平成13年5月の日記 

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平成13年5月3日 憲法記念日に。

今日は憲法記念日である。間違えようのない非常に簡潔な祝日だ。簡潔でない祝日はみどりの日とか、海の日とか。

ゴールデンウィークも半ばをすぎた感がある。今日は細君と連れだって、友人宅に呼ばれたので足を運んだ。友人には娘がいるが、まだ3歳にも満たない。言葉は友人に似たのか、とても2歳児とは思えないほど闊達に話す。

細君は羨ましいのかよくわからない表情を浮かべ、一応先達である友人(ちなみに細君の友人でもある)の奥さんに出産の時のあれこれや、子育ての苦労や子供の可愛さなどについて質問しながら談笑している。いい傾向だなぁと純粋に思う。

もう十年以上の付き合いである細君とはいつ子供ができても問題のない付き合いをしてきた。さすがに大学時代にできていたら問題はあったと思うが、それでも結婚すればいいだけのことという楽観に近いものもあった。一応惚気ている。

だが、出来てもかまわないと思っているとなかなか出来ないもので、結婚してから最近までは実は避妊もしていた。ただ、二年を過ぎて子供が出来ないのもあまり歓迎されないので、先月から一生懸命である。まぁ、何とかなるとおもう。

帰りに漫画喫茶に寄って二人がそれぞれの世界に突入し漫画を読む。というよりも読みあさる。

こしばてつや『天然少女萬』全20巻読了。当初の目的と最終的な帰結が大きくずれた作品。10巻までが格闘編。15巻までがサイコ格闘編、20巻までが恋愛格闘編。と私が勝手につけた。ほぼ間違ってはいないはず。出来れば10巻までの姿勢を貫いてほしい作品だと感じた。出来がいいだけに。

『エアマスター』12巻以下続刊。まあ、正当で順当な格闘漫画。そう、この感じのまま最終まで持っていってほしいと思う。天然少女萬は、物語が場当たり的でいまいち最後の方は人気取りか、担当の配置換えで担当の力が増大したか、作者の趣味が変わったとしか思えない作品はおもしろいのに何となく憮然としてしまう。

『超バージン』全7巻読了。ホントありきたりな作品でチープな設定であるが、使い古された手というのは効果があるからこそ使い古されるわけで、私はこの設定は大好きだ。うん。純粋に楽しんでやる。(いわゆる女装して好きな女の子と友達になった後、素の自分にその女の子が恋をして――というもうそれは古い設定)

それにしても漫画一巻につき私が有する時間は10分弱、本日の総巻数39巻、ざっと計算して6時間30分だが、細君は文句をたれなかった。いや、正確に言うと文句をたれたのは私であった。

細君は『ガラスの仮面』42巻以下続刊にはまっていたのである。


平成13年5月5日 こどもの日。

子供を作らなきゃなぁ、と最近は強く思うようになってきた。二年間の新婚生活とそれまでの7年間で二人の時間があまりにも居心地がよかったせいか、そこに三人目の介在者を入れることをなかなか認識できずにいた観もある。がんばろう。

ゴールデンウィークも最終にさしかかってきており、さすがにのんびりとした生活に少々の渇を与えなければなるまいと細君と連れだって近くの神社のお祭りに。縁日が出来ており、なかなかの盛況だったが二人してぐったり。なれないことはするんじゃないよね、と細君が苦笑い。同意。

じゃ、なれてることでもしようか、と連日ながら漫画喫茶へ。もしかして私たち夫婦は腐っているのかもしれない。

『フルアヘッドココ』米原秀幸21巻以下続刊読了。なかなか楽しい作品だが、それ以上でもそれ以下でもない作品。

『風と剣』内山まもる全7巻読了。ありきたりな15年くらいまえの剣道漫画。最後はもう何ともいえないつまらない終わり方でお茶を濁している。しかし高校の剣道部の武勲に「生涯童貞!」ってのはいかがなものか。

『沈黙の艦隊』かわぐちかいじ全32巻再読了。相も変わらずおもしろく、燃える。だが、学生時代とは持つ感動の幅が違う。当然のように感想も違う。多少は人生観は変わるものだ。

細君は『3×3EYES』を読んで一言。「良作は早めに止めなきゃね」同意。

自宅に戻って夕食の準備。ゴールデンウィークくらいは私が料理してやるよ、と柄にもなく厨房にたつ。特技であるラーメン屋のチャーハンとマーボ豆腐を作る。旨い。

細君が私の積読状態の『孟嘗君』宮城谷昌光全5巻に取りかかり始めたので、寂しくなって『伊達政宗』山岡荘八全8巻に着手。

こうしてみると私たち夫婦は本しか読んでいねぇな。本代以外は金のかからぬ節約夫婦。


平成13年5月6日 ゴールデンウィーク最終日

長く単調で平和な日々もやっと終わった。細君との二人っきりな休日を長く過ごすとちょっと疲れる。

山岡荘八『伊達政宗』全8巻読了。ほぼ一日と半日を費やしてやっとこさ読了。正宗の危うさと狡知が巧みに描かれた作品。ほんの少し銀河英雄伝説の配役と似ていると感じる。いや、銀河英雄伝説がにているというべきか。

さすがに不健康な日々を送っていたので、昼からゴルフの打ちっ放しへ。体中の筋肉が軋みをあげているのを、表面上は無視しながら黙々と打ち込む。細君が傍らにいないのでほんの少し開放的な気分に浸る。もしかしたら細君の方もそう感じているのかもしれない。

夕食はゴールデンウィーク最後の晩餐ということで、ちょっと気張って近くのちょっとお高い料亭へ赴く。会社の都合上、何度かココには足を運んでいるが、自腹で食べるのは初めて。値段は当然知っていたが、支払い時に目が飛び出た。だが、細君は満足している様子である。

疲れたねと苦笑しながら漫画喫茶へ。私たち夫婦はとりあえず、羽を休めに漫画喫茶に来ているようだ。

『仁義』立原あゆみ29巻以下続刊読了。成り上がりチンピラ物語だが、金の単位が半端じゃないので笑える。暴力と経済を一挙に手にすれば、まあ、怖い物はないのである。暴力は手には入らないが金はほしいなぁ、と切に感じる。

家につくと11時を回っている。明日の仕事の準備をし、細君と一緒にお風呂に入る。

お互い年を取ったね、と細君は私の腹を見ていう。ああ、お互いな、と細君の肌を撫でたら怒られた。

お互いじゃないか。本当に。


平成13年5月7日 一週間の始まり。

のんびり過ごしすぎたゴールデンは忘却の彼方に追いやって、重い腰をえいやっと持ち上げてみる。

営業と事務を両手に持たなければやっていけない弱小企業のサラリーマンとしては、少々苦しいが、今朝は取引先への挨拶周りへ出発。私は営業はこなす事は出来るが、「好き」ではない。好きであることと出来ることが比例しないように好きでなければ出来ない仕事ということもない。

営業はいわゆる「やるか、やらないか、やれないか」である。

それにしても営業は嫌いだ。にこやかな笑みを顔に張り付けることや、頭をペコペコと下げることをイヤといっているわけではない。むしろその方面は得意だが、それに対する反応が実に読みやすい人間ばかりを相手していることが不満なのだ。

まあ、賢くなられても困るが。

仕事があがり、新入社員を誘って近くの居酒屋に飲みに行く。男は加藤、女は深見という。ゴールデンウィーク明け、つまり今日、我が課に配属されてきたまさにフレッシャーズである。3年ぶりのフレッシャーズたちの教育係である――というか、押しつけられたのだが――私は、ささやかな歓迎をかねてご招待したというわけだ。

簡単な紹介をしあった後に、我が社の感想を聞く。加藤「古いですよね」深見「給料やすいですよね」実に明快。もう少し遠慮をしろよ、と苦笑する。

二人が嫌がるのを承知で恋人関係の話を聞く。別段気分を害した風もなく二人そろってフリーだという。

ああ、だったら結婚しろよ、と酒に酔ったため傍若無人なふりをしながら、こっそりとけしかける。お互いに顔を見合わせて笑っている。しょうがねえ上司だなぁと思っているはずだろう。

まあ、しょうがないのはお互い様。二次会に行きましょうという二人の誘いを断って「気をつけて帰るように」と深見に伝える。「しっかり送ってけよ」と加藤には伝える。

ははは。少し酔ったのかもしれない。

帰宅し細君にそのことを伝えると苦笑いを浮かべている。「そんな上手くくっつかないわよ、男と女は」だそうだ。


平成13年5月8日 中途半端な火曜日

火曜日って中途半端だと、朝食時に細君に愚痴混じりで話した。細君は苦笑したまま、私の背中をポンと叩いて会社に送りだした。相変わらず、そんなクサイ仕草が好きな細君だが、それで元気になる私も私だ。

新入社員の二人は別段意識した様子もなく、挨拶の後に昨日の食事のお礼を二人そろって口にした。不発か。

で、深見女史に営業の事務を1時間ほど教えた後、加藤青年に営業のイロハを教える。二人ともかなり優秀で真綿に水を吸い込むように吸収していく様にはびっくり。二人のプロフィールを確認して納得。どちらも一流に属する大学出だ。

加藤青年と深見女史はチームを組ませることにし、その旨を係長に連絡。

「京極さんって主任だったんですか」と、驚いた顔で二人は言った。チミ達は私が何の役もなく教育上司面していると思ったのかネ?これでもこの会社ではエリートなんだよ。ふん。3人でチームを組むことに。

午後は二人を伴って得意先を回る。得意先と私の関係から何か学んでほしいと思う。で、お次は飛び込みで仕事を覚えさせる。実は友人が窓口の会社だが、二人には知らない会社として紹介。友人に合せてもらうように電話。そういう悪企みにはホントうれしそうに乗ってくるヤツだ。

友人の会社の前で待っていると二人は這々の体で会社からでてくる。かなりショックなようなので喫茶店で宥める。そこへ友人が来て種明かし。

二人は安堵し、私に文句を言ってきた。黙って聞いてやり「すまん」と頭を下げる。そんな私の態度に満足そうな二人へ、友人からきつい一言。

「お前ら救いようがないな」

怒ったように立ち上がって去っていく友人。二人は黙って見送っているが、俺は追いかけていって二人が見えないところまで行き、計画通りの行動に感謝する。「すまん、憎まれ役やらして」

席に戻って伝票を持ちながら、帰社するようにと一言だけ指示し、私は一人喫茶店を出る。二人の表情はもちろん盗み見している。何ともいえない顔している。

この放置プレイのような感じが大好きだ。エロい。勃起する。二人は知らないだろうが、性的な嫌がらせをするのをセクハラというのならば、私にとって――あくまでも私にとって――二人にした行為はセクハラ以外の何物でもない。

いや、あくまでも社員教育の一環。いや、ほんとだってば。

二人を置いて営業周りに出かけたふりして漫画喫茶へ。直帰する旨を会社に連絡。

『紅い芝生』小池一夫原作・弘兼憲史画全7巻読了。小池一夫原作のゴルフ漫画を過去に読んだことがある「明日へのショット」だとおもうが定かではない。そっくり。男を失った女が愛を誓いながらも試行錯誤したり、明るくなってみたのを戒められたり、口紅でスイングチェックしてみたり。使い回し。

『課長島耕作』弘兼憲史全17巻読了、同氏『部長島耕作」9巻以下続刊読了。いいね。ケレン味や派手なコマ割りはないけれど、しっかりと読ませる良作品。さすが弘兼氏を漫画家から、世相評論家に格上げ――もしくは格下げ――し、お茶の間にその名を売り込んだ作品だ。

9時過ぎに帰宅。細君は黙々と伊達政宗を読んでいる。朝食の皿すら流しからかたずけられていない。理由を聞くと案の定、一日中読んでいたという。こんな細君が私は好きだ。


平成13年5月9日 暑すぎる水曜日

暑い。今日はとにかく暑いの一言。夕方は通り雨のおかげで蒸し暑さも加わった。夏は嫌いではないけれど、暑いのは嫌いだ。子供のように駄々をこねてやろうか。

CSチューナーの契約を完了。実は3ヶ月前に購入していたのだが、契約を行っていなかった。今回やっと完了。今日は楽しく銀河英雄伝説第16話を鑑賞。楽しい。楽しいので日記も名称を「日記シトレ」としてみる。

朝会社に行くと、新入社員二人がやけに恐縮したように頭を下げる。昨日の放置プレイ(社員教育)が肝に堪えたと見える。くっくっく。次はどんな手でセクハラ(社員教育)をしてやろうか?

加藤がトイレに立った私を追いかけてきたのか、トイレの前で「昨日は申し訳ありませんでした」と申し訳なさそうに頭を下げる。「気にするなよ。あいつも口悪かったしな」と理解ある優しい上司を演じる。「あれから深見と二人で仕事というものについて話し合ったんです」と殊勝なことを語る。

まあ何にせよ、考えることはいいことである。私は話し合った内容よりも、どこで二人が話し合ったのかが気になるが。

セクハラセクハラと連日言っているが、セクハラと思っているのはどうやら私だけのようだ。まあ、放置プレイなどというのは、放置されている方がそう思わなければその人達にとってはプレイでも何でもない。ものすごく当たり前のことだけれど。

ロリコンやレイプ趣味の人間にはこんな事は出来ないだろう?妄想をこっそり実現する、エロの究極だね、放置プレイは。放置されて右往左往する二人をこっそり眺めながらオナニーするのが私の目標。

『風の大地』かざま鋭二画・坂田さん原作27巻以下続刊。いいね、しっかりと書いている感じがいい。かなり収穫。ゴルフ漫画の島耕作って感じ。


平成13年5月10日 退屈な木曜日

退屈。この芳しき香り。我が日記シトレも開始から12日目という何とも中途半端。

今日は何をしたという覚えはない。営業で黙々と回っていた以外は。つまらん人の噂や讒言は聞き飽きた。

しょうがないので私自身が天下国家を狙おうと夢想した。イヤ、狙う。正規の手続きを踏んでこの国の半分を手に入れてやろうと思う。手始めに市議会議員にでもなろうか。次の統一地方選が二年後、私が29才。決して遅くはあるまい。

細君にその旨を伝えると快諾。細君も私も馬鹿だ。「馬鹿の方が楽しいわ」ともっともな意見。こうなると善は急げで、両親と義理の両親にその旨を話に。細君を連れ立って回ったが、親二組に対し同じ事を同じように説明し、同じように否定され、同じように承諾されるのでちょっとうんざり。

まあ、親の力はある意味必要なので我慢だ。

地元に市議会議員がいないのも悪くない。後はしゃべりを身につけるだけ。

で、うんざりして帰る道すがら、漫画喫茶へ。ごめんなさい。

『マイアミ・ガンズ』全4巻読了。特記事項なし。

『ノーマーク爆牌党』全9巻片山まさゆき読了。楽しい。さすがに実績のある漫画家は当たり外れはないなぁ。楽しいところはきっちり押さえ、シリアスはシリアスできっちり進める。安心と実績、選挙文句になりそうな感じ。


成13年5月18日 一週間ぶり。

一週間ぶりに更新。なんかもう、この一週間はめまぐるしく環境が変わって挨拶周りに奮迅した気分。だからといって実は何も変わってないのだけれど。

●ニューヨーク・タイムズが「日本プロ野球のスター選手が米国でますます輝きを増す一方で日本国内では逆にプロ野球自体に悲愴感が漂っている」と報じたと今日のスポーツ紙にも掲載されているようです。日本では周知のことかも知れませんが「読売ジャイアンツと利害を一致させる日本テレビの幹部が、『メジャー・リーグのニュースをトーンダウンするように』と、ニュース番組ディレクターに秘密裏に通達した」なるスクープ記事も。(イチローToday平成13年5月18日付)

相も変わらず、ナベツネ。

細君は少し体調が悪いらしい。春風にでもやられたのだろうか?


平成13年5月20日 ガンダムな日曜日。

細君の体調がおかしい。悪さ爆発である。機嫌も悪い。

親指シフトなる入力方法があるらしいが、その推薦HP「親指シフト・キーボードを普及させる会」を見てなおさらほしくなった。たまらんとです。

ただ、導入するには恐怖に近いモノがある。私はMicrosoftのナチュラルキーボードを使用しているが、とても快適だ。思考の速度に近い早さで表記できるのもいいし、従来のモノよりも肩が凝らずにラクチンなのだ。

わざわざ、いい状態のキーボードを廃してまで親指シフトキーボードを購入しなければならない理由は存在しない。だが、今よりも確実にタイプ速度が上がり、思考と完全シンクロするというなら買わない手はない。ああ、迷う。とりあえず、親指シフトエミュレーターを導入して擬似的に運用してみようと思う。

CSで劇場版ガンダム2「哀・戦死」をやっていた。じっくりと見た。しかし連邦軍にしろ、ジオン軍にしろ、いまいち宇宙を二分する戦いとは思えないような局地戦を展開しているのに疑問を抱く。別にガンダム一台スゲー働きをしたって戦争の趨勢にさほど意味はないだろうに。

もし、ガンダム+アムロに趨勢を左右するほどの力があるとすれば、GPMでの速水+士翼号みたいなモノなのだろうか。あ、そう考えると納得。人類もしっかり進化してくれたまえ。とエールを送りたくなる。

河合克敏『帯をギュッとね!』全30巻読了。河合克敏の出世作だけに、そつなくおもしろい物語展開と、キッチリとした予定調和に感心。

原秀則『やったろうじゃん』全20巻読了。まあ、原秀則らしい物語展開。あいもかわらず「悲劇のヒロイン、レイプいっとく?」って感じでレイプシーンを織り込むスタイルは秀逸。『さよなら三角』のころはキスシーンで代用していたのだが、青年士に移ってレイプシーンを利用することに決めたようだ。


平成13年5月21日 マチキンドリーマー

細君の調子は少しずつ快方に向かっている。この数日間、細君の調子が悪いと思っていたら花粉症の一種らしい。杉、檜は何ともないが今飛んでいる花粉は何の花粉だろうか?

親指シフトキーボードの導入を考えたが、あれはやはり使えないと言うことが判明。仕事場と自宅のキー入力が違ったら結果タイピングが遅くなるのは目に見えている。このまま、JISキーボードで思考速度の実現を目指そう。

最近、仕事場の新人、加藤がなかなか意欲的に働いている。5月病の心配もなさそうだ。一方同じくルーキーの深見は気分が憂鬱そうにボーっとしていることが多い。

ま、彼らの行状なんぞ構ってはいられないが。

選挙に出るという事は、当然家族と一部の友人にしか話していない。2年も先のことでもあるし、その方向如何によってはいろいろな軌道修正に迫られること必須だからだ。

とりあえず、子供はお預け、か。

仕事が速く終わったので細君を連れだって近所のファミレスで夕食。

その後、毎度の事ながら、漫画喫茶へ。

郷 力也『ミナミの帝王』52巻以下続刊、読了。疲れた。
ものすげースピードで読み飛ばしたため、細かいストーリーなんぞ頭の隅にも残っておりません。ありきたりな話の使いまわしを派手な演出と胡散臭い法律適用を散りばめることによって、読む側に擬似的勧善懲悪の快感をもたらすどこにでもある作品。しつこいようだが、どこにでもある作品ほど安心して読めるものはない。効果的だから、悲劇のヒロインは誕生するのだし、それを助ける勇者も存在するのだ。ようはいかに陳腐化されたストーリーを使いこなし、独自色らしきものを出しつつ、読者に対する期待をいい意味で裏切らないかである。

その一点において秀逸な作品であることは間違いない。


平成13年5月22日 マチキンショック

昨日のミナミの帝王をまだ引きずっている。ストーリーはほとんど覚えていないが、あの独特の金銭感覚にやられている。億などという金は一生見ることはないと思うが、ほんの少し憧れる。

朝からお金のことを考えていたら、気分が悪くなったので振り払うかのように営業へ。五月病らしき新入社員の深見をつれていく。加藤は元気なので事務仕事をさせておく。

深見は女性らしい女性、と書くと語弊があるかもしれないが、言い換えればどこにでもいる女子大生の陰を引きずった新入社員だ。特殊でもなければ強い人間でもないらしい。

営業はつらいか?の私の問いに、まだ戸惑いがありますとのこと。総合職として入ったのだから、がんばってほしいモノだ。とかく総合の女の子は差別扱いを受けるからである。本人も大学時代にはここまで周りから辛くあたられるとは思っていなかったらしい。いや、まあ、私から見たら責任がそれだけ重いのだから当たり前だ。会社だって事務一般の女の子とは給料だって格段に多く払っている。

どうにも辛そうなので、昼過ぎに帰社させる。「いいです」という彼女を強引に帰社命令を出す。「役にたたんよ、今の君じゃあ」我ながら酷い言葉であったなぁと思う。(ありゃ、帰社中に泣くな)などと考えて勃起する。ソフトSMの基本である。

分かれた後、会社に電話し加藤に深見が辛そうな顔で返ってきたら慰めるように、と連絡。ほんの少し気配りの上司役を演じてみる。くっくっく。電話先で使命感に燃えていたなぁ、加藤青年。

一人になった後、営業で回るふりをしつつ漫画喫茶へ。実は今日回らなければならないところはすべて午前中に回り終えている。深見には悪いがな。くっくっく。

木城ゆきと『銃夢』全9巻読了。これ。かなりの収穫。世界観をガッチリと構築した後で、魅力的で流動的な役者を配置し、好きなように物語を紡ぎながら無理のないダイナミックな場面展開を実現させている。アラは確かにソコソコあるが、それを補ってあまりあるほどのクオリティを持っている。

うすた京介『すごいよ!マサルさん』全7巻読了。これ、ある意味収穫。言い換えれば銃夢と対局にある、というかハイスクール奇面組を正統的に進化させた感じ。そう、ココまでやらなきゃだめだ、という感じのギャグ漫画。かなり笑った。

直帰する旨を会社に伝え、早々に帰宅。やっぱり細君の体調は未だ悪いらしく、もどしている模様。しょうがないので体に楽そうなさっぱりした料理を作った。

……もしかして、と思った。いや、おそらく、と思った。私に遠慮しているのか、とも思った。

とすれば、私は最悪の時に夢を見たことになる。最高の時だけに最悪なのだ。いいや、だとしたら夢を見ておくだけにしよう。二つの夢は間違いなく共存できまい、とも思った。

たぶん、彼女は子供が出来たのだ。私には言わない、が。喜ぶべきなのだろう、な。


平成13年5月23日 マチカネフクキタル

細君はやはり妊娠していたようである。かなり、嬉しかったりしつつ、馬鹿な夢はほんの少し先延ばしにしなければならないようである。いいじゃないかね、アブとハチは同時には捕れないモノだ。

今日は仕事をはけた後、加藤と深見を誘って居酒屋へ。

そこでの加藤の話が私にとって秀逸。

「俺ですね、今度車買うときはインプレッサに使用と思うんですよっ。4WDでターボもつけたる。でも金ねー。ホントねえんすよ。ゲンチャの税金督促も来てるんすけど。ったく。んで、今車修理出してるんすけど、そこの親父に言ってやりました。おまえんとこに修理に出したのに直ってねえんだから、おまえんとこで修理代持てよってね」

ちなみに深見は軽、私はファミリーカーの代表ともいえるエスティマ。二人とも車に興味がないモノだから面白くも糞もないのだが、加藤青年は得意になって自説を開陳しだした。酔いもあってか、かなりヒートアップ。深見と私は苦笑しながらその光景を眺めていた。どうでもいいが、かなりイタイぜ。

飲み終えた後、二人と別れ細君と待ち合わせて漫画喫茶へ。ホンマこれしかしとらん夫婦。

大和和紀『あさきゆめみし』全13巻読了。細君に言われて読んだが、面白い。かなりグッと来た。紫式部の言いたいことを一言で表すと色男は女にとっても男にとっても害悪ということであろう。いや、そういうことにして置いてください。
細君にそのことを話すと、「あなたはとりあえず害にはならないわね」だと。いや、まあ、どうせ。

藤原カムイ『雷火』全12巻読了。じっくりと展開される歴史英雄物語。年代は使い古されて垢のでまくったネタであるが、作り込まれて練られているので面白い。少々カタルシスにかけるが。


平成13年5月25日 そういったこともあるけれど

改革断行内閣ってシナリオはすげぇけど、とりあえずハンセン病をめぐる一連の政府対応に関して言わしていただければ、120点のシナリオだった。ハンセン病の控訴を断念したことについては大英断であると思うが、そこに至る政府の道程は実に巧妙なマスコミ誘導と国民への人気取りへの意識に満ちていたと思う。

無論、政府内では、司法が立法府に対する権限を強める今回の判決に対し懸念はあったことと思う。控訴するのは政府として間違った行動であるとは思えない。私は間違いなく控訴するモノだとも思っていた。

控訴をちらつかせ、原告団と小泉首相との会見を延ばしに延ばし、政府自民党は結論をじらしていた。メディアや世間では控訴やむなしの雰囲気が漂っているところへ、待ってましたとばかりに小泉首相が会見を受ける。そして大逆転の控訴断念という判断。

完璧なシナリオである。付け加えるならば、坂口厚生大臣に直前で辞意も辞さずともとれる発言をさせることによって、公明党の株を上げてやるという配慮も忘れない。

だいたい20億などという金は国にとっては私たちにとっての2000円。しかも原告団は平均71才という高齢、受けることにも抵抗は少ないだろう。政府声明を出し、特別を強調すれば、後の例に使われることもなくなるだろうし、なによりも改革者小泉純一郎の名を確定させることが出来る。

たったあれだけのことで(誤解を招くといけないが、日本の構造改革に比べ控訴断念は難しい作業ではないという意味)口先だけの小泉純一郎という野党の追求を逃れることが出来る。

田中外相の失態で批判が出始めたところへキッチリとマスコミを意識したパフォーマンス。誰も文句を言わせないこの控訴断念は私的に言わせてもらえれば120点をつけてもおしくはない。

再度、誤解の無いように記しておく。私はこの判断はどんな意図があるにせよ、すばらしい判断であると思っている。そして、自由民主党員の一人として自民党の人気を再び盛り上げてくれた小泉首相には感謝している。

そう、私はシナリオが素晴らしいと言っているのだ。神の手によるシナリオか、人の手によるシナリオかは問題としない。実に興奮と感激をもたらしてくれるシナリオであった。

※ 本日の漫画(コーナー化して一ヶ月ごとに集計して、データーベースを作りたいと思っていたり) ※

中津賢也「桃色サバス」全13巻読了。中津賢也らしい、実に安心して読める作品。一巻と最終巻だけあれば、物語はほぼ把握できるという、コメディーの王道を行く作品


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