「最後の大学職員守衛として」 ―― 内藤さんからのメッセージ 『横浜市立大学教員組合週報』(2008.12.22)

 

 

横浜市立大学教員組合週報

 

 組合ウィークリー

2008.12.22

もくじ

●守衛室の内藤さん・中村さんが本年度末で退職

 

 

守衛室の内藤さん・中村さんが本年度末で退職

 

内藤和保さんは本学医学部に技能吏員として3年金沢八景キャンパスの守衛室に30年の計33年間、中村隆明さんは医学部4年間と守衛室21年間の通算25年間にわたって勤務されました。お二人とも職員組合の活動に積極的に参加され、長い間教員組合との橋渡し役も果たしてくれました。 

守衛さんの仕事は教職員に対するものだけではありません。見学に来る高校生、非常勤講師やゲスト講師の先生方、関連業者等々への対応があります。休日には、プールなど施設の開放や各種の試験会場に大学校舎を貸している関係で、訪れる多くの市民に学内の案内等をしています。

なかでも重要なのは、学生への対応です。講義棟・研究棟に夜遅くまで残って勉強する学生やサークル棟の学生に対して、大学の教職員として接するのは守衛さんたちです。

今月、内藤さんが教職員あてにメッセージを作成中との話を聞き、本「組合ウィークリー」用にとくに短めに書いて頂いたものを、以下に掲載します。

この中で内藤さんが、学生は大学にとってお客様ではなく大学の構成者と書いてあることに目を開かされます。市大に入学した以上、市大生は単に大学のサービスを受動的に受ける対象ではなく、市大を改善・発展させていくための主体なのです。

 

「最後の大学職員守衛として」 ―― 内藤さんからのメッセージ

 来年度から守衛室の業務は全面的に警備会社が行うようになります。市大に20年、30年以上にわたって守衛として働いてきた同僚の中村さんと私が来年3月で定年を迎えるからです。私たち市派遣職員は市に所属してますので定年後は市関連の業務に嘱託職員として働くことになります。

 全国的に守衛業務が委託化されている状況のなかでよくぞここまでこれたかという思いがあります。ひとえに教員をはじめとする多くの方々に支えられてきたものと感謝しております。
 長期にわたって市大の守衛として働いてきたことによって、多くのことを学ばせてもらいました。昔と今とを比較すれば状況は大きく変化していますが、いつも大切にしてきたと思われる基本的なことをお伝えして、大学における守衛業務について考えていただけたらうれしいです。

 

 「職場を守る闘争を通して学ぶ」

 守衛室は定年制が導入された以後、退職者が出るごとに「欠員補充・民間委託反対!」の闘争をしなければなりませんでした。「第2臨調」による民営化路線によって最初に現業部門が委託化、合理化の攻撃にさらされました。市大では市大病院(現センター病院)、看護学校(看護学部の前身)の守衛や給食調理、清掃関係が委託化されました。定年制導入によって委託化に拍車がかかり、横浜市のどこの現業職場も欠員は不補充・民間委託化などが提案され、労使の攻防が噴出していました。市大では浦舟町にあった医学部の福浦移転にともなって現業部門は全面委託、残る金沢八景キャンパスの守衛室も2001年に3人の定年退職を機に夜間委託、その後は欠員不補充、委託の拡大となって推移しています。今や「構造改革路線」の元で、押し返す取り組みはできない状況です。現在の残る2名は委託業者から派遣されてくる人たちと業務をしてきました。定年を間近に控え、委託の人たちが業務をしやすいようにと整理しているところです、しかし、委託業務は3年ごとの入札があり、来年度も同じ業者なのかわからない状況にあって、守衛室の今後はどうなってしまうのか、皆目わかりません。

私たちは、数度の欠員補充闘争を経験するなかで、当時の教員、職員、学生、さらに市庁舎、各区役所などでもビラを配布しながら訴えたりもしてきました。教員組合もこの問題について「組合ニュース」を数回にわたって発行してくださり、8割以上の教員が署名をしてくださいました。大学だけでも1,800名以上の署名を集めることができたことは忘れられない思い出です。仕事をしていくうえで大きな励みとなっています。私たちはこの闘争を通して、大学職員の役割、大学に働く意味について認識を深めることになりました。

 大学の職員は、大学の機能(教育・研究)と運営に貢献していること。教職員は一体になって、学生に対処するのが大学だということです。守衛は大学で活動する教職員、学生などすべての人たちの活動に役立つことで“潤滑油”の役割を果たせることです。「守衛は大学の顔として、第一義的対応を旨として、威厳をもって対応してほしい。大学のイメージにも影響すること」だと言われてきました、しかし、背景に民営化路線が敷かれていたせいかミーティングもほとんどない状態での職場状況でした。欠員補充闘争などを通して、私たちは多くの方たちの支援を背景に、みんなに役立つ守衛室をめざして歩んできたと思います。

 また,市従大学支部(現「市大職員労働組合」)に執行委員を出して、大学の様々な状況を知り、情報不足の守衛室に反映してきました。より民主的に、安心して働けるように、教員の立場、学生の立場、職員の立場を尊重しながら職場運営をしてきました。大学の職員として、公立大学公務員として、いざというときに毅然として対応してくることができたと思います。なぜなら、私たちも大学の職員として尊重されてきたからです。

 

 「守衛室は市大の環境の一部です」

 金沢八景キャンパスの守衛室の特徴は、個人研究室や実験室の鍵を預かっていることとあいさつ行動にあります。

 鍵は教員の出欠確認にもなっていますが、鍵を手渡しすることで、あいさつを交わします。ときには軽口を交わしたり学生との関係での相談ごとなどを通して、教員の感覚に触れるなどの機会を与えてくれます。学生にも貸出対応を通じて顔なじみになり、コミュニケーションがとれて巡回にも役立っています。

 あいさつ行動は、守衛室からのすべての人たちに対する発信です。守衛に声をかけやすくする効果があります。事故などが起きたときに早期に伝えてもらえる、そして、いっしょに対処することが可能です。守衛が困っているときには手助けも期待できる、そういう関係をつくりだしてくれるのです。

 このことは全面委託になっても引き継がれてほしいことです。働く委託の人たちにとっては、よその現場と違って大量の鍵に驚くと思います。200本からの鍵の管理、常勤非常勤の教職員、院生・学生への鍵の受け渡しには顔と名前を覚えなければならないからたいへんです。間違ったら事件、事故につながりかねないからです。しかし、今後も市大らしさの一部を担っている守衛室としてがんばってほしいと思います。市大の環境の一部だからです。

 

 「みなさんの活躍に期待しています」

 私は守衛室に勤務する前に医学部で3年働いていましたので、市大には通算33年間勤めました。当初と今とでは雲泥の差がある大学の環境。施設的な外観的なことよりも、目には見えない雰囲気に強く感じます。単に昔はよかった、というのではなく、教職員と学生などの横のつながりがなくなったように思えます。かつては教職員・学生そして生協職員もいっしょに遊んだり、ボランティア活動をしたりしました。今は「新自由主義」、成果主義の間違ったやりかたが横行しているためか、世間も大学もぎすぎすとして、人が人として尊重されていない悲しい状況にあります。それなのに、昔は若者、その代表の学生が敏感に反応しましたが、いまはそれが期待できないことが寂しいです。学生は、大学の構成者というよりもお客様になっているようです。それでも大学がおかしい、と感じている学生はいるはずです。「いつかコップの中の水が溢れ出す」ような状態になるのではと内心は期待しています。

 私たち教職員の状況も厳しいものがあります。職場の欠員が出ても補充されない、非常勤や派遣にかわってしまうなど、ひそかにリストラが進行している状況にあります。職場の状況をよりよい状態にして安心して働ける職場環境を整えることは、学生の勉学環境の向上にもなることです。だれもがものをいえる職場環境を求めて、職場のあり方についてねばりづよく追求することが必要だと思います。理事長、学長、副理事長などトップの方たちが急に変わってしまうような信じられない状況にありますが、教職員の連携で乗り越えてほしいと思います。よりより市大づくりに向けてみなさんのご奮闘に期待しています。