「発見」

「っと、うわぁぁぁ」
べち。と音を立てて顔から地面に着地した。
「さすがミュ・・・」
「おいおい、大丈夫かぁ〜?まぁ、最初は誰でもそうなるか・・・」
「ミュ、大丈夫??」
ひざをつき、目線を合わせてニッコリ笑うと
表立ったところに怪我が無いか確認する。
「にしし、だいじょーぶだよ。少しだけ勢いをつけ過ぎたみたいなのだ。」
へたり込んだまま、辺りを見渡す。
ここは・・・森?
大きく深呼吸する。
「ふぅ〜〜。空気も良いし素敵なところやね」

でも、なんか嫌な感じがする。

「良い所でしょ?ここが私たちが住む事になるラグオルよ」
「だが、このままじゃダメだろ?」
少し険しい顔でノーサーが言った。

駄目、すぐそこに・・・

「そうだよね、爆発を調査する為に、
 早くセントラルドームへのルートを確保しないとダメだか」
「シィッ!セリカ黙って」
「・・・なに??」
さすが、ちゃんと解ってくれてる。
「?!セリカ!後ろッ!!気をつけてっ!!!」
ウチが言い終わる前に、セリカは立ち上がりつつ後ろの草むらを凪いだ
シャッ!ーーーーーーーーッン
セリカの手元から高く綺麗な音が鳴る。
音叉を叩いたような共鳴音が鳴り止むと
草の一部分がはらはらと舞い落ちてきた。
「グガァァ!」
熊?モグラ?のような動物が足を切断され倒れてきた。
スッ。
全く抵抗も無く背中に刃が深く突き刺さり、そいつは絶命した。

流れるような動作で刀を抜き、血を払う。
ィーーーーーッン
また、綺麗な音が鳴った。

セリカの持つ刀の刃身は赤茶色で、錆びているように見える。
だけれどもその剣が発する音、切れ味、
とても錆びているようには思えない。

「ブーマか!!」
一瞬の事であっけに取られていた2人がこっちに来る。
「みたいだね。ミュ、助かったよ。ありがとー。」
差し出された手をつかみ立ち上がる
「にしし」



「なぁ、ミュ。どうしてブーマの居場所が解ったんだ?」
しばらく散策した後、インフェが聞いてきた。
「うむ。俺も今、考えていた所だ。
 離れていたとはいえ、俺たちは全く気付かなかった。」
ノーサーは立ち止まり、腕を組むと難しい顔をした。
「それ、私も聞きた〜い!!」
隣りを歩いていたセリカが、ウチの顔を覗き込む。
「あ〜その事ね。それがねぇ・・・」
「うんうん。」
セリカの目が輝いて、さらに顔を近づけてくる。
「よー解らんねんよ。」
「・・・」
みるみるうちにガッカリした表情に変わり
「はぁ〜。そのスキル教えてもらおうと思ったのになぁ〜
 でも、良く解らないのにどうしてあれほど正確なんだろう??」
「ん〜。強いて言えば嫌な感じがするんよ。『悪意』を感じるって言うのかな?」
「それだけなの?」
「うん。」
「はぁ〜。私がそれを習得するのは無理そうねぇ」
「ごめんねぇ。ウチがもっと解りやすく伝えれればいいのだけれど・・・」
「あ、いやいや。気にする事無いのよ。ミュは悪くないのだから。ね?」
ドクンッ
これ・・・なに??
ウチの視覚に別の視覚が割り込んでくる・・・

視線?自分で自分を見ている??
幽体離脱したような不思議な感覚

視覚からウチが消えて、色も消える。その替わりノイズが走る・・・
周りの音も消え、ノイズに合わせて雑音が聞こえる
『もジ、ジジジジジジ望むジジジ、ね。』
そして、しゃがみ込んで手に持った何かを大切そうに置く・・・

「敵なの??」
セリカが刀に手を掛け、ノーサーとインフェも戦闘体制に移る。
目も耳も元に戻ってきた。
大丈夫。ウチはウチだよね・・・
「ううん。ちゃうんよ。別の何かが・・・」
そう、この場所で何かを置いたはず
さっき見た現象をそっくり繰り返すようにしゃがみ込む。
「あれ?これ、なんだろ??」
セリカがウチの背後から肩越しに覗き込む。
それぞれの武器を収めノーサーとインフェも覗き込む
「ぬ。」
「なんだ、こりゃ?」
色の無い世界で大切そうに何かを置いた場所は
良く見ないと解らないほどだけれど「歪み」のような空間になっている。
ウチは自然にその空間から水をすくい出すように両手を近づけていく
「お、おい」
「止めとけ!ミュ」
「そうよ、何があるか解らないのよ!!」
静止する言葉も聞かずウチはその「歪み」をすくい上げる。
パシィ!!
まぶしい光と音を上げて「歪み」が消滅した。
後に残ったのは手のひらの上にある・・・
「なんやろ?これ・・・」
「ぬ。しらん」
「ん〜。なにかなぁ〜?」
「・・・」
インフェは無言でその物体に手を触れた。


『あーあー。

 ゴホン!

 あたしは リコ。
 ハンターの リコ=タイレル。

 これから このカプセルを
 記録として 残していくとにする。
 後に あたしに続いてくる者のために。

 今、これを聞いているなら 解かるはずよ。
 この惑星「ラグオル」に
 何らかの異変が 起きつつあることを。

 忠告しとくわ。
 気を抜かず、常に周囲に気を配ること。
 もし 生き抜くことを望むなら、ね。』

「メッセージカプセルだ。」
「なんだ、つまらん。」
「ちょ、ちょっとインフェにノルザ!メッセージをちゃんと聞いたの??
 メッセージの主はリコ=タイレル。レッドリング・リコって言ったのよ!?」
「偽者だ」
「まぁ、普通に考えるとそうだな。」
「ちゃう!!」
思ったより大きな声を上げてしまったウチの顔を、皆がビックリして見つめる
「あ、ごめん。でも『ラグオルに異変が起きつつある』とか
 話している内容については、信頼性があると思わん?」
「ま、まぁ。総督にこのカプセルを聞かせれば、本物かどうかなんてすぐ解るじゃない。
 とにかく今日はここまでにしましょう?」
ノーサーとインフェは暴れたり無かったらしく、少々不満気だったけれど
総督への報告をウチとセリカに任せる事を条件に
今日はお開きになったのでした。