横浜市立大学教員組合報

 

 組合ニュース

 

2009.12.19

 

もくじ

 

●全大教新聞

●国際文化創造コースから

 

 

●全大教新聞

 

 全大教新聞12月10日号に横浜市大の記事が掲載されましたが、ご覧頂けましたでしょうか。教員組合のホームページ(http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm)にも、記事のコピーをjpgファイルにして掲載(http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/kumiai-news/zendaikyo091210.jpg)しましたので、是非ご一読下さい。

 

国際文化創造コースから

 

国際総合科学部代議員会において、次期中期計画に関し、国際文化創造コースからまとまった意見が表明されました。許可をいただいた上で、転載させて頂きます。代議員会、総会の時期も近づき、執行委員会ではできるだけ多くの先生方の意見を集約して、横浜市派遣職員側にぶつけていきたいと考えています。

 

                        (以下、許可を頂いた上での転載)

 

 次期中期計画の策定が現在、進められています。われわれ教員に伝えられた案について、11月コース会議以来、コース内で議論し、それを以下のような意見書としてとりまとめました。この意見書を次期中期計画作成にあたっている関係者、関係部署に伝達いただき、次期中期計画の具体的取組にあたってぜひ配慮いただきたくお願いします。

 

1.          ガバナンスの強化に関する取組について

 「トップの情報発信機能の強化」、「各教員の意見集約がスムーズに行える組織体制の構築」が掲げられています。つまり現体制がこの点で大きな欠陥があったということを物語っています。われわれは、その根本的な原因が、教授会自治、所属構成員による選挙による組織長の選挙など民主的な大学の組織と運営を解体してしまったことにあると考えます。この状態は、教授会が重要な事項を審議する旨を定める学校教育法第93条にも違反しています。トップダウン式の組織・運営がガバナンス強化を可能にするとの構想であったのかと考えますが、それが実際にはうまく機能しなかったことを真摯に受け止め、この根本を見直すことを要望します。

注:学校教育法第93条第1項「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」

 

2.          人材育成・人事制度に関する取組について

 大学の社会的使命である教育・研究は、それを担う人材にかかっていることはいうまでもありません。最良の教育・研究を実現するためにもっとも重要なことは、これらを担う教員・法人職員が本学に定着することです。そうしてこそ、本学に愛着を持って教育・研究はじめそのほかの面でも真に本学に貢献することができます。

ところが現在、本学が法人化後に採った教員・法人職員に対する任期制が、そうした環境整備にとって最大の障害になっています。任期制のために、教員・法人職員は、本学への愛着、仕事への意欲が阻害されています。法人化後に多数の有能な教員・法人職員が本学を退職していった事実を真摯に受け止める必要があります。任期制を根本的に見直すことを要望します。

 しかし、次期中期計画で任期制継続は前提になっていると聞いています。それならば、早期に教員・法人職員に対するテニュア制度の導入を要望します。所定の期間、十分に責務を果たした教員・法人職員をそのように遇することが人材育成の最良の方法であると考えます。

 

3.          教育の質の向上について

 この問題も上記の任期制と関係する問題です。任期制のために大量の教員が退職しました。しかし、後任の採用は必ずしも行われていません。このため専任教員数が減少しつづけていることが、教育の質の向上にとって最大の問題です。定年退職教員の原則不補充、任期制を原因とする突然の途中退職、このために当該教員に指導を受けていた学生たちは、大きな不利益を被っています。本学の掲げる「学生本位」の理念にまったく矛盾しています。

 教育の質の向上を実現するためには、まず任期制問題を解決し、そして無原則な後任人事の進め方を改め、退職教員を補充することを原則とすべきです。不補充の場合にはむしろしかるべき説明責任があると考えます。

 

4.          共通教養教育の改善・充実について

 本学の共通教養教育で目玉としているPE、教養ゼミA・Bについては継続するとしています。本学は、本学学生の一定水準の英語能力を保証するということでPEを実施しています。しかし、実情は、多数の学生たちが、PE取得後、英語離れを起こしています。PE取得後に多くの学生はむしろ英語能力を低下させています。昨年度の4年次生アンケートによれば、多少低下した者23.2%、かなり低下した者20.1%、合わせて43.3%が英語能力を低下させたと回答しています。

 これに対応すべく突然、専門教養(ゼミや講義科目)で英語による授業実施が試みられました。しかし現場の教員によれば、現行のPE取得水準で、英語による授業では専門分野の教育が困難であり、英語力向上の点で効果的でないという意見です。こうした実情を勘案すると英語能力を向上させるためには、弥縫的に専門教養授業を英語でやるより、すでに試みられている上級英語を充実させたり、体系的な海外留学プログラムを充実したりする方が効果的であると考えます。そして専門教養授業では専門分野の外書講読を開設した方が専門知識を増やしながら英語読解力を向上させることができ、もっと有意義であると考えます。

 PEの3年進級条件は、現行のカリキュラム体系上、必然とは言い難いものです。この条件だけのため不必要に留年しなければならない学生が生じています。進級条件は撤廃し、要件とするとしても卒業までの要件とすべきです。またPE取得条件は、一律規準でなく、専門分野で違いを認めるべきだと考えます。

 教養ゼミAと教養ゼミBについては、運営方法を改善すべきです。1クラス30名以上では、真に演習としての運営が困難です。多くても1クラス最大20名を規準とすべきです。このために授業コマ数について2コマを1コマにし、2人の担当教員制も見直しを検討すべきです。

 

5.          再編後のコース運営計画について

 法人化によって旧三学部が、一つの国際総合科学部となりました。しかし、専門分野という点で、厳然と違いが学部内に残っています。一つの学部であるために、カリキュラム運営において同一規則をあてはめていますが、そこに無理が生じているのが現実です。専門分野の教育をより効果的に行うためには、コースによって独自の規則でカリキュラム運営をした方が、より効果的な教育が実行できると考えます。そこで学部では共通の大枠(卒業単位数、共通教養と専門教養の単位数程度)を決め、それ以外の細目についてはコースがカリキュラム運営の権限(いわゆるローカルルール)を持てるように要望します。

 

6 大学のミッションについて

 大学のミッションの最後の部分で、これまで○○○とされていた研究分野について、この度、「生命医科学の分野」と明示されました。口頭では、他の分野を無視するものではないとの説明がなされていると聞きます。しかし、文言で明示されると、将来、この文言が一人歩きして、過去の口頭説明が無視され、他の分野への配慮が疎かにされることを非常に危惧します。わたしたち文系の研究分野に属する者として、今後の具体的な取組においては、文系分野の研究への配慮も文言で明示されるよう要望します。

 これに関連して付言しますが、当初の法人化にあたって、新しい大学の理念として、「リベラルアーツ」教育を標榜することになりました。この度の次期中期計画骨子案にそのような文言を見つけることができません。何の説明もなしに、なし崩し的に「リベラルアーツ」を引っ込めてしまったとしか思えません。そして今度は突然、「生命医科学」研究の世界的拠点という目標を掲げたとの印象を拭えません。わずか数年で、大学の方向が大きく揺れ動くことに構成員として、はなはだ不安を抱きます。どういう経過で「生命医科学の分野」に特化することを決めたのか、構成員に対してもう少し丁寧に説明くださるように要望します。