1996年10?月?日放送
「 タイトル ??? 」
by nekonozomi
僕がその子に、初めて会ったのは、バイト先でのことだった。
彼女は僕と同い年。そのバイト先には、同い年の人がいなかったこともあって、
すぐに意気投合した。そして、バイトが終わった後、一緒に遊びに行くことも多く
なってきた。
彼女と遊びに行くのは、カラオケだったり、喫茶店だったり。彼女の部屋に行っ
た事もある。彼女は、僕に対しては何も警戒していなかったし、僕も、最初は彼女
を単に友達としてしか見ていなかった。
一度、彼女にきいてみたこともある。
僕「自分の部屋に、こんなに簡単に男をいれていいの?」
彼女「だって、あなたは何もしないと思ってるもの」
確かにそうだ。
彼女がバイトにきてから1年くらい経つと、2人とも就職活動で、あまりバイト
に顔を出さなくなった。最初は、遊びに行くことが少なくなって寂しい、くらいに
しか考えていなかったが、そのうち、彼女のことが気になってしょうがなくなった。
「もしかして、これは恋…?」
恋だと気付くと、なおさら彼女のことが気になりだした。朝起きても、学校でも、
もちろんバイト先でも、そして、夢の中でも。バイト先でも、いつも彼女を見つめ
ていた。
いつかは「好き」だと言わなければいけない。そうしないと、僕の気持ちは落ち
着きそうもない。だけど、どうやって?
ずっと悩んでいたある日、彼女の方から声をかけてきた。
彼女「最近、遊びに行ってないよね」
僕「そうだね…」
彼女「じゃ、今日行こうか?」
その日、バイトが終わってから、彼女と一緒に喫茶店に行った。
最初は自分の近況のようなことを話していたが、そのうち、お互いの悩みの話に
なった。そんな話をしているうち、とうとう我慢ができなくなった。
僕「ごめん。君のことが好きなんだ!」
彼女は驚いた様子もなく、しばらく僕の方を見ていた。
しばしの沈黙の後、彼女が言った。
彼女「やっぱりそうだったのか…」
僕「気付いてた?」
彼女「うん。悪い気はしなかったよ」
僕「それで…答えは?」
彼女は、ちょっと表情を曇らせて、既に結婚したいと思っている人がいることを
僕に話した。僕はがっくりきた。
その話が終わった後、彼女は再び笑顔でこう言ってきた。
彼女「でも、よかった!」
予想していなかった言葉に、僕は少し驚いた。
僕「なぜ?」
彼女「だって、いいにくいことでも、はっきり言ってくれたんだもの。友達に向かっ
て『好き』だなんて、すごく言いにくいものでしょう?」
そして、彼女は、僕のことを「一生の友達」と言ってくれたのだった。
今でも彼女のことが好きだけれど、それは単純な恋愛の感情ではない。彼女が幸
せになるためなら、たとえ僕が相手でなくてもいいと思っている。
Misty Night のページ