木村剛氏逮捕 『売国者たちの末路を見定める』 植草一秀の『知られざる真実』(2010.7.16)

 

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2010年7月15日 (木)

木村剛氏逮捕『売国者たちの末路』を見定める

「天網恢恢疎にして漏らさず」
(てんもうかいかい、そにしてもらさず)

という。「大辞林」によれば、
「天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる。天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある」との意味になる。
 
 日本振興銀行元会長の木村剛氏が逮捕された。
 
 私は拙著『知られざる真実−勾留地にて−』 著者:植草 一秀

販売元:イプシロン出版企画
 

第一章「偽装」第7節「摘発される人・されない人」に、
木村氏が創設した日本振興銀行が木村氏の親族企業に不正融資を行った疑惑があり、金融庁が検査を行ったが、「これまでのところ摘発されていない」と記述した。
 
 その木村剛氏がようやく摘発対象になった。背後に政権交代があることは間違いない。
 
 木村剛氏を重用してきたのが田原総一朗氏である。かねてより、摘発対象候補者としてMHKなる用語が用いられてきた。
村上世彰氏、堀江貴文氏、木村剛氏である。

竹中平蔵氏が繰り返した「がんばった人が報われる社会」で、成功例として示されてきたのが、これらの人々である。

テレビ朝日など、木村剛氏を重用してきたテレビ局は、木村氏を礼賛する報道をいまだに続けているが、真実をまったく伝えていない。
 
 本ブログのカテゴリー「竹中金融行政の闇」に詳論しているので詳細を省くが、木村氏が第一線に登場した2002年秋から不透明な行動は一貫して示され続けてきたのだ。「神様」だの「プロ」など、実態とかけ離れた解説を施すべきでない。
 
 「不透明な」問題を五つ例示する。
 
@2002年10月に発表された「金融再生プログラム」は竹中氏が組織し、木村氏がメンバーとして参加したプロジェクトチームがまとめたものである。
重大な問題は、このなかの「中小企業貸出に関する担い手の拡充」のタイトルの下に、「銀行免許認可の迅速化」の文言が盛り込まれたことだ。
 
 日本振興銀行は2003年8月に予備申請を行い、2004年4月に開業している。驚天動地のスピードで銀行免許が付与されたのである。
 
 木村剛氏が創刊した金融情報誌「フィナンシャルジャパン」

創刊号(2004年10月)表紙には竹中平蔵氏と福井俊彦氏のツーショット写真が掲載された。

典型的な公私混同と評価されて反論できないだろう。

A金融再生プログラム策定過程で、木村氏は繰延税金資産計上ルール変更を試みた。詳論を省くが、木村氏の提案に多くの問題があった。結局、ルール変更は見送られたが、この動きは、銀行の自己資本不足誘導→外資による日本の銀行収奪の目的に沿って提案された疑いが濃厚である。
 
B竹中金融行政はりそな銀行を標的に定めたが、その詳細を追跡すると、りそな銀行実質国有化全体が、大きな謀略そのものであったことが明らかになる。この問題で主導的役割を果たしたのが竹中平蔵氏と木村剛氏である。詳細は拙著ならびに、本ブログ、ならびに月刊日本講演録などを参照されたい。この問題では複数の死者が発生しており、巨大なインサイダー取引疑惑も存在する。
 
C日本振興銀行が木村氏の親族企業に対して実行した融資が不正融資に当たるのではないかとの問題が浮上した。しかし、前述したとおり、自民党政権時代には木村氏は摘発されなかった。
 
D今回の逮捕は検査妨害を理由とするものである。被疑事実は社内メールの削除を指示したというものだが、なぜ、メールを削除しなければならなかったのかが、今後の問題になる。
 
 大きな問題が噴出することになるはずである。今回の逮捕はまだ入り口に過ぎない。
 
 私は1992年から日本の不良債権問題の早期抜本処理を主張し続けた。不良債権問題の深刻さと抜本処理の重要性を最も早い段階から主張し続けた一人であると自負している。
 
 この側面では、木村氏も早い段階から不良債権問題の早期抜本処理を主張していたから、当初は、私の主張と重なる部分が多かった。
 しかし、2002年の竹中−木村癒着時代が始まると同時に、その行動が正義と公正から大きく逸脱していったと私は観察してきた。木村氏はりそなの繰延税金資産計上ゼロないし1年を強硬に主張し続けたにもかかわらず、政府が3年計上を決定し、りそな銀行を救済すると、政府決定の全面支持者に変質した。
 昨日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」が放映したVTR映像での「批判はいくらでもできる」との木村氏発言場面は、私との直接対決での木村氏による政府決定擁護発言である。
 
 最大の問題は、行動の動力源である。竹中氏の行動、木村氏の行動を突き動かしてきた動機は、「公」でなく「私」であったと私は判断する。
 
 政権交代が生じて、ようやく過去の暗部にメスが入り始めたのかもしれない。
 
 永田町では対米隷属勢力と主権者国民勢力との死闘がいよいよ佳境を迎えつつある。早期に主権者国民勢力が権力を掌握して、対米隷属者たちの過去の暗部を白日の下に晒してゆかねばならない。


『売国者たちの末路』 
著者:副島 隆彦、植草 一秀 販売元:祥伝社

 

をしっかりと見定めてゆかねばならない。

 

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2010年7月16日 (金)

木村剛氏逮捕「日本振興銀行の黒い霧」続編

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-31a0.html 

 

私が巻き込まれた冤罪あるいは政治謀略事件について強い関心を示され、ライブドアパブリックニュースに重要な記事を多数執筆されてきたフリー・ジャーナリストの高橋清隆氏が新著を発表された。
 
『痛快言行録 亀井静香が吠える』 著者:高橋 清隆 販売元:ケイアンドケイプレス

  

である。

 マスゴミが小泉竹中改革の双璧として示すのが、「郵政民営化」と「不良債権問題処理」だが、不良債権問題処理のなかで疑惑まみれの「りそな銀行処理」が実行された。
 
 りそな銀行処理疑惑とは、『金融再生プログラム』で銀行の自己資本比率算定ルール改訂の企てを封じられた竹中・木村コンビが、りそな銀行に標的を定めて同行を自己資本不足に追い込んだと推察される問題に関連する巨大国家犯罪疑惑である。
 
 他方、「郵政民営化」とは日本国民の巨大金融資産350兆円の外国資本への供与を目的に推進された政策であると考えられる。
 
 テレビ朝日の報道番組で司会を担当する古舘伊知郎氏は、竹中−木村コンビが実行した金融問題処理を絶賛するが、無知であるか背後の勢力による振り付けであるかのいずれかである。
 
 竹中氏は「大銀行といえども大きすぎるからつぶさない方針をとらない」とアピールして株価暴落を誘導した。ところが、りそな銀行問題が俎上に載ると、預金保険法の抜け穴規定を無理やり適用してりそな銀行を公的資金で救済してしまった。日本の金融行政に消すことのできない汚点を残したのが竹中金融行政の実相だった。
 
 ところが、マスゴミは史上最悪の汚れた金融行政を、驚くなかれ、「画期的な不良債権処理」だと偽装して報道した。第二次大戦中の大本営発表と瓜二つの報道姿勢が示されたのだ。
 
 りそな疑惑では、朝日監査法人でりそな銀行を担当した気鋭の公認会計士平田聡氏と、りそな銀行による対自民党融資激増を1面トップでスクープ報道した朝日新聞記者鈴木啓一氏が不自然な急死を遂げた。私は、冤罪事件の被害者になり、マスゴミの捏造報道と集中砲火を浴びた。
 
 「りそな疑惑」劇場のメインキャストが竹中平蔵氏、木村剛氏、公認会計士協会会長(当時)の奥山章雄氏などである。このなかの木村剛氏に、ついに司直の手が伸びた。
 
 直接の被疑事実は検査妨害である。金融庁の検査に際して、木村剛氏が不正を隠蔽するために関連メールの削除を指示したとの疑いが濃厚になっている。
 
 金融庁が刑事告発して木村剛氏が逮捕された。
 
 日本振興銀行は過去にも木村剛氏の親族企業に対する不正融資疑惑を指摘されたことがあった。金融庁は特別検査を実施したが木村氏は摘発されなかった。小泉竹中政権に直結する木村剛氏に対する刑事取扱いに「手心」が加えられたとの憶測が広がった。
 
 木村剛氏逮捕は遅きに失した感も強いが、木村氏逮捕が可能になった背景に政権交代実現があるのは公然の秘密である。
 
 金融担当相には国民新党の亀井静香氏が就任した。亀井氏は対米隷属政策の象徴である郵政民営化を適正化するための「郵政改革」に真摯に取り組んでいる。同時に、これまでの金融行政の歪み是正にも本格的に取り組み始めたのだと考えられる。このなかで、日本振興銀行に対する刑事告発が実行された。
 
 亀井氏は金融相に就任すると、金融庁で行われる記者会見の開放に踏み切った。大臣会見の開放は民主党が昨年8月の総選挙マニフェストに盛り込んだものである。
 
 しかし、当の民主党は総理記者会見を含めて政権公約を実行していない。この公約を率先して実行したのが亀井静香氏なのだ。
 
 冒頭に紹介した高橋清隆氏の新著は、昨年9月の鳩山政権発足時点から本年6月の大臣辞任までの8ヵ月間、亀井静香郵政担当相兼金融相が開放した記者会見に高橋氏が実際に出席し、亀井氏発言を厳選したうえで論評した集大成である。
 
 亀井静香氏は既存記者クラブ向け会見を行ったあとで、大臣室をフリー・ジャーナリストに開放し、わざわざ第二会見を開くことを新しい慣例にした。
 
 対米隷属勢力が支配するマスゴミは亀井氏に対するネガティブ・キャンペーンしか展開しない。しかし、真実の亀井氏は率先して閉鎖的な談合組織「記者クラブ」の弊害除去に向け、惜しまずに時間と労力を注いできたのだ。
 
 高橋氏の著書『亀井静香が吠える』は、マスゴミが伝えない素顔の亀井静香氏の人となりを鮮明に描き出すことに成功している。民主主義が健全に機能するために何よりも重要なことは、主権者である国民、市民が、自分の目と耳で真実を確かめ、自分の頭で考え、判断することである。一人でも多くの国民が上記著書を読んで、真実に少しでも接近してほしいと願う。
 
 新書版208ページの著作であり、内容は盛り沢山であるが、とても読みやすい仕上がりになっており、短時間で通読することができる。ぜひ、同書を取り寄せてご高読いただきたいと思う。
 
 同書151ページに
「小泉・竹中を塀の中へ、まだ途上」
と題する節がある。
 
 りそな銀行処理に際して、巨大なインサイダー取引疑惑が存在することを私は主張し続けた。テレビ番組でも、証券取引等監視委員会による手口調査を強く求めた。しかし、行政当局はまったく動かなかった。
 
 高橋清隆氏がこの問題を第二記者会見で亀井金融相に質問した。上記の節はその模様を記述したものである。以下にその一部を引用する。
 
わたし 「証券の不正取引についてお聞きしますが、2003年5月17日に、りそな銀行をめぐって大規模なインサイダー取引が行われたという疑惑を指摘しているエコノミストがいます。この中心人物は竹中平蔵ではないかという指摘であります。この件について、証券取引等監視委員会は調査するようにそのエコノミストがお願いしたのですが、一向に動いた形跡がないと言っております。わたしも電話で催促したことがありますが、全く動いた形跡が見られません。再調査されるお考えはありますでしょうか。」
亀井 「これはわたしも現在、そんなことをね、そういうことに関して調査したとか、今もしているという報告も全然受けていません。これちょっと、そういう声が皆さま方の中にあるなら、その関係どうなっているのか、ちょっと聞いておいてください」
(中略) (2009年10月23日「第二会見」)
(引用部分ここまで)
 
 その後、金融庁の大塚耕平副大臣担当職員から高橋氏に対して、関係資料を高橋氏から直接、証券取引等監視委員会に提出されたいとの連絡があり、高橋氏が私の本ブログ記事などを含む関連資料を監視委員会に提出したことが上節に記述されている。
 
 昨年3月1日の報道番組で、亀井静香氏は竹中氏に対して「刑事告発する」と明言して、口八丁手八丁の竹中平蔵氏が激しく狼狽した。亀井氏は着実に駒を進めていると考えられる。
 
 また、高橋氏は亀井静香氏による『月刊官界』2003年8月1日号のインタビュー記事を紹介している。このなかで、亀井氏は小泉政権によるりそな銀行処理について、
「りそなは繰り延べ税金資産に関するルールがいきなり変更となり、国有化されてしまった。いきなりストライクゾーンを狭くされて、はいフォアボールというのでは銀行もたまらないだろう」
と述べている。
 
 高橋氏の記述によると、この記事はいまも亀井氏のブログに残っているとのことだ。
 
 木村剛氏に対する取り調べが進展するなかで、木村氏が本年3月期の日本振興銀行巨額赤字決算が公表される前に、木村氏保有の同行株式を大量に売り抜けていたことが明らかにされた。
 
 報道によると、日本振興銀行が融資を実行する企業に対して、同行株式取得を持ち掛けたとのことだ。これが真実だとして、銀行保有株式ではなく木村氏個人保有株式が融資先企業に押し付けられたのなら、公私混同も甚だしい。融資を受ける企業に対する「詐欺」的な側面があり、また、銀行に対して有形、無形の損失を与える「背任」的な側面があると考えられる。
 
 日本振興銀行が中小企業ネットワーク組織を編成し、迂回融資的な資金循環を形成していたのではないかとの疑惑も浮上している。自民党現職国会議員の名前も取り沙汰されている。
 
 この問題を突破口として、竹中金融行政の闇に光が当てられることになることを念願する。