「報告」

「ミュウ=ブリュンヒルド、セリカ=ロウズ。入りなさい」
アイリーンの言葉に従い、ウチとセリカは総督の部屋に入った。
部屋の中、中央に総督その右手にアイリーンが付く
左側には白衣を着た、いかにもな人がコンソールをいじっていた。

「で、話とは?私に確認をして欲しいとの事だが・・・」
書類から目をはなし、ウチらに向かいそう言った。
ウチは小さく深呼吸して
「はい。本日ラグオルにおいて、このようなメッセージカプセルを発見しました。
 この中に、ラグオルの異変を示唆する発言があります。
 発言者は・・・」
ここで一呼吸置き
「リコ=タイレル。そう言っています。」
総督の表情が一変する。が、またもとの表情に戻った。
「この発言が信頼の置けるものなのか?本当のリコ=タイレルなのか?
 それを確認していただくために、お時間を取らせて頂きました。」
一歩進み、カプセルを総督に渡す。
「解った。これを聞けば良いのだな。」
相変わらず硬い表情。
だけれど、カプセルの安全チェックも行わず再生しようとしている。
『やっぱり心配なのね・・・』
総督の人間っぽい所を見れて、少しだけホッとした。


「・・・もし 生き抜くことを望むなら、ね。」
全てを聞き終わった後、力が抜けたように下を向いた。
「・・・で、どうなんでしょう?」
セリカが問いかける。
「うむ、間違いない。この声は娘、リコ=タイレルに間違いない。」
こっちを向いた総督は瞳に希望の力が宿っていた・・・

アイリーンが総督を見、一瞬優しい顔をして
ウチらに問いかけた。
「まずは、そのカプセルを見つけた場所と様子を教えて欲しいのだけれど。」
セリカが手首に装着したツールを確認して、
「座標はFの143:Bの547になります。見つけたときの様子は・・・」
チラとウチを見たので、ウチがその報告を続ける。
「空間の歪みのような物を発見しました。
 その歪みに接触するとカプセルが現れたのです。」
もちろん、あの良く解らない現象については報告しなかった。
下手したら精密検査なんてことになるかも知れないし・・・
「歪み。ですか・・・。どうなんでしょうか?」
アイリーンは少し困ったような顔をして、研究員に発言を求めた。
「その座標は転送機の近くなので、既に調査は完了しています。
 今までそのような報告はありませんし、歪みなどある訳がありません。」
「ちょっと!私たちが嘘を言っているとでも?」
セリカは研究員に詰め寄った。
「第一、そのような箇所に歪みなんてあったら、既に誰かが見つけているはずです。」
「よく見ないと解らないほどの歪みだったのよ!!」
研究員を掴みあげようと手を伸ばすと、とがめるように総督が
「待ちなさい。発見したという場所の再検査をするんだ。
 フォトン探知を重点的にな・・・」
ドクン。顔を総督に向けると、総督と目が合った。何故か悲しそうな目と・・・
「フォトン探知ですか・・・。解りました。至急手配します。」
セリカから逃げるように研究員は部屋から出て行った。

「メッセージカプセルと発見場所の調査は至急こちらで行うことにする。依存ないな?」
有無を言わせぬ威厳でウチらの回答を強制する。
ここら辺が偉い人の特徴っていうか・・・嫌いんよね・・・
「はい」
「・・・はい」
ウチらの返事を聞いて満足したのか、幾分語調を和らげて
「新人2人だけでラグオル降りたのか?」
と、過保護すぎる質問をした。
「いいえ、私たち以外に2人いましたが・・・」
セリカと言えどもさすがに、面倒だから来てないとは言えず言いよどむ・・・
「まぁ、よい。検査の結果は追って連絡する。その時は4人で来るように。
 あ、ついては… … …いや、いい。なんでもない。…よろしく 頼む。」
「ありがとうございました。今後も新しい情報があれば報告をお願いします。」
という、実質さっさと帰れと言う発言をもって、報告は終わりになった。