コールマン山絵日記

     年末恒例の雪山鍋登山。今年も昨年同様に比良山系の武奈ヶ岳を目指しました。


12月27日 −不吉な出だし―
 冬晴れの朝、例年同様岳工作氏、小原庄助氏と大阪市内にて合流。いつもは皆、開口一番ダジャレの競演からスタートするであるが
今回は、岳工作氏がもたらした知人の訃報から始まったのであった。車中の空気も湿りがち、それに追い討ちをかけるかのように、
「出発時に家の前でカミさんが写真を撮ってくれるし、初めて登山計画書せがまれたんだよ」と小原庄助氏。のっけから不吉な暗雲が、、。
天候もそれに呼応するように京都の出町柳を過ぎるころ黒い雪雲が空を覆い、一転して大雪となった。大原あたりから車道に雪が積もり
はじめ、チェーンをつけるべく避難するように駐車場へ滑り込ませた。と、その時「あんたら雪かきしてるとこに勝手に入って!」おばさんの 
怒りの声が、、。「すみません!チェーン着けさせてください」と平身低頭するも、納まりきらない表情。「雪かき代わりにします」と言うが早いか
岳氏、おばさんの手からスノーダンプを渡してもらい、駐車場内の除雪を始め、小原庄助氏と私はその間にチェーンの取り付けを始めた。
無事チェーンを着け終えて出るときは、件のおばさん、にこやかに我々の車に手を振ってくれた。機転の岳氏「あれはエライ作業やでー」
 12時半ごろ登山口の坊村に到着。そこは一面の雪景色。近くのレストラン「茶坊」で昼食。「この雪で武奈は危険ですね。明日の昼
まで降り続くのではないですか?」とマスター。しばらく悩んだ末、行くだけ行こう。ということで登山の準備を始めた。
 昨年の反省を踏まえ、今回はスノーシュー、ワカンを用意しての登山、私と岳氏はスノーシュー、小原庄助氏はワカンをさっそく装着し
14時40分登山開始。ルートにはしっかりとステップがあり、かえってスノーシュー、ワカン共に登り難い状況。さらに木の根が邪魔をし苦労
しながらの登山。30分ほど登ったところで一本。「おい、このまま行ってエエもんか悩むな」「雪が止めばいいのですが」「雪降って怖いのは
ステップが消えて道迷うことや」、、「・・・・」、「山で進退迷ったら、安全策が鉄則や!」自らの迷いと、不吉な暗雲を飛ばすかのような、
力の込めた岳氏の言葉であった。
 坊村に戻り、その付近でテントを設営し、例年通り鍋パーティーを始めた。明日も雪であれば登山そのものを断念せざるを得ない、
そんな、一種言い訳めいた思いが、酒量を増やし、結局シュラフに身を横たえたのが深夜であった。


12月28日  −御殿山より武奈を望むー
 時7ごろ一応目が覚めた。が、外は小雪が舞っていた。「俺は寒くて寝れなかったが、ずーっと降ってたぞ」と小原庄助氏。それを聞き
今日はダメかなと妙に納得しに再度シュラフへと潜り込む。9時ごろトイレに立つためテントを出ると、何と!すばらしくいい天気に変わって
いるではないか。さっそく昨夜の鍋の残りで雑炊を作り、遅い出発では有るが登山開始した11時15分。岳氏と私はスノーシューを
デポし、小原庄助氏はワカンを装着して登りはじめた。晴れると気温が上昇し、すぐさま汗だく、木々からは融けた雪が時折頭上へと
頻繁に落下してくる状態。ワカンの小原庄助氏、ステップの上を歩き難いのか辛そうな表情。途中でデポに換えて進む。3名ともいずれ  
ステップが消えた時点で、それらの装着を目論んだ。いくつかのピークを越えてようやく昨年断念した場所まで到達。さすがにもう十分です
といった感じの小原庄助氏。「出発遅いから、武奈無理でも、琵琶湖見えるとこまで」と岳氏。さらに登り続ける。ステップは有り、スノーシュー
は依然デポしたまま。、、、、14時30分に御殿山に到着。前方には武奈ヶ岳の威容が見え、その斜面を粛々と進むパーティが見て取れた。 
「今日朝早く出とったら行けとったなー」と岳氏。しばらく山上で寛いでいたら、途中で我々の先を行った夫婦と思しきパーティが武奈方面か
ら戻ってきた。「武奈まで行ってこられたのですか?」「途中でステップ無くなったから、装備持ってるあんたら来るのを待っててん。けどけぇへん 
から戻って来てん」とおばさん。このおばさん、ともかくよくしゃべる、岳氏と漫才みたいに、、、。夫婦が先に下山して、岳氏「やっぱ大阪のおば
ちゃんやで、ワシら先行かせて楽しよう、ちゅう魂胆やでぇ」
 武奈の姿を目に焼きつけ、15時に下山開始。途中尻セードを交えつつ下る。林道に入った辺りから、雪がかき氷状になり、尻セードも 
厳しい状態。どうも下界も気温が高かったようであった。16時50分に坊村到着。
 夜の帳が下りた中、一路大阪へとアクセルを踏んだ。「せっかく準備した スノーシュー、ワカン運んだだけやったなー」と岳氏。 
それでもフロントガラスに映える河原町界隈の賑わいが見えたころ、当初の不吉な空気が杞憂に終わった安堵感に包まれたのであった。


 

一面銀世界の坊村
スノーシュー装着
ワカン装着の小原庄助氏
御殿山からの武奈ヶ岳