コールマン山絵日記

     冬の八ヶ岳、本沢温泉を岳工作氏とともに楽しみました。


1月10日 −厳冬の本沢へ―
 「いつもより雪少ないなー」と車窓を眺めつつ中央線を東向きに、、、。10時7分に小淵沢へ到着。ホームでカメラで待ち構えて
居た岳氏と再会。そのまま小海線へと乗り換え松原湖へと向かった。道中、車窓からの八ヶ岳の威容を存分に楽しんだのであった。
11時40分松原湖駅で降り、公衆電話でタクシーを呼び本沢入口まで向かった。タクシーが山に向かうに従って天気が徐々に悪化の
方向へ。さすがに心配になった岳氏「明日以降の天気はどうですかね?」「予報は分からんけど、晴れるときは晴れますよ」とよく分からん
けど、運ちゃんの陽気な雰囲気が妙に好感持てたのであった。20分ほどで本沢入口に到着。弁当を食べ、12時50分出発となった。
登山道の雪は適度に踏み固められており、アイゼン、スノーシュー無しで歩行を開始、天気は小雪舞い上空は風のうなり音がしていた。
 15時50分本沢温泉到着。今回は山小屋しかも個室、いつものテントに比べれば格段の違いである。さっそく部屋に荷物を置き
薪ストーブを囲む談話室へ酒を持って直行。そこには既に7,8人が夕食までの時間を寛いでいた。一人の若い兄ちゃんは熱燗を
作るべくコヘッルをストーブに乗せて出来上がりを待っていた。とそのとき奥の宴会モードのパーティのうち最も声の大きいおばさんが
やって来、「兄ちゃん旨そうな熱燗ね」と言うが早いか、自分の人差し指をぺロッとなめて、熱燗に指を入れ味を賞味、、、。
私と岳氏は見合わせて目が点。哀れな兄ちゃんは何があったか一瞬理解できない様子。「普通は先に指なめて入れへんでー」。
 夕食は山小屋には豪勢な鍋。となりのテーブルでは件のおばさん、ボルテージ全開での酒談義。山ではおばさんは最強ですワ。
夕食後温泉へ、ここは日本最高地の温泉場。20時から消灯のため、ヘッドランプを付け、温泉に漬かりながら日本酒。
湯船の外は氷点下、湯温はややゆるめ、なかなか湯船から出れなく1時間以上漬かっていた。
 部屋に戻り布団のなかで、ウィスキーをちびちびやりつつ、山奥の凍った夜は更けていった。


1月11日  −天気晴朗ナレドモ風強シー
 山小屋にしては遅めの7時の朝食の後、いよいよ天狗岳目指しての登山開始、8時半出発、寒暖計は氷点下10度を示していた。
まずは夏沢峠を目指しての登り、トレースもしっかりついており、アイゼン、スノーシュー無しで登る。天気は良好、樹林帯のため風の影響も
軽減され、小一時間も歩くと玉のような汗が滴り落ちてきた。9時40分夏沢峠に到着。「おい!ここからアイゼンやな!」さすがにここから
雪も凍結していることが十分予想された。蓑冠山までは樹林帯で比較的快適に歩を進める。「ここから先は風すごいですよ!」と蓑冠山で
くつろぐパーティ。確かにここからはさえぎる樹木もなく強風が予想された。覚悟しつつ樹林帯を抜けて根石岳を目指したが、言葉どおりの  
強風。息はできない、顔は痛い、体はふらつく、、、。季節風のまさに通り道。根石岳の岩陰で風を避けつ「ええもんあるでー」と岳氏、
ホットココアで体を暖め天狗岳へと2人は強風の中の人となった。東天狗、西天狗と登高。山頂では天気が良い為、北アの穂高、キレット 
槍の穂先まで確認することが出来た。さて帰りは計画では9月に私と小原庄助氏が採った東天狗から直接本沢へ帰るルートを計画して
いたが、完全に雪で埋まりトレースも全くない状態。「ちょっとヤバイで、9月はどやいやってん」「けっこう急な下りでした」「夏沢から帰ろ!」 
往路を引き返し帰路へと向かった。蓑冠山に到着。「来しなここで休んでた奴の気持ちわかるなー」。強風から一心地付き14時10分
遅めの、にんにくたっぷり入りラーメンの昼食となった。昼食後夏沢峠への帰路、眼前には硫黄岳が雪を湛え、夕日を浴びた姿が迫力を 
持って迫っていた。夏沢からの帰りは尻セードを交えつつ快適に下り、16時25分に本沢温泉に到着。2泊目をすごすこととなった。
 ただ、夕食後温泉に入るも女性入浴時間とのことで早々に引き上げる羽目に、男女時間別の設定は理解できるが、男性時間が 
食事時間に重なっていることはどうも承服できない。今夜も泣く泣くベッドランプ付けつつ暗闇の湯船に漬かることとなった。


1月12日  −ー
 さて今日は下山の日。気温はどうも幾分温かい感じ、寒暖計は氷点下8度、ほとんど製氷室の中状態であるがそれを暖かく感じる
のは昨日の強風の冷たさを耐えた所以であろうと思った。下山は往路と変えて、稲子湯へ抜けるルート、8時40分出発。  
この日も天候は最高!。心地よい雪道を踏みしめていった。頭上の空は雲ひとつない晴天、足元は純白の雪に樹林の影がくっきりと
ストライプを浮かび上がらせていた。しらびそ小屋での凍結したミドリ池からの天狗岳の姿が威厳に満ちていた。しらびそ小屋で小一時間 
コーヒーブレークの後、稲子温泉に向かって下山し、途中携帯の通じる箇所でタクシーを12時40分に予約。実際稲子温泉には12時20分 
に到着。「急いでラーメン食べよぉ」というこで、にんにくラーメンを作り、食するころタクシーが到着。何と入山時本沢温泉まで走ってくれた
運ちゃんであった。我々の食事中も「いいよ、ゆっくり食べて」と言いつつ、トランクからクラブを出し雪を相手に練習。「ナイスショット!」 
ラーメン片手のタイミング良い岳氏の合いの手であった。車中では「おととい運転手さん言ったとおり晴れましたよ!」「やっぱ晴れるときは
晴れるもんだよ」と運ちゃん。なんか禅問答のようではあるが、究極のプラス思考と言っていいのか、暖かな雰囲気に岳氏と微笑む車中で
あった。松原湖駅から小海線で小淵沢へ、次のあずさで岳氏は新宿方面の車中に人となり、私は半時間ほど真冬とは思えない暖かな
駅のベンチで甲斐駒のシルエットを肴に缶ビールを傾けていった。


 

ヘッドランプ装着しての温泉
硫黄岳バックの岳氏
硫黄岳バックのコールマン
ミドリ池付近からの天狗岳