私の見た東京国際女子マラソン   1

応援体験記

その日、代々木での盲人伴走を終え、足早に向かった東京国立競技場はいつもの形相とは全く異なった顔をしていた。
すでに沿道には赤と白の小旗をもった応援の人達があふれ、黄色の帽子に黄色のジャンパーを着た大会進行役員、道路整備の係員が大勢、競技場の大ゲートの前に列を作っていた。

私は、タクシーを降りると一目散に競技場内の坂を駆け上がっていた。時計の針は11時36分を指していた。まもなくスタート時間だ.
最初に見えた競技場の通用口のゲートをくぐると、全天候型のトラックが目に飛び込んできた。競技場に1歩足を踏み入れると、何とも言えない高揚感が私を襲った。すでに正面スタンドの観客席はぎっしりと埋まっていた。

「えっちゃーん!」
下条由紀子さん(ランナーズ編集長)、夜久弘さん(ウルトラマラソン覇者、スポーツライター)が大声で呼んでくれた。
そこにはしっかりとジャージ姿に身を包んだ優しい二人の笑顔があった。
そして周りにはあの9月の例会でお会いした明走会会長、森部好樹さん夫妻、芝山義明さん、貞苅紳さん達の懐かしい顔もあった。総勢30名ほどの大応援団である。明走会と大きく書かれた黄色のノボリが数本見える。別府大分マラソン現役ランナーの日吉一郎さんも、選手パンフをしっかりとチェックしていた。
トラックを見ると、色とりどりのウエアーを着た数人の選手が、ウォーミングアップをしていた。その中にあのデラルツ・ツル選手がいたのを私はしっかりと覚えている。
明走会のみんなの声援を受けて、今回の出場選手、明走会屈指の美人ランナー、長谷川有美ちゃんがトラックから大きく手を振っていた。いつ見ても笑顔の可愛い人だ。
ひときわ大きな声援の向こうを見ると、あのオリンピック2大会連続メダリスト有森裕子選手がウォーミングアップの為にスタンド入りしたところだった。
岡山から世界にはばたいた人見絹江以来64年ぶりのメダリストだ。この目で初めて見る有森さんは、髪を短く刈り上げ、応援の度にスタンドに頭を下げるその姿は、他を圧倒的に抑すスター選手のオーラがあふれていた。

何もかもがわたしにとっては初体験だった。
マラソンTV中継は、ほとんど見る。
だが、私は国際級のマラソンを、この目でじかに見たことがなかった。
沿道で応援した経験も全くなかった。
まもなく始まる国際レースに私はドキドキとしていた。

「さあ・・行きまーす!」
それまで黙っていた日吉さんが私達に大声で出発をうながした。今日は、この日吉さんを隊長として私、夜久さん、下条さん、東山一勇気さんの5人が選手を追いかけて移動するのだ。
いわゆる…おっかけをやるのだ。私はちょっとおかしかった。
これでも昔、追っかけられたことはある。が…追っかけをするのは初めてだ。
それもJRや地下鉄を利用して先回りをしなければ行けない。小出監督が高橋尚子選手を追って電車で移動するのを何回もテレビで見ている.
それをやれるのかと思えば私は何だかウキウキとしていた。
そして今日、私自身、一体何を感じることが出来るのか…私はそれが楽しみだった。


エッちゃんコーナー   1