井上ひさし氏逝去 「意見広告の会ニュース485」より(2010.4.18)

 

 

1 井上ひさし氏逝去

1−1 井上ひさしさんのコメント

国立大学法人法案の廃案を求める第三次意見広告

http://ac-net.org/dgh/03/610-ikenkoukoku.html 

1−2 国立大の法人化に反対 井上ひさしさんら論陣

           『朝日新聞』2003610日夕刊

1−3 井上ひさし、神山征二郎さんら講演

国立大法人化を批判 東京大学  『しんぶん赤旗』200367

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1 井上ひさし氏逝去

1−1 井上ひさしさんのコメント

国立大学法人法案の廃案を求める第三次意見広告

http://ac-net.org/dgh/03/610-ikenkoukoku.html 

 

私どもは、井上ひさしさんから2003年6月10日付『読売新聞』朝刊「意見広告」に以下のコメントをいただいております。心からご冥福をお祈りいたします。

 

井上ひさし(作 家)

戦前戦中の、あのガチガチの国家主義の時代にも「大学の自治」がありました。それは東京帝国大学の例を見ても一目で判ります。大正一二年(一九二三)九月の関東大震災で全建物面積の三分の一を失ったとき、全教授と全助教授が投票で移転先を決めて、その結果を大蔵大臣に提出しました。ちなみに一位が近郊(陸軍代々木練兵場)で一五一票、二位が本郷居据りで一三一票、三位が郊外(三鷹)で一〇三票でした。つまり教授会にそれだけの力があったのです。もっとも近郊移転は陸軍省の猛反対で実現はしませんでしたが。大正八年(一九一九)には、それまで二十年間つづいていた優等生への恩賜の銀時計の下賜が、教師と学生たちの声で廃止されました。理由は、天皇が行幸になると、大学構内に警備のための警察官が大勢やってくる。そのこと自体が大学の自治を乱すからというものでした。

 

このような例はまだまだありますが、紙幅がないのでもう一つだけ書きます。昭和二〇年(一九四五)六月、帝都防衛司令部が本郷キャンパスの使用を申し入れてきた。幕僚以下三〇〇〇人の兵士で、ここを使うというのです。当時の内田祥三総長は、「ここでは一日も欠かすことのできない教育研究を行っているのであり、自分たち学問の道を歩む者たちの死場所でもある。動くわけには行きません」と断わった。――ところがいま、一片の法律で、総長・学長を大臣が任命し、また解任できるという途方もないことが行われようとしています。そんなことになれば、「大学の自治」も「学問の自由」もただの画餅、戦前戦中よりもさらにひどいガチガチ国家主義の時代になってしまうのでしょうか。

 

 

1−2 国立大の法人化に反対 井上ひさしさんら論陣

           『朝日新聞』2003610日夕刊

 

国会で審議が進められている国立大学法人法案をめぐり東京大学で6日、「国立大学の法人化を考える夕べ」が開かれ、作家の井上ひさしさんらが反対の論陣を張った。

 

教員有志の主催。井上氏は戦前・戦時下でも大学が軍部に抵抗していたことを挙げ、「あんなひどい時代でも大学を守っていた人がいた。自由だと思っている今、こんな事態が起きていることにねじれを感じる」と述べた。さらに、6年単位の中期目標を大学に課すという法案を「6年で結果の出る学問はろくなものではない」と批判した。

 

名古屋大の植田健男教授は教育基本法改正と関連づけて論じ、「教育の目的を、人格の完成から経済界の生き残りといった政策目標に代えようとする狙いがある」と分析した。また、元東大副学長で現東大職員組合委員長の小林正彦氏は「国立大の足を踏み入れたことがない人々は『ざまみろ』と思っているかもしれない。大学の学問の自由には、国民の権利を預かっているというモラルが必要」と教員側の自戒を促した。

 

1−3 井上ひさし、神山征二郎さんら講演

国立大法人化を批判 東京大学

 

国立大学法人法案が国会の参院審議でヤマ場を迎えている六日、東京大学の教員有志が「国立大学の法人化を考える夕べ」を同大学の安田講堂で開きました。全国から大学教職員や学生ら約二百人が参加しました。

 

第一部では、作家の井上ひさし、映画監督の神山征二郎、海洋サイエンティストの河井智康、元東大副学長の小林正彦の各氏がそれぞれ講演し、国立大学法人法案を多角的に批判しました。

 

井上氏は、戦争中の陸軍が東大に兵隊を置こうとした計画を大学側が断固としてはねのけた例をのべ、法人法案反対のたたかいを励ましました。

 

「法案の衆院通過でもう駄目だと思っていた」と切り出した小林氏は、参院の審議を傍聴して「痛快な議論が起きている。ひょっとしたら(阻止できるかも)と思う」とのべました。

 

日本共産党の林紀子、畑野君枝両参院議員があいさつ。「文科大臣は追いつめられている。国立大学の原点が問われるこの問題をみなさんと考えていきたい」(畑野議員)とのべると大きな拍手が寄せられました。

 

第二部では、大学のあるべき姿をめぐって討論。植田健男(名古屋大学)、世取山洋介(新潟大学)、義江彰夫(東京大学)、浦辺徹郎(東京大学)、小林正彦の五氏が出席。「教育基本法改正の動きは、人権教育から国策遂行へと移しかえ、教育政策に権力を集中させるもの。このポイントの上に、金の支配力で大学を国に従属させる法人化がある」(世取山氏)など、教育基本法改正の動きと呼応する法人法案の問題点を明らかにしました。第三部では、大学人の活動の取り組みなどについて活発な議論が交わされました。