ワイセツ首長のハレンチ連続追及第5弾 中田宏横浜市長「消えた選挙資金1000万円」と「税金ネコババ」疑惑 市民団体が刑事告発へ 『週刊現代2007年12月22-29日号』

 

ワイセツ首長のハレンチ連続追及第5弾 中田宏横浜市長「消えた選挙資金1000万円」と「税金ネコババ」疑惑 市民団体が刑事告発へ 『週刊現代2007年12月22-29日号』

 

「指入れ合コン」「黒い人脈」「公務放棄キャバクラ豪遊」「前市長未亡人の告発」――市民派市長の醜聞は尽きることがない。今回は、昨年圧勝した市長選の選挙資金にかかわる「公選法違反」と政治資金パーティーでの「公金横領」、このふたつの疑惑についてお伝えしよう。 本誌記者 佐伯誠一

 

 

 「これは選挙資金の虚偽報告ですね。明らかに公職選挙法違反です。悪質で重大な問題です。刑事告発も検討したいと考えています」

 中田宏・横浜市長(43歳)に関する資料を前にして、市民団体「政治資金オンブズマン」の上脇博之(かみわきひろし)・神戸学院大学教授は断言した。

 本誌はこれまで4回にわたって中田氏の素顔を暴いてきた。合コンの席上でのワイセツ行為、海外公務をサボってのキャバクラ遊び、有力支援者の公金横領疑惑、"恩師"である前市長の未亡人からの告発、と次々に彼の首長にあるまじきハレンチな行状が明らかになったのである。対して中田氏側は「記事は事実無根」として本誌を提訴し、11月4日には「刑事告訴した」と発表している。だが、今回、中田氏のカネにまつわるさらなる問題を私は掴んだ。

 舞台となるのは昨年3月に行われた横浜市長選である。中田氏は、自民、公明、民主の支持を得て、圧勝。見事再選をはたしている。

 選挙期間中、中田氏はガラス張りの選挙カーで遊説に回るなど「クリーン」で「市民派」のイメージを全面的に押し出した選挙戦を展開したが、その裏側で1000万円もの選挙資金が消えていたのである。

 この市長選挙の費用を報告した「選挙運動費用収支報告書」で中田氏は合計1330万1800円の収入を計上している。その中に、このような記述がある。

〈「中田ひろし事務所」(中田氏の政治団体)からの寄附金=330万1800円〉(写真下太枠内参照)

 ところが、「中田ひろし事務所」の06年度「政治資金収支報告書」支出欄には、政治活動費としてこう記してあるのだ。

 〈中田宏への寄附金=1330万1800円〉(写真上はその「政治資金収支報告書」に添付された領収証)

 つまり、カネを受け取った側(中田氏)と、カネを出した側(「中田ひろし事務所」)でまるまる1000万円も金額が違っているのである。言うまでもなく、選挙運動にかかった費用の明細を、「選挙運動費用収支報告書」で提出することは、公選法によって義務づけられている。1000万円をごまかして報告したのならば、明白な違法行為である。「公選法第246条によって、虚偽記載した場合には懲役3年以下もしくは罰金50万円以下の罰則が課せられます」(前出・上脇氏)

 

「脱税」「裏ガネ」「領収証偽造」

 

 「中田ひろし事務所」と横浜市役所報道担当課長に取材を申し込んだが、

 「係争中なので一切の質問は受け付けません」(中田ひろし事務所)

 「(係争中につき)市の業務内容に関する問い合わせもすべて受け付けません」(報道担当課長)

 という返答だった。質問することも拒否されたのだ。

 結局、選挙資金1000万円はどこに消えたのか。以下4つの可能性がある。

@「選挙運動費用収支報告書」の記載ミス。「1」という数字を書き落としただけ

A「政治資金収支報告書」の記載ミス。誤って「1」という数字を書いただけ

B自分のポケットに入れた

C裏ガネとして処理した

 まず@であった場合、「中田ひろし事務所」から実際に1300万円余が寄附されたことになる。

 「中田氏が『選挙運動費用収支報告書』を訂正して、収入は1000万円多かったという主張をした場合、収入の合計は約2300万円になります。一方、『選挙運動費用収支報告書』の支出欄を見ると、市長選で中田氏が使った費用は約900万円です。1000万円以上が残ったことになりますが、残ったカネが何に使われたのかという疑問がありますね」(上脇氏)

 横浜市選挙管理委員会によれば、

 「選挙費用でおカネが残った場合、一般的には侯補者は自分の後援会に個人献金することが多いようです」

 という。しかし、06年度の中田氏に関連する18の政治団体すべての「政治資金収支報告書」をつぶさに調査したが、中田氏が選挙費用の残金、もしくは1000万円を"還流"寄附した形跡は見あたらなかった。

 つまり、本誌報道後、中田氏が「選挙運動費用収支報告書」を訂正しようが"消えた1000万円"の行方は明らかにならない。

 続いてAの場合、実際に選挙費用として寄附されたのは、330万1800円だったことになる。これは"消えた1000万円"など最初から存在せず、政治資金規正法違反ではあるが、単純ミスだったという説明ができる。しかし、そうなると「中田ひろし事務所」が「政治資金収支報告書」に添付した領収書(前ぺージ写真上)はどう説明するのか。領収書には中田氏の印鑑が押されており、金額も印字されたものだ。領収書は偽造されたものと考えるのが妥当である。もちろん領収書偽造も違法である。

 そもそも「中田ひろし事務所」の会計責任者Aさんは、中田氏の選挙運動の出納責任者でもある。つまり、「政治資金収支報告書」と「選挙運動費用収支報告書」は同一人物が書いたものなのだ。したがって単なる記入ミスという言い訳自体が成立しにくい。

 「中田氏は、Aさんに責任転嫁して、自分は知らなかったと言うかもしれません。しかし、そのような責任逃れをしても、社会通念上通らない。屁理屈ですよ」(上脇氏)

 Bの場合を考えてみよう。06年の資産公開で中田氏が明らかにしているのは、市長の給与と雑収入であり、この雑収入は、412万5221円と"消えた1000万円"にはほど遠い。万一、所得申告をしていなければ、脱税である。また、政治団体から個人への寄附は、選挙費用にのみ使い道が限定されているため、自分のポケットに入れた時点で、政治資金規正法に違反する。

 もちろんCの1000万円を裏ガネにした場合は、公選法違反となる。

 「いずれにしろ、この1000万円は使途不明金で、裏ガネになった疑いがきわめて濃いと思います」(上脇氏)

 中田氏は記入ミスなどとするのではなく、1000万円の使途を明らかにする義務がある。

 

市民の"血税"を政治資金に

 

 この市長選にかかわる中田氏の政治資金についてはもうひとつ重大な疑惑がある。12月6日、新聞・テレビ数社が「中田市長の政治資金パーティーに地方公務員である消防署員がかかわっていた」と報じたのだ。公務員が政治資金パーティーに関与すれば、地方公務員法および政治資金規正法違反である。

 問題のパーティーは05年4月26日に開かれた「横浜を発展させる集い」(次ぺージ写真右参照)。パーティーには250名もの横浜市の消防団員が参加していたが、彼らの参加費のとりまとめなど、事務作業をおこなったのが、消防署職員だった。しかも、このパーティーを主催した中田氏の政治団体「翔(はばた)けヨコハマの会」の代表・藤木幸夫氏(77歳)は、本誌11月17日号で公金横領した疑いがあると報じた中田氏の有力支援者だ。同氏は「尊敬する人物は、田岡一雄・山口組三代目だ」と公言する人物でもある。

 この報道に対し、中田氏は「今回の件は初めて知った。きちんと事実関係を把握したい」などと話している。まるで、中田氏の知らぬところで消防署員が"自発的"にパーティーに関与したかのような説明だ。

 しかし、中田氏の発言は消防署員への責任転嫁にほかならない。じつは本誌は報道前日の12月5日"消えた1000万円"の件とともに、このパーティーの問題について、横浜市および中田氏の事務所に取材をしている。前述のとおり回答はなかったが、本誌は、パーティー開催直前の3月22日付けの内部文書を入手していた(写真左)。横浜市西消防団長が、パーティー券11枚を購入するよう団員らに依頼する内容だ。その文末にはこうある。

 〈何かとご都合・ご不満等多々あることとは存じますが、諸般の事情を考慮して頂き、ご協力の程よろしくお願いします〉

 はたして消防関係者の自発的な関与なのだろうか。川辺芳男・横浜市議は言う。

「市長はすべて消防側に責任をなすりつけようとしていますが、ありえない話。パーティーの発起人名簿には、横浜市消防団長会の名前だってあるんですから。市長に言われたら、消防署員は断れないですよ」

 さらに本誌はパーティーに出席した、ある消防団員から話を聞いている。

 「団長から『中田市長の政治資金パーティーに自分の代わりに参加してくれ。参加費1万円は、分団の補助金から出すから、顔だけ出してくれればいい』といわれました。当日、パーティ会場に知り合いの団員が何人も来ていたので『参加費は自腹で払った?』と聞いてみると、誰も自腹では払わず、市の補助金で払った、ということでした」

 実際、パーティに参加した10の消防団の参加費は、個人の支払いでなく、団の口座から支払われている。団の口座には、市の血税から支出された消防団への活動奨励費も入っている。消防団員は続ける。

 「各分団には、消防訓練などの費用としてそれぞれ年間数十万円の補助金が入ります。この補助金が市長の政治資金になっていたんです。これは、市民の血税をネコババする行為ではないでしょうか。私も同僚の消防団員も、中田市長を許せないと思っています」

 若林智子・横浜市議が憤慨して語る。

 「消防団の件が事実ならば公権力の私的乱用です。彼は横浜市を自分の財布替わりだと思っているんじゃないですかね。また、1000万円の話ですが、国政に行くためにおカネが必要だったのでしょう。市民の生活は市長のパフォーマンスの道具です。許せませんね」

 読者はもうお分かりだろう。中田氏に公選公職人の資格はない。

 

(写真説明) 中田氏への1330万1800円の寄附を示す「中田ひろし事務所」の政治資金報告書に添付された領収証(上)。選挙運動費用収支報告書では330万1800円しか計上されていない(下)

 

(写真説明) 中田氏が選挙活動を隠れ蓑に裏ガネを作っていたとなれば、83万票を投じた市民は手放しで喜ぶことができないはずだ

 

(写真説明) 消防団員に向けて資金パーティーの会費を消防署に納入するよう指示した依頼書(左)と藤木氏の名が記されたパーティーへの参加案内(右)