小沢氏の「政治とカネ問題」は存在しない 『永田町異聞』(2010.9.2)

 

永田町異聞 http://ameblo.jp/aratakyo/ 

http://ameblo.jp/aratakyo/entry-10637063266.html 

 

 

2010年09月02日(木)

小沢氏の「政治とカネ」問題は存在しない

前回8月30日の記事で紹介したDさんが、作成したチラシのPDFをメールに添付して送ってくれた。

 

タブロイド版の新聞のような本格的なもので驚いたが、実物はこちら を見ていただきたい。

 

前回も書いたが、Dさんは陸山会の政治資金収支報告書、土地の登記簿謄本、確認書、関連法律などを仔細に調べ、「陸山会の報告書に不記載も、期ズレも、虚偽もない」という確信を抱くにいたったという。つまり、小沢一郎氏に「政治とカネ」なる問題は存在しないというわけである。

 

そこで、筆者は、Dさんのチラシに書かれた「事実経過」を確認する作業から始めることにした。

 

問題の土地は東京都世田谷区深沢8丁目28番地5号の476平方メートルである。この土地の登記簿謄本の記載から次のことが分かる。

 

小澤一郎氏は、2004年10月5日、所有者である東洋アレックスという不動産会社からこの土地を購入するため、「売買予約」をし、10月29日に「所有権移転請求権仮登記」をしたうえで、翌05年の1月7日に「所有権移転登記」を完了している。

 

「小澤」は小沢個人のとき。陸山会代表としては「小沢」と使い分けていることに留意願いたい。

 

なぜ、陸山会が契約しなかったかというと、人格なき社団のため不動産登記ができないからである。

 

小澤氏は「所有権移転請求権仮登記」をした10月29日に3億4200万円を売主である東洋アレックスに支払った。

 

小澤一郎名義で所有権移転登記を完了した05年の1月7日、小澤一郎は、小沢一郎を代表とする陸山会との間で下記の確認書を交わした。

 

「本件不動産は甲(陸山会)が政治活動に使用するため売主より購入するものである。ところが、甲は法律上、人格なき社団であるため、甲の名義で不動産を登記することができない。そこで便宜上、乙(小澤個人)を甲の代表者として明記したうえで、売主との間で不動産売買契約を締結し、また、乙の名義で所有権移転登記申請を行うものとする(登記済み権利書は甲または甲の設定する者が保管する)。しかし、あくまで本物件は甲が甲の資金をもって購入するものであり、乙個人は本件不動産につき、何の権利も有さず、これを甲の指示なく処分し、または担保権の設定をすることはできない。売買代金その他購入に要する費用、ならびに本件不動産の維持に関する費用は甲がこれを負担する。」

 

この確認書に基づき、同じ1月7日、陸山会は小澤個人が立て替えていた3億4200万円に登記関係の諸費用を加えた3億4264万円を小澤個人に支払った。

 

小澤氏はあらかじめ、陸山会の資金が土地購入により減少することを見越し、04年10月29日に小澤個人が3億4200万円を売主に支払うと同時に、4億円の銀行融資を受け、そのまま陸山会に転貸した。

 

陸山会は即日、その資金を2億円の定期預金2本に組んだ。

 

陸山会は定期預金を05年、06年と2億円ずつ解約して小澤個人に返済した。これは収支報告書で確認できる。小澤氏は07年に4億円を銀行に返済した。

 

この間、陸山会の収支にかかわる資金の動きは、04年10月29日に小澤個人から転貸された銀行融資4億円、05年1月7日に小澤個人へ支払った土地取得代金など3億4264万円、05年、06年に小澤個人に返済した2億円ずつ計4億円である。

 

これらはいずれも各年の収支報告書にもれなく記載されており、虚偽記載はどこにも見当たらない。

 

検察は04年10月29日に陸山会が土地代金3億4264万円を支払ったのに不記載としたが、これは前述したとおり、小澤個人が3億4200万円を支払ったものである。陸山会の報告書に記載されたとしたら、それこそ虚偽記載にあたる。

 

05年1月7日に陸山会が、小澤氏の立て替えた3億4200万円に登記関連費用を加えた3億4264万円を小澤個人に支払った時点で、報告書に記載しており、この処理こそ論理的、合理的である。

 

小沢氏を起訴相当とした東京第五検察審査会の示した「容疑内容」は以下のようなものだった。 

 

「04年分の陸山会収支報告書に、土地代金の支払いや土地を記載せず、05年分の収支報告書に、土地代金分を含む約4億1500万円を事務所費として支出し、土地を05年1月7日に取得したと虚偽記入した」

 

陸山会が土地代金を小澤個人に支払って土地を取得したのは05年1月7日であるから、小澤個人と陸山会の確認書に法的問題がない限り、虚偽記入という検察審査会の判断は事実誤認といわざるをえない。

 

ただここで小澤氏が04年10月5日に売買予約をし、10月29日に「所有権移転請求権仮登記」をした段階、つまりまだ本登記に至らない時点で、土地代金全額を支払っているのはなぜかという疑問を抱く読者もいるだろう。

 

これについて、Dさんは次のように解説する。

 

「おそらく売主が『全額現金をいただけるなら、登記を来年の1月1日以降にして、来年分の固定資産税を当方で負担します』と言ったのではないかと推測します。税法によれば、1月1日の所有者がその年の固定資産税を負担することになっているからです。そしてこのような『操作』は、不動産取引においてはきわめて常識的で日常的なことです」

 

さらに、こういう疑問も湧くだろう。なぜ陸山会なり、小沢氏はこうしたことを説明しないのか。Dさんの推測を参考に紹介しておく。

 

「1月7日の本登記までの実務は、小沢氏側の、たとえば石川氏であるとか、あるいは出入りの司法書士などではなく、すべてプロである東洋アレックス側で行ったものと推測します。石川氏や大久保氏は当時の記憶脳や思考脳が混乱して、検察の手玉に取られたのではないかと思われます。1月7日といえば、言ってみれば御用始めの時期であり、1月1日の所有者が固定資産税を負担するということを念頭において進めた実務の結果としては、大いにありうる日付です」

 

なかなかの推理ではないか。判断は読者にお任せしたい。

 

いずれにしても、ここで強調したいのは、筆者が確認した限りでは、陸山会に収支報告書の記載上の不備が見い出せないということである。

 

そして、不思議なのは、登記簿謄本など関係資料のチェックは取材のイロハであるにもかかわらず、なぜマスメディアは前述したような正確な事実関係を無視して、検察の発表なりリークなりを鵜呑みにした報道を続けたのかということだ。

 

もし、公的な資料に記載された事実経過を知りながら、あえてそれを無視した報道を繰り返してきたとすれば、国家、国民の利益を損ねる大いなる犯罪といわねばならない。

 

 新 恭  (ツイッターアカウント:aratakyo