05年郵政選挙」の幻惑をたたきつぶす「かんぽの宿問題」 『保坂展人のどこどこ日記(2011年2月25日付)』(2011.3.2)

 

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05年郵政選挙」の幻惑をたたきつぶす「かんぽの宿問題」

 

かんぽの宿・郵政民営化 / 2011年02月25日

 

 昨日から「郵政民営化」に関する情報をツイッターで提供すると、予想外の反響があった。私は2年前の「情報戦」の真っ只中にいたので、すべてを語り尽くしたようにも思っていたが、現実に報道されたことは一部に過ぎずほとんどの事が知られないままに「風化」しかけているかと思った。05年の「小泉郵政解散」「刺客騒動」という点でも、戦後史に残る出来すぎた大芝居だった。「郵政民営化、イエスかノーか国民に聞いてみたい」と記者会見で述べた小泉純一郎流の名演技に国民の多くは酔った。そして、自民党の歴史的大勝を得て、郵政法案は衆参両院をスピード審議で通過し、「民営化」の道筋がつけられた。

 国民が「二日酔いの朝」のような不快感に襲われるまでにそう時間はかからなかった。「住民税増税」「年金記録問題」「後期高齢者医療制度」「障害者自立支援法」と高齢者や生活弱者を直撃するような政策が続き、街頭演説をしていると「小泉純一郎に騙された。二度と自民党には投票しない」と顔を真っ赤にして怒るお年寄りが何人もいた。09年8月の政権交代選挙は、「郵政選挙」のやり直しという側面があった。

 政治には物語がある。国会が終わると毎日、オペラ、歌舞伎、芝居を見てきた小泉純一郎元総理は、脚本・主演の「郵政解散」を見事に演じきった。テレビのワイドショーも、真夏の刺客劇を無我夢中で伝え、メディアも大衆もまるで手のひらに乗ってしまったかのようなマスイメージ操作の勝利だった。郵政民営化法案が通って、本当に喜んだのは誰だったのか。その姿がほの見えてくるのが、3年半後の09年1月に鳩山邦夫総務大臣の指摘で浮上してきた「かんぽの宿一括売却問題」だった。

 日本郵政がかんぽの宿等の簡易保険加入者福祉施設を一括売却しようと「競争入札」を偽装した公示をしたのが08年春。最終的に残った2社のうちオリックス不動産と契約を締結したというもので、鳩山大臣は「出来レースじゃないか」と疑義を挟んだ。私は、これは「絵解き」になるとの直観が働いた。多くの人々がもやもやとした気持ちでいる「小泉劇場」の舞台裏につながるのではないかと感じたからだ。ご承知のように、かんぽの宿等の施設を売却するという仕組みは、郵政民営化法案の付則に書き込まれたものだが、仮に余剰施設と事業を売却するにしても、少しでも高く売りたいというのが日本郵政の利益にかなうのは当然だ。

しかし、逆のことが行なわれた。日本郵政は不動産鑑定業者に対して、「もっと安くしろ」「こんな値段じゃだめだ」と圧力をかけていたのだ。

〔引用開始〕

かんぽの宿評価額、不適正鑑定で大幅減額か 最大95%

かんぽの宿は05年に民間売却が決まった後、07年の不動産鑑定評価で突然、評価額が前年のほぼ3分の1の計約98億円に下がった。これは、評価額を出す際、土地・建物の価格を示す「積算価格」から大幅に減額したためだ。

 07年の鑑定評価書では、鑑定した3社のうち、38施設を担当した東京の不動産鑑定会社が24施設を積算価格から80〜95%も減額していた。関係者によると、07年8月に当時の日本郵政公社から「経営改善を見込む必要はない」「この価格では受け入れられない」と指摘され、一部を80〜95%減額した。だが、さらに公社から「億を超える施設は売れない」「もう少し厳しくみてほしい」と言われ、減額の施設を増やしたという。

 この鑑定会社は前年の決算などから23施設を「赤字」、1施設を「低採算」と判定。売れにくいとして減額率を高くした。同社の関係者は「郵政の条件はおかしいと思ったが、契約先なので断れなかった」と、事実上減額を指示されたと受け止めたという。

(朝日新聞2010年11月21日)

〔引用終了〕

通常では考えられないことだ。郵政の簡易保険事業により福利厚生施設として建設してきた「かんぽの宿」を売却するのなら、少しでも高くというのが常識だ。ところが、その逆の指示が売り主である日本郵政から飛び出すとなると、その担当者には郵政事業に対してのロイヤリティはなく、元いた不動産会社等の利益につなごうとしていたのではないかという疑いが出てくる。

「民間企業として自由な市場原理にもとづく競争にさらされることでカツリョクつけていく」などのもっともらしい説明を鵜呑みにしていた人々も黙って下を向くしかないだろう。2年前のことを、なぜこんなに書いているのかと疑問に思う人もいるかもしれない。ずばり、この問題は終わっていない。ふたたび、「第2次小泉劇場」が再開され、「政権交代によって改革が遅れた」というデマが充満する強烈な巻き返しを予想しているからだ。これも、単なる直観だが、その時にしっかりした議論を展開するための準備をしておく必要がある。

以下は、09年春に阿佐ヶ谷ロフトAで行ったトークライブの動画は、1時間を超えるものであるにもかかわらず、トップ動画には3万7000を超えるアクセスがあった。以下、貼りつけておくので週末にでも御覧頂きたい。もっと、もっと知られていいテーマだ。

(以下省略)