ワイセツ首長のハレンチ連続追及第6弾 横浜市長中田宏「不正事務所費3000万円」 『週刊現代2008年1月5・12日号』(2008.1.5)

 

 

ワイセツ首長のハレンチ連続追及第6弾 横浜市長中田宏「不正事務所費3000万円」 『週刊現代2008年1月5・12日号』(2008.1.5)

 

 市議会でも、新聞紙面でも本誌の指摘が俎上に 

 

「指入れ合コン」「黒い人脈」「公務放棄キャバクラ豪遊」「前市長未亡人の告発」「選挙資金にかかわる不正」――市民派市長の醜聞、今回とりあげる問題は、かの“バンソウコウ王子”こと赤城元農水相らが厳しく批判されたのと同じ中身だ。たった18坪、ビルのワンフロア―になんと8つの政治団体「事務所」が入居し、相場より3倍も高い家賃を過剰に計上していた。 本誌記者 佐伯誠一

 

 本誌はこれまで5回にわたって横浜市長・中田宏(なかだひろし)氏(43歳)の素頗を暴いてきたが、ここにきて全国紙やテレピなどの各メディアも彼を追及する姿勢を見せている。12月7日の横浜市議会でも、中田氏の政治資金パーティーにおいて市の職員である消防署員が会計事務に関与していた「パーティー券問題」について、市議から質問が相次いだ。が、中田氏は「調査して説明する」と言い逃れに終始した。

 

 今回、私は、そんな中田氏の新たなカネにまつわる疑惑を掴んだ。中田氏の主な政治団体の政治資金収支報告書を過去3年間にわたって徹底調査したところ、「不正事務所費計上」の疑惑にたどりついたのだ。またその手口は、本誌が指摘、大臣辞職にまで追いつめた"バンソウコウ王子"こと赤城徳彦(あかぎのりひこ)元農水大臣の手口と酷似したものであった。赤城氏は活動実績のない自宅を政治団体「事務所」として登録し、架空事務所費を多額計上。自宅に住む赤城氏の母に本誌が直撃すると「(ここに)事務所はない」と否定したが、その後問題が各メディアで騒がれると、「事務所の活動はあった」などと前言を翻す大ウソまで飛び出した。

 新横浜駅から徒歩8分ほどのところにある『新弘(しんこう)ビル」(9階建て・築16年)の3階フロアーには、中田氏の主な8つの政治団体が同居している。登記簿によると、同フロアーの床面積は、60・38u、約18坪。政治資金収支報告書に記載されている8団体の「事務所費」は、平成18年度には合計約1160万円になっている(左表)。新横浜駅近くという好立地とはいえ、20坪に満たないオフィスの家賃が年間1160万円(月額約96万円)というのは高額すぎるのではないか。

 新横浜駅近くで営業する地元の不動産業者は言う。

 「新横浜駅から徒歩5分で仮に20坪の賃貸事務所なら、一番グレードの高い物件でも家賃は坪あたり1万5000円ほど。徒歩10分だと1万円を切ります。その広さで月額96万円なんて高値はありえない」

 さらに、疑惑は深まる。政治資金規正法によると、事務所費は家賃、保険料、電話代など「事務所の維持に通常必要とされるもの」とある。事務所費がすべて家賃だとすると、3年で約3000万円(左表)、相場の3倍もの金額を支払ったことになる。しかし、当該事務所の家賃相場は、高くても1年間で360万円。となれば、平成18年には、〈1160万円−360万円=800万円〉を電話代などに使用、また、平成17年、平成16年には8団体合計の同事務所費が約1100万円、880万円計上されているので、3年間で合計2060万円ものカネが家賃以外に使われていることになる。一般的には事務所費の大半を家賃が占める。では、この使途不明の大金が計上されているとなると――。

 「このようなカネは私的使用、裏ガネ作りに利用されている可能性がある。また、不透明な会合費などをここで処理しているとも考えられます」(市民団体『政治資金オンブズマン』の上脇博之(かみわきひろし)・神戸学院大学教授)

 しかも、疑惑はこれだけにとどまらない。私が、実際に当該ビル周辺を取材して回ると、8つの団体のうち7団体はほとんど活動実態がないぺーパー団体に等しく、「架空事務所費計上」の疑惑が浮上してきたのだ。架空の事務所費を、しかも、過剰に支払っていたとなると、まさに赤城氏とまったく同じ手口だ。

 政治資金収支報告書によると、同居する8団体のうち、「小田原恵美子」という女性が会計責任者となっているのが7団体、同報告書の事務担当者の欄には、すべて「小田原恵美子」の名前が記載されている。

 しかも、8団体とも、電話番号はすべて同じで、この番号に電話すると「中田ひろし事務所です」と応対する。ビルの入り口にある看板には「中田宏事務所」とだけ表記。同報告書によると、光熱水費を負担するのも「中田ひろし事務所」1団体のみだ。上写真のように事務所内に仕切りはなく、小田原氏と思しき女性が一人フロアーにいた。

 「仕切りがない、看板がない、電語番号が同じ、事務担当者も同一人ということであれば、『中田ひろし事務所』1団体を除いて、あとはぺーパー団体に等しいといえるでしょう。合計すると非常識な額になる事務所費を隠蔽するためにあえて団体を分けていると考えられます」(前出・上脇氏)

 活動実態がない政治団体を登録すれば、政治資金規正法の虚偽報告にあたる。事実関係を確かめるべく、当該事務所を訪問、直撃した。インターフォン越しに小田原氏と思しき女性が対応に出た。

 ――(8団体が計上している)高額な事務所費について明らかにして頂きたい。

「いまおっしやっている8団体っていうのは、こ、ここが……ここが住所になっているのでしょうか?」

 なんと彼女白身、8団体の存在を把握していなかった。続けて質すと、彼女は終始、狼狽した様子で、不明瞭な回答を繰り返した。

 ――事務所の会計担当者であるご自身が把握されていないのですか。

 「そういうことではなくて、あのぉ、家賃だけではありませんので。郵送料とか、私ども会報もだしていますので、はい」

 ――(事務所費の)半分以上が郵便代や電話代ということでしょうか。

 「いや、正確なのはちょっと……。あの、もうこれ以上お答えしないように言われていますので」

 そしてインターフォンが一方的に切られた。横浜市議の伊藤広貴(いとうひろたか)氏は言う。

 「駅前で演説をしていると、どの駅でも『市長の一連の問題はどうなっているんだ』と市民に聞かれる。相当な数の市民が市長の説明に納得していないのです」

 不明朗な会計処理が明らかになった今、中田氏には明確な説明責任がある。

 

 

(表) 新横浜駅近くの『新弘ビル』に同居する中田氏の主な8つの政治団体と計上された事務所費

 

 

平成18年度

平成17年度

平成16年度

1

中田ひろし事務所

553万4790円

696万4290円

672万260円

2

中田ひろし支える会

76万880円

62万9280円

62万48円

3

未来経営研究会

70万8080円

70万680円

67万1920円

4

「中田ひろし」と

共に日本を

良くする万緑の会

 

194万1525円

 

177万4692円

 

63万1120円

5

横浜VOICE

125万7180円

22万1720円

 

6

宏友会

65万3220円

69万9024円

8万9940円

7

レディースの会

9万7895円

10万684円

8万3860円

8

宏援連合会

65万664円

 

 

 

合計で支払われた

事務所費

1160万

4234円

1109万

370円

881万

7148円

 

(写真説明) 中田氏の8つの政治団体が同居する3階フロア―(右)と入り口にある看板(左)