NHK番組改変問題 「意見広告の会」ニュース398より(2007.2.7) (1)NHK高裁判決のご報告 <教科書ネット21MLより転送>、(2)番組改変 NHKに賠償命令 『東京新聞』1月30日付

 

 

NHK番組改変問題 「意見広告の会」ニュース398より(2007.2.7) (1)NHK高裁判決のご報告 <教科書ネット21MLより転送>、(2)番組改変 NHKに賠償命令 『東京新聞』1月30日付

 

 

3−1 NHK高裁判決のご報告   

        <教科書ネット21MLより転送>

 

 昨日、NHK番組改編事件の高裁判決が言い渡されました。判決は、バウネットが主

張してきた「期待権」と「説明義務違反」を認める画期的な判決でした。判決直前まで

、どのような判決になるのか全く予想できず、不安で押しつぶされそうな気持ちでその

瞬間を待っていましたが、「勝訴」を聞き、かつて経験したことのない喜びが体の底か

ら沸き起こってきました。

 勝訴判決を勝つ取ることができましたのは、一重に皆様の力強いご支援・声援があっ

たからです。心から心から感謝いたします。

 また、早くから傍聴に駆けつけてくださいました皆様、そして、夜の報告集会に駆け

つけてくださった皆様、この喜びをたくさんの皆様と共にできたことを、大変嬉しく思

います。本当にありがとうございました。

 

 以下、判決の内容についてポイントに絞ってご報告します。

 

■注目点

 バウネットはこの裁判で「期待権」(信頼利益の侵害)と「説明義務違反」を法的根

拠としてNHKらの責任を問うてきました。しかし、「期待権」(信頼利益)は今まで

に判例がなく、どこまで被取材者の「期待権」が認定されるか、また、NHKはガイド

ラインに掲げた説明義務は法的拘束力はないと主張してきたので、番組が変更されたこ

とについて説明を怠ったことが「不法行為」として認定されるかということが最大の注

目点でした。その上で高裁の最大の争点である政治介入問題が「編集の自由」との関係

でどのように判断されるかということでした。

 

■「編集の自由」について

 一審判決は、NHKの改変について「編集の自由の範囲内」としてNHKの責任を不

問にし、番組制作会社のドキュメンタリー・ジャパンがバウネットに期待を抱かせたこ

とのみを不法行為として100万円の賠償支払いを命じました。しかし、今日の東京高等

裁判所の南敏文裁判長は「NHKの本件番組の制作・放送については、憲法で保障され

た編集の権限を濫用し、又は逸脱したものといわざるを得ず、放送事業者に保障された

放送番組

編集の自由の範囲内のものであると主張することは到底できない」と、NHKの「編集

の自由」を「濫用」「逸脱」と断じたのです。

 バウネットは裁判の中で、「編集の自由」は無制限に放送事業者に与えられた権利で

はなく、「特段の理由」がある場合は制限されるものだと主張し、今回の改変に於いて

の「異常性」を立証し、今回のケースは「特段の事情」に相当するものであると主張し

てきました。判決はバウネットが主張してきた「特段の事情(理由)」を認め、前述の

ような明快な言葉でNHKの責任を断じたのです。

 

■政治家の介入について

 判決で最も注目されたのは、政治家の介入が番組改編に影響を与えたことが認定され

るかということでした。それについて判決は、「右翼団体等からの抗議等多方面からの

関心が寄せられてNHKとしては敏感になっていたこと、折りしもNHKの予算につき

国会での承認を得るために各方面への説明を必要とする時期と重なり、NHKの予算担

当者及び幹部は神経を尖らしていたところ、本件番組が予算編成等に影響を与えること

がないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾と野島が国会議員等との接触を図

り、その際、相手方から番組作りは公正・中立であるようにとの発言がなされたという

ものであり」と、NHKが政治家に番組について説明したことの状況を明確な言葉で指

摘し、「松尾と野島が相手方の発言必要以上に重く受け止め、その意図を付度してでき

るだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、そのよ

うな形にすべく本件番組について直接指示、修正を繰り返して改編が行われたものと認

められる」と、政治家との

面会が改編に繋がったこと、NHKが政治家に過剰に反応したことを認めました。

 NHKは判決に対するコメントで「政治的圧力は認められなかった」としていますが

、これは誇張的誘導的な判決のすり替えです。政治家の話に過敏に反応して改編を繰り

返したということは、NHKが政治家の話を圧力と受け止めたということです。NHK

のこのコメントは、安倍・中川氏らに対する釈明以外の何ものでもなく、このコメント

を見れば、NHKが未だ視聴者・市民ではなく政治家に顔を向けていることは明らかで

す。

 

■説明義務違反について

 バウネットは取材依頼時に説明された内容と違う番組を作るならば取材協力者に説明

するべきであったと主張してきました。もし、放送されたような番組になることが分か

れば、取材協力をやめることや映像の使用を拒否する選択肢もあったのです。そのため

、説明を怠ったことによりバウネットの「自己決定権」が侵害されたと主張しましたが

、それについて判決は、放送された番組がバウネツトに説明された内容と「相当かけ離

れた内容となることとなった」と認定し、「バウネットは説明を受けていれば、自己決

定権の一態様

として、番組から離脱することや善処方を申し入れたり、他の報道機関等に実情を説明

して対抗的な報道を求めたりすること等ができたが、被告らが説明義務を果たさなかっ

た結果、これらの手段を採ることができなくなったのであり、その法的利益を侵害され

たというべきである」と、説明義務違反を明確に認定しました。

 

 まだまだ書きたいことは沢山ありますが、是非とも、この判決を皆様にじっくり読ん

でいただき、皆様からも判決評価を頂きたいと思います。

 

■今後の運動提起

 NHKは即日上告したようです。高裁では制作現場の長井さんや永田さんにより生々

しい改編の実態が証言され、改編の異常性は誰にも否定できるものではありません。判

決の丁寧で詳細な認定に向き合おうとせず、更に争うというNHKの姿勢は、NHKが

自ら政治家との強すぎる関係に決別する意思のないこと、放送の自律を自ら手放すもの

であることを示しています。

 皆様、どうか上告したNHKの姿勢に対して抗議の声を沢山寄せてください。また、

素晴らしい判決を書いた南敏文裁判長に、感謝の声を寄せてください。裁判官に「圧力

」が向わないか心配です。そのためにも、是非、市民の支持を伝えていただきたいので

す。

 集会では、安倍氏に対する罷免要求などの動きを作るべきではという声もありました

。また、不誠実なNHKの態度に対して、橋本会長の責任を問うべきだとの声もありま

した。バウネットとしても今後の運動について議論をしますが、皆様も、どうぞ、それ

ぞれ声を上げ、行動を起こしてくださいますよう、お願い致します。

 

 皆様のご支援・ご声援に、心から感謝をこめて

 

 

3−2 番組改変 NHKに賠償命令

       東京新聞 1/30

 

東京高裁

 従軍慰安婦問題の特集番組に改変があったとして、取材に協力した市民団体「『戦争

と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネット)がNHKと制作会社二社に計四千

万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が二十九日、東京高裁であった。南敏文裁判

長は制作会社一社に百万円の賠償を命じた一審東京地裁判決を変更、NHKと制作会社

二社に計二百万円の支払いを命じた。南裁判長は「NHKは制作会社を排除し、担当者

の制作方針を離れてまで、国会議員などの意図を忖度(そんたく)して当たり障りない

ように番組を改変した」と指摘した。NHKは即日、上告した。

 

■NHK即日上告

 

 南裁判長は判決の中で「憲法で保障された編集権限の乱用で、自主性、独立性を内容

とする編集権を自ら放棄したに等しい」とNHK側の編集姿勢を厳しく批判した。

 

 判決はまず、「取材経過などに特別な事情がある場合、番組編集も一定の制約を受け

、取材対象者の番組内容に対する期待と信頼は法的に保護される」と一般論を示した。

 

 NHK側が番組を改変した経緯に照らし、「周到な取材と市民団体側の協力を考慮す

ると、(番組の柱となった)『女性国際戦犯法廷』の過程を客観的に概観できる内容に

なるとの期待を抱いたという特別な事情がある」とした上で、「実際は改変されて期待

と信頼を侵害する内容になった」と賠償責任を認めた理由を述べた。

 

 番組改変については、「放送当日には、放送総局長が元慰安婦の証言シーンなどの削

除を指示した」として、NHK上層部の主導で行われた経緯を認めた。

 

 また南裁判長は、「番組が事前の説明とかけ離れた内容になるとの説明を受けていれ

ば、市民団体側は番組からの離脱や善処を申し入れることもできた」とNHKの説明義

務違反も認定した。

 

 控訴審では、市民団体側が、安倍晋三首相(当時は官房副長官)らの名前を挙げて「

政治家が番組に対し、直接指示をして介入した」と主張。政治家の関与も焦点となった

が、南裁判長は「NHK側との面談の際、政治家が一般論として述べた以上に、番組に

関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と番組への直接の関与は認めな

かった。

 

<メモ>NHK番組改変問題 NHK教育テレビは2001年1月30日、シリーズ「

戦争をどう裁くか」の2回目として、従軍慰安婦問題をめぐる「女性国際戦犯法廷」を

取り上げた「問われる戦時性暴力」を放送したが、取材に協力した市民団体は同年7月

、内容が当初の説明と大きく異なり、番組は改変されたとしてNHKなどに損害賠償を

求めて提訴。朝日新聞は05年1月「政治的圧力で改変」と報道した。政治家とNHK

は否定し、朝日新聞が設置した「NHK報道委員会」は同年9月「政治家がNHK幹部

を呼んだ」と報じた部分について「取材が十分だったといえない」との見解を示した。

 

■NHK広報局の話

 

 判決は番組編集の自由を極度に制約するもので、到底受け入れられない。NHKは放

送直前まで、放送法の趣旨にのっとり、政治的に公平であることや、意見が対立してい

る問題について、できるだけ多くの論点を明らかにするため、公正な立場で編集を行っ

た。裁判所の判断は不当で承服できない。