コールマン山絵日記

     年末恒例の雪中鍋登山。2002年は比良山系武奈ヶ岳へ岳工作氏、小原庄助氏と共に行きました。


12月28日 −山へは登らず鍋で暮れた―
 午前10時20分、大阪本町にある「伊藤忠」前で駐車中のルームミラーに写った岳工作氏の姿が徐々に大きく、、、夏の東北山行
からおおよそ5ヶ月ぶりの再会となった。一方の小原庄助氏もその数分後に到着。快晴のなか名神を東へと走らせた。
さて今年は例年の台高山脈ではなく、ちょっと目先を変えて比良山系の武奈ヶ岳を目指し、琵琶湖から昇るご来光を仰ごうとの趣向。
大津インターで降りて、国道367号線を北上。途中から路肩は雪、とうとう花折トンネル出た付近でタイヤチェーン装着。慎重な運転の
末13;30に坊村に到着。
 まずは、明日に備えて登山口の下見。登山口はもうすでに20センチ程度の積雪。脇の地主神社、明王院は雪の中で古式ゆかしい
面持ちでたたずんでいた。
 「御殿山は股まで雪に埋もれる状態ですよ」と、今しがた御殿山から帰ってきたパーティの言。「スノーシュー無いとキツイな!でも行く
しかないやろ!」岳氏はそのパーティのスノーシューを眺めながら言葉を引き締めた。 
 山間の夕暮れは早い。15時には日もかげり始め、近くのキャンプ地でテント設営し、恒例の鍋物パーティ。今回の鍋物の昨年同様
のケンチン汁鍋。体も温まり、外には夜の帳が下りたころチラチラと雪が舞い始めた。年末の疲れか?明日の早出を慮ってか?この日は
いつもに比べ酒量も増えず早々と20時半にシュラフへと潜り込んだ。


12月29日  −腰までの積雪に前進断念ー
 小原庄助氏の携帯アラームで起こされたのが2時半。3人比較的すばやくシュラフより抜け出し,暖かいうどんを体に流し込む。
外は雪は止んでいるが星はなく厚い雲が空を覆っているよう。4;10に登山口より出発。まずは御殿山を目指してのジグザグの急登で
ある。ただトレースがしっかりと着いているため足元は比較的確かに登れるが、いくら登っても下界の街灯が眼下に入り、精神的にも辛
い登りであった。登り始めて1時間ほど立ったころから頼りにしていたトレースもところどころ消え始め、膝まで埋もれてのラッセルと、コース
確認をしながらの厳しい登山となった。このころより武奈ヶ岳のご来光は絶望的となり、ともかく武奈ヶ岳にたどり着くことすらできるかどう
かと言う状態となった。7時ごろ完全に夜が明けたが、空は厚い雲に覆われ、場所によっては激しい風と雪。一方体は腰まで雪埋まって 
のラッセル。雪を掻き分け、掻き分け、もがくが、ほんの数メートル進むのみ。雪に対しての無力感が凍てつく風とともに、しみ入ってくる。
「おい!一本しようか」と岳氏、歩き始めて約3時間半、初めての休憩であった。「このまま行ってもいつ着くか判らんし、景色最悪やな」
行動を止めると体の芯から寒さと震えが、、、。もう進みたくないのが正直な思いであった。一方の小原庄助氏は余裕の表情であったが
さすがに「もうたまらん!」といった感じ。その間にも寒風は容赦なく襲う。「よし、もうええやろ!下山や」8時であった。  
 下山は今しがた我々が作ったトレースに沿ってと思っていたが。風の強いところではすでに雪に埋まっている、、、。ほんの小1時間であ
る。登りのトレースが消えてたのも無理ない話であった。雪の怖さをまた実感。途中ラーメンを食し、滑らぬ尻セードを何度か試み、よう
やく11時20分登山口に到着。登山口は冷たい雨に変わっていた。 
 車中で一心地ついたとき「事前準備が万全やったら天候も味方するんやな」と後部座席の岳氏。夏の東北登山も天候に恵まれな
かったことが思い起こされ、この言葉で2002年の登山の一つの総括と反省をした思い。来年こそは、とキーを回し帰路に。
 途中、大原の里で天気が良くなり、京都市内は正月を控えてのあわただしき夕暮れの寒空が広がっていた。


テントでのケンチン汁鍋
きびしいラッセル続く
雪中での岳工作
雪中の小原庄助
すべらぬ尻セード