平成17年1月31日  NO.86

妊婦貧血について
妊娠すると 非妊時よりも鉄分を多くとる必要がでてきます。したがって 摂取が不十分だと鉄欠乏症貧血に陥りがちです。妊娠中には通常、初期、中期の2回貧血検査をし、必要に応じて鉄剤による治療を行います。
貧血が強ければ当然、胎児の発育が悪くなりますし、また 分娩時には大量出血をきたすおそれがありますので、それに備えて貧血を改善しておく必要があります。
ところで 妊娠中は週数が進むにつれて、血液量が増加しますが、この中で赤血球量の増加に比べて、血漿量の増加の方が大きく 血液が希釈されることになります。したがって 鉄分が十分摂取されていても検査データの上では貧血はすすみます。一方、妊娠中は血液の粘度が増し、血が固まりやすくなりますので、このように血液が少し希釈され「サラサラ」した感じになった方が体内の臓器や胎盤に血液が行きわたりやすくなり、また 血栓がつくられにくくなって、妊婦さんの体にとっては都合がよくなります。
以上のことから 妊娠中はどの程度の貧血から治療した方がよいかが問題となります。Hb(ヘモグロビン)値だけをみると、WHO(世界保健機構)では妊婦貧血を 11.0g/dl未満(非妊時は通常12.0g/dl未満が貧血)と定義していますが、当院では10.5g/dl未満を治療の対象とし、場合によってはこれにMCV(平均赤血球容積)や血清鉄などのほかの検査データを考慮し治療を行っています。