平成19年 9月 10日  NO.153

産科救急への対応
先日、奈良県で、妊娠中期の妊婦さんが、突然腹痛を訴え、救急車が出動したが、なかなか受け入れ医療機関が見つからず、結局、大阪府内の病院に搬送されたが、途中で流産(死産)となったことが報道されました。受け入れできなかった病院では、いずれも分娩等処置の最中で対応できなかったということで、改めて、産科医療機関の不足、産科医の不足がうきぼりになり、行政への要望が強まりました。ただ、この妊婦さんは、妊娠してから一度も産婦人科にかかったことがなく、このことが、さらに事態を不幸に導いたと言えます。
通常、妊娠中に異常が起きれば、まず、かかりつけの病医院に連絡し、そちらを受診した上で、そこで治療を受けるか、あるいは、さらに高次の医療機関へ搬送されて、治療を受けます、事情があって、かかりつけ医でみれなくても、かかりつけ医が責任を持って受診する病院を紹介し、その妊婦さんの情報を知らせます。そして、受け入れ病院が、その時点で、分娩など処置中であっても、搬送される妊婦さんの重症度や緊急性等の情報から治療のめどが立てば、可能な限り受け入れることができます。ところが、かかりつけ医がなく、妊婦さんの情報がなければ、最悪の事態を想定して、緊急手術の準備、麻酔科や小児科の要請等も考えねばならず、余程、受け入れ先に余裕がなければ、搬送を受けることはできません。その点、当院できちんと健診を受けている方はご安心いただいてよいのですが、県外へ遠出していて異常が起きた場合は、やはり、受診する病院を探すのに苦労することがあるかもしれません。無用な遠出は避けましょう。