コールマン山日記

 日程:1999年8月10日から8月13日        コース:大雪山、十勝岳   メンバー:岳工作、コールマン


こんにちはコールマンです。この夏、岳工作氏と8月10日-14日で、北海道の大雪山系に行って来ました。コールマン山日記として
報告いたします。

8月10日 − 北の大地は暑かった − 
 「着陸態勢に入ります座席ベルト....」のアナウンスで目が覚めた私は、ふと窓の外に広がる牧歌的景色に、どこか外国に着いたかの錯覚を覚えた...。それは先にここ(旭川空港)に到着していた岳氏と再会するまで。到着ロビーに出て岳氏と再会を果たし、我々の登山の始まりとなった。
 まず我々は旭川駅までバスで行き約40分バスで揺られ12:30旭川駅に到着。ここから機内持ち込み不可のガスカートリッジを購入すべく、石井スポーツまで約15分ほど歩いたが、北海道と思えない暑さ。あとで聞いたのだが例年より7度も気温が高いとのこと。ロング缶2本と熊除け笛、雪解け泥濘対策のスパッツをも併せて購入。旭川駅でラーメン食べ、いよいよ層雲峡へバス待ち。「おい、時間なってもぜんぜんけぇへんなー」「ええ、確か13:55発やと思いますが...」、と再度時刻表みると13:35。完全な私のチョンボ。我々がバス停に来るほんの数分前に行ってしまっていた。その日は、黒岳石室までが予定。その後のバスだと日暮れの登山となる可能性もあり、途方に暮れた我々に声をかけてくれたタクシーのお世話になることにした。タクシー乗車14:10。
 タクシーに乗車してとりあえず安心したのか、岳氏はシャレと冗談の連発。「いやー関西の人は楽しくっていいですねー」と運転手(金星交通 篠原さん)。その言葉の潤滑油の効き目か、「ここは大雪連峰良く見えますよ」と写真を撮るため車をわざわざ停めてくれたりしてもらった。15:43に層雲峡ロープウェイ前に到着。ロープウェイとリフトを乗り継いで登山口に向かったが、リフトから見える黒岳の独特の山容は、なかなかの迫力で、
圧倒していた....。
 まず登山口で登山計画書を提出。その計画とはまず旭岳行って、つぎにトムラウシまで縦走し、トイムラウシ温泉に下る。という我々にとっては壮大な計画であった。「ホンマに行けるんやろか」がその時の正直な思いであったが.....。
 17:00登山開始。つづら折りの短調な登り道。久々のザックが肩に食い込む。登ったつもりでも、まだまだリフトのアナウンスが近くに聞こえる。冗談連発の我々が寡黙になるにはそう時間が掛からなかった..。空があかね色に染まるころようやく黒岳山頂到着18:35。丁度、山の端に沈む夕日が赤々と黒岳全体を染めていた。昨年屋久島のそれは水蒸気の一粒一粒が染まるようなのに対し、北のそれは、夕日がダイレクトに山を染め
ているようだった。  
 19:00に黒岳岩室に到着し、テントを設営し、夕食を食べるころには、空に星がまたたきはじめ、月の無い夜でツキがあって、星空を十分に堪能できた。星を肴にウィスキーを傾けていた

8月11日 −思わぬアクシデント−
 この日は旭岳から白雲への予定の日。岳氏、私、共にこの日は5:00起床。起きて、おや?、昨日テントの縁に置いていたゴミ袋がない?多分風かと、その
ときは思ったが、後で聞くとキタキツネの仕業で、ここではゴミはテント内に、が常識とのことだった。
 朝食はレトルトの梅かゆをお腹に流し、テントたたんで6:45いざ出発となった。まずは北海岳目指し、朝涼しいこともあり快調に歩を進めていた。途中の赤石川
では、数日前の大雨による増水で橋が流されたと聞いていたが、果たして橋はなく我々が通ったとき7:15ごろは、まさに橋を作ろうと作業員が石を集め取りかかって
いる最中。しばらく石伝いの渡渉を思案したが、「おい、深くないから、靴持って裸足で渡ろうや」と岳氏。これがホント冷たい!、高々10メートル程度の渡渉で
あったが、底石の痛さとあいまって、ちょっと辛い。正直靴のありがたさを実感。(この時のこの思いが、後にさらに現実のものになるとは、知る由も無かったが)
「おい、普通は靴脱いでホッとするけど逆やなー」と岳氏。正直な感想であった。渡渉後、尾根へのやや長い登りを通り、尾根道沿いに北海岳に向かった。このころより日差し強くなり、暑さでバテ気味となる。8:35北海岳到着。ここでサブザックに必要最小限の荷物にし、旭岳ピストンに向かう。ザックはクマに持っていかれ
ないように、とのことでベンチにザックのウェストベルトをくくりつけて置くことにした。間宮岳までは比較的快適な尾根道。右手にはお鉢平ら、左手には白雲と
その奥には「はるかなる山」トムラウシが遠く見えた。「ホンマにあんなとこまで縦走できるのやろか?」私は心のなかで一人ごちていた。間宮岳から一旦下り
そこから雪渓の残る旭岳の登り、これが急登に加えて、砂石状の乾いた土。いやがおうでも、滑りやすく登り辛い。何度か滑りつつも11:00北海道最高峰に立つことができた。姿見方面は荒荒しい山容で、ここが火山であることを改めて教えており、本州だと焼岳のような雰囲気を感じた...。11:50旭岳を後にしたが、滑り易い急下りは、「雪渓同様踵で踏みしめて下れよ!」の岳氏のアドバイス。おかげで楽に下れ、あとは北海岳への尾根道だな、と思った矢先....。
「おい!やばい!靴壊れた!」後ろで岳氏の叫び声。駆け寄って見ると靴底がいままさに、はがれようとしていた。ともかく騙し騙し北海岳へと向かった。13:10
北海岳到着し、昼食しながら今後の対応を検討。これでトムラウシまでの縦走は無理なことは明らかで、「トムラウシは今度トムラウシ(弔い)合戦に来よう!」の
岳氏の洒落で、いつの日かのリベンジを誓った。結論は明日一旦下山し、シューズ買って、その足で十勝岳登りに行こう、ということで決定した。2時間近くの会議終了し、再度黒岳石室へと戻っていった。岳氏ははがれかけの靴底をアイゼンのベルトで締めての応急処置。赤石川はすでに橋が掛かっており、帰りは難なく渡れたが、疲れはそろそろピーク...。渇ききった岳氏たまらず川の水を口に、「うわ!変な味!」石室小屋の人の話しではあの水はなんとPH3で、鉄をも腐食し、橋が流される原因とのこと、もっとも岳氏心配のエキノコックスも生存できないPHでその点では安心したよう....さて、ようやく16:50石室に到着。ここで何をおいてもビール(自称日本一高い 因みに350で700円)で乾杯。何の抵抗もなく体に染み渡った。
 この日は疲れで飯作る気力も双方なく、最後に残ったビール2本買占め、これとおつまみで夕食として、我々としては例外的早い21:30の就寝となった

8月12日  −天候悪化の十勝−
 この日は早く下山して靴買って、新たな目標の十勝へ向かいたいため、我々にしては驚異的な早さの4:30に起床。このときすでに周りのテントはざわめいていた。朝食済ませ、5:40出発。岳氏壊れた靴に見切りをつけ、セッタで行けるところまで....。といった具合。
黒岳へは登り中心で岳氏も快調に歩を進め、6:05黒岳山頂。「ちょっとキジ打ってくる」と避難小屋とおぼしき建物のうらで、岳氏しゃがみこむ。しばらくして漂う芳香に包まれ私は、昨日登ったルートを目で追っていた。下りもセッタで岳氏頑張り7:30リフト乗り場着。リフトロープウェイと乗り継ぎ、層雲峡へ8:20に。8:40発の旭川行きのバスに乗車。途中景色を楽しむ間もなく、ウトウト...。11:00に再び旭川駅前に。旭川では本州並の暑さが我々を迎えて
いた。ともかく十勝方面の足と確保と時間節約ということで、駅前レンタカーへ。ともかく安いクラスの車を借りて再出発。まず石井スポーツに立ちより、岳氏靴購入。さすがにおニューの靴で靴ズレの危険性もあり、慎重な品定めの末に購入。いよいよ十勝方面へとハンドルを切った。「おい、十勝温泉から登って、上ホロ避難小屋でテント張って、十勝岳ピストンや」、助手席で地図と首っ引きになっていた岳氏顔をあげ、のたまう。「富良野岳は?」「日程的に無理
やろ。それと十勝温泉からのD尾根の登りキツそうやでー」などど言いつつ13:00に十勝温泉に到着。天候は次第に悪化の様子で山は完全に雲のなかであった。まず、明日下山したときの宿探しで国民宿舎「上ホロ荘」を尋ねるも空き無し...。「しゃーない片っ端から電話や」と上ホロ荘の公衆借りてひたすら電話するが全て満員「時期が時期だけになー...。」とため息ついたとき、上ホロ荘の人哀れに思ったのか?「臨時で部屋ありますよ。宴会所の横ですが」
と、おもむろに....。下山後の温泉宿約束されて我々は再び山中の人となった14:00。
 登山はじめたころから、すでに何時雨降っても...状態の天候。ラジオの天気予報も雨を告げていた。この時はお互いつかれていたのか?休憩しても中々動けず、辛い登山の予感おまけに上空では雷鳴が...。D尾根の急な段差の階段を息を切らし登りきったときにはとうとうポツポツと振り出し、17:35富良野岳分岐についた時には、濃い霧に包まれ視界がほとんど2,3メーターの状態。時折強く降る雨と間断無く続く雷鳴に、私に少し恐怖心が。「おーい!あせって行ったら迷うぞ!ゆっくりや!」背後で岳氏の怒声。さすがに私にもこの時はあせりが出ていたようだった。あとで考えるとこれが遭難の序章なのかと思った。
分岐から中々小屋が見えず、ルートに疑心暗鬼になっていたころ小屋が見え、18:00ずぶ濡れで到着。さっそく小屋の脇にテント設営し、夕食準備...。「ここ水やばいぞ!」小屋の登山者に岳氏確認したところ雪渓の水は少なくしかも、黒く汚れている。果たして汲みにいくと、その通りで煮沸して飲用するのはもちろん、「のんでも非常用やな」ということになった....。夕食のシチューと赤飯(これが意外とマッチ)を食べ、ひとごごちつき、
先ほどまでの苦労は、どこへやら...。ウイスキー片手に夜霧のテントは遅くまで赤々と燈っていた。

8月13日
 昨日の疲れか、4:30のアラーム音から半時間立ってようやく起床。外は霧がすこし晴れ、空には天候回復を思わせる兆候。テントをたたみ、荷物を避難小屋に
残して、十勝岳目指して出発7:20、でも上空は依然霧...。大砲岩を過ぎたら、ヤセ尾根、左右とも鋭く切り立っている。しばらくして、風が霧を運び、
うすくなった霧に十勝岳のシルエットが圧倒的迫力で直前に迫っていた。裾にたどり着き、登り始めると意外と早く山頂に到着8:10。山頂に着いたとき
ガスが多く残念ながら遠望が利かない。それでも暫く休憩していると、続々とパーティ到着。中にはビデオカメラで撮影しているパーティも....。「おい、あの
横で、下らんダジャレ連発したらおもろいでぇ。再生したとき皆大笑いやで」と、岳氏。こんなアホな会話かさねつつ約1時間も山頂で寛いだ。9:20に十勝を
後にし、もと来たところを戻って、さらに上ホロへと向かった。このころより霧ますます濃くなり上ホロに着いた時10:15には雨も降りそうな感じになって
きた。眺望も効かないせいか、岳氏も「はよ降りて観光しよう」とのたまい。避難小屋に置いてあるザックを収容し、十勝温泉へと下界に向かった11:15。
途中、富良野岳と十勝温泉の分岐のところに、立て札が....。前日は霧と雨で気づかなかったが....。「おおこれが上富良野岳や」なんでも最近命名
されたようで、持っていった昭文社の地図にも載っては居なかった。この上富良野岳を12:25にたち、D尾根の階段状の下りを過ぎたころから、疲労の色濃くなる。
岳氏も私も頭の中は、十勝温泉でビール流し込んでる様を思い浮かべ、ひたすら無言で下山道を足引きずる...。14:25十勝温泉到着。
 この日は夕方まで観光スポット探しにドライブし、夜は温泉の後、念願のビール夕食後しばらくは、夕方買ったワインで「反省会」をするも、早々に轟沈...。
今年暑いといってもそこは北海道。窓からひんやりした空気が心地よく酔った体を程よく冷やしてくれた。
 翌日は、吹上温泉、望岳台と行き、その望岳台では美瑛から富良野までの山々が一望できるが、我々が登った上ホロ、十勝はホンの霧の合間にチラっと
その姿を見せるのみ。十勝は最後まで霧深い印象を持ちつつ後にした。
 
 「着陸態勢に入ります座席ベルト...」のアナウンスで目が覚めた私は、眼下の大阪駅周辺のビル群に反射する夕焼けに、「ああ休みも終わり、夏も終わりやな」
と感じた。