家主義に転換したとかということ

とは全く関係がないことですよ。

 

塩崎官房長官:今、伊吹大臣が答弁されたとおりだと思います。仮に、民主党が憲法草

案をつくっていれば参考までに見ていたかも分からないと、そんな感じだろうと思いま

す。

 

神本委員:国家主義というところで御質問、私が答弁するんではありませんけれども、

これもこの委員会で答弁されているんですが、今回の政府案第二条五項、「伝統と文化

を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度、これはどういうこと

ですかという質問に対して、大臣は、国や社会を愛情と責任感と気概を持って自ら支え

る責務を共有し、これは自民党草案にあるけれども、ここのところを教育基本法の二条

で受けてというふうに、気概を持って自ら支える責務という自民党の憲法草案を受けて

いるというふうに御答弁なさっております。これは教育の、この後の質問にも続けてい

きたいと思いますけれども、現行憲法も現行教育基本法も個人の尊厳、個人の価値とい

うことをまず一番基本に置いて、その個人の尊厳を持って人間の成長発達を保障する責

務を国が負うという作り方になっていると思うんですけれども、この自民党憲法草案に

基づいてと、そこと整合性をはかってつくられたこの二条の五号ですね、これは国のた

めに自らの気概を持って責務を果たすということを求める内容になっているところを私

は国家主義というふうに言ったわけです。

 

 

3 「基本法」 群馬大学の取り組み

                  群馬大学教職員 九条・平和の会/教職員有志

 

皆様

6日,本会および教職員有志で下記の声明を発表し,参議院教育基本法特別委員会委

員長,参議院議長に送付しましたので,お知らせします。

 

声 明

 

  私たちは教育基本法「改正」案に反対します

                           群馬大学教職員 九条・平和の会/教職員有志

 

 教育基本法「改正」案の審議が今,国会で最終段階に入っています。政府・与党は11

16日,野党4党欠席のまま単独で衆議院での採決を強行し,審議は参議院に移されま

した。法案成立の危険が目前に迫っています。しかし,日本国憲法とともに誕生し,民

主主義と平和を教育の理念として掲げてきた教育基本法が,国民の理解を欠いたままこ

のような暴力的な手法で「改正」されてよいはずはありません。タウンミーティングで

の「やらせ質問」も含めて民主主義をわきまえない「改正」強行の動きに,「改正」案

の危険な本質がすでに露呈しているのを感じます。国会の審議を尽くすこともなく,広

範な国民の意思形成を図ることもなく,憲法に準じる教育の根本法が数をたのみとして

「改正」されることを,私たちは認めることはできません。

 

 「改正」案の最大の問題は,自立的な個人の育成を目的として教育の自由を保障して

きた現行法を否定し,国家のために国民を育成する教育の国家統制へと道を開いている

ことです。「改正」に見せかけながら,法の基本精神が180度転換されています。なか

でも「改正」案第2条では,「我が国と郷土を愛する」態度を養うことをはじめとして

,多くの徳目が「教育の目標」として列挙されています。国家が国民一人ひとりの心の

内面にまで介入し,国家の定めた「目標」に従う国民の道徳的育成の場へと公教育を変

質させる危険を,そこに指摘しないわけにはゆきません。第6条では,このような「教

育の目標」を組織的に達成することが学校教育に義務づけられ,第9条では教員にその

「崇高な使命」を深く自覚して,職責を遂行することを求めています。教員を「全体の

奉仕者」と定めた現行法の文言が削られ,教員は国家への奉仕者とされかねません。学

校教育から自由闊達さが失われ,子どもや教員,国民にとって学校が息苦しい内面的強

制の場に変容することを,私たちは認めることはできません。

 

 「改正」案における教育の国家統制は,徳目の教育だけにとどまりません。「改正」

案第16条では,教育は「不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負

って」行われるべきという現行法第10条の表現が,「不当な支配に服することなく,こ

の法律及び他の法律の定めるところにより」行われるべきと改められています。国家に

よる教育内容への介入を厳しくいましめてきた現行法の「不当な支配」という言葉を巧

妙に使いながら,ここでも法の基本精神が180度転換され,国家が法律を通じて教育を

統制する趣旨が織り込まれています。しかも続く第17条では,政府に「教育振興基本計

画」の策定・実施を義務づけ,これを国会での審議の対象から外しています。つまり教

育は,政府が思いのままに策定する「基本計画」に基づいて振興が図られるべきものと

なり,もし教育行政に異を唱えるならば,直ちにそれは「不当な支配」になりかねない

のです。言うまでもなく現行法は,国家が教育内容を全面的に統制した戦前の苦い過ち

をふまえて制定されたものです。国家の定めた「目標」の達成に向けて,政府が教育の

営みを包括的かつ一元的に統制することを可能とする「改正」を,私たちは認めること

はできません。

 

 「改正」案のもとで大学もまた国家の統制を免れません。そもそも「教育の目標」の

達成は大学にも義務づけられるものですが,加えて「改正」案第7条では,大学は「成

果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」,と定められ

ています。もとより「社会の発展に寄与する」ことは大学の使命ですが,政府が「教育

振興基本計画」によって「社会の発展」の方向を策定し,大学の「寄与」を判別して財

政誘導を行うとなれば,もはや大学における教育と研究の自由は存続しがたいものとな

ります。学問の自由を危うくし,大学における教育と研究を国家の「目標」の下に誘導

しようとする「改正」を,私たちは認めることはできません。

     

 以上のように教育基本法「改正」案は,民主主義と平和の実現をめざす現行法の理念

を根本からくつがえし,教育の国家統制を正当化し,個人の精神の自由,教育・研究の

自由を脅かす重大な危険を内包するものです。私たちは,群馬大学において教育・研究

に携わるものとして,このような教育基本法「改正」案に強い不安と憤りを覚えます。

現行教育基本法を堅持しその理念を実現させることこそが,教育本来のあるべき姿であ

り,日本の教育の未来を切り開くものであると,私たちは確信します。

 ここに私たちは,教育基本法「改正」案に反対する強い意思を表明し,同法案を廃案

にすることを求めます。

 

 2006年12月6日

              群馬大学教職員 九条・平和の会/教職員有志

 

新井哲夫,石川真一,伊藤賢一,犬塚 元,今村元義,岩永健司,上里京子,狩野源三

,黒須俊夫,小泉一太郎,小暮公孝,近藤義臣,斎藤 周,齊藤隆夫,清水武雄,下田

博次,砂川裕一,菅原英直,瀬山士郎,高橋久仁子,高林圭子,高山利弘,滝沢俊治,

田崎篤郎,團名保紀,豊泉周治,長津美代子,松永友有,三上紘一,中田吉郎,中野尚

彦,西薗大実,久田信行,福地豊樹,堀内雅子,松本富子,三田村道子,山田博文,山

崎雄介,山西哲郎,渡邊彩子ほか15名,計56名

 

 

4 元小中校長56人、廃案求める声明 /岩手

       毎日新聞岩手版200612月7日付

 

教育基本法改正:元小中校長56人、廃案求める声明 /岩手

 

 参院で教育基本法の改正法案の審議が進む中、小中学校の校長を経験した56人が6

日、改正案の廃案を求める声明を発表した。「国民のための教育」のはずが、改正法案

によって「国家のための教育」に変えられようとしている。声明は「現行の教育基本法

の理念に沿った教育改革を行うことが大切だ」と主張している。校長経験者の7人が先

月下旬、県内の元校長に呼びかけたところ、数日間で賛同者が集まったという。【念佛

明奈】