摩訶不思議な検察審査会の平均年齢の怪 保坂展人のどこどこ日記(2010.10.14)

 

保坂展人のどこどこ日記 http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto 

http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/b77ad9ebb1ab7b706d8c25760d38c68a 

 

 

摩訶不思議な検察審査会の「平均年齢」の怪

 

政治 / 2010年10月14日

 

 2回目の「起訴相当」の議決で「強制起訴」の権限を有する検察審査会が議事録さえ公開されず、唯一無二の公開情報だった「審査員の平均年齢30・9歳」が誤りだったことが昨日、判明した。事務局が訂正した平均年齢は「33・91歳」だったが、これも「間違いではないか」という問い合わせが各方面から殺到。情けないことに再訂正した年齢は「34・55歳」となった。この「34・55歳」は、東京第5検察審査会の1回目の「起訴相当議決」の時の平均年齢とコンマ以下2桁まで一緒。もちろん、人員は入れ替わっている。

 数字は時として雄弁に物事を語る。私もにわかに理解しがたい話であったので、白い紙に鉛筆と電卓を準備して計算しながら、計算と検算を進めていった。まず、最初の第一報を振り返ってみよう。

[引用開始]

検察審査会:小沢氏議決の委員年齢訂正 平均33.91歳

 東京第5検察審査会の事務局は12日、政治資金規正法違反(虚偽記載)で小沢一郎・民主党元代表を強制起訴することを決めた「起訴議決」(4日公表)にかかわった審査員11人の平均年齢を「30.9歳」から「33.91歳」に訂正すると発表した。事務局の担当者の計算ミスが原因で、事務局は「誠に申し訳ない」と謝罪した。
 事務局によると、平均年齢を計算する際、担当職員が37歳の審査員の年齢を足し忘れ、10人の合計年齢を11で割るなどしていた。議決公表後に一般市民らから「平均年齢が若すぎて不自然ではないか」などと問い合わせがあり、再計算したところミスが判明した。(毎日新聞)

[引用終了]

 この記事が第一報。「37歳の人」を合計するのを忘れて、10人分を合算して11で割っていたとのことなので、念のため検算してみよう。

30・9×11=339・9 これが実は10人分の合計だったはず。これに「37歳」を足すと、333・9+37=376・9となる。これをもう一度11で割ってみよう。34・26となり、報道されている「33・91」にはならない。ということに多くの人が気づいたようで、再訂正の記事が載っている。

[引用開始]

小沢氏起訴議決の検察審査員、平均34.55歳に再訂正

 小沢一郎・民主党元代表を政治資金規正法違反の罪で「起訴すべきだ」と議決した東京第五検察審査会の審査員11人の平均年齢について、審査会事務局は13日、議決日の9月14日の時点で計算すると「34.55歳」になると改めて発表した。

 計算ミスを理由に12日に平均年齢を「30.90歳」から「33.91歳」に訂正したばかり。報道機関から「どの時点の年齢か」との問い合わせを受け確認したところ、任期6カ月の審査員の「就任日」で計算していたという。

 審査員は5〜6人ずつ3カ月ごとに入れ替わる。これまで公表した別事件の平均年齢も、異なる就任日を起点にしていたといい、「不適切だった」と判断。今後は議決時の年齢で統一するという。 (朝日新聞)

[引用終了]

電卓ではじいた34・26歳ではなくて、「35・55歳」(議決時)となったが、従来は就任時で計算していたが、今回は議決時で計算したという。一件落着と思いきや、新たな疑念がわき起こる。日本経済新聞の記事だ。(リンク先を間違えていました。訂正しました)

「検察審が1回目の『起訴相当』を議決した時の平均年齢は34・55歳」

エッ? と首を傾げる。2回目の平均年齢も「再計算で34・55歳」、同一案件の1回目の議決も平均年齢「34・55歳」でコンマ以下二桁までぴったり一緒。審査会構成メンバーは入れ替わったはず。こんな偶然が起こる確率はどの程度あるのか。

とここまで書いてきたところで、フリーライターの畠山さんが事務局と電話でやりとりした様子をブログに書いてるよと教えてもらった。読むと、笑ってから空恐ろしくなる内容だ。

割り算とごろか足し算も間違える検察審査会事務局のテキトーさ

 

・・・・・・・・・・

(以下、フリーランスライター畠山理仁のブログより(ホームページ管理人))

割り算どころか足し算も間違える検察審査会事務局のテキトーさ フリーランスライター畠山理仁のブログ(2010.10.14

 

フリーランスライター畠山理仁のブログ http://hatakezo.jugem.jp/ 

http://hatakezo.jugem.jp/?eid=6 

 

「割り算」どころか「足し算」も間違える検察審査会事務局のテキトーさ。

(写真説明)

「検審事務局の皆様と割り勘する時は注意が必要だっちゅうわけだ」

 

 思わず小沢一郎氏の口真似でそう言いたくなるほど、検察審査会事務局がテキトーな存在であることがわかった。

 

 1012日、東京第五検察審査会事務局は、これまで「30.9」としてきた審査員の平均年齢を「33.91」に訂正した。その際、「最初の計算から漏れていた一人の年齢は37歳」と発表してしまったことにより、「計算が合わない」との指摘が続出。

 それを受けて翌日の1013日夕方には「議決日の914日時点では34.55」と再度訂正する事態に陥ったのだ。

 

 ここまでくると「本当に審査会のメンバーは実在するのか」「非実在審査員ではないのか」との声が上がっても、正面切って反論しにくいのではないか。

 

 同審査会の平均年齢が初めて「30.9」と公表されたのは104日。小沢一郎元民主党代表に対する「起訴すべき」との議決が公表された時だった(議決自体は民主党代表戦当日の914日)。

 

 通常、審査員の平均年齢は公表されない。それなのに小沢一郎氏の事件に関しては審査員の平均年齢が公表された。

 疑問に思った筆者は、東京第五検察審査会に電話で問い合わせてみた。対応したのは東京第五検察審査会の報道対応を担当する東京第一検察審査会の手嶋健総務課長。平均年齢を公表した理由は次の通りだという。

 

「一部の著名事件、報道機関が注目して報道されるような事件については、例外的に報道機関からのご要望によって、そういう取り扱いをさせていただいています。従前からそのような例がございますので、個別の事件ごとに判断をしてそういう取り扱いをさせていただく場合がございます」(手嶋氏)

 

 最初に審査員11名の平均年齢が「30.9」と公表されたとき、各方面、とりわけツイッターを中心とするインターネット上では「検察審査員は選挙人名簿から選ばれるのに、審査員の平均年齢が若すぎないか?」との疑問が噴出した。

 小沢一郎氏自身も同審査会の議決を受けて開いた107日のぶら下がり会見で次のように語っている。

 

11人の委員ということと、平均年齢30歳ということしかわかりませんので、まったくの秘密のベールの中に閉ざされておるものでございます」(小沢氏)

 

 こうした指摘を受けて東京第五検察審査会が再計算した結果、当初の「30.9」は誤りで、「33.91」が正しい数字だと訂正されたのだ(前述の通り、13日夕方には「議決日の914日時点では34.55」と再訂正)。

 

 いったい、検察審査会事務局はどんな複雑な計算方法で平均年齢を算出しているのか。前出・手嶋氏に聞いた。

 

畠山:審査員の平均年齢は11人全員の満年齢を足して11で割る」方法ですか?

手嶋:そうです

 

 つまり、最初に公表された「平均年齢30.90909)歳」を算出する際に使われた「11人全員の満年齢の合計」は「340」になるはずだ。

 筆者が13日午後4時すぎに確認した時点では、NHK、毎日新聞、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞などの記者クラブメディアが訂正の理由として「平均年齢を計算する際、担当職員が37歳の審査員の年齢を足し忘れ、10人の合計年齢を11で割るなどしていた」(毎日新聞)と報じていた。そこでこの報道を元に筆者が再計算してみたところ、次のようになった。

 

34037÷1134.27273  ……34.27」。

 

 おかしい。なぜか検察審査会が訂正した33.91」にはならない。おまけにこの「34.27」という平均年齢は、小沢氏に1回目の「起訴相当」の議決を下した審査員11人の平均年齢と全く同じである。

 ここでポイントになるのは「割るなどして」の「など」の部分だが、当初、記者クラブメディアは軒並み「など」の部分については記事中で触れていなかった。つまり、検察審査会の説明を鵜呑みにして自らは再計算せず、そのまま「報道」したということだ。

 再び、筆者と手嶋氏との会話を記す。

 

手嶋:単純に計算していくと、(筆者・畠山の)ご指摘の通りなんですよ。足し忘れていた人を加えて11で割れば正しい数字になるんではないかというところなんですけれども、あのー、その経過でですね、単純に10人(分)を11人(分)という足し上げの数字が間違っていたというところだけでなくて、そもそもの計上した数字自体に誤りがあって、結果としてこのようになってしまったというところなんです。

畠山:ということは、最初に発表された30.9というのも、30.9ではなかったと。今回検算をした際に漏れていた人の数字を

手嶋:加えて11で除しても、まあ、間違っていたということになりますですね。

畠山:最初の数字は「30.54」になるということですよね?

手嶋:えーと、まあ、そもそもの数字が間違っているので、この数字についてはお忘れいただいたほうが。

畠山:30.9になるための「340」という数字がそもそも間違っていると。

手嶋:はい、はい。

 

 なんと「単純な割り算」どころか「単純な足し算」まで間違えていたということだ。そんな人達に審査員の選定を任せているとは恐ろしい。

 検察審査員は選挙人名簿から「くじ」で選ばれることになっている。審査員(11人でーす)と補充員の計22名は自治体が候補を選ぶ。その候補をもとにコンピュータで審査員と補充員を選ぶというが、選定は適正に行われているのか。「間違って」恣意的な人選が行なわれているのではないか。そんな疑念を抱かれても仕方がない。それほど単純で致命的なミスだ。

 いったい、どうしてこんなミスを犯したのか。

 

手嶋:お恥ずかしい話なんですけれども、手作業で、そのー、えー、元のぉ〜、基本となる名簿からですね、手書きでピックアップをしてですね、メモを作って、そしてまた電卓を叩いて計算するというような形で、手作業で行なっていた関係でですね、えー、ちょっと、あのー、そのー、数字、計算が間違っておりましてですね。それで、ま、担当者自体としては2度やって、同じ数字が出たので、ということで、それが正しいだろうということで、その数字(当初の30.9)が私どもの方に上がってきたということになります。

畠山:最初の計算で漏れていたのは何歳の方ですか?

手嶋:はい。あのー、それについてもですね、ちょっと、あの、ま、あのー、37というふうには申し上げたんですけれども。

畠山:37で計算しても合いませんでした。

手嶋:全然、計算合わないですよね。ええ。で、そもそも数字が間違っておったと。基礎にした数字が間違っていたと。

 

 手嶋氏は「人為的なミス」が起きた理由について、次のようにも語った。

 

手嶋:えーと、まあ、担当者が、まあ、個人情報なんで、こちらでもいろんな人に広げてというところまでは。ま、二度やって、二度合っている。検算をしているということでしたので、そのまま鵜呑みと言いますか、別の者が改めて検算を行なうというような体制ができていなかったということで。ま、今後についてはですね、そのように別の者が第三者で計算する、あるいは、そのパソコンの表計算ソフトなりを使ってですね、人為的なミスを極力なくする方策を取ると。対策をとらせていただきたいと思っております。もう、本当に、間違ってしまって申し訳なかったと思っております。

 

 この記事執筆時点の14日午前2時現在、東京第五検察審査会の審査員の平均年齢は「30.9」(104日)33.91」(1012日)34.55」(1013日)と、コロコロ訂正されている。11人の審査員の平均年齢を出すのに、914日の議決以来、なんと1カ月近くもかけている。「11人分の満年齢を足して11で割る」という行為は、そんなに難しいことなのか。

 

畠山:いっそのこと、11人の審査員の年齢をそれぞれ何歳であるか公表したらいいのではないか?

手嶋:具体的には特定にもつながる恐れがありますので、お答えしておりません。申し訳ありませんが。

畠山:え? 年齢だけでもですか?

手嶋:はい。

 

 これは詭弁だ。年齢を公表すると「特定にもつながる恐れがある」というのなら、検察審査会事務局が公表してしまった「一度目の計算で漏れた37歳」の審査員は特定される可能性がある。

 自分のせいでカウントされなかったわけではないのに、一人だけ可哀想ではないか。

 検察審査会は小沢氏の事件の審査を申し立てた「(甲)」さんの人権だけでなく、「カウントされなかった37歳」の審査員の人権も大切にしてほしい。

 

 ちなみに「平均年齢を計算し間違えた」検察審査会事務局の担当者の「年齢」は公表されていない。そのため、筆者は「誰であるか」を特定できなかった。

 審査員の人権はないがしろにされたが、事務局担当者の人権は「守られた」のだ。