横浜市大、学長が構成員に英語を「強制」 「意見広告の会」ニュース415より抜粋(2007.5.15)

 

 

「意見広告の会」ニュース415

 

** 目次 **

1 横浜市大 学長が構成員に英語を「強制」

1−1 市大一組合員の声 

              学長は日本語で

1−2 19年度組織目標提示についての質問状

              横浜市立大学教員組合執行委員長 5/2

1−3 学長回答

       学長 ブルース ストロナク 5/10

1−4 永岑三千輝氏の最新日誌より

       http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm 

1−5 学長メッセージへの抗議

              横浜市立大学教員組合執行委員長 5/15

1−6 事務局より

       5/15

 

 

***

1 横浜市大 学長が構成員に英語を「強制」

1−1 市大一組合員の声

       学長は日本語で

 

いよいよ教員評価制度が始動するのか、各教員に「教員評価システム」にログインする

ためのIDとパスワードが配布された。どのようなことが書いてあるのかと思い、ためし

にログインしてみた。そして「学長の目標」ボタンをクリックした。するとストロナク

学長の19年度の組織目標が“英語”で表示された。一部、日本語の単語は混じってい

るものの、基本構文は英語である。

 

そういえば、3月の評価システム説明会の冒頭で学長からの話があったが、すべて“英

語”であった。このとき配布された説明資料の冒頭の文章「Statement on faculty eva

luation」も全文英文である。また4月にはいって開かれた研究院全体会議であったか

、学部教授会であったか、その冒頭での学長からのメッセージもすべて英語であった。

 

いつからこうなったのだろう。それともはじめからだったのか。

 

学長はすべての学内構成員は、学長の喋る、あるいは書いた“英語”を問題なく理解で

きると考えているのだろうか。それとも、問題なく理解できるべきである、と考えてい

るのだろうか。TOEFL500点を学生に課している大学の教員は、すべての構成員が学長の

英語をすんなり理解すべきである、とでも考えているのだろうか(そのような議論がな

された記憶はない)。

 

現実的には、私を含めて、理解するのに困難を覚えている学内構成員も少なくないと思

う。少なくとも、日本語でしっかり語ってもらったほうが分かりやすいと思っている人

のほうが多いのではないか。

 

学長は、今回の教員評価制度がすべての学内構成員にとって非常に重要であり、大学の

発展のために必要であると信じているなら、日本語を母国語として生きている構成員(

それが圧倒的多数である)には、きちっとした日本語でそのことを伝える義務があると

私は思う。この問題に限らず、学長が自分の考えをきちっと学内構成員に伝えたいと望

むなら、やはり日本語でそのことを伝える必要がある。

 

一組合員より

 

 

1−2 19年度組織目標提示についての質問状

              横浜市立大学教員組合執行委員長 5/2

 

公立大学法人横浜市立大学学長

ブルース・ストロナク様

 

   横浜市立大学教員組合執行委員長   永岑三千輝 

                     2007年5月2日

 

19年度組織目標提示についての質問状

 

 5月1日に各教員に対して、「教員評価委員会事務局(人事企画担当)」名で、教員

評価について、インターネットサイト内において提示されている組織目標を見たうえで

各自の個人目標をサイトに記入することを求める文書が届けられました。記入の期限は

5月18日「厳守」とされています。

 

 このような文書を突然、学長による説明文書等もなく個別教員に送りつけたこと、期

限の設定、内容には大きな問題があります。

 

 今般の19年度組織目標の提示に関する以下の点についての質問に対し、当局提示の期

限の緊迫性にかんがみ、下記の期限までに回答を求めます。

 

1.              そもそも、本年3月の当局の説明会文書では、3月中に学長等の目標

が提示されることになっています。しかし、5月にいたるまで提示されませんでした。

それはなぜでしょうか。学長の組織目標は、学部長、コース長などの組織目標の作成前

に、十分な日程的余裕をもって、広く教員全体に示すべきですが、提示の遅れた理由を

日本語で説明してください。

 

あわせて、組織目標もなぜ日本語で明確に示さなかったのかに関して、説明を求めます

。組織目標の提示が日本語で明確になされなかったことが、今回の遅延の重要な原意で

あるとも考えられるからです。

 

2.              専攻長等の目標に、空欄が見られます。 目標提示を受け、教員は

十分に考慮して、記入すべきであるにもかかわらず、空欄のまま提示しています。5月1

8日までと期限をきった責任は学長にあると思われますが、どのようにお考えでしょう

か。空欄にしておくとの考えの専攻長のお考えにも正当な理由があるかとも思われ、空

欄にしている専攻長等のお考えも含め、日本語での文書による釈明を求めます。

 

3.              こうした組織目標が、はたして、大学の自治・学問の自由の見地か

ら、「Self Development」の見地から問題がないかどうかこそが、重大問題です。その

検討のためには、すでにこの 間、教員組合などが指摘しているように、昨年度の半年

間の試行の結果の、問題点の洗い出し、総括・反省などが示されていることが必要です

。昨年度の総括・反省等を早急に文書でお示しいただきたい。

 

4.              そもそもこうしたシステムを稼動させるためには、一次評価者、二

次評価者、そして学長など自らが、自らの評価において、何をどのように行ったのか、

率先垂範すべきであります。下部に行動を求めるならば、管理職がまず模範を示すべき

であります。そのことが何ら示されることなく、一般教員に評価への参加を求めること

は、教員全体の不信感を招くものです。いうまでもなく、説得力ある行動に裏付けられ

た説明を欠如した上からの強制は、内発的意欲を押さえつけてしまいます。昨年度の総

括を率先して提示しないままで、一般教員に評価制度への参加を求める理由を日本語文

書でお示しいただきたい。

 

一般教員の目標設定の期限は18日となっていますが、上記の諸理由からしても到底期限

内に記入することは不可能でしょう。学長・学部長等の目標提示が1ヶ月以上遅れたこ

とからして、教員の目標設定が仮に行われるとしても、一ヶ月以上の余裕が必要でしょ

う。    今回の学長等の組織目標提示から、教員への目標記入を求める文書の提示

(連休の真っ只中の5月1日)までの期間の短さ、さらに、連休明けから提出期限までの短

さのため、この要望書の回答にも、切迫した期限の設定が必要となります。

 

この質問状に対する学長回答を得て、一般教員が考慮する時間が必要であり、上記に関

し、5月9日夕方までに回答を求めます。

 

 以上。

 

 

1−3 学長回答 

       学長 ブルース ストロナク 5/10

 

19年度組織目標提示についての質問状に対する回答

1 

Thank you for your letter of May 2,2007.  Before I respond to your main points

 in Japanese,I would like to write a few words in English about my use of Engl

ish. I have often been told that  because this is a Japanese university I shou

ld always use Japanese,but I think this misses the point. This is a Japanese u

niversity and our primary language is Japanese. However,I also use English bec

ause this is a Japanese university and Japanese universitise must increase the

ir use of English and their English proficiency. This is especially true for Y

CU as one of our mission is  国際教養教育. We have instituted a policy requir

ing English language proficiency for all students at YCU., the president is a

native speaker of English and therfore it is fitting that the President occasi

onally uses English in the administration of the university. I appreciate your

 understanding of this matter.

 

2 コース、専攻、診察科などの組織目標のうち、まだ提出されていない組織目標があ

りますが、……(以下、日本語 組合HP参照) 

   組合HP:http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm

3、4、5 略

 

 

1−4 永岑三千輝氏の最新日誌より

      http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm 

 

5月10日 今朝、学長からの文書回答があった。きわめて不十分であるが、事態の緊急

性に鑑み、こちらが申し入れた回答期限を少し過ぎただけで、ひとまずの回答を得られ

たことは、喜びたい。学長サイドの真剣さの一つの証であろう。

 

しかし、「日本語で」とこちらが求めているにもかかわらず、英語で回答するというの

は失礼千万。英語回答を正当化(この箇所だけが学長執筆であろうと思われる)する学長

自身の態度は、傲慢であり、他面では権力に基づく「甘え」であろう。TOEFL500点問題

で苦しむ学生のことをどのように考えているのか?

 

日本における公用語は、言うまでもなく日本語である。

 

学長が示す方針が明確であるためには、みずから、自らの主張を日本語できちんと返事

すべきである。この不誠実な態度は、許せないといわなければならない。

 

世界史における幾多の紛争問題は、言語問題に端を発する。

 

公的文書がいかなる使用言語であるかは、決定的に重要なことである。自分自身が書く

部分は英語でという学長の態度は不遜、といわなければならないだろう。

 

個々の項目に関しても、回答は誠実なものではない。「管理職は率先垂範を」という言

葉の意味が理解されてはいないようである。

 

学長自身が自ら昨年どのような目標を立てたのか(研究、教育、学内業務、社会貢献の

各分野で)、自らのSDシートとその達成度を示す文書を日本語で示すべきなのである。

 

 

1−5 学長メッセージへの抗議

              横浜市立大学教員組合執行委員長 5/15

 

公立大学法人横浜市立大学学長

ブルース・ストロナク様

 

横浜市立大学教員組合執行委員長

永岑三千輝

2007年5月15日

 

学長メッセージへの抗議

 

 学長職にある公文書は、日本では、日本語でなされるべきであります。したがって、

学長の目標提示文書(教員評価システムに記載された文書)等も、はじめから公文書とし

て日本語でなければなりません。

 

 公文書としての要件さえ満たさない文書類を掲げながら、SDシートへの記入期限に関

しては、脅かしとも思われる文言で全教員に記入を求めています。しかも、英語原文と

日本語文書(公文書)とには齟齬があり、教員の神経を逆なでしています。

 

 こうした高圧的な不当な態度は、大学にあっては決して許されるものではありえませ

ん。

 

 公文書としての要件を整えてから、期限を再設定すべきであります。

 

 5月18日の期限に関しては、公文書としての要件を欠如する学長文書からして、無効

といわなければなりません。また、公文書であれば、パソコンを使用しない教員を含め

た全教員への周知徹底が必須の前提要件です。この要件も満たしていません。

 

 パソコンで情報にアクセスできる教員だけに、特定の文書(評価にかかわる利益不利

益に関わる文書)を送りつけることは、教員集団への差別措置であり、これまた断じて

容認できません。今回のような学長文書は、確実に全教員に渡るよう、また、十分な時

間的余裕をもって配布すべきものです。

 

 教員に求める公文書として必要な根本的前提条件を満たしていないにもかかわらず、

SDシートに記入しないことをもって「最低の評価となる可能性がある」などというのは

、到底許されることではありません。

 

すでに提出している質問状に対する誠実なご回答もないままの、学長メッセージ(5月9

日付となっていますが、われわれには5月11日夜21時半に配布されたことも不可解です)

は、私ども教員組合に対しても失礼千万と考えています。

 

教員組合の第二回質問状・要求書に速やかにご回答いただき、公開されることを求めま

す。

 

 以上、ここに厳重に抗議します。

 

 

1−6 事務局より

 

 すべてのナショナリティー・言語は、対等であり平等に敬意が払われるべきものであ

ります。それゆえ、ある言語の他言語に対する押しつけ、またある言語自体に対する言

われなき中傷などは許されるものではありません。

 権限を行使しうる”native speaker”の、行使されるものに対する行使者母語の使用

は、言語の対等性・平等性を破壊します。植民地主義時代によくみとめられた「特定言

語使用の強制」に当たるからです。

 英語教育に英語を使用することは当たり前です。しかし横浜市大において、事柄は英

語教育を超えて、”the administration of the university”に及んでいます。ストロ

ナク学長は、統治のための言語には統治者の母語がふさわしいと考えているのでしょう

か。

 かつての植民地朝鮮での学校教育言語は、「教育的配慮」によって日本語でした。横

浜市立大学における「英語の強制」は、京城帝国大学における「日本語の強制」を連想

させるものがあります。

私たちは、旧植民地朝鮮における従軍慰安婦問題、石原東京都知事のフランス語侮蔑発

言などと同様の事例として、市大における英語強制を捉えてゆく必要があるのではない

でしょうか。