どんな雨も、あなたが傘をさせば
「・・・・・雨?・・・」
暖かな。雨へと姿を変える


+++ 雨 +++


空からポツリと水滴が落ちた
見上げると、薄い灰色だった空が今は色濃いものとなっている
「・・・どうしよう・・・」
その日、食料補充の為に買い出しに出ていたリアラは
両手に荷物を抱えたまま嘆息した

「雨、降ってきたんじゃないかい?」
宿屋の一室でナナリーが呟く
「え?・・・あ、本当だ」
何時の間にか降ってきた雨に、カイルは無意識に眉を顰めた
「そう言えば・・・さっきから曇ってたもんね・・・
明日の出発には止むかな?」
「そんな長くは続かないよ。通り雨だろうし」
首を傾げてきたカイルに苦笑したナナリーは、ふとリアラを思い出す
「あ・・・。リアラが買い出しに行ったままだっけ」
その言葉に案の定、カイルが反応する
聞くや否や外に出る準備を進めた
そして、近くにあった手ごろな赤い傘を手に取ると
「俺、リアラ迎えに行ってくる!!」
降り出してきた雨などものともせず、外へと駆け出していった
「・・・通り雨だ、って言ってるのに・・・」
飛び出していったカイルの背を見ながら
ナナリーは再び苦笑した

帰り道
丁度、良い雨しのぎの場を見つけたリアラは
次第に強くなる雨音を聞きながら一息ついた
走ってくる途中、多少濡れたが、荷物に支障はない
「やだなぁ・・・足止めなんて」
通り雨
だとしても。何時止むかは判らない
ざぁざぁと、雨が地面を打つ音だけが響く
これだけ大きな音なのに、雨音というのは
考え事をはじめると唐突に聞こえなくなる気がするから不思議だ、
と、リアラは時折思う
そんな時はいつも
世界中、居るのは自分一人だけなのでは
という錯覚におそわれる
・・・今だってそう
街を行く人影は一つも無い
だから・・・・・不安になる
「・・・・・・・・カイル」
ふと漏れたのは、自分が最も頼りにする彼の名前
刹那、雨音の中に人の声を聴いた気がした
自分の名を呼ぶ声が、聴こえた・・・
まさかと思い、顔を上げると
赤い傘がちらと見えた
彼、だ・・・
驚いた。
しかし、それにも勝る嬉しさが込み上げて リアラは、傘の主に手を振った
「カーイル〜!」
「リアラっ!!」
カイルはリアラの姿を認めると、嬉しそうに駆け寄った
「探したよ、リアラ
お店の方に行っても居なくてさぁ」
冗談交じりにふくれてみせると
リアラが可笑しそうに、小さく笑った
「ごめんごめん
・・・でも、迎えに来てくれたの?」
よく見ると、傘をさしていたというのに所々濡れている
足元など泥が付いてる辺り、恐らく走ってきてくれたのだろう
そんな様子に、感謝と嬉しさでいっぱいになる
「勿論っ。さ、帰ろう、リアラ!」
「・・・うんっ!」
赤い傘に二人のからだが収まると、リアラに笑顔が浮かんだ

世界の中で独りなんかじゃない
どんなに雨が降ってても
必ず、カイルが傘をさしてくれるから・・・・・

Fin.


■ あとがき ■

雨。それはほのぼの要素の一つだと思います。
でもテイルズ・・・しかもカイルとリアラで「傘」
と言ったら「葉っぱ傘」だろうと思った私。
まぁ何にせよ雨。雨は雨でも通り雨・・・・・。
一番好きであり、かつ、嫌いな雨の種類です。
そんな訳で仲良しこよしなカイリア小説。雨。
御一読頂きありがとうございました♪


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