大学破壊の構図と大学人の抵抗――吉岡直人『さらば、公立大学法人横浜市立大学――「改革」という名の大学破壊――』(下田出版、2009年)を読んで――(重本直利(龍谷大学経営学部、NPO法人京都社会文化センター(附)市民科学研究所))(2010.6.20)

 

 

大学破壊の構図と大学人の抵抗――吉岡直人『さらば、公立大学法人横浜市立大学――「改革」という名の大学破壊――』(下田出版、2009年)を読んで――(重本直利(龍谷大学経営学部、NPO法人京都社会文化センター(附)市民科学研究所))(2010.6.20)

『市民の科学』第2号 大学の病理――大学破壊とその受容、そして再生(pp.42-55、2010年6月刊)、編集:『市民の科学』編集委員会、発行:市民科学研究所、発売:晃洋書房

 

NPO京都社会文化センター(KSCC)

http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/takeuchi/ksc/index.htm 

 

 

【抜粋】

本書は「大学破壊」の記録の書でもある。「破壊」した「設置権者」とその「手下」になった行政職員と大学人のことを記録にとどめた稀有な書である。他方、この「破壊」に終始抵抗した大学人の記録の書でもある。

この書は、具体的な事例を上げながら、日本の大学および大学人の今後の運命をわれわれに暗示しているように思われてならない。従って、私がここで書こうとしていることは「書評」の類ではない。この書は、「大学破壊の生々しい記録」であるとともに、それへの抵抗運動(レジスタンス)の記録でもあるが故に、この書そのものを評価することではなく、この記録されている大学の現実に、私を含めた大学人がいかに向き合うのかを明確にしたいがために書いた原稿である。なぜなら「書評」とするにはあまりにも重すぎる内容だからである。私も大学人の一人として、この書を読みながら、そこに書かれている実態・現実にどう向き合うのかが問われていると思わざるをえなかった。何故なら、この書に書かれている内容は、程度の違いはあろうが日本の大学すべてに通低すると思うからである。この書を読みながら私の所属する大学でも「思い当たる節がある」、「予兆がある」と感じざるをえなかった。・・・