コールマン山絵日記

 

 

奈良三重県境の台高山脈の明神平へ岳工作氏、小原庄助氏と年末鍋登山に出かけました。


12月29日 −夕日に映える明神平―
 朝9時、年末の閑散とした大阪本町で岳工作、小原庄助の2名と落ち合い、台高山脈大又登山口へと車を走らせた。
毎年年末は山中であたたかい鍋をつつきつつ一年の反省と来る年への抱負を、この3名で語り合う恒例行事、さて今回はどうであったか。
 11時45分に大又のバス停から車で10分ほど進んだところで車を駐め、ザックを下ろし食料、酒などの荷物の配分、今回の食料は
「けんちん鍋」。野菜、鳥肉、魚など結構な重さ、一方酒は、バーボン(ワイルドターキー)、焼酎(いいちこ)、酒(菊正)、ビール(スーパードライ)
とこちらも食材に劣らずの重さ。そのビールを私が無造作に車から外に出したため、小石の尖ったのにアルミ缶が傷つきそこからビールが
霧状に噴出。「おい!これで1本無駄にしたやないか」と岳氏の叱責の声。後々までも言いつづけられ、お酒の恨みは本当に怖いものである。
結局、12;13出発。12:30林道終点を経由、このあたりから道にもうすっらと雪。そろそろアイゼンが必要と岳氏の判断により、昼食とアイゼン
装着休憩12:57。昼食は全員カップ麺。いい忘れたが今回はことごとく、麺類で統一。そのココロは「面食いの小原庄助さんにあやかろう!」
 1時間程度休憩して再度出発。14;40には滝の脇を通過、滝は凍結していなかった。滝の上部に出た頃よりいよいよ雪が深くなり特に
北に面した場所では20センチ程度の積雪、同時に木々の枝も白く化粧を始めてきた。昨年はこの付近で日没直前の夕日が樹氷に反射して
えもいえぬ色の世界をかもし出していたが、今年は1時間早いため明神平に到着して夕日を楽しむこととした。
 16;05明神平に到着。まずはテントサイト確保、西風を避けるため天理大学小屋の反対側に設営のための地ならしならぬ雪ならし。
そうこうしているうちに、日が西に傾き明神平全体が茜色にそまりつつあった。水無山の樹氷が初めは鮮やかな茜色、日が傾くにつれて
淡いピンク色へと変化。山全体サクラが満開になったような錯覚。遠く薊の脇に夕日が沈む、16:54。丁度反対側には満月が上ってきた。
 さて急いでテント設営し、テントの中で鍋準備。今回初のけんちん鍋、いりこダシに具たくさん、生味噌がマッチして、温まるわ酒が進むわで
なかなか好評。最後はソーメン入れてにゅう麺、ここも麺類で締め。他に登山客が居ないので心置きなく、大いに飲んで騒いだ夜であった。
ときたま外に顔を出すと、満月に雪明りが反射して幻想的な明るい夜。澄んだ空に星が瞬いていて、来る時のカーラジオの「明日は強い冬型
の気圧配置になるでしょう」の予報も全く外れたのでは、と思える夜であった。

面食いの小原庄助氏 樹氷の中の岳工作氏 明神平に到着した岳工作氏 夕日で赤く染まった樹氷
夕日に染まった2人
左;岳工作氏 右;小原庄助氏
薊の脇に沈む夕日 テントの中での山男豪快料理 鍋の出来上がり

12月30日 −一転猛吹雪の下山―
 深夜、ゴウゴウと風の唸り声、と木々のざわめく音が激しさを増していくのを、うとうとした意識の中で聞きつつ寝入っていた。
「おい!起きよう!」タイムキーパーの小原庄助氏が起床時刻の7時に声を上げる。が、だれもシュラフからは出ようとしない。で結局3人シュラフ
から出たのは8時。「外はどないやねん」と岳氏。入り口のファスナー明けてびっくり。昨日と一変して吹雪しかも濃いガス。「どないするかメシ
食って考えよう」。「どないするか」とは当初予定の薊岳経由で帰るか、このまま素直に大又に降りるかである。「メシ」とはうどんである、麺類
である。3人でうどん5玉分食べ、コーヒーでひとごごちついた。でも外は吹雪とガスが依然健在であった。「今回は薊あきらめよう!」と岳氏。
渡渉跡の消えた雪道でのガスはコース誤る危険性が大であるのがその根拠であった。小原庄助氏、私もこの吹雪で厭戦気分が支配的だった
んでもちろん異存無しであった。結局テント撤収して下山始めたのが11:40。吹雪のテント撤収はさすがに辛いが、思ったほど気温は低くな
かったのが幸いであり、体を動かせばそこそこ寒さを感じなくて済んだ。11;40撤収終えて下山開始。昨夜は40センチ以上の積雪があったよう
で、場所によっては太ももまで雪に埋もれながらのラッセル。もちろん昨日の渡渉跡は埋もれたため、木の枝に結えてある目印を頼りに慎重に
進む。それでも30分程度下れば吹雪もマシになり、時おりシリセードを交えながらの快適な下山となった。山での危険が一応去ると、今度は
駐めてある車が気がかりとなる。おそらく大又付近も相当の降雪が予想された。
 その駐車場に13:30到着。予想とおり車は雪にすっぽり覆われ、道も10センチ程度の積雪。チェーンを装着しゆっくりと進んだがものの5分
程度で道に雪は無くなり、大又バス停前でチェーンを外し岐路へ、下界に近づくにつれて天気は良くなりまわりの山々が白く反射して美しい。
極めつけはR166方面から見た高見山の威容であった。雲が切れた瞬間に白く輝く姿は圧巻。岳氏のシャッターにも力が入っていた。
来年はあの頂で樹氷を眺めたいと思い、大阪へと帰っていった。

吹雪の中の2人
左:岳工作氏 右:小原庄助氏
吹雪の中の筆者(コールマン)