検察裏面史の暴露におののく検察首脳  『保坂展人のどこどこ日記』(2010.10.4)

 

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「検察裏面史の暴露」におののく検察首脳

 

 

政治 / 2010年10月04日

 

 大阪地検特捜部の「証拠改竄」事件の発覚から10日余り、直後に最高検に逮捕された当時の前田主任検事に、先週末は大坪前特捜部長、佐賀前副部長の逮捕と「検察組織」に激震が走った。検察庁の庁舎や検事宅に最高検の捜索が入るという異例事態が起きているが、前部長・副部長の容疑が「犯人隠避」である以上、かれらより上に事件は延びないという裏のメッセージも読み取れる。

 

 そして、大坪前特捜部長と佐賀副部長は容疑を否認。大坪前部長は「検察には未練はない」とし手対決姿勢、佐賀前副部長は「検察のストーリーには乗らない。徹底抗戦していく」と語っていると報道されている。供述内容も、最高検によるものだから、そこを割り引くにしても、なかなかシュールな構図となっている。

 

 そもそも特捜部が描いた「検察のストーリー」に事件を合わせるために、前田主任検事の強引な取り調べに加えて「証拠改竄」まで出てきた。特捜部長らも「公判中であっても事実誤認だったことを認め、事件を取り下げる」という判断をせずに、「いったんクロと決めたらクロ」とそのまま突っ込んだ。その「検察のストーリー」に乗らなかったから村木厚子さんは、無実を証明することが出来た。

 

 この捜査の中から「証拠改竄」問題が起きて、3人の検事が逮捕され最高検の取り調べを受けている。ここでもまた、「事件は上層部に波及せず」という最高検の見立てが存在する。「前田検事はすでに自白しているから君たちも認めたらどうだ」と言われても、手の内を知っている身としては、断固否認を貫くということだろう。

 

昨日の朝日新聞に特捜部で主任をつとめた弁護士の危惧のコメントに注目した。「特捜のプロの大坪氏が検察への反発のあまり、捜査の裏面史を暴露するようなことになれば、それが本当の特捜崩壊につながるかもしれない」と。大坪前特捜部長も「今回は組織を守るための宿命とあきらめて余計なことを喋らないで大人の対応をしてほしい」という願いがにじんでいるような言葉だ。

 

この裏面史の中には、8年前の「三井環元大阪高検公安部長事件」の口封じ逮捕もある。現職の検察官部がマスコミのインタビュー直前に逮捕されるなど前代未聞の事件で、「組織を守るため」に関与したのが大坪前特捜部長だった。これこそ、検事総長→最高検→大阪高検→大阪地検が一体となって下した判断だった。現職検察幹部が「調査活動費」という検察の裏金の実態を証言することを阻止するためには「シロをクロとして塗り固め、逮捕して取り口を封じる」というメチャクチャな組織の揺れを前田検察官も見ていたのだ。

 

今回の「証拠改竄」は、「割り屋」と称賛された前田検事の作法から必然的に起きた。「さあ、さぬきうどんを一緒にこねましょうよ。07年、朝鮮総連ビル売却事件の詐欺容疑で逮捕された満井忠雄氏は、前田検事から「事件の絵姿はね。こうするといいだよ」と語りかけられ、さぬきうどんこねる真似をしながら、「こねるといいい味が出てくる」(=虚構も本当らしくなる)調書を取られた。

 

前田検事が満井氏を前にしてこねた「さぬきうどん=捏造調書」は、裁判所から一蹴された。「不自然、不合理との印象は拭えない」「その信用性を高低することは困難」としたのだ。「陸山会事件」の大久保元秘書の供述調書、佐藤元福島県知事の供述調書、すべて再検証しなければならないはずだ。「大阪地検特捜部」で終わる話ではない。

 

07年9月18日東京新聞1面。「検事が組長と取引」との記事は、さいたま地検の検事が麻薬事件で逮捕された暴力団組長から「自分が拳銃を差し出す。拘置中の長男から出したことにしてほしい」と頼まれ、「自分の拳銃として警察に出せ」と言い含めた。この検事も大阪地検特捜部で郵便不正事件に絡んで調書捏造に加わった。

 

マトリョーシカというロシアの入れ子人形がある。一番大きく外側に見えているのは検事総長を顔とする最高検で、おなかを割ると大阪高検、次に大阪高検、次に特捜部と次々と同じ人形が出てくる。

豆のような人形をいくつか取り替えておしまいにしなければ、検察組織は瓦解するとおそらく考えているのだろうが、本当に膿を出すためには、「裏面史」を表に出すことだ。