この1年を振り返って 永岑三千輝(横浜市立大学教員組合 前執行委員長)(2008.2.27)

 

横浜市立大学教員組合 

教員組合週報 組合ウィークリー より

 

 

「この1年を振り返って」

                     永岑三千輝 (前執行委員長)

 

 過ぎ去ってみれば、あっという間の一年間でした。

委員長就任直前に独立行政法人化対策委員になり、団体交渉に参加して、当局提示の新給与制度を検討し始めたときには、いったいどうなることかと思いました。仕事納めの前日というぎりぎりの時点で提案してくる当局の態度は、ひどいものだと思いました。それでも、副委員長・書記次長など旧執行部から継続の役員の緻密な分析、それに基づく頻繁な事務折衝の積み重ねで、何とか、基本給部分に関する合意に達し、退職金規定に関する合意なども含めて労使合意書としてまとめることができました(その合意書は、いまだに、サイボウズなどで公開されておりませんが、組合員の方は、あるいは組合に入ろうとする方は、組合事務室でコピーをもらってください。新しく採用された方など、自分がどうしてこのランクなのか、特に職務業績給のランク認定に関して、きちんと確認する必要があるでしょう。疑問の点は組合に相談し、基準やその適用の妥当性を検討する必要があると思います)。

 3月には、任期制不同意者3名の昇任も、ご本人たちの明確で強烈な抗議の意思表明と団体交渉における組合の働きかけもあって、勝ち取ることができまして、ホッとしました。

しかし、そのすぐあと、今回の昇任は特別扱いで、「今回限りだぞ」との特別メモが、これまで労使交渉問題に直接乗り出してこなかった理事長から出され、サイボウズに掲載されるという事態が起きました。それだけではなく、そのすぐあとには、4月昇任者の「経営的観点」なるものからする昇任拒否が発生しました。これと戦う必要があり、書記長がその準備をしていました。

しかし、ほぼ同時に、評価制度を何が何でも本格実施にもちこみたいとの法人当局の態度から、SDシート問題が発生しました。

SDシートは、各教員の自発的な能力開発のための一手段です。処遇に反省させる客観性の点では,根本的な問題があるものです。それが、5月連休の谷間に、突如として、「上から」押し付けられました。出さなければ最低の評価だ、との学長からの脅かしまでかけられました。こうした事態に抗議することに、夏くらいまで、精力を使ってしまいました。7月は、早くも役員の半分の交代ですから、総会準備などにも忙しい毎日でした。

新しい執行部が発足したのもつかの間、8月初めには、「任期3年」の教員に対する「更新手続き」の文書が、該当教員に送りつけられるという事態となりました。不安を抱える組合員のために執行部は立ち上がりました。

そもそも、いったいいつから任期が始まるのか、任期制に同意するか否かの「確認」をしただけで、任期に関する具体的な契約は結んでいないとほとんどの該当教員は思い込んでいました。そこで、任期の「始期」をいつとするかをめぐって、そして、あいまいな更新条件の精密化のために、労使交渉を行う必要が出てきました。夏休みにもかかわらず、その問題で、緊急の会議、団体交渉要求など、忙しい毎日でした。

この問題についても、河野書記長、村山書記次長による一ヵ月半ほどの粘り強い事務折衝の積み重ねがありました。そして、10月末の第二回目の団交で、合意書を取り交わすことができました。任期制教員の安全は、この合意書によってかなりの程度確保されたのではないか、と考えます。労使双方の担当者の議論の積み重ねに敬意を表し、感謝しているところです。

もちろん、日本国憲法でも、普通の法律でも、違反する事例はたくさんあるわけで、少しでも組合の気が緩むと、当局から圧力がかかり、不利な事態が発生するかもしれません。その危険を取り除くのは、組合執行部とその背後の組合員の不断の注意深い努力しかないでしょう。そして、任期更新条件の「客観的内容」、「客観的基準」を、しっかり、具体的につめていくという、気の長い、粘り強い交渉が必要でしょう。合意書の文言に安住することは許されず、イェーリングのいう「権利のための闘争」が、組合員と執行部には求められていると思います。

より積極的には、任期制教員の身分保障のために、また、任期制不同意教員に対する差別の阻止のために、テニュア制度をしっかりと構築していくことが求められています。これについても、河野書記長・村山書記次長の最後の奮闘で、かなりいい案ができつつあると思います。新執行部でこの仕事を引き継ぐ村山書記次長、そして、新たに執行部に加わった榊原委員長や高橋書記長のご奮闘を期待するものです。

委員長最後の段階で新たに発生したのが、ストロナク学長の唐突な辞任問題でした。教員組合は、SDシート問題、4月昇任該当者の昇任拒否問題、11月に発生した任期制同意強制問題など、ことあるごとに、学長に抗議してきましたので、そのことが原因のひとつだとは推測しましたが、法人側の当たり障りのない説明では「アメリカ人のドライな慣行」ということになってしまいます。しかし、われわれが抗議した諸問題は学長辞任で解決したのではなく、放置されたままです。したがって、新しい学長としてあるべき姿は何か、組合として、あるいは一般教員として、現在の制度でなしうることはなにか、いろいろと考え、個人的にも行動しました。そんなことで、1月以降、ストレスがたまったのか、胃潰瘍となりましたが、胃カメラで症状を確認し、薬を飲み始めて、痛みも和らぎました。なにより、ストレスの原因そのものが、あっと驚くような新学長誕生と委員長職のバトンタッチで、消失(ないし減少)しますので、春休みのうちには元通りとなるでしょう。

新執行部のもとに、組合員を増やして(現在、金沢八景キャンパスでは教員の8割以上が加入しています。さらに発言力をきちんと確保するためには、それ以外のキャンパス・部局でも構成員の過半数は必要でしょう)、当局からの圧力をきちんと跳ね返すだけの力量をつけつつ、大学を良くするために、大学における自由と民主主義を守り発展させるために、すなわち大学自治の主要な守り手としてご奮闘いただくよう、皆様のご活躍を期待しています。

この一年間、度重なる拡大執行委員会の招集に応じて議論に参加くださり、ともすれば弱気となり妥協的となるわれわれ執行部を叱咤激励してくださった独立行政法人化委員の皆様に感謝しつつ、今後の更なるご協力をお願いして、結びの言葉とさせていただきます。