テクニカル用語解説


 自分で言うのも何ですが、とりあえず力作です。(笑)
 全ての用語を解説するのはメンドくさいので(^_^;)、気が付いたものだけですが載せてみました。
 ほとんど全て私の頭の中から取り出しました。といいつつ、どこかの資料を調べて引っ張ってきた情報も、正直言えば中には含まれてますが、そんな場合でもそのまま転載している個所はただの1つもありません。私の理解に置き換えて書いてます。そういう訳で手作りの暖かさを感じられたりして。が、反面、勘違い、間違いが含まれてる可能性もあったりします!?(爆笑) 怪しいところはご自分でご確認ください。



さくいん

・トー
・キャンバ
・レバー比
・キャスター角
・スキッド角
・トレッド
・ホイールベース(オーバーハング)
・スカッフ
・スクラブ半径(ロングサスアーム)
・バネ下重量
・アッカーマン
・バンプ角
・ロール/ロールセンター(リバウンド、キャンバ変化量)
・ピッチング
・ヨー
・ヨーとロール
・ピッチングとヨーとロール


●トー

 進行方向に対するホイルの角度。
 トー角が0の場合、左右のホイルは進行方向に対して平行であり、真っ直ぐ進むことになる。
 進行方向に向かって、車体前方で左右のホイルの延長線が交わるとき、つまりつま先閉じのものを「トーイン」といい、逆に、進行方向に行くに従って開くもの、つまりつま先開きのものを「トーアウト」という。

 トー角0の場合は、直進時にホイルが素直に回転方向にむかって回転するので、直進性が良くなる。一方、トーインまたはトーアウトの場合には、ホイルが転がるとともに左右のホイルが近づこうとする、または、離れようとする横向きの力が発生し、結果的にタイヤが斜め方向に滑りながら回転することになる。そのため、無駄な力が発生し直進性、転がり感、燃費が悪くなる。

 ところがそんなトーも、コーナリング時には重要な要素となる。
 (後述する「バンプ角」と似た要素なのだが、、、)
 コーナリング中はアウト側タイヤに荷重が移動するため、その旋回方向の決定権を内側タイヤよりも大きく持つ。トーアウトのクルマの場合には、人間が思うよりも実際の切れ角の方が小さいので、人間の想像よりも大きな円を描いてコーナリングする。人間はこれをアンダーステアと感じるかもしれないが、逆にトーインのクルマだと唐突に前輪が切れ込み、リアタイヤがブレイクしてスピンすることがあり、それに比べれば安全で操縦しやすい。そのため、一般的には、トーインつける位ならトーアウトで、と言われていたりする。
 もっとも、各人の好みとクルマの挙動の度合いに応じて選択することになるんですが。(理想は0です、と言っていいのかな?)



●キャンバ

 ホイル面と垂直軸との角度。
 キャンバ0の場合、ホイルは地面に垂直に立ち、左右のホイルは垂直方向に対して平行である。ホイルが上にいくに従って車体側に倒れている時、「ネガティブキャンバ(ネガキャン)」といい、反対に上にいくに従って車体から離れるように倒れているとき、「アクティブキャンバ」という。

 直進性を重視するならば、素直にタイヤを転がすためにもキャンバ0が良い。が、コーナリング時を考えてネガティブキャンバを付けるセッティングが一般的である。
 調整は普通、アッパーアームの長さを変えることで行う。

 コーナリング時には、後述するようにロールやらキャンバ変化やらが発生し、静止状態でのキャンバ角からズレていくのが普通である。そのため、コーナリング中に適切なキャンバ角となりコーナリングスピードと安定性を稼げるようなセッティングを施すのが一般的。静止時ではネガティブキャンバとなるのが普通。
 コーナリング中にアウト側のホイルがアクティブキャンバになると、タイヤの表面が路面に向き合えなくなるためグリップが落ちてスピンしてしまう。さらに、タイヤの角が路面に引っかかり、その勢いで車両が横転する可能性がある。これが最も危険。

 ちなみにタミヤのTA03では、アームが固定長なのでキャンバを変えることができません。必要がないといった方がいいのかな。面倒なことを考えずに、それでいてちゃんと走らせることができます。



●レバー比

 ショックアブソーバのストローク量 対 ホイルのストローク量。
 ショックが1ストロークした時に、ホイルが1.5ストロークしたら、レバー比は1.5となる。
 ラジコンの場合、ショックが斜めに装着されていたりするので単純ではないが、大体、サスアームの中間地点にショックが取り付けられるので、単純に考えるとレバー比は2.0となる。
 つまり、0.5mmのスペーサをショックに入れると、車高が1mm変わる。(バネが圧縮されることによる反発力の違いなどで、そう単純ではないけど)



●キャスター角

 垂直軸とステアリング回転軸(ラジコンだとCハブのキングピン)の間の角度。
 ステアされたときに、車体の重さでタイヤを起こす方向(直進方向)に戻す力が発生する。キャスターを増やすと直進性が増す。下のスキッド角とはちがうぞ。



●スキッド角

 キャスターと混同されがち。

 サスアームの動作角度。もっとも単純なサスアーム取り付けの場合、サスアームは垂直方向に可動するため、スキッド角は0となる。
 一般的なラジコンの場合、結果的にステアリング回転軸(Cハブキングピン)の取り付け角度に直結するため、スキッド角を付けると、その分、キャスター角も増えることになる。
 スキッド角が付くとと、同じ量のノーズダイブ、例えばF車高が垂直方向に1mm縮む場合、サスアーム自体のストローク量は1mm以上となる事になる。さらにフロントのスキッド角が増えると、ストロークするに従いホイールベースが若干ではあるが短かくなる。


      ↑  /
      | /
      |/ (垂直方向より、斜め方向の方が長い)

 また、Fホイルに前から衝撃が加わった場合、スキッド角0ではサスアームが後方向に一切逃げることができないため、衝撃をモロに受けることになるが、スキッド角が付いていると、サスアームのストロークによって若干後ろに力を逃すことができる。つまり、荒れた路面からの外力を吸収しやすくなる。



●トレッド

 トレッドとは、左右のホイル(タイヤ)の中心間距離です。

 例えばホイルの幅が24mmの場合、その中心は12mmの地点です。左右のホイルの外面の距離(車幅)が200mmである場合、トレッドは200-12*2=176mmとなります。



●ホイールベース(オーバーハング)

 フロントのホイルの中心と、リアのホイルの中心の間の距離。

 クルマの運動特性としては、トレッドとの相対比較で語られる。相対的にホイールベースが長くなると直進安定性が向上する。反面、ホイールベースが短くなると、逆にコーナリング性能が上がる。

 ホイールベース自体の話とはちょっと違うけど、重量物の配置の仕方も重要な要素である。全長を変えず重量配分も変えず、単にホイルベースを短くしただけでは簡単にコーナリング性能は上がらない。前輪の軸よりも前や、後輪の軸よりも後ろを「オーバーハング」と呼ぶが、このオーバーハング域の重量が大きいと、運動性能は落ちることになる。重量物はできるだけ車体中央に集めた方が良い(マスの集中化)。タイヤは車体の4隅に。普通のクルマではこれが理想です。



●スカッフ

 スカッフとは、サスアームの傾き(サスストローク)によってトレッドが変化する量です。

 最も単純な例として、上下同じ長さのサスアームが水平に平行に取り付けられている場合を考えると、この時、車体とホイルとの距離は最大であり、すなわちトレッドは最大です。そしてサスアームが傾くに従って、ホイルは車体側に近寄ることになります。極端な話、サスアームが90°回転し真上に来たとき、ホイルの位置はサスアームの車体側取り付け位置と同等であり、サスアームの長さが0であるのと同等となる。トレッドは短くなる。
 もちろん、トレッド変化もサスペンションアライメント変化に影響を及ぼし、挙動の変化に悪影響を与える可能性があります。
 同じサスストローク(例えばホイルが1mm上に持ち上がる)の場合、サスアーム長が長いほど、サスアームの変化角度が小さくて済み、結果的にスカッフ変化量が小さくて済むことになります。



●スクラブ半径(ロングサスアーム)

 スクラブ半径とは、
    ステアリング回転軸(Cハブキングピン)の延長線が路面と交わる点と、
    ホイルの中心を通る垂直線が路面と交わる点との距離
です。

 普通、ラジコンのホイルを左右にステアすると、キングピンを軸に円を描いています。その半径のことです。例えば右Fタイヤだと、右に切った状態ではタイヤ自体が後ろ側に回り込み、逆に左に切るとタイヤ自体が前に回り込みます。
 その時、例えばフロントタイヤにも駆動が伝わる四駈タイプでは、駆動を掛けると回転軸を中心にホイルが回り込もうとする力が発生します。Fタイヤは車体よりも前へ、つまり内側へ(トーイン方向へ)切れ込もうという力が働くことになります。
 逆に、ホイルに減速方向の力が加わった場合には、反対に車体よりも後ろ側へ(トーアウト方向へ)タイヤが切れ込もうとします。
 直進時は左右均等ですからまだ真っ直ぐ走ってくれますが、コーナリング中などステアが切られている状態ではこれらの力が働くことにより、駆動の掛け方に応じてステアリングがとられるような、良く言われる「トルクステア」が発生することになります。スクラブ半径が0であれば、基本的にトルクステア症状は発生しないはずです。

 さらに、スクラブ半径が0だとステア時にタイヤ自体の移動量(前に回りこむとか)がなくなりますので、単にその場で方向角度が変わるだけです。その場合、ラジコンでは関係ないですが、実車だと停止時に車庫入れなどでステアリングを切ろうとしても、タイヤを捻る力を加えないといけないので、とても重く感じます。パワーステアリングが欲しくなるわけです。
 反対にスクラブ半径が大きくなると、タイヤ自体の移動量が増えてきます。タイヤが若干ですが転がりながら向きを変えてくれるので、車庫入時の汗の量は減ります。反面、走行時には回転するホイル、タイヤが発生するジャイロ効果・慣性によって、ハンドリングが重くなります。安定する、とも表現できますが。


 最近では、オフセット0のホイルを装着するクルマ(ラジコン)が多いですが、あれはロングサスアーム化されている面もあります。そのメリットの1つに、キングピンをホイルの近くに持っていき易くなり、スクラブ半径を短縮できて動きがシャープになるというのもあると思います。それ以外にも、アーム長の増加はスカッフ量の低下につながり、さらに、タイヤ/ホイルの垂直方向のストロークが同じでもサスアームの角度は少なくて済みますので、アライメント変化を押さえる効果があります。ロール時のキャンバ変化量を押さえたりします。もちろん、サスペンションジオメトリ全体のバランスが問題なので、単純に長くすれば良いだけのものでもありませんが。

 ちなみに例えば、ハブにスペーサを入れ、ホイルを外側に出すことがありますが、あれはスクラブ半径を増やす方向です。実車で”ツライチ”というのがカッコ良いですが、単に出すだけではスクラブ半径が増えていることになります。とはいえ、同時にトレッドが広がるわけですから、相対的にホイルベースが短縮されたのと似た効果を得られ、曲がりやすくなるはずです。でも逆にサスアーム自体の重量が増え、バネ下重量の増加となったりします。他の要素がいろいろ変わってくるので、そう簡単な話ではないです。



●バネ下重量

 サスペンションを支えているショックのバネよりも下の重量、つまり、可動するサス関係のパーツの総重量のことです。タイヤやホイルはもちろん、ネジやナット、ナックルアームやサスアーム、ドライブシャフト、キングピンなども含まれます。

 サスペンションは、路面の細かなデコボコを吸収し、路面からの突然の衝撃を車体本体に伝えて挙動が乱れることを防ぐためのものです。その他、車体の姿勢変化を柔軟に受け止め、しっかり路面に接地するためのものでもあります。
 とにかくスムースに、しなやかに動くことが求められますので、できるだけ軽い方が好ましいのです。運動力学の法則にもありますが、慣性の法則により、物体はできるだけその場に止まろうとします。重量が大きいほど、動かすのに大きな力を要することになってしまいます。

 クルマの運動性能的には、バネ下重量の減少は、車両本体シャーシ側の重量減に比べ15倍の効果があると実車の場合一説には言われています。ホイルとタイヤで1個当たり3g減量できれば、4輪で12gです。この減量による運動性能の向上を、車両本体シャーシ側の減量で実現しようとすると、180gの減量をしなくてはいけません。すごいですね。(ほんとかなー)
 まぁ、ラジコンの場合は話がもうちょっと複雑なのかもしれませんが、とにかく、軽くできるならバネ下重量は軽くした方が良いのです。



●アッカーマン

 アッカーマンとは、コーナリング時の右タイヤの軌跡(円弧)と左タイヤの軌跡(円弧)の関係です。

 ちなみにアッカーマンとは、それに気が付いて大々的に発表した人の名前です。
 さて、どういうものかというと、舵角一定で同じ場所をクルクル回る時を想像してみてください。リアタイヤはフロントタイヤより内側を通るというのは分かりますよね。内輪差といわれています。
 つまり、フロントタイヤの描く円はリアタイヤが描く円よりも大きく、そして両者は共通の中心を持つ同心円であるのです。

 さてこのとき、更にフロントの左右のタイヤに注目してみます。もし、ステアリングを右に一杯切ったとき、左右のタイヤの切れ角がまったく同じだったらどうでしょう。それぞれのタイヤは、同じ半径の円を描くことになります。ただし、その中心は車体幅の分だけズレています。そう、およそ90°右に回転した時点で(円の最上点で)、それまで外側にあった左タイヤの描く円は、右タイヤの描く円より内側に位置することになります!
 これは現実には起こりませんから、実際にはそのスムースな回転を無理に捻じ曲げて、常に左タイヤを右タイヤより外側に位置させ続けようとする力が生じることになります。結果的にタイヤを横方向にスリップさせることになります。これにより、本来スムースに前に進むはずの力が浪費され、不自然なブレ―キング現象が発生します。もちろん、横滑りにより、グリップの減少が起こります。
 スムースな回転を可能にするためには、外側のタイヤの描く円と内側のタイヤの描く円が同心円になる必要があります。つまり、内側のタイヤの方がたくさん切れて小さな円を描かなくてはいけません。

 では適切なアッカーマンとはどれ程のものなのでしょうか?
 ラジコンのステアリングワイパー周りを眺めてみてください。フロントのナックルアーム(キングピンによりCハブに取り付けられ、回転運動するパーツ)に注目すると、なにやらステ―のようなものがニュッっと延びていて、その先にボールエンドを取り付け、ボールキャップがハメられ、サーボの動きに合わせて向きを変える機構になっていると思います。理想的なのは、キングピンとボールエンドを結んだ直線の延長線がちょうどリアドライブシャフトの中心になるのが良いとされています。(確かそうだったと思う)
 ただ良く観察すればわかりますが、そのステアリングワイパー周りには、長さが調節できるタイロッドがいくつかありますね。その長さや角度の調節の仕方次第でまた話が変わってきます。あれはトー調整とか、トリムセンター合わせのためだけのものじゃないのです。
 ただし、タミヤの少なくともTA03では、実はそのうちの1つの長さが固定(固定ステー)され、それによって、基本的にアッカーマンは変わることがありません。うーん、こういうところが大多数を占める一般の人のためのタミヤの姿勢、っていうんでしょうね。なにから何まで、「あんた自分でやって」というメーカばかりじゃ続かないように思います。



●バンプ角

 バンプ角とは、何も負荷を与えない時と、負荷を与えてサスアームを沈みこませた時との、ホイルの切れ角の変化量をいいます。

 例えば、右に一杯ステアリングを切った状態があるとします(別に直線状態でも良いのですが)。そのままポンと机の上に置いておいた状態で、左側ホイルの切れ角を覚えておきます。次にコーナリング時のロールを想定して、コーナー外側つまり左側サスが沈み込むようにシャーシを指で押してみます。さぁ、その時、左側ホイルの切れ角が若干変化しませんでしたか?
 この角度の違いをバンプ角といいます。

 バンプ角が付く理由は以下の通りです。
 ナックルアームから延びているステ―と、車体側のステアリングワイパーを結んでいるタイロッドに注目してみてください。
 ステアリングワイパーを固定していたとしても、サスアームが沈み込むとナックルアームは相対的に上方向に移動されます。しかし、タイロッドの長さは一定ですから、結果的にナックルアームは、タイロッドを半径とし、固定されたステアリングワイパー側の取り付け位置を中心とした円弧上を動くことになります。そう、タイロッドが水平となる時に、ナックルアームは最も遠い位置となり、切れ角が最大となります。そしてタイロッドが徐々に斜めになるに従い、ナックルアームは引き寄せられ、切れ角は少なくなるのです。
 沈み込むに従い切れ角が増えるのが「バンプイン」、反対に切れ角が減るのを「バンプアウト」といいます。

 バンプ角の調整は、ナックルアーム側の取り付け位置、または車体側の取り付け位置のどちらかにスペーサを噛まし、タイロッドの取り付け角度を調整することで行います。

 バンプ角が走行フィーリングに与える影響はおおよそ以下の通りです。
 直線からコーナーに進入するため、徐々にステアを切り始めます。人間は、ホイールプロポのホイールを右手で一定のタイミングで回したといても、、、

  • バンプインの場合

     コーナリングに伴いアウト側が沈み込むに従って、荷重の乗ったアウト側ホイルが更に切れ込みます。そのため、人間のフィーリングとしては、思った以上にステアされ良く曲がるように感じます。

  • バンプアウトの場合

     逆に、荷重が掛かって沈み込むに従って、切れ角を戻そうとしますから、実際には思ったよりも切れておらず、人間のフィーリングとしては、思った以上に曲がらないと感じます。
     アンダーだ!というのは間違ってないですが、正しく言えば舵角が足りないのです。クルマ自体はちゃんと舵角通りに曲がっているのかもしれません。ならばそれは他の理由によるアンダーステアとはちょっと違うかもしれません。


 ただ、オーバースピードで突っ込んだような場合には、ステア切れ角が少ない方がまだ曲がろうとしてくれる場合がありますので、その時はフィーリングが逆転したりします。



●ロール/ロールセンター(リバウンド、キャンバ変化量)

 ロールとは、車体を前後方向に貫く軸を中心とする回転運動のこと。左に傾いたり、右に傾いたりする。
 ロールセンターとは、ロールの回転中心。
 トレッドの中心(普通は車体中央)と、サスペンション取り付け位置と取り付け角度(重心との相関関係)によって決まる。

 コーナリング中に車体に遠心力が掛かる。遠心力によって車体は外側へ膨らもうとするが、タイヤと路面との接地による摩擦力により打ち消す方向の力が掛かる。その力と力の掛かり合いは、サスペンション取り付け位置と取り付け角度によって決まる。力の掛かり方によって車体の傾き加減が決まってくる。それがロールです。
 ラジコンのショック/バネを取り外してみると分り易いです。宙に浮かせた状況で、車体の重心の見当を付けて、その位置を例えば左側に押し付けてみる。逆に、左タイヤの接地面を指で持って車体側に押し付けてみる。つまり押し合ってみる。すると、押し合った力が、ある方向へ逃げるような動きとなる事が感じられると思います。しかも、サスアーム取り付け位置や取り付け角度が違うと、逃げる動きもまた変わってくるように感じられると思います。それらがロール(車体の傾き)を引き起こす力なのです。また、右側のタイヤは、車体と反対に引っ張り合う力の関係になりますね。

 重心位置よりもロールセンターが低いのが普通。コーナリング時に外側タイヤの方が縮む。(一般的なクルマ)
 逆に、ロールセンターの方が高くなると、コーナリング時に内側タイヤの方が縮む逆転現象が起こる。
 重心位置とロールセンターの距離差が、回転モーメント(トルク)の大きさに比例します。両者が一致した時、ロール量は理論上ゼロになります。その差が広がればロールが逆に大きくなります。
 例え重心が高くなっても、それに応じてサスペンション取り付け位置を上げてやれば(ロールセンターを上げてやれば)ロールが増えることはない。
 といいつつ、ロールセンターは走行中(アームの運動に伴い)絶えず移動するということを忘れてはいけません。サスペンションアームの角度が変わると力の掛かり合いも変わってくるからです。

 ちょっと話は外れますが、実車でよく、車高を落としたりします。重心を下げてロールが減ってコーナリングが安定する、というのは半分あっていて、半分間違ってます。その他のサスジオメトリに手を加えない限り、車高を落とすだけでは重心位置の低下量よりもロールセンタの低下量の方が大きくなります(程度の問題ですが)。それを解決するために、ノーマルサス取り付け位置となるような「ロールセンターアジャスター」みたいなものがあります。
 車高を落としたときに、ついでにバネを固めたりしますが、あれはバネを固めてスポーツ走行を、という意味と、ロールが増えちゃってるので、それを制限するためにバネを固めて、、、という意味もある、のだと私は思ってます。(あってるかな?)

 ところで、ロールを調整するのはロールセンターだけではありません。むしろこれは上級者用のテクニックで、普通はバネの固さで調整します。普通はこれで十分です。ちなみに物凄く単純に言えば、バネは「ロール量」を、ダンパーは「ロールスピード」を調整するものです。
 また、リバウンドも関係します。伸び側(コーナーIN側)に制限があれば、それ以上動けないので、反対側(OUT側)のサスが沈むだけの動きしかできなくなります。この場合、ロールセンターはIN側に寄っているようになります。(という理屈でいいのかな?)
 リバウンドが少ないとロールに制限が加わることになるので、ロールが減る、というか、事実上減るのと同じ効果が得られます。
 ただし、これもバランスが大切です。リバウンドを減らしすぎると、路面追従性が落ちてグリップ感が無くなります。また、減速コーナリング中にFアウト側のタイヤに荷重が掛かり沈み込むため、対角線上のRイン側のショックは伸びるのですが、ここのリバウンドが少なすぎると極端な話タイヤが浮き上がってしまい、リアグリップが急激に落ちスピンしてしまいます。
 逆にいえば、これが原因でスピンする場合には、Rのロールを減らせば良いのですが、例えば一例として、Rのリバウンドを増やす、または、Fのバネを硬くしてロールと沈み込みを減らす、Fのリバウンドを減らしてFのロールを減らす(Fのロールを減らす=Rのロールが減る、という効果につながる場合があります)、などといった対策があげられます(もちろん、それ以外の原因と対策が山ほどありますよ)。


 さてもう少しロールセンターの話を進めますが、ここで気に留めておかなくてはいけない事があります。
 車体の中心にロールセンターがあって、かつ、重心が上か下かに偏ってる場合、もちろんロールしますが、この時のロールは、車体上側が右に振られれば下側は左に振られます。当たり前ですが、車体の中心を軸に回転します。分りやすいですね。
 ところが、ロールセンターがずっと下の方、極端に言えば車体の10cm下の方とかにある場合、 そこを軸に回転しますから、車体の上部も下部も、クルマ全体が右なら右、左なら左に、同じ方向に振られます。なんとなく、回転運動というよりも振り子運動のような感じ。実際には同じ回転運動なのですが。
 ですから、同じ「ロール」といっても、実際に走らせたときの挙動は全然違うものに感じるかもしれません。セッティングも変わってくると思います。つまり、重心とロールセンターの距離が同じだとしても、その位置が車体のどの位置にあるのかで変わってきます。

 そしてもうひとつ。コーナリング中の運動としては、車体の回転だけでなく、ホイル面の傾きの変化も考慮しなくてはいけません。ホイル面が一定で車体自体のロールだけを考える、という訳にはいかないのです。
 ちなみにこのホイル面の変化はキャンバ変化につながるものです。例え車体自体のロール量が少なくなったとしても、その代償としてホイル面の対地接地角が大きく変わっては、挙動の乱れが発生するということを忘れてはいけません。


 では、そのロールセンターはどうやって求められるのか?という疑問が湧きます。数式を用いて専門的に解くことは今の私にはちょっと難しすぎるのですが、基本的な考え方は以下のとおりだと思います。(あまり自信がありませんが)
 本当なら図で示したいところですが、まぁ、図を描きながら読んでみると分かると思います。
 常識的な基本的なラジコンのサス形状の場合、単純に考えてみると、

  
 1 上下アームの長さが等しく、かつ、水平に取り付けられている場合、車体に対してホイル面は常に並行を保つ。
 2 上下アームの長さが等しく、かつ、アッパーアームはホイル側が高くてロアアームはホイル側が低い場合、ホイル面は車体側を中心に円弧を描く。
 3 上下アームの長さが等しく、かつ、アッパーアームはホイル側が低くてロアアームはホイル側が高い場合、ホイル面は車体外側を中心に円弧を描く。
 それにより、コーナリング時に踏ん張らなくてはいけないはずのアウト側のホイル面が外側に倒れこむため、十分なグリップが得られなかったり、反対にハイサイド(転倒)することになる。
 4 同じサスアームレイアウトの場合で、例えばホイルが上下に1mmストロークする場合、車体とホイルとの距離、つまりサスアームの長さが長いほど、サスアームの変化角度自体は小さくて済む。つまり、アライメント変化量が小さくなる。
 
 5 ロールセンターは走行中常に移動する。アームの角度が変わるに従い、その位置が変化する。
 6 重心がアンダーサスアームの延長線上より上にあるのが普通。(下にくるとコーナリング時に内側が沈み込む)
 7★★★
 外側タイヤの路面接地点が固定であると考え、その時、重心にかかる重力と遠心力、そしてサスアームの可動範囲を考えると、理屈が分りやすい。
★★★
 
 8 静止状態でアッパーアームが水平で、ロアアーム取り付けがホイル側の方が車体側より下になるように角度が付けられていると、コーナリング時に重心(車体上部側)が外側に振られ、逆にロアアームが水平状態になろうとし、結果的に車体下部はイン側に振られる。
 ロアアームを円の半径として考えると分る。円の中心から水平方向の距離は、ロアアームが水平の時一番遠くなる。
 9に比べてロールセンターは上である。
 9 静止状態でアッパーアームが水平で、ロアアームが水平に取り付けられていると、コーナリング時に重心が外側に振られ、ロアアームは車体側取り付け位置が下がる方向となり、結果的に車体下部は重心と同じくアウト側に振られることになる。つまり、車体全体がアウト側へ移動する。
 8に比べてロールセンターは下である。
10  静止状態でロアアームが水平で、アッパーアーム取り付けがホイル側の方が車体側より上になるように角度が付けられていると、コーナリング時車体上部がアウトに振られるに従い、逆にホイル側の上部が車体側(イン側)に振られる。お互いの上部が接近する。
 さらに、ロアアームは車体側が下がり、結果的に車体下部もアウト側に振られる。
11  静止状態でロアアームが水平で、アッパーアーム取り付けがホイル側の方が車体側より下になるように角度が付けられていると、コーナリング時車体上部がアウトに振られるに従い、ホイル側の上部も更にアウト側に振られる。お互いの上部が離れていくため、外側ホイルはキャンバが減り、場合によってはアクティブキャンバとなり転倒する可能性も生じてくる。
 ロアアームは車体側が下がり、結果的に車体下部もアウト側に振られる。

 以上のような感じです。わかるかな? 図を描いてみると直感的に理解できると思います。
 これが基本ですから、上下アームの長さが違う場合や、さまざまな角度が付けられていたとしても、全てその動きがわかると思います。

 ラジコンでは、ヨコモYR−4やMR4−TCのようにバルクヘッドのサスアーム取り付け位置(サスピン位置)が上と下と、2つ穴が空いているものがあったりします。もしくは、HPI RS4Pro2のオプションにあるように、バルクヘッド自体とアンダーシャーシとの間に板を噛ませて実質的にサスアーム取り付け位置を上げるものがあったりします。
 これらのものは、上記表でいうと8と9に当たります。バルクヘッド側のサスアーム取り付け位置を上にすれば8の効果(ロールセンターが上がる)で、下にすれば9の効果(ロールセンターが下がる)です。
 また、ロアアームの取り付け位置を変えなくても、例えば車高が下がれば下がるほど、結果的にロアアームは車体側取り付け位置が下がることになり、やはり9の効果(ロールセンターが下がる)となります。車高を変えるだけでもロールセンターが変わるのです。(冒頭の実車での例の通り)

 もうひとつ、ラジコンではやはりアッパーアームの取り付け位置も変更できますよね。これは上記表でいうと10と11に当たります。やはりロールセンターとキャンバ変化量の調整に使えるわけです。
 それぞれのクルマごとに、上下アームの長さの違いとか取り付け角度がさまざまで、その他複雑に絡み合うものです。ロールして外側ホイルのキャンバが増える方向だとしても、実際の路面との角度では結果的にアクティブキャンバで転倒、ということもありえます。ここで言うように一概に言えるものではないのですが、でも理屈は分かったと思います。いろいろ応用してみてください。


 その他、ちょっと話しは変わりますが、現実的に考えなくてはいけないものに「捩れ」があります。良くラジコンのFとRを持って、グイグイシャーシをねじったりしますが、あの方向の力です。
 実際、車体自体は、FとRのロールセンターを結んだ線を軸にロールします。が、回転モーメントに前後差があると、捩れの力が発生し、前後のロール量も変わってきます。
 ロール差をショックとバネだけで受け止めるだけでは、唐突な動きに追従できないという時には、車体自体に柔軟性を持たせ、シャーシが捩れることである程度力を消化してしまうことができます。


 さて、実際にバルクヘッド上げ(つまりロールセンター上げ)による走行フィーリングテストをやったことがあります。
 
レポートはこちらです



●ピッチング

 ビッチングは車体を横からみた時の回転運動ですね。
 減速すればフロントが沈む、加速すればリアが沈む、というやつです。

 ピッチングを引き起こす力に注目すると、単純な物理法則だけじゃなくて、例えば自動車の場合はドライブシャフトの回転により生じるモーメントとか、ラジコンの場合はモータやベルト、シャフトの回転により生じるモーメントとかと密接に関係があります。

 経験あると思いますが、ラジコンを手にもった状態でモータONすると、一般的形状(モータがリアマウントで横置き)のシャーシでは、R側が沈み込むような力を感じますよね。ブレーキを掛けると、F側が沈む方向の力を感じられます。

 あれは実に良く考えられていて、
   スロットルON時に、リアが沈み込み、よりトラクションが掛かる
ようになってるんです。
 反面、ブレーキ(モータストップ)でリアが持ち上がります。ので、ラジコンではブレーキでリアが軽くなりクルッっと回ってしまいますが、あれがもし、実車のようなブレーキ装置なら、あれほどリア抜けしないので、もっとちゃんと安定して止まれるはずなんです。
 もしくは、モータを車体重心にマウントすれば、モータ回転による回転モーメントはモータ自体の回転モーメントのみになるので、トラクションは不足するが、ブレーキは安定、というふうになるはずです。(それ以外のジオメトリの違いでまた変わってきますけどね)
 例えばコクーンが優れた旋回安定性を見せるのは、ホイールベースが長いとか、重量バランスが良いというのもそうですが、モータが重心寄りにマウントされてるので、スロットルON/OFFによるモータ回転モーメントによるピッチング変化量が少ないため、激しい挙動が生じない、というのがあると、私は思ってます。(ホントかどうかは知りませんが(笑))



●ヨー

 ヨーとは垂直方向の軸を中心に車体に生じる回転運動のことですよね。ノーズが左右にクビ振りをすることです。
 ヨーという言葉自体は”モーメント”のような”力”を指すものではなく、回転運動する現象を指す言葉ですね。極端な話、クビ振りする運動は全てヨーと表現できるかもしれません。

 さて、走行特性という面からヨーを考えると、ありがたいヨーと、歓迎しがたいヨーの2種類あると思います。どちらとも同じ”ヨー”で、その原理や発生条件は同じなんですが。

 先に悪い?ヨーの話ですが、
 剛性の弱い、昔の実車で良く体験しました。今のクルマじゃあ、なかなか体験できないと思いますが、高速走行時に、路面のゴミを避けようとステアをサッと切ったような時、ステアリングを戻したにも関わらずリアがグニャグニャとフラついて、しばらく左右に振られるんですよね。「あぁ、ヨーがでた」などとうんざりしたものです。(笑)
 この場合の回転軸はF寄りにあります。
 (実はヨーだけじゃなくロールもしてるんですが! 詳しくは後述)

 次に本題の良い?ヨーですが、
 これは普通の操舵時に見られます。舵である前輪はイン側に切れ込もうとします。つまり、クビを振るので、これは立派なヨーです。一般的乗用車では、通常の使われ方の範囲ではヨーなくしてコーナリングできないと言って良いでしょう。



●ヨーとロール

 クルマの場合、常識的範疇に限って話を進めると、ロールは回転運動する(遠心力が掛かる)時に発生するものです。(船のロールなんかは、コーナリングしなくても発生するのですが)
 つまり、ヨーするからロールする、となります。ヨーが大きくなると(コーナリングフォースが大きくなると)ロールは大きくなるように、そこに関連性が見られます。

 もう少し詳しく考えましょう。
 コーナリング中の車体には、垂直方向に、重力(一定)と、さらに空力によるダウンフォースも掛かります。水平方向には遠心力ですね。このとき、車体には、そのベクトルの和、つまり「斜め外下向き」の力が加わります。この力と、路面摩擦によるコーナー内向きの力が釣り合ってる状態がグリップコーナリングの限界ですね。
 ただしこれはクルマが、重心の1点に過ぎない時、という見かけ上の話です。

 実際には4輪で接地してます。で、注目すべきなのは、4輪それぞれの荷重配分量(垂直方向の力)です。未走行状態では4輪に等しく車両重量が分散されているとしても(実際にはバラバラですが)、コーナリング中にはロール方向の回転モーメントが掛かり、外側タイヤの荷重が増えます。
 つまり、、、より大きな回転モーメントが生じれば、外側タイヤの荷重が増え、より路面を押し付ける力が強くなり、コーナリング限界が高くなります。コーナリング限界が高くなると…より大きなヨー運動に耐えられるということになります。まぁ、分り易く言えば、より大きなロール方向のモーメントが掛かれば、ヨーも大きくなる(できる、といった方が正しい)といえます。

 ちなみに正確には、ロール量とロールを生じるモーメントは別です。同量モーメントでも、それを吸収する機構があれば、結果的に減衰されロール量は減りますから。

 さて、バネやショックでロールを受け止める分においては、その力が減衰されはしますが、いくらかは荷重の増加に役立ちます。なので、やはり私は、究極にはバネとダンパでセットを詰めてみたい気持ちを持ってます。
 反面、例えばリバウンドを0にしたり、スタビライザーを装着すると、イン側が持ち上がらない分、荷重が外側に移動しづらくなる(力は同じでも)ため、場合によっては実質的に荷重増をあまり期待できなくなる恐れがあると思います。
 とはいえ、そもそもロールの種類にも前述のロールセンターの項で説明したとおり、車体を回転させるものもあれば、振り子的に振らせるものもあるので、ひとくくりに言い切れませんが。
 ただ逆に、常に4輪で等しく路面を捉えるため、路面追従性が良いとか、ロールに掛かる時間を必要としないためキビキビ動くといった利点はあると思います。
 まぁいろいろ並べ立てましたが、最終的にはフィーリングと好みで選択すれば良いのでしょう。(チャンチャン)



●ピッチングとヨーとロール

 最後に話をまとめますが、
 理想的な机上の力学でどうかは詳しくないですが、
 現実世界においては、例えステアリングを切らなくても、、、

  減速でビッチングが発生する
    ↓
  リアが浮き上がり、リア荷重が抜ける
    ↓
  リアが左右どちらかに振られ易くなる
    ↓
  ヨーが発生する(曲がる!)
    ↓
  ロールが発生する

というのは事実ありますよね。
 実車でタックイン(ガッとブレーキ掛けてリアを流す)というテクニックは、スポーツ走行では日常的ですし、多分、ラジコンでも無意識のうちに、実は誰もが使ってるテクニックだと思います。ブレーキをかけなくても、スロットルOFFで急減速した時にタックインしているでしょう。これが激しすぎるとスピンしちゃいますが。
 要はバランスなのでしょう。
 まぁ、我々レベルの日常のラジコンで、そこまで気にしてられないというのが本音な気もしますが。(笑) ここらへんの話は、気になった時に思い出す程度で十分でしょう。




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