【小沢氏「強制起訴」】第5検察審査会の議決要旨(下) 「検察官の判断は首肯し難い」 『産経ニュース』(2010.10.4)

 

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101004/crm1010041814027-n1.htm 

 

 

【小沢氏「強制起訴」】第5検察審査会の議決要旨(下) 「検察官の判断は首肯し難い」

2010.10.4 18:12

 

(図説明) 陸山会をめぐる虚偽記載の構図

 4小沢氏供述の信用性

 (1)小沢氏の本件土地購入資金4億円の出所について、小沢氏の当初の説明は著しく不合理なものであって、到底信用することができないものである上、その後、説明を変えているが、変更後の説明も著しく不合理なものであって、到底信用することができないものである。小沢氏が本件4億円の出所について明らかにしようとしないことは、小沢氏に収支報告書の不記載、虚偽記入に係る動機があったことを示している。

 (2)小沢氏は本件土地購入の原資を偽装するために、銀行から陸山会の定期預金4億円を担保に小沢氏個人が4億円を借り入れるに際して、融資申込書や約束手形に署名・押印したことに関し、「(元私設秘書衆院議員の)石川知裕被告から特に説明を受けることなく、求められるままに署名した」旨の供述をしている。しかし、小沢氏は本件土地購入資金として4億円を自己の手持ち資金から出したと供述しており、そうであれば、本件土地購入資金として銀行から4億円を借り入れる必要は全くなかったわけであるから、年間約450万円もの金利負担を伴う4億円もの債務負担行為の趣旨・目的を理解しないまま、その融資申込書や約束手形に署名押印したとの点については、極めて不合理・不自然である。また本件土地購入資金の原資を隠すために偽装工作として、4億円の銀行借入を行ったのであれば、原資の4億円については収支報告書に記載されないことになり、その偽装工作のために収支報告書の不記載・虚偽記入がなされることは当然であって、このような銀行借入を行うことを了承して自ら融資申込書などに署名・押印している以上、当然に不記載・虚偽記入についても了承していたものと認められることになる。

 5状況証拠

 前記の定期預金担保貸し付けが行われた際に、小沢氏が融資申込書や約束手形に署名・押印していることのほか、4月27日付検察審査会議決において指摘されているように、平成16年10月29日に売買代金を支払い取得した土地の本登記を平成17年1月7日にずらすための合意書を取り交わし、合意書通りに本登記手続きを同年1月7日に行うなど、土地取得の経緯や資金についてマスコミなどに追及されないようにするための偽装工作をしている。また、小沢氏と石川被告、陸山会会計責任者だった大久保隆規被告、元私設秘書の池田光智被告の間には強い上下関係があり、小沢氏に無断で石川被告、大久保被告、池田被告が隠蔽(いんぺい)工作をする必要も理由もない。

 さらに小沢氏は平成19年2月20日に事務所費や資産などを公開するための記者会見を開くにあたり、同年2月中旬ごろ、池田被告に指示し、本件土地の所有権移転登記が小沢氏個人の名義になっていることから、本件土地が小沢氏個人の財産ではなく、陸山会の財産である旨の確認書を平成17年1月7日付で作成させ、記者会見の場において、小沢氏自らこの偽装した確認書を示して説明を行っている。この確認書の作成年月日の偽装は事後的なものであるが、収支報告書の不記載・虚偽記入について小沢氏の関与を強くうかがわせるものである。

 6まとめ

 以上の直接証拠と状況証拠に照らし、検察官が小沢氏と大久保被告、石川被告、池田被告との共謀を認めるに足りる証拠が存するとは言い難く、結局、本件は嫌疑不十分に帰するとして、不起訴処分としたことに疑問がある。

 検察官は起訴するためには、的確な証拠により有罪判決を得られる高度の見込みがあること、すなわち、刑事裁判において合理的な疑いの余地がない証明ができるだけの証拠が必要になると説明しているが、検察官が説明した起訴基準に照らしても、本件において嫌疑不十分として不起訴処分とした検察官の判断は首肯し難い。

 検察審査会の制度は、有罪の可能性があるのに、検察官だけの判断で有罪になる高度の見込みがないと思って起訴しないのは不当であり、国民は裁判所によって本当に無罪なのかそれとも有罪なのかを判断してもらう権利があるという考えに基づくものである。そして、嫌疑不十分として検察官が起訴に躊躇(ちゅうちょ)した場合に、いわば国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度であると考えられる。

 よって、上記趣旨の通り議決する。