検察審査会の議決:『何に驚いたかというと、被疑事実にですね、小沢さんの不起訴のときに問題になった4億円の収入を、収支報告書に書かなかったというところが含まれてないんですね』――「民主党 司法のあり方を検証・提言する議員連盟」第1回会合における、郷原信郎氏の講演(2010年4月28日) ビデオニュースドットコムより(2010.4.29)

 

http://www.ustream.tv/recorded/6494872?lang=ja_JP 

 

 

【司会、山尾しおり衆議院議員】

えー、それでは、さっそくではございますが、お集まりの皆様、今日、この方のお話を伺うことを、非常に、えー、楽しみにいらしていただいた方も、たくさんお見えと思います。えー、郷原先生に来ていただいております。名城大学教授、弁護士、元検察官、もう皆様、ご存知の通りでございます。それでは、郷原先生、よろしく、お願いいたします。(拍手)

 

【郷原信郎氏】

ご紹介頂きました郷原です。よろしくお願いいたします。じゃ、座ってお話しさせていただきます。

 

あの、まず、お手許にお配りしております、あのー、わたくしの本ですが、『検察が危ない』というタイトルで、あのー、3月に入って、どうしても、この状況の下で、書いておかないといけないと思って、急遽、書いたものです。えー、検察の、まあ、内実というか、検察という組織、とりわけ特捜部という組織は、どういう実態なのかということを、ぜひ、こういう状況の下で、多くの方々に知ってもらいたいと思って書いたものです。あの、きょうの本は、皆様に謹呈いたしますので、ぜひ、あの、支援者の方々に、支持者の方々に、お知り合いの方々に、お薦めいただければと思っております。

 

あのー、さきほど、辻先生の方からもお話しもありましたように、きょうは、ちょうどまた、きのう、大変な、あのー、検察審査会の議決がでた直後ということで、えー、あの、この問題にたいして非常に関心が、あのー、深いのではないかと思います。

 

あのー、ちょっと、それで、ひとつ、あのー、資料を、急遽、お配りいたしました。そもそも、この、検察審査会の「起訴強制」という、その、制度が導入された経緯なんですが、それは、えー、この、たしか、2001年だったと思いますが、えー、当時の福岡地検次席検事が、裁判官の妻の事件に関して裁判官に情報を漏洩したという事件がおきました。このときに、検察が社会から、世の中から、大変な批判をあび、その職務の公正さにたいする信頼が失墜したということで、それをきっかけにですね、検察の権限を一部制限しよう、ここにも、あのー、下線を引いてありますように、えー、検察審査会の議決に法的拘束力を、法的拘束力を与えるということが、この事件をきっかけに、議論されるようになったわけです。

 

ですから、そもそもこの制度というのは、検察が本当に真剣に反省をして、そして、世の中の信頼を回復するための制度なんですが、残念ながら、いまですね、そうではなく、検察が暴走したり、ちょっと、われわれには理解できないような捜査をやったあげく、それがある程度のところまで止まってしまったら、また、それを煽るような方向で、この制度が使われているっていうところに、非常に大きな問題があるんじゃないかと、わたくしは思っております。

 

あのー、きのうの検察審査会の議決、えー、まず結論に、わたし、驚きました。そして、議決書を見て、さらに驚きました。唖然としたというのが正直なところです。何に驚いたかというと、えー、ま、内容、理由もそうなんですけど、そもそも、被疑事実にですね、えー、あのー、小沢さんの不起訴のときに問題になった4億円を、えー、の収入を、収支報告書に書かなかったというところが含まれてないんですね。あの議決書に書かれている被疑事実というのは、えー、土地の代金の支払いの時期がずれていたということ、そして、土地の取得の時期がずれていた、それだけです。

 

それだけの事実であれば、およそですね、国会議員が起訴できるような事実ではないという前提のもとで、いままで捜査とか処分が行われてたと思うんですが、まったくそれとは違うところで検審の議決が行われたと。ちょっと、盲点をつかれたというか、ブラインドサイドをつかれたという、まったく予想だにしなかった議決でした。そもそも、そういった事実が、そういう、えー、起訴相当という結論に値するような事実なのかということ自体も考え直して行かなきゃいけないと思っています。

 

そして、なにより重要なことは、この検察審査会の問題もさることながら、いま、この、政治と金の問題に関連して、検察の捜査と処分のあり方がいろいろ問題になってきているわけですが、そこにはですね、わたしは、根本的に、検察の組織において、その、検察の正義っていうものだけを中心に考えてしまう、まさに、天動説的な考え方の問題っていうのが根底にあるんじゃないかという気がいたします。

 

あのー、最新号の、この、『アエラ』にですね、「検察幹部、批判に逆切れ」という記事がでているんですが、この記事は、本当に、あの、検察幹部の本音が語られているひじょうに価値のある記事だと思います。この中に、いまの、その、検察審査会の動きなどを巡る検察幹部の本音がいくつか出てくるんですが、わたしは、あの、非常に、その、興味深いと思ったのは、えー、このー、例の、小沢氏の不起訴の判断に関して、えー、検察の方では、要するに、原資が、あの、4億円の収入の原資が、ゼネコンからの裏金じゃないと、たんなる記載ミスで形式犯だから小沢氏の起訴はまかりならんということを、最初から条件としてつけていたと。その条件は、最後まで、処分、小沢氏の処分の段階まで変わらなかった。えー、維持されたということが書かれてるんですが、重要なものがここで見過ごされているのではないかと思うんです。それじゃ、たんなる記載ミスで形式犯というのは、石川議員も同じことだと思うんです。同じ国会議員で、しかも石川氏は、北海道11区で11万人以上の有権者の支持を受けて、これから国会で活躍しようという段階だったわけです。その石川氏は、たんなる形式、記載ミスで、形式犯でも起訴することはまったく問題ない。しかし、小沢氏はこれではダメだというのは何故なのか。

 

なんで、そんな考え方が出てくるのかというと、結局、その検察の目の前には、小沢氏という存在しかないわけです。自分たちの興味、関心がそこしかないわけです。ですから、石川議員は、さしみのツマか、大根の葉っぱみたいなもので、見えてないんですね。そういう自分たちが考える、その、正義というものだけを中心に世の中が動いているようなそういう感覚、わたしは、非常にですね、恐ろしいと思ってます。それが、この本を書いた最大の動機です。

 

ま、ということで、そういう事態を招いている、その、検察のあり方の根本にある日本の司法の構造っていうところからですねえ、あらためて、考えてみたいと思います。・・・(以下、省略)

 

 

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(加筆 2010.5.1) 郷原元検事講演後の鈴木宗男衆議院議員との質疑応答

 

【司会、山尾しおり衆議院議員】

さあ、鈴木先生、お願いいたします。

 

【鈴木宗男衆議院議員】

あの、郷原先生、分かりやすい説明、有り難うございました。あの、わたしも、郷原さんみたいな検事に調べられたら、また、結果が違ったんではないかと思うんですが(笑い)。

 

あのー、やっぱり、なにが正しいか、なにが正直かが一番ですからね。ただ、郷原さんですね、やっぱり、検察は自分たちでシナリオ、ストーリー作りますね。わたしのときも、鈴木ありきです。今回、昨年の3月からでも、小沢ありきで動いていますね。いままさに小沢、あの、郷原さんが言った、ほんとに、この、間違った正義感。逆に、わたしは、暴徒化していると思いますね。あの、ある種の青年将校みたいなね。検察のなかに入れれば、大変なことになると思います。これ、皆様方も狙われたら、終わりですからね。そう言ってみたらね、わたしは、なにが民主主義かということが分かると、ひじょうに、考えたときにね、きょうの郷原先生のお話は、きわめて、国会議員ひとしく、考えなければいけないことだと思ってます。

 

 それで、きのう、検察審査会の発表ありましたね。あの検察審査会の説明は、検察官がしますね。これ、皆さん、恣意的、意図的に、ひとつの思い込みで説明されたら、あの審査会のメンバーは、一般の人ですよ。法律の専門家じゃないですよ。

 

あたし、きのうのあの発表みて、「絶対的な権力者」という表現ありますよ。これ、皆さん、秘書とわれわれ国会議員の関係といったら、信頼以外のなにものでもないんじゃないですか。わたしなんかは、かつて、中川一郎の秘書として、全権委任されて、鈴木の意向イコール中川一郎と言われるぐらい信用ありました。小沢さんの秘書だって、わたし、同じだと思いますよ。いまわたしは、秘書にぜんぶ、全権委任していますよ。その実態を知らない人たちが、検察の説明通りでやられたら、たまったもんじゃないですね。

 

それが、ひとつと。これ、皆さん、2月1日です。石川代議士は、東京地検特捜部の吉田という副部長から、「今回は、小沢は起訴できないけども、検察審査会で、必ず、やられるんだ。」こう言ってんですよ、皆さん。起訴される3日前ですよ。

 

じゃ皆さん、検察官がその思い込みで、検察審査会で説明したらどうなるのかということも、考えてください。だから最後に、郷原先生が言った可視化は、絶対に必要なんですよ。わたしは、取調べの可視化はもちろんだけれども、この、検察審査会の可視化もしなければ、逆にですね、作られると思いますよ。善良な市民たちの集まりが、審査会ですから。誤導、誘導でね、間違った判断されると思いますね。こんども、ぜひともね、先生方には、わたしは、あの、考えていただきたいなと、こう思います。

 

【郷原氏】

あのー、鈴木先生が来られる前に、さっきお話ししたんですけども。そもそも、検察審査会の起訴強制という制度が導入された経緯は、福岡地検次席検事が、あのー、情報漏洩したという問題がきっかけです。ですから、検察が反省しなくちゃいけないことがきっかけだったのに、さきほどの、えー、おっしゃったように、その、取調べを担当した副部長が、検察審査会を使って、自分たちの思い通りにしてやるというのは、まったく、天につばをするような話だと思います。それは、もう、検察という組織の自己否定につながる。何のために検察官が権限を持っているのかということすら、もう、まったく、分からなくなってしまう、とんでもない話だと思います。

 

 で、それと、もうひとつですね、わたし、あの、検察審査会の議決書を見て、不思議に思ったのは、審査人が匿名になっているんですね。名前すら、名前すら明らかにしない審査人が申し立てたことで、こんなですね、こんな大きな政治的な影響が生じてしまう。わたし、そこにも、非常に大きな問題があると思います。

 

【司会、山尾議員】

質問を含めまして、有り難うございました。