スクープ追及第3弾 中田 宏横浜市長「廃棄」された公用車記録と「”脱税”企業から献金300万円」 『週刊現代2009年1月10・17日合併号』(2009.1.10)

 

 

スクープ追及第3弾 中田 宏横浜市長「廃棄」された公用車記録と「”脱税”企業から献金300万円」 『週刊現代2009年1月10・17日合併号』(2009.1.10)

 

さらに問題発覚「これでは税金泥棒だ!」

 

「飲酒運転」「公私混同」を告発した不倫相手の女性をフジテレビ、テレビ朝日も取材。「市政の私物化」と市議は公開質問状を提出、国会議員らによる街頭「弾劾」演説会も開かれた! 取材・文 本誌記者 三國利幸

 

 

「中田市長は、公用車を私的に利用するなど市政を私物化している。もうこれ以上、見過ごすことはできません!」

08年12月20日の±曜日、JR横浜駅西口前で、国会議員の江田憲司氏や7人の横浜市議たちが街頭演説を行い、一丸となって横浜市長・中田宏氏(44歳)の数々の不正疑惑を市民に訴えかけた―――

 

 本誌は、前々号(12月20日号)・前号(12月27日・1月3日合併号)で、中田氏と約2年間にわたって不倫交際をしていた奈々さん(30歳・名前は中田氏と出会った高級クラブでホステスとして働いていたときの源氏名)の告白を紹介してきた。

 以前から中田氏の不倫相手として横浜で知られていた奈々さんの告白は、「職権濫用」「公私混同」「違法行為」と、"市民派"市長という中田氏のイメージを覆(くつがえ)すものばかりだった。

 「デートでは運転手付きの公用車を何度も使用し、中田さんの待つホテルや、友達の家まで送ってくれた」「中田さんはデートでビールやワインを飲み、飲酒運転を繰り返した」

 奈々さんの告白は、市議会でも取り上げられた。また、事態の深刻さに鑑(かんが)みたフジテレビやテレビ朝日などの民放キー局や複数の新聞社が奈々さんに取材を行っているという。

 そんななか、本誌が報じた「中田氏が公用車をデートで私的に使用」していた件で新たな進展があった。

 なんと、05年4月から06年12月にかけての市長公用車運転手の「超過勤務命令簿」を横浜市が廃棄していたのだ。これは、早朝や深夜など通常の勤務時間以外に、中田市長が公用車をどう使ったかが分かる記録である。廃棄された期間は、04年夏から約2年間に及ぶ中田氏と奈々さんの不倫交際期間の後半部分と重なっている。これは単なる偶然なのか。ちなみに、中田氏が奈々さんとのデートに公用車を使っていたのは、ほとんど深夜の時間帯だった。

 「週刊現代の記事をきっかけに市会常任委員会が市側に提出を求めたところ、今回の廃棄が発覚した。そもそもこの超過勤務命令簿は、3年間の保存義務がある。市側は、他の廃棄すべき文書と混ぜて廃棄してしまった可能性があると説明していますが、これでは中田氏の疑惑が深まっただけです」(全国紙政治部記者)

 疑惑の当事者である中田氏は、12月17日の定例記者会見で、「なぜ書類の保管ぐらいできないのか。情けない」と、まるで他人事のように話した。だが、太田正孝市議は、さらなる問題点を指摘する。

 「奈々氏と中田市長の不倫期間の前半部分と重なる04年度の市長公用車運転手の超過勤務は1630時間にも及び、残業代だけで年間約600万円が支払われています。公用車運行記録と市長の行動記録が一致しないケースも見られます。奈々氏の言葉が真実なら、デートに公金を使っていたことになる。これでは税金泥棒ですよ」

 

 

黒塗リされた議事録の発言

 

 相次いで噴出する市長の問題に、横浜市議たちが、立ち上がった。まず中田市長に対して「公開質問状」を提出、続いて前述した緊急街頭"弾劾"演説会が開かれたのだ。市議たちは、「公用車の私的利用」にとどまらず、「特定企業との癒着」「後援会幹部への違法貸し付け」など、中田氏に纏(まつ)わる数々の疑問を問い糾している。

 この演説会で「癒着」を指摘された企業について、12月3日、読売新聞が、一つの不祥事を報じている。その内容は、不動産会社『リスト』(横浜市中区)が、東京・新宿の再開発に伴う不動産売買に絡み、東京国税局から06年12月期までの3年間で約3億5000万円の所得隠しを指摘され、1億数千万円の追徴課税を要求されている、というものである(リスト社は本誌の取材に、「国税当局から、法人税等の更正通知を受領し、見解の相違があったため、当社より、異議申し立てをしています」と答えた)。

 リスト社は、マンションの分譲や横浜市上大岡地区の再開発、マリンタワーの再生事業などで業績を急成長させてきた新興企業だ。横浜ベイスターズのヘルメットスポンサーでもある。

 実は、中田氏とリスト社の北見尚之代表取締役社長が曜懇(じっこん)の仲であることは、横浜界隈では有名な話だ。

 「3年くらい前から、横浜市内や都内で、北見社長と中田市長、あとは市長と仲の良いAさん(以前、本誌で中田氏に合コンを斡旋していた人物として紹介)たちが高級クラブなどに頻繁に通っていたといわれています」(県内の不動産業者)

 二人の関係は友人関係の枠では収まらない。中田氏の政治団体「中田ひろしを支える会」に、北見夫妻は合計300万円の献金をしており(06年3月16日・上写真、夫人も献金時、同社の役員)、中田氏の有力後援者なのだ。

 「しかし、中田市長はリスト社の"脱税"報道が出たあとも、献金を返還していません」(前出・太田市議)

 返還の有無は確認できなかったが、そんな両者の関係は市議会でも問題になっていた。

 「実は07年に、市長とリスト社が癒着しているのではないかと、市議会で遣及されました。公共事業受注の実績がない同社が、開港150周年の目玉プロジェクトであり、総事業費約31億円に及ぶ『マリンタワー』の再生事業に選定された。その選定前に、献金が行われていたのです。偶然すぎると訝(いぶか)った市議が、マリンタワーの事業者指定の議事録を請求しました。しかし議事録の発言が黒く塗りつぶされていて、何が話し合われていたのか分からないまま今に至っているのです。これからもこの問題を追及していきます」(伊藤ひろたか市議)

 リスト社の受注の経緯、献金返還などについて中田氏側に質すと、「(本誌と)係争中なのでお答えできません」(中田宏事務所)と話すのみ。リスト社も、「当社と中田市長が癒着しているといった事実は一切ありません」と文書で否定した。

 それでも中田氏が疑惑に塗(まみ)れていることは、横浜市民も気付いている。

 

 

(写真説明)

いまだ説明責任を果たそうとしない中田氏

 

(写真説明)

街頭で市長批判を訴える市議(下)と奈々さん(上)

 

(写真説明)

北見夫妻の献金が計上された収支報告書(左)とマリンタワー(右)