「発覚」 総督の部屋へ向かう途中、ウチ達はこの前の報告の内容を話した。 「なにぃ〜。あれが本物だったのか??」 「うん。総督は間違いないってさ。」 「どうして、そんな大事なこと言わなかったんだ!」 「だって、聞かれなかったんだから、しょうがないじゃん!」 インフェとセリカが言い争っている。 「まぁ。俺は本物でも偽物でもどっちでもいい」 少し離れたところでノーサーが呟いた。 セリカが2つ目のカプセルを再生し終わると ウチとセリカのの左手首・・・簡易ツールからメール到着の音が鳴った。 差出人はアイリーン、本文は簡潔に 「カプセルの検査結果が出ました。少々お尋ねしたいことがあるので 明日、14:00に4人で総督の部屋まで来て下さい。」 と書いてあった。 重厚な扉をノックすると、しばらくした後にゆっくりと扉が開いた 総督の部屋は前と同じように、右手にアイリーン、左手に技術者がそれぞれの仕事を行っている。 前と同じなのに、何か違和感を感じる。 「うむ。ではよろしく頼む」 端末に向かって話しかけていた総督は、通話終了のボタンを押し ウチらの方に目を向けた。 「ご苦労。君たち4人がカプセルを発見してくれたメンバーだな? 早速で出悪いが、まずは君たちの言う『歪み』について、その後何か進展が無いだろうか?」 ウチはその物言いに何か引っかかるような気がしたのだけれど 全員がウチの方を向いてるのに気づいて、重い口を開けた。 柱が起動したこと、歪みがウチにしか開放できないこと、 新たに見つけた2つのカプセルのこと。 その2つのカプセルのメッセージを聞き終わった後、 「そうか・・・」 安堵したように総督は椅子にもたれ掛かった。 「そうですか。こちら側で検知した反応は、柱によるもののようですね。 まずはこの資料を見てください。」 アイリーンが2〜3枚の紙をウチらに渡しながらそういった。 「昨日17:37頃、ラグオル地表にて突如エネルギー反応が見られました。 規模はかなり小さいですが、ラグオル到達時の爆発にパターンが酷似しており 本日朝早くから調査隊を派遣していました。 詳しい説明をお願いします。」 アイリーンに変わり、研究員がウチらの前に立った。 「以前報告頂いた、Fの143:Bの547地点を調査した結果 微量ではありますが、異常フォトンの反応がありました。 残念ながら『歪み』そのものは見つかりませんでしたが・・・ 資料1枚目にあるグラフがラグオル到達時の爆発の物、 2枚目がFの143:Bの547地点と今朝ラグオル地表で見つかった物 規模の大小はありますが、おそらく同質のものだと思われます。」 「本来ならば、調査が完了するまではセントラルドーム周辺の立ち入りを禁ずる所だが、 調査隊が音信不通になり、現在捜索隊がラグオル地表に降りている。 君たちにはこれから、2次捜索隊と合流してもらいセントラルドーム周辺の敵殲滅及び 調査隊の捜索を手伝ってもらいたい。」 落ち着きを取り戻したのか、総督はいつもの表情で私たちに依頼した。 「総督・・・」 アイリーンの指摘に思い出したように 「あ、あぁ。ミュウ=ブリュンヒルドにはもうしばらく残ってもらいたい。 セリカ=ロウズ、ノーサー、インフェルノ3名は至急転送装置前まで行ってくれたまえ」 「え〜。なんでミュだけ!!」 総督につかみ掛かりそうなセリカに対して 「まぁまぁ。ウチも聞きたいことあるし、すぐ追いかけるよ。 あ、でも敵は残しておいてね。ノーサー、インフェお願いね。」 と言った。 「ぬ??」 「・・・わかった。お嬢行くぞ。ノーサーそっち持ってくれ。」 インフェとノーサーがセリカを両脇から抱え上げ、引きずっていく。 「ミュになんか変な事したら私が許さないからね!!!」 扉が閉まったのを確認して 「・・・で、何をしたんですか?」 と左にいる研究員に問いかけた。 研究員はビクッとして、不安そうに総督に目を向けた。 「すまない。少しためさせてもらった。 部屋に入るときに生体スキャンを、そして話中に何度か 観測された異常フォトンと同じ波長の音波を放射させた。」 「音波ですので、体に影響はありません。私たちも受けていますし・・・」 と、アイリーンが補足した。 「結果、君以外はあの波長に反応することは無いということが判った。 生体スキャンの結果は?」 「は、はい。今出ました。セリカ=ロウズ、ノーサー、インフェルノ3名に対して 異常フォトン・・・D因子は計測されませんでしたが・・・」 研究員がウチを見て言いよどむ。 「かまわん。言いたまえ」 総督の言葉におどおどしながら、 「ミュウ=ブリュンヒルドの体からは極微量、D因子と特定できる反応が出ました。 また、ミュウ=ブリュンヒルド所有のマグ及び、セリカ=ロウズの所持している武器からもD因子の反応があります。」 「うむ。ミュウ=ブリュンヒルドはコーラルではラボに所属していたのだな?」 「はい。ラボにいる時の記憶は曖昧ですが・・・」 「君に渡したマグはコーラルラボからの依頼で、特別な物を渡してある。」 「特別・・・ですか?」 「詳しくは聞いていない。ラボから君にはこのマグを渡すようにと言われただけだ。」 「そうですか・・・」 「後は、セリカ=ロウズの所持している武器からも反応があったのだな?」 「はい。D因子と言って良いか解りませんが、非常によく似た波長を検知しています。」 セリカの武器・・・あの錆のような物がついてる・・・アギトとかいったっけ・・・ 「以上のことから、ミュウ=ブリュンヒルドは異常フォトンのの感知が可能であるということと 『歪み』と言われる物は、ミュウ=ブリュンヒルド本人かその傍にいる人物でないと 感知できないようです。」 「そうか・・・」 総督が下を向き、みんなが黙ってしまい、沈黙が流れた。 「あの、コーラルラボから何か言ってきてませんか? 元々はハンターズに入った後、パイオニア1ラボへ出向するように 言われていたのですが・・・」 「あぁ、そのことなら、ラボより現状を維持せよ。とのことだ。」 「現状・・・このままラグオルの探索を、と言うことですね・・・」 「そのようだな。我々もコーラルラボとの連絡を密に取っている訳ではないので なんとも言えないが・・・」 ビーッビ−ッ 突然、総督の端末から警告音が鳴り響いた。 「どうした?」 「2次捜索隊からの緊急コールがありました。」 「解った。再生してくれ。」 「こちら2次捜索隊、大量の敵からの襲撃を受けています! 調査隊及び1次捜索隊は全滅した模様。 至急援軍を求む、繰り返す!至急援軍を求む!!」 「以上です。」 「至急、討伐隊を召集!時間はどれくらいかかる?」 「30分で完了させます。」 「解った。できるだけ急いでくれ・・・」 端末のボタンを押した総督は飛び出そうとしたウチを呼び止める。 「ミュウ=ブリュンヒルド!君一人行ったとしても無駄だ! 討伐隊召集を待つんだ!!」 「嫌です!!止めると言うならそれ相応の覚悟を・・・」 総督を睨みつけると、諦めたように 「解った。転送装置には、緊急コールがあった座標を登録させておく。」 「ありがとうございます。では・・・」 扉の前でウチは 「大丈夫。リコさんは生きていますよ。そう感じます。」 と一言告げて走り出した。
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