作品3 「失われゆく記憶」(ピキピキ団シリーズ No.6)
# 1996.07.02 脱稿
# 1996.07.13 放送

作:高井力

# ピキピキ団シリーズとは
#   「自転車のサドルの黒い所」さんの書いたストーリーに、「サイボーグY」
#   さんが続きを書いた。さらに第3話も登場。いつのまにかにシリーズ化した。
# 第1話〜第5話あらすじ
# 第1話 放送は1996年1月の最初、作者「自転車のサドルの黒い所」さん
#   ある男が、バイク事故で死にかけている所をピキピキ団という悪の陰謀団
#   に改造されサイボーグ X として生まれ変わる。その体には、最終兵器が
#   搭載されていた。彼は、ピキピキ団のアジトを脱出し逃亡。彼らが追って
#   くる度に、「(最終兵器の)スイッチを押すぞ」と脅して追い払っていた。
#   しかし、本当は X は、スイッチの場所を知らない。
# 第2話 作者:「サイボーグ Y 」さん
#   美夜(ミヤ)は、ピキピキ団のコンピュータに侵入し、死んだと思っていた
#   恋人の高也がサイボーグとして生きていることを知る。感動の再会....。
#   しかし、対 X 用秘密兵器を搭載した Y が X に迫っていた。X は、美夜
#   から受け取ったグレネード・ランチャーを手に戦いに挑む。最終兵器が使
#   えない X に勝ち目はあるのか ?
#     勝利の女神は X に微笑んだ....。Y の秘密兵器とは、X の最終兵器を
#   跳ね返す X リフレクターだったのだ。
# 第3話 作者:?????(忘れてしまった....テープもない)
#   同じようにしてピキピキ団を逃げ出してきた少女が登場。彼女もサイボー
#   グで、まったく同じようにして脱出、逃亡生活をしているという。X と少
#   女は自分のことを話そうとするが、二人とも自分の名前を思い出せなかっ
#   た。
# 第4話 作者:「自転車のサドルの黒い所」さん
#   秘密を持ち続けることに苦痛を感じた X は、人気のない山奥に穴を掘り、
#   その中で「本当は、スイッチの場所を知らないんだよーー」と叫んだ。し
#   かし、その声をピキピキ団の戦闘員に聞かれてしまう。
#     それを聞いたピキピキ団の総督は、「我々を油断させて、一気に全滅さ
#   せる気に違いない」と X への警戒を解かなかった。
# 第5話 作者:「赤のアロハ」さん
#   週刊誌にも取り上げられ有名になった X 。ついに、X のにせ物、X のファ
#   ンを自称する、紫のアロハを着た変なやつが登場。ピキピキ団と逃走劇を
#   展開。腹を立てた X はそいつを追うが、「ファンなんです、そばに置いて
#   下さい」とつきまとわれることに。

そして、第6話

-- ACT 1

  暗い部屋。大きなテーブルに、13人の男が集い、会議が行われている。小さ
なランプが会議の参加者の手元を照らしているが、明かりはかすかなので、参
加者の顔は見えない。一人が、レポートを読み上げている。
  「このようにして、女子高生の、実に90%に、このみっともない靴下を履か
せることに成功しました。我がピキピキ団の洗脳実験は、ほぼ成功したといえ
るでしょう。」
  上座に座る大柄な男が言った。
  「うむ。さらなる実験を行い、どんな人間でも確実に洗脳を行えるようにせ
よ....。ところで、その後 X の件はどうなった....」
  別の男が答えた。
  「サイボーグ X は 追撃に差し向けた Y を撃破。なおも逃走中。現在戦闘
員を増員して監視しておりますが、X は、『スイッチの場所を知らない』など
のニセ情報を流したり、にせ物を差し向けて追撃部隊を撹乱するなど、見事に
捜査の裏をかいております。」
  「ううむ...予想以上に手強いな....。そう言えば、Y の撃破された現場か
ら、Y の頭脳たる、マイクロチップが発見されなかったそうだな。あれには、
極秘情報がかなり入っている。敵の手に渡るのはまずい。急いで探すのだ。」

* 曲「Rescue me」(by マドンナ)

-- ACT 2

  美夜(ミヤ)はそのころ、サイバネティクスの権威、T大学の金田教授と面会
していた。美夜は、Y の破壊現場から、Yの部品をいくつか回収してきた。そ
のなかには、マイクロ・チップも含まれている。
  「どうです ?  なにか分かりましたか ?」
  「どれもこれも、とんでもない代物だ。解析も難航しているよ。それより、
高也君の具合はどうだね ?」
  「彼なら、とても元気ですけど....。それがどうかしたんですか ?」
  「サイボーグ化の手術というのは、体の一部、もしくは大部分を機械に....
つまり、肉体にとってまったく異質なものに置き換える手術だ。当然副作用が
出る。」
  「副作用 ?」
  「肉体が機械組織に対して拒絶反応を起こすことがありえる。さらに、高也
君は脳の改造をまったくしていないと言っていたね....。だとすると、脳とボ
ディの不整合から、脳に障害が出る恐れがある。具体的に言えば、記憶の一時
的・永続的損失をはじめとする機能障害だ。」
  「教授....脅かさないでくださいよ。」
  「危険性は否定できない。」
  「急に、心配になってきちゃった....。彼に会いに行ってきます。」

* 曲「If」(by ジャネット・ジャクソン)

-- ACT 3

  合図のノックをしても、返事がない。この時間に隠れ家にいないのはおかし
いなぁ....と思っていると、視界の隅に、紫色のものが....最近 X の追っか
けをやっている紫アロハの変なやつである。美夜は、「分からないことは、フ
ァンに聞け」という格言を思い出した。
  「ちょうど良かった....。X はどこ ? 」
  「あれー ?  美夜さん何も聞いてないんですか ?  この隠れ家は3日前に引
き払ったんですよ。美也さんに連絡しないなんて、X の兄貴もひどいですねぇ。
」

  いやな予感がする....。
  「今の隠れ家の住所を教えて !」
  「はいはい、今、書きますからね。覚えたら、この紙、燃やして下さいね。」
  美夜は、その紙をひったくると、駆け出した。

  ホテルについてノックをすると、戸口に出てきたのは、14、5歳くらいの少
女だった。彼女はきょとんとしてこうたずねてきた。
  「あなたは、誰 ? 」
  「それは、こっちの台詞よ、あなたこそ誰なの ? 」
 「どうした、χ(カイ) ?  誰か来たのか ? 」
  高也が戸口に出てきた。
  「女の人。 X の知り合い ?」
  高也は、美夜の顔を見て考え込んだ。
  「知っているような気がするが....思い出せない。」
  美夜の頭の中は真っ白になった。
  「χ(カイ)、ちょっと出かけてくる。」
  そう言って、高也はその場を離れようとした。
  「高也、待って !」
  美夜は、X を、高也を追おうとした。しかし、カイと呼ばれた少女は、それ
を引き止めた。その力は14、5の少女のものとは思えないくらい強かった。
  「あなた、美夜さんね....。私たちのことにあまり首を突っ込まないでちょ
うだい。あなたは、早く『人間』の彼氏でも見つけて、幸せになればいいんだ
わ。男なんて星の数ほどいるんだから。X には手を出さないで....。私には
....彼しかいないんだから。」
  「あなた、まさか....」
  カイは、ナイフで自分の皮膚の一部を切り開いた。そこからのぞいたものは、
赤や緑の配線と、駆動用のシャフトだった。


* -- TO BE CONTINUED....曲「ハサミトギを追いかけて」(by 谷山浩子)

# 谷山さんのコメントは「ピキピキ団シリーズ」の解説に始終する(^_^;;)。
# 谷山さんは、第1話の最後に、「続きが作れそうですね。例えば、X より強
# い Y が出てきて、対決するとか....」というコメントをしており、
# それが、きっかけになったのだと思う。
# 第2話の展開は、このコメント、そのままである。


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