コールマン山絵日記

 ゴールデンウィークに岳工作氏、小原庄助氏と四国の石鎚山に行きました。


5月3日 −赤切符ー
  連休初日、新大阪駅で久々に3人揃って山への再会を果たした。まずは700発こだま号に乗車して新尾道まで。
車中は思った以上に混んでなく、シートも両サイド2人がけのため非常にゆったり、859新尾道で下車。ここから
はレンタカー、まずは私が運転。カーナビ初体験、どうもはじめはカーナビが必要以上に気になって仕方がない。
「これつけたらやめられんらしいで」と岳氏。どうも私は地図の方がしっくりくるアナログ人間かもしれない。
ルートは、瀬戸内の島伝いに、しまなみ海道を通って今治に、ここまで渋滞も無く快適であった。「おい!ここ制限
50やで、気ぃつけろ」と岳氏が注意。スピードダウンを図ったが時すでに遅し!半ば呆然と警官の言うがままに、
誘導され、指紋を押している脇で、「速度多少は負けられへんの?」岳氏の援護射撃も、「デジタルで表示なんで
無理です」と赤切符。さて、石鎚ロープウェイ乗り場の無料駐車場は満車。やむなく有料駐車場へ1泊で千円。
昼食の後、ロープウェイに乗車、一気に900メートルを上った。ここからいよいよ登山開始、時刻は1325、
天気は快晴、気温は19℃暑いくらいの陽気であった。20分ほど行くと山頂成就社に着き、ここで山の安全を
祈願し、入山届けを提出。山頂成就から八丁坂は暫くの下り、登り方向で下っていくのは、精神的にしんどいもの
である。15分ほどで下りきりいよいよ登り、山道は整備され木道や木段が作られているが、斜度は一様にキツイと
感じられた。1500前社森に、左:近道、右:試し鎖 の2ルートが提示してあった。休憩の後試し鎖に、「岩
濡れててすべるぞ!」と前を行く小原氏、確かに足場の確保がちょっとつらく、腕で体を支える場面が多いため、
最後は腕がなまってしまった。16時を過ぎるころ二の鎖小屋到着、しかし尾根が狭くテントサイトは限られており、
なんとか登山道の脇の空スペースに設営。「ところで水場は?」と岳氏。「地図では土小屋方面へいった所に、、、」
小原庄助氏と私が確認に、すると土小屋方面から20前後の若い2人が、「この先水場あります?」「無いですよ、
僕らも山頂に水汲に、です。よければこのお茶どうです。」とペットボトル差出し、山頂への鎖場上の人となって行った。
少なくとも山頂で調達できることが分かり、いつもどおり夕食の後は水割りを堪能。「ところで明日のご来光は何時や」
と岳氏。「ちゃんとした時間調べてないです。」「そんなら考えてみようや」。3人酔った頭をひねり、地球の自転やら
半径、春分の日からの日数、明石からの距離、などなど、、、。そして「そんなら5時15分ってとこかな」と結論。
「これって、今、はやりの地頭力ですね。」起床時間が早いことが分かった後も杯は重なりつつ、夜の帳が深まるころ、
空には北斗七星が煌き、下界には地図と相似形をなして灯かりが点っていた。


5月4日 −ご来光ー
  まだ暗い中、小原庄助氏のケータイが時間を告げていた。「うーん夜中えらい寒かったな」と岳氏と小原氏はいいつつ
シュラフから這い出る。星は昨夜より輝きを増し、天の川まで見えた、天気の良い分放射冷却で冷えたのであろう。410
テントを残し出発。途中残雪の滑りやすい箇所が数箇所あるものの、大半は鉄階段が設営されており、暗いながらも足元
への不安なく進む。435山頂の石鎚神社に到着。すでにご来光を待つ登山者が東方向を見つめていた。すでに空は明るく、
眼下には雲海が広がっていた。待つこと半時間、東の一点から一筋の光が、512ご来光。一点の光は面となり、出現したて
の太陽は屈折によりゆがんで見え、それが却って初々しさを醸し出していた。「想定より数分早かったんは、ここの標高を
計算に入れへんかったからやな」。辺りがすっかり明るくなったころ、最高峰の天狗岳へ。ナイフリッジを慎重に進み
550に狭い山頂に到達。眼下には我々のテントが小さくポツンと。山頂神社に戻ると、信者が拝殿中の3体(仁・勇・
智 を示す)のご神像に触れ、祈願するために順に中に進んでいっていた。岳氏と私も神妙な面持ちでその最後尾に。祈願後
「あれって普通は入れん場所やデ、ホンマは祈祷料払わなあかんねんデ」「そんな感じもしましたが、まじめな気持ちで
参拝したんでエエでしょう」。そう思えば厳しい表情のご神像も、かすかな苦笑がこぼれるように思えた。そしてテントに
戻り撤収。朝食のにんにく入りラーメンを食べて、845下山へ。八丁坂までは下りであるが、真夏のような暑さに早くも
ばて気味。しかもこれから山頂に向かう登山者が、途切れることなく続き、すれ違いのためペースが保てず、ますます
しんどい。途中で大休止し、岳氏と小原氏に荷物分担してもらい、なんとか八丁坂からの登りにかかる。「ここが最後の
しんどいとこや! ビール・温泉 めざしてがんばろうや!」と岳氏。「ビール・温泉、ビール・温泉、、、」と念じて
進む。ホンマにこれは最も効果のある呪文であった。1045山頂成就社に着。ここで無事の下山を感謝しロープウェイ
へと向かった。車に戻り、しまなみ海道を通り、大島の村上水の博物館を見学。そして大三島のマーレグラッシア大三島で
念願の温泉に。ここは海水温泉がウリで、入ると非常に発汗が促進。体の中の老廃物全てが出し切れるような、心地よい
温泉であった。その余韻を保ちつつ、伯方島の旅館に着きビールで乾杯。砂漠の砂のごとくビールが吸い込まれていった。


5月5日 −日本画ー
  この日は朝から、どんよりと曇った天気。昨夜から明け方に雨が降ったのか路面が濡れている。10時にチェックアウト
し、同じ伯方島の高台にある、ふるさと歴史公園へ、城をかたどった博物館には、弥生時代からの考古資料や製塩業など
の移り変わりが展示。その後大三島に渡り、多々羅温泉で昼風呂を楽しんだあと、生口島の平山郁夫美術館へ。さすがに
日本画の大家の美術館だけあって、建物や庭が日本風の落ち着いた風情。中には画伯の作品が展示されていたが、画伯の
小学校や中学時代の絵も展示。やっぱりというか、さすがというか、すでにこの時期から、絵が上手いのには感心させら
れた。普段は、冗談の多い岳氏、小原氏も、作品に感銘した様子で鑑賞。「そろそろレンタカー返しに戻ろうか」と、
新尾道へとハンドルを切った。そして1557新尾道発のこだまに乗車。自由席は空席が多く、座席を対面にし、今回の
山行で残った酒類で車中反省会。乗り始めたころから降りだした雨は、福山を過ぎると大雨となり窓を激しく叩いていた。
雨の様子を見て「今回めっちゃ、ツイてたな」と小原氏。「そりゃ、来しなに厄全部落としてくれた人おったからやで」
と私の方に体を向けて岳氏。つづけて「次の山行きのときも頼むワ」。山行き続ければ免許が無くなってしまいそうである。
そうこうするうちに、車窓の景色は見慣れたものになっていた。


 

山頂からのご来光

天狗岳山頂にて
二の鎖から山頂仰ぐ
山頂からのご来光

天狗岳山頂にて

二の鎖から山頂仰ぐ