間違われて (間違いの変更版)




 「今度、隣に越してきた鈴木です。この子は娘のマリです…これはつまらない物ですが、これから先何かとご厄介になると思いますので、よろしくお願い致します」
 かなり大柄な女性が玄関から出てきて、挨拶に来た二人から出された物を受け取り、にこやかな顔で腰をかがめ、二人に合わせるように会釈をした。
 「わざわざどうも…こちらこそ宜しくお願い致します…可愛らしいお嬢さんですね。家にも二人女の子が居ますので遊んであげてね」
 玄関から出てきて足圧をしてマリに向かってニコッと微笑んだが、マリから見ればかなり大柄な女性だ。
 挨拶回りをしている夏美もマリも、世間から見れば小柄だから、玄関から出てきた女性は、二人の親子から見れば、その見上げるようなその大きさに、いささか圧倒されてしまった。

 マリの母夏美は、百五十センチに満たない小柄な可愛いタイプだ。娘のマリは、母に似たのか分からないが、身長は120センチを少し上回るくらいで、小学低学年の頃から殆ど成長していない。それに幼児体型と、幼さを漂わす童顔で可愛らしい女の子だが、れっきとした国立大学の学生だ。顔つきや体付きや服装で判断するなら、小学低学年といったイメージしか受けない。いや着るものを替えれば幼稚園児でも通るだろう。でもその可愛らしさは、誰もが振り返るような愛らしさが会った。
 目はくりっと丸く、髪型は横で二つに括り雪洞が着いている。それが又幼さよ強調している。見てくれは、誰がどこからどう見ても、大学生とは思えない可愛らしさを漂わせていた。
 一見頼りなさそうな顔付きと身体のマリは、誰の目にも幼い子供にしか見えない。でも実際は見た目とはかけ離れて十九歳の大学生だった。

 幼児体型の体のせいもあって通学以外では、普段着として、子供が着るような可愛らしい感じの服を選んで着ている。選ぶと言うより好んでといった方が良いかもしれない。
 幼児体型だけでなく、それ以上に顔が童顔、いや幼顔だから、服装によって益々幼い感じが前に出てしまう。マリもその辺は良く分かっていて、違和感がないよう服装に合わせて、仕草や言葉遣いに気を使っていたが、何時の間にかそれが身に付いて、自然に幼い子供の身振りや、言葉遣いが出来るようになっていた。

 通学の時は、何時もより踵の高い靴を履いて、身長を少しでも高く見せるが、歩きにくいのはいがめなかった。その時は、少し大人っぽい感じの私服を着るが、それでも幼さは隠せなくて、一目には背伸びしたおしゃまな女の子として感じられてしまい、誰も身分証明書を見ない限り、十九歳とは見てくれないのが実情だった。

 「お譲ちゃん、一人でこんな時間に居たんじゃ…嘘でしょう…ごめんなさいね。とても大学生とは見えなかったから、危ないと思って…」
 大学に入ってから、何度か婦人警官に街中で補導されそうになって、慌てて大学発行の写真入の身分証明書を提示する始末だった。それでも婦人警官に信じられないと言った感じで見つめられてしまう。

 不思議なもので、服装を変えるだけで、大人と子供の言葉遣いを無意識に使い分けていた。使い分けていると言うより、自然とそうなってしまう癖が付いてしまっていた。
 家を替わるまでは、近所の人たちも雅美が大学生だとは知っていても、扱いはどうしても幼い子供と同じだった。


 引越しの次の日、近所に挨拶に行った時は、マリの一番のお気に入りの服装だった。可愛らしいピンクの花柄のスモックタイプで、裾はフリルが幾重にも付いた子供服だ。可愛らしさは一段と増し、余計小さな子に映っていた。
 もっともマリの場合、年相応の服装では、体に合うサイズが無いと言っていい。よしんば有ったとして着ても、ちぐはぐな感じに写ってしまい、おしゃまな子供といった言い回し方が妥当だった。その為、自分に似合う子供服を選ぶようになって行った。そうこうしている内に、子供服の可愛らしい服飾に惹かれるようになっていったし、そんな子供服を着た姿が、他人に何歳に見られるかを楽しむようにもなっていた。

 マリに子供服はよく似合う。なにより一段と可愛い感じに見えるため、母の夏美もあえて可愛らしい子供用の物を選んで買ってくることが多かった。
 マリも時々、近所にあるキッズ店に行って自分に似合いそうな洋服を買っては来るが、母の選んだ子供っぽい服を嫌がらず、いやむしろ好んで普段着としていた。

 マリ自身も、可愛らしい子供服を好んで着るようになったのは、いかに自分を幼く見せられるかと言う方に興味を持つようになったのが、最初は本当の理由だった。
 でも高校に入った頃から、ある理由からそれがもっと幼い格好をする様になったのは確かだった。でも近隣の人達の目が有るから極端な事は出来ない。引越しが切欠でそれが極端な方向になって行ったのは確かだった。

 そんな可愛らしい服装で、仕草や言葉遣いが子供っぽかったら、誰もがマリを大学生だなんて思いも及ばない。殆どの人が、マリを小学校低学年と思ってしまうのは当たり前のことだった。

 可愛らしいフリルの付いた可愛らしい子供服で、マリは相手に失礼のないように会釈を返した。
 短いスカートの下から、小さな子が穿く可愛らしい動物がプリントされた白いパンツが少し見え隠れしていて、仕草も子供っぽい。でもその時はそんな子供っぽい格好でも、近所に対しての挨拶なのだからと無意識に大人の口調になっていた。だから服装にそぐわない背伸びをした女の子に映っていたようだった。

 隣近所で付き合いが有るようになれば、いずれ年齢のことが分かってしまうと言うことが、マリの頭の中にあった事は確かだった。だから服装の事をある程度忘れ、自然と大人っぽい言葉を選んでいた。

 挨拶回りのマリの服装は、普段着の中でも、よそ行きの部類に入る気に入ったもので、可愛らしいフリルの付いた子供服だ。話し方が少し大人っぽく、服装にそぐわない感じはいがめない。
 何時もよりおしゃまな感じに映っていた。
 童顔でどこか頼りなさそうな顔は、背伸びした女の子を強調していた。
 母の後ろに隠れるような仕草や体型や顔立ちは、子供と言うより幼児のような感じを強めていた。

 それが間違いの始まりだった。

 いくらマリがその格好で、普段とは違う少し大人っぽい話し方をすると、返って背伸びをしているおしゃまな女の子としか相手の女性には映らなかった様だ。

 「娘のマリです。よろしくお願いします」
 母に手を引かれ、一歩前に進み玄関から出てきた大柄な女性に対して、割と改まった挨拶をした。

 口から出たマリの言葉は、見た目の印象に反してしっかりした言葉づかいだった。それを聞いて対応した女性は少し驚いたようだった。

 見た目とは違う言葉だと、誰もが最初そのギャップに驚いてしまう。そんな反応を見てマリも内心喜んでしまう。
 (やっぱり私を小さい子と思ってるんだ。でもこれ以上変に思われてしまったら…後で大学生だと分かっちゃうんだから…何時ものような話し方にしなくっちゃ変に思われちゃうし。お気に入りなんだけど子供っぽい服装になりすぎちゃったかな…)
 何時になく恥しさを感じてあせってしまう。

 隣の家の住人と言うこともあって、これから先幾度と無く会う機会が多くなってくる。いずれは年が分かってしまうと思って、服装にそぐわない少し丁寧な言葉使いになっていた。

 逆にそれがマリを、一寸背伸びをした幼い子に見せてしまったことに気付けなかった。何時までもマリを不思議そうに見つめている。そのためマリは少し慌ててしまった。

 見立て通りの、子供っぽい言葉遣いや身振りをマリは、何時も使っているから、普段は小学低学年生ぐらいに思われる。大人っぽい言葉使いだと、その見てくれとの差に、年齢を聞いてくることが多い。だからあえて体に合う子供服を着ている時は、無意識に子供らしく振舞うようになっていた。

 「まあ、賢いお嬢ちゃん。ちゃんと挨拶が出来るのね…うちの娘とは大違い…楽に話しても良いのよ」
 マリは、相手の反応で、丁寧な言葉遣いを止めて、子供っぽい言葉遣いに直した。ここで変に思われたくないからだ。
 子供じみた服装で年相応の言葉遣いは、相手に違和感を感じさせることをマリは今までの経験から知っている。

 マリは、今までにない相手の幼児的な言葉に慌ててしまって、相手の言い方に無意識にあわせてしまった。慌てるとより幼児的な感じになってしまうマリだった。

 「う、うん…」
 別段合わせようと思ったわけではない。無意識にだが、素振りや言葉遣いが変化してしまう。

 そんな言葉を使っても、本当の年齢を言わざるを得ない時は、何時ものように後で母が冗談めいて言うことが多かった。
 今回も、毎日のように顔を会わせる相手になるはずだから、何れマリの年齢を知られてしまうのは目に見えている。だから母が後からマリの年齢を言うだろうと思っていた。

 −こう見えても本当は大学生なんですよ。体が小さいから年齢に合う服が中々無くて、それで変に思われないように、こんな服装や言葉遣いなんですよ−
 −まあそうなんですか。私はてっきり…−
 こんな遣り取りが続く。

 大抵は信じられないと言った顔をするが、同情めいた感じに変わってくる。奇形めいた言われ方に取れてマリは、それを嫌がっていた。

 何時もなら母親が冗談ぽく訂正するのだが、挨拶に出てきた女性の一方的な話し方で、母親もマリの年齢を言い出す機会を失ってしまった。

 そのせいでマリの声が上ずって、より幼児的な感じになってしまった。出てきた女性は、その動作を見て安心したようにマリの母に向き直った。

 「奥さんも大変ね。まだこんな小さなお子さんがいらっしゃったんでは」
 玄関から出てきた大柄な女性に、息つく暇もなく矢継ぎ早に言い切られては、夏美も相槌を打つのが精一杯だった。行きがかり上、夏美もマリを大学生とは言いにくくなってしまった。
 「…えっ、ええ」
 母親の夏見の返事も、肯定したようなニュアンスになってしまった。
 最初は服装にそぐわない、少し大人っぽい話し方だなと驚いていたが、自分にも娘がいるせいかその事をあまり気にはしていたいようだった。

 誰だって可愛らしいマリを見たら、小学低学年生に思う。でもこの女性は、大柄だったせいもあるが、マリの持つ幼児的な雰囲気からか、もっと小さな子に見たようだった。

 「マリちゃんは礼儀正しくて可愛いわね。いくちゅなの?」
 子供に言うというより、小さな幼児に言うような口振りで、にこやかに愛想を振り撒き、マリの背丈に合わせるように屈んで頬を触ってきた。それでもマリの背よりも高かかった。

 「えっ?…」
 急に幼児的に言われて、マリは言葉に詰まり赤くなった。大抵は小学低学年くらいに思われてきたが、こんな幼児に話すような言葉使いは初めてで、言われなれているマリでも、幼い子供に言うような幼児言葉に恥ずかさを感じた。一瞬だが、自分が赤ちゃんになったような錯覚を覚えた。

 (わたしって、こんな格好をしてたら子供じゃなくて赤ちゃん見たく見えちゃうのかな?そんな小さい子みたいに言われると恥しいな…)

 マリを最初に見た人は、身長や服装で判断するのだろう。話をしても殆どが小学低学年を想像する。何時もそうだからマリもそう気にはしていないが、今みたく幼児に接するような言い方は初めてで、上ずってしまった。
 「小学生…じゃないよね…こんなに可愛らしいんだから…保育園か幼稚園?」
 「あっ…の…」
 マリは、女性の幼児的な言い回し方や、初めて言われた幼稚園という響きに、言葉が詰まってしまった。

 元々マリは上がり症だから、予想していないことを言われたり、切羽詰るとどもってしまい、おたおたして頭の中が真っ白になってくる。そうなると相手が何を言っているのか自分では判らなくなってきて、マリの幼児性が強く表に出てしまう感じなのだ。

 「私のところにも二人いますの。小学5年生と幼稚園の年少さんが…今二人とも遊びに行っていて留守なのよ。今度遊んであげてね…マリちゃんだったら下の幼稚園の清香と同じくらいの背丈だし、幼稚園の年中さん…かな?」
 「あっ、は、はい」
 マリは、自分が園児と言われたことで少しパニックになっていた。
 マリは、慌てて大柄な奥さんの言った事がよく聞えず、話の内容もわからずまま生半可な返事をしてしまった。



 「失礼しちゃうわ。私のこと幼稚園かだって…ウフフ…私って小さな子供の役が出来そうね…それにしても大きな女の人だったね」
 近所への挨拶を終えての帰り道、少し憤慨したようになってから、内心おかしく微笑んだ。自分がいかに小さい子に見られたかが、少し面白がっている感じだった。

 「でもマリの今の格好では、そう見られるわよ。今までだってそうじゃない。幼稚園児に間違われても仕方ないんじゃないの。最近あのパンツを穿くようになって、何かひどくなったような気がするわ。でも、マリは、それを楽しんでいるんでしょう。それに子供達と同じぐらいと聞かれた時「はい」と返事をしたから尚更小さい子に見られちゃったのよ」
 母は、マリを、たしなめるように言う。
 「だって…私に合う服って中々ないし…着ても全く似合わないんだもの…それにあのパンツを見られても変に思われないように…だからかもしれないけど、こんな服装をしたら、何歳に見られるかなって…楽しんではいるんだけど。今まで言われた中で最年少記録よ。でも、まさか幼稚園児、それも年中に見られるとは思わなかったから…それで慌てちゃって…そのせいで隣の奥さんの言っている事がよく聞えなかったんだもの。返事だけはしておかなくっちゃって思ったから。今までだったら小学生位に思われていたでしょう。園児だなんて言われたのは初めてだから、一寸恥しくなって…少しばかり慌てちゃった…」
 マリは、下を向いて照れくさそうに石を蹴った。

 「そうね…マリは小さい子の服装が好きだものね。だからお母さんも似合いそうな服を選んじゃうのよ。マリが持ってる着せ替え人形も、マリと同じ可愛い服装だものね。この格好に言葉遣いじゃ園児に見られても変じゃないわよ。今度からは、そんなフリフリの付いた子供服じゃなくて、せめて小学せいが着るようなもっとシンプルなものにしたら。そうすれば園児なんかに見られないわよ。でもマリが着たらどんな服でも小さい子に見られちゃうわね」
 「確かに可愛らしい服は好きよ。これなんかお母さんが買ってくれた中で一番好き。別に園児に見られても構わないけど…でも、着たくても大人っぽい服装は全然似合わないんだもの。自分で見てもおかしくって…借りてきた猫って感じなんだもの…でも他に私に合う大人っぽい服なんて持っていないし…それにあのパンツでしょう…私って本当に十九歳なのかなって時々思っちゃう。自信なくしちゃうな…」

 マリは慌てて少し怒ったような口調で訂正した。その身振りや言葉遣いが服装のせいか、幼稚園児といわれたせいか分からないが、何時もと少し違って母から見ても妙に子供っぽかった。

 「その甘えているような言い方を止めないと…あのパンツは仕方ないとしても。そう言えばあのパンツを穿くようになって益々子供っぽさがひどくなったんじゃなかったかな」
 「だって…もし見られて、大学生だなんて分かったら恥ずかしいし。見られても変に思われないようにしているだけなの」
 「でもね…あのパンツを見られたら、小学生にも見られないわよ。あのパンツでないときはせめて話し方を変えないと。そんなんでよく大学で何も言われないわね」
 少し呆れたように母は言った。
 「そうかな…言葉がそんなに可笑しいかな…逆に大人の話し方なんかしたら、余計変に思われちゃうのはお母さんも知っているでしょう。この服装なら普通の話し方だと思うけどな…自分でも変だけど服装で話し方が変わっちゃうの。分かんないけど…ちゃんと使い分けているから誰も何も言わないわよ」
 「まあいいわ。マリがそう思うんだったら。でもお母さんの私が見ても…マリが小さな子供たちと一緒にいたら区別が付かないわよ。一緒に生活してるから、お義父さんもお母さんも、マリがどんな服を着ていても何とも思わないけど」
 母は、マリを見下ろしながら−何時までも子供なんだから−そう思っていた。
 「なんだか小さい子と一緒に遊んでいると、年の事なんか何時の間にか忘れているんだもの。後で恥しくなっちゃうことがあるんだもの。でも…お義父さんは可愛がってくれるわよ」
 「そりゃマリが、何時までも子供のままの方がお義父さんは嬉しいわよ。だからマリを抱っこしたり、子供っぽいおもちゃを買ってくるのって、マリを大学生だなんて思っていない証拠よ。だからあのパンツをお義父さんに見られても、恥しくは無いでしょう」
 「お義父さんは、わたしの年を知っているのよ。あのパンツを見られたら恥ずかしいわよ。見られないようにしているけど…多分お義父さんは見ても分からないんじゃないかな。小さい子には、パンツを見られても分からないから平気だけど、それはそれでいいの…今更大人っぽくなれって言ってもこの体じゃ…」
 マリは、自分のぺったんこの胸を見下ろした。
 「子供用の可愛らしい模様の入ったパンツ。お義父さんには見られているんじゃ…あれは平気なの?」
 「あれはただのパンツだし別に気にしていないわ。でも今穿いてるこのパンツを何時までも使うようじゃ子供のままだし…」
 「大丈夫よ。あれは一過性のもの見たいだって医者も言っているでしょう。それに体は、結婚して子供が出来れば胸が大きくなるものよ」
 「でもなー…生理も無いんだし、子供なんか…でもその前に結婚、できるのかなー?」
 自信のない返事になっていた。



 「マリちゃん、だったかな。お隣に越してきた」
 マリの普段着にしているものは、隣の家に挨拶に行ったときより飾り気は少なかった。でも小さい子が着るような半袖の可愛いシャツに薄い水玉の吊スカートは、依然子供らしさを匂わせている。腰を曲げればお尻から、キティの模様がプリントされた分厚いパンツが少し見えてしまいそうだった。声を掛けられたマリは、慌ててスカートを押さえた。

 いかにも小さい子供が好んで着るような服装で、それがマリに良く似合っていて、不自然な感じではなかった。幼児体形に童顔だと子供服が似合うのは当然だった。
 でも子供と違う服装と違う点が一つあった。それは体格からくるものなのはか、精神的なものか分からないが、かなりの頻尿だったことから来ている。そのため水分を取る事を極端に控えていた。

 高校に入学してから、少しずつおしっこが近くなり始めたのだ。大学に通うようになってからトイレが極端に近くなってしまった。尿意を感じるのが少し鈍くなっているし排尿感も薄い。
 尿意を感じてしまうと、トイレに行くまで我慢できないくらい強くなってしまう。切羽詰ると間に合わなくなって、穿いているものをおしっこで少し濡らしてしまう事が多くなっていた。トイレが近くにあればいいのだが、家から少し遠い所に行く時や、トイレを探さなければならない所では、用心のため幼児用の一番分厚いトレーニングパンツを穿いて出かけていた。尿取りパットと言う手もあるが、音がかさかさするみたいで違和感を感じ、何度か着けては見たがなじめなかった。生理用ナプキンという手もあったが、おしっこでは漏れてしまい間に合いそうもなかった。
 最初母が、パンツタイプの紙おしめを進めたが、明らかに見て直ぐにおしめだと分かってしまいそうで、これには猛烈に反対した。
 結局の所、見た目には自分の持っている子供用のパンツと変わらない、見る人が見ないとトレーニングパンツだと直ぐには分からないから、あえてそれを選んだのだった。

 トレーニングパンツならば、見た目は子供向けのパンツにしか見えない。見られても変に思われないと思ったのだ。例えトレーニングパンツだと分かったとしても、小さい子を装っていれば、変には思われないと考へ、母の進めたパンツに同意したのだった。
 トレーニングパンツを穿いて見られても、慣れてしまうと、さほど気にならなくなっていたが、それだけが子供と言うより、幼児向けの物だった。

 トレーニングパンツを穿くようになって、トイレまで間に合わなくて完全に漏らした事も何度かあった。それは、漏らしても良いと言うトレーニングパンツの暗示でもあった。マリは、無意識にそう感じていてもそんなことには気付かない。
 極度に水分を減らしているマリの一回のおしっこの量なら、何層にもなったトレーニングパンツは、おしっこを一気にしなければ吸収してくれる。
 おしっこを貯めてぎりぎりまで我慢してしまうと、マリも赤ちゃんではないからトレーニングパンツでも漏れてしまう。でもそこまで我慢したことはない。だから少し位なら漏らしても良い様に、何層にもなっていて吸水量が多いトレーニングパンツを選んでいたのが分かっていたからだ。徐々におしっこを漏らすのであればパンツから溢れ出る事はなく、外側からでも濡れているのは分かるが、ちびった程度にしか思われないいし、増してや漏らしたなんて判りづらい。
 「これならば、いつもはいているパンツと余り変わらないし、マリちゃんのおしっこ一回の量位なら吸い取ってくれるわよ。漏れ出ちゃうことなんかないって店員さんが言っていたわよ」
 母の言葉が脳裏に焼きついていた。
 (そうなんだ…でも本当に漏れちゃわないのかな?でも学校には、恥しくて穿いて行けないな」
 半信半疑だったマリも、その吸収力に驚いた。事実漏らしてみてもパンツの外には漏れなかったからだ。
 「すごい。漏れないんだ。これなら見た目もおしめじゃないし、誰が見たってパンツだから大丈夫ね」

 母親が、ショーツやパンツを頻繁に汚すマリの為に最初は、尿取りパットをマリに進めた。でもマリの穿いている子供用パンツでは、股上が深いため脇からはみ出して当てづらいし、着けれたとしてもパンツの上からでも、下に異物を着けているのがはっきりと分かってしまう。着けてみると股間が異様に膨れるし、それに音がするみたいで嫌だった。
 学校行く時はショーツだから、生理用ナプキンなら着けていると分かっても、変には思われない。でもナプキンは、体が未成熟でまだメンスもないから使ったことがないが、パットを小さくしたみたいでなんだか恥しかった。でもナプキンでは、吸収量が少ないから、おしっこに対しては向かないのが実情だった。間に合わず漏らしてしまうと、もうナプキンでは吸収しきれなく漏れてしまうのだ。
 ショーツならお尻にフィットしているからナプキンを当てやすい。おしっこをちびる程度なら良いのだが、おしっこを漏らしてしまうとナプキンでは到底間に合わない。
 子供用のパンツでは、股上が大きいから尿取りパットと同様にナプキンを当ててもずれてしまい当てにくい。尿取りパットでも、小さなマリのショーツでは、何かおしめを着けているような感じになってしまうし、目立ってしまうのだ。

 一度、授業中ショーツにナプキンを当てていておしっこを我慢できず失敗したことがあった。量は少なかったが、ナプキンから漏れてしまい、ショーツを濡らす程度で済んだから誰にも分からなかったが、ナプキンではどうしても不安が残ってしまう。

 マリが持っているのは、普段穿く女児用のパンツが殆どだった。それにはナプキンを当てにくいし、少しの量ならいいのだが、多ければナプキンずれて漏れてしまうことが心配だった。
 ショーツは、お尻を締め付けられる感覚がある。子供用のパンツを穿き慣れているマリは、ぴっちりした感触が余り好きではなかった。マリ自身は、ショーツより可愛らしい綿の子供向けパンツが好きだし、穿きやすいと思っていた。もちろん年齢を知っている人に見られると、子供用のパンツではさすがに恥しい。
 普段の生活の中では、そんなパンツを穿いていても年齢がばれないような素振りをするのだ。

 トレーニングパンツは、触らないと見た目にはパンツと区別が付かない。慣れてしまえば見られても分からないからそう恥しくはない。子供向けの服装では、スカートになっている裾の部分が極端なフレアーになっている物が多く、それに短いから腰をかがめたり風が吹いたら必然的に見えてしまう。

 トレーニングパンツは、母親が思いついてマリと相談の上、揃えた物だった。見てくれはもちろん可愛らしいパンツなのだが股当ての部分が一寸分厚く、股に何か挟まっているようで履き心地が良くはない。子育ての経験のある女性なら、見ればそれと分かるようなぼてっとした感じのパンツだった。
 だからトレーニングパンツだと分かっても良いように、マリの仕草が幼く演技するようになったのはその時からだった。
 夜は、とりあえずおねしょをしても良いようにトレーニングパンツを穿き、おねしょマットを敷きこんでから寝ていた。寝る前の水分を控え、トイレに行ってから寝る癖をつけていたお陰で、おねしょの回数は少なかった。ただ疲れて眠り込んだりすると失敗の恐れがあった。それでも尿意を感じると目が覚める癖も付いていたから、おねしょの方はさほど心配ではなかった。高校に入ってから今までおねしょは、数回程度で気にはしていなかったが、油断もしていなかった。

 マリは、基本的に排泄の感覚、尿意や便意は中学時代から比べると薄くなっていた。ある程度の尿意や便意は、感覚的に強くならないと分からない。だから尿意など感じた時にはかなり切羽詰った状態の時が多かった。高校時代などは尿意がなくても、休み時間になると必ずトイレに行く癖をつけていたし、喉が渇いても水分は控えていた。だから失敗は殆どなかった。それに見られたら恥ずかしいが、スカート状のものを穿くようにしていた。パンツファッションなどは絶対に穿かなくなった。そうしないとトイレに入っても間に合わない時があるからだ。ベルトやファスナーを外し、穿いているものを下ろすのに時間がかかってしまうのだ。尿意があってトイレに入り便器を見た瞬間、パンツを下ろす前に漏れ出てしまうことが多々有った。
 家の中で、めったなことではトレーニングパンツを寝るとき以外穿くことはなかった。トイレが近くにあるし、直ぐに行けるからだった。穿くのは下痢の時だけだ。下痢の時、家の中でも便意に気付きトイレに急いでも間に合わないことがあったからだ。おしっこの汚れは目立たないが、下痢の時は、色や臭いで義父に気付かれてしまう恐れがある。母親もその事はまだ知られていないから浴室で急いで洗う事にしていた。幸い同じような柄違いだが、トレーニングパンツを母親が何枚も買っておいてくれたお陰で、履き替えていたから気付かれていない。
 これまで何度かしてしまったおねしょは布団を干さなければならなかったから、母親の夏子には知れれていた。寝るときはおしめを着けるように言われたことも有ったが年にニ〜三回なので言わなくなった。とにかく義父に知られないように、何時も注意だけはしていた。
 家の中でトイレが近くにあっても下痢だけは、義父に知られないように用心していた。
 母に言われ、パンツタイプの紙おしめを一時考えたこともあった。それでも義父に見られたらと思うと着ける勇気は無かったし、この年になっておしめは抵抗が有った。
 義父が家に居る時、おねしょで汚したトレーニングパンツを、分からない様に処理をしなくてはならない。まあ、年に数回だからだったが、最近では注意していないとトレーニングパンツを少し汚す回数が多くなって大変だった。おしっこなら臭いも色も殆ど分からないから楽だったが、これが何時まで続くのか自分でも心配になってくる。幸い義父は鈍感な方で、マリの下着などの区別は関心が無かったから助かっていた。

 その事を知っている母親の夏美は、パンツタイプの紙おしめをマリに何度も進めたが、マリが恥しがって結局トレーニングパンツになったのだ。
 でもこの事は誰にもいえない秘密だし、もし見られたら、小さい子供だから仕方が無いと思わせる行動になっていた。


 マリは、一人で近くのスーパーマーケットに買い物に来ていた。
 当然外出の時のパンツは、何時ものように幼児用の可愛らしいトレーニングパンツだ。
 この地に越してきて間がないから、知っている人が居ないからマリは結構大胆になっていた。それなのに不意に後ろから声を掛けられ、マリはびっくりしてしまった。
 「マリ…ちゃんだったかな?」
 「あっ、は、はい…あっ、と、となりの…」 
 振り向くと、お隣の家に挨拶に行った時の、あの大柄な女性と、マリより30センチ以上背の高い女の子と、マリと同じ位の大きさの女の子の3人連れが立っていた。
 「何を買ってきたの?…お使いなの?」
 マリの持っているビニール袋を、二人の母親らしい大柄な女性が興味ありそうに覗き込んだ。
 「こ、これは今晩の…おか…」
 「トマトにタマゴ…夕ご飯のおかずなんだ…マリちゃんはお使いが出来るんだ。えらいね」
 連れらしい大きい方の子が、逸早く袋の中を見て声を出した。
 「…」
 雅美は、不意なことなので返事が出来なかった。
 (そんな事出来て当たり前よ…そうだった、この叔母さんに園児に見られていたんだっけ…)
 内心そう思った。いつものマリなら当たり前のことなのだが、そんな風に言われるとなぜか得意になってしまう。
 「この子達が、前に言っていた姉の清美と清香…小学5年が清美、小さいのが清香、まだ年少さんだけど。背だけは幼稚園の年長も含めた中で2番目に大きいのよ。でもまだ赤ちゃんで何も出来ないのよ…マリちゃんで良かったのよね…一人で…お使いなの?」
 探すように当たりを見回した時、清香が口を挟んだ。
 「きよか…あかちゃんじゃないよ…もうパンツだもの…マリちゃんって、ママが言っていたようにとってもかわいらしいんだ…」
 「うん…マ、マリ…今日は一人で…」
 思わずマリが子供たちに小さく会釈をした。
 「私は清美って言うの。今小学5年生、これは妹の清香…まだ幼稚園なのよ。マリちゃんはとっても可愛いけど小学生?ママが言っていたように清香と同じぐらいだから幼稚園?小さいのに一人でお使いなんて…凄いね」
 清美の成長は早く、身長でマリより30センチ以上は大きく、マリの母親の夏美より少し大きかった。妹の幼稚園の清香よりもマリの方が、ほんの僅か大きいだけだったが、幼稚園児としては確かに大きく感じられた。
 マリの着ている服装や仕草は、清美より清香に近く、清香よりも幼い雰囲気を漂わせていた。

 「あ、あのう……」
 元々上がり症で、緊張すると言葉を詰まらせるマリは、相手に先手に出られると、おたおたしてしまう。
 「マリちゃんは、ママが言うように清香と同じ幼稚園みたいね。だって赤ちゃん見たくぽっちゃりしていて、とっても可愛いんだもの」
 清美は、はっきりしないマリの言動を見て、決め付けたようにマリに抱きつき、頬を触ってきた。
 マリは、言われたそれに対して反発はしなかった。いつでも相手がそう思えば、そう思わしておけばいいと思っていた。説明がめんどくさいし、大抵は相手が驚いて根掘り葉掘り聞いてくるし、納得しないのが常だった。

 「マリちゃんは、一人でお使いの帰りでしょう、えらいわね。まだ買い物があるの?…もう帰るんでしょう…一緒に帰りましょうか」
 「う、うん」
 マリも断る理由が無いから、マーケットを出て四人で家のほうに向かって歩き出した。
 家までは、小さなマリの足で歩いて十五分位で、割と近かった。
 「清美、小さなマリちゃんでも一人でお使いが出来るのよ。清美ももう五年生なんだから一人でお使いぐらい行ってくれないと」
 清美は、うるさいなと言わんばかりに母の言う事を無視し、マリに話し掛けてきた。
 「マリちゃんは、趣味…いや、何が好きなの?」
 趣味と言いかけ、言葉を直した。
 「お人形…あそび…」
 予期せぬ清美の質問に思わず答えた。
 確かに部屋には、一人っ子にありがちな収集癖で、大きな縫いぐるみや可愛い人形がたくさんある。本当の趣味が宇宙物理だなんて、かえって変に思われそうで言えなかった。
 「お人形?…集めてるの?…いいな。私も好きだったけど…でもマリちゃんてお人形さんみたいに可愛いから人形なんていらないんじゃ…清香も可愛いと思うでしょう?」
 「うん…マリちゃんて、おにんぎょうさんみたいにかわらしい…」
 可愛いという言い回し方は、自分より年下の子に言うような感じに聞こえる。姉妹二人ともマリを年下に見ているような感じがあった。
 そんな話をしながら、家の前にある割と大きな公園の中を近道した。
 「こんな大きな公園があるんだ。知らなかった」
 確かに縦長の割と大きな公園で、テニスコートやバレーコートが1面ずつあり金網のフェンスで囲ってある。他には滑り台やブランコや砂場といったものがあり、公園の回りを割りと高い木で囲んであり、日差しをさえぎっている。土曜日と有ってコート内でテニスの練習をしているカップルもいたし、小さな子を連れた親子連れが割りと多かった。
 「私もこの公園で友達とバレーをしてるのよ。こんどマリちゃんも紹介してあげる」
 清美は、一寸得意そうに話を切り出した。
 「じゃあ、清美ちゃんはバレーが得意なんだ。いいな…」
 「マリちゃんはバレーが好きなの?」
 マリも中学時代背が伸びると言われて3年間やってみたが、結果が今だった。
 「すきだよ」
 「じゃあ今度一緒にやろうか」
 「清美、まだマリちゃんには無理なんじゃ。けっこう本格的なクラブなんだから。突き指や怪我をさせちゃ…」
 「大丈夫よ。一年生の小さな子も居るのよ。最初はボールに慣れてもらう遊びだけどね。マリちゃんはやったことがあるの?」
 「うん、あるよ。付き指なんかしないよ。ちゃんとパスも出来るよ」
 「ふーん、じゃあ後で公園で遊ぼうか。皆が集まるのは四時からだから、その時ね」
 そんな話をしていて、気付いたら家の前だった。
 「着いたわよ。ここがマリちゃんの家ね」
 女の子の母親が、マリの背を押した。
 「じゃあ、約束ね」
 清美がウインクして見せた。
 「うん、行くから…さよなら…」
 マリは、思いがけないバレーの話が出て一寸嬉しくなった。バレーなんてやるのは三年ぶりだったからだ。高校の時背の高さでバレー部には入れなかったから尚更だ。こんな話をしていると穿いているパンツのことなどすっかり忘れてしまうし、話にのめり込むとより幼く見えてしまう。
 さよならを言って、家のドアを開こうとノブを引っ張った。ところが家のドアは開かなかった。
 「あれ、お母さんいないのかな?」
 子供っぽい仕草で、マリは玄関のチャイムを何回も押した。家の中から何の応答もない。どうやら母は出かけているらしかった。マリは鍵を持って買い物に出ていなく、母が家にいないと入ることは出来ない。
 「マリちゃん、清美のお家で一緒に待ってるほうが良いわよ」
 清美が、玄関のドアの前で立っているマリに駆け寄ってきた。
 「でも…お母さんが帰るまで…」
 マリは、トイレのことを考えていた。家を出る前にトイレに行ったからもう一時間になる。母が帰ってこなければ、当然トイレを借りることになってしまうと思っていた。
 (トレーニングパンツだし…ちょっとトイレが心配だけど…借りればいいか…チョットぐらいならちびっても分からないし…)
 確かにマリの一回分くらいのおしっこの量なら、穿いているトレーニングパンツは、何とか吸収して漏れる事は無いが、おしっこを出し切ってしまうと重みでパンツが垂れ下がってスカートから見えてしまうし、濡れているのが自分では分かるが、外には漏れない。それは経験済みだから一寸は安心だった。
 言葉が終わらないうちに、清美の母がマリの肩を抱いた。

 「いいのよ。二人ともマリちゃんの事気に入ってるみたいだから…それにマリちゃんを一人にして置けないでしょ…お母さんも直帰ってくるわよ。それまで家の中で遊んでいたら?」
 清美と清香の母がにこやかに微笑んで、そのままマリの肩を抱いて家の中に連れ込んだ。
 マリもトイレの事もあり、断る術を思いつかなかったから、誘われるまま家に上がりこむことにした。

 マリは、年少の清香と二人で遊ぶ結果になった。マリ自身も、小さな子と遊ぶのは好きだったから苦にはならない。清美も最初珍しがって遊びに参加していたが、小さいこの遊びに飽きたのか、一旦部屋に戻って教科書を持ってきた。
 清香とマリ二人で、人形を入れてままごと遊びなっていた。

 元々小さい時から一人で遊ぶことが多いマリは、複数で遊ぶ楽しさに憧れていた。そのせいで3歳の清香と遊ぶことはある意味楽しかった。
 その内、清香以上に自分からままごと遊びにのめり込んでしまっていた。その姿は、どちらが小さい子供なのか、全く区別が付かないどころか、時折マリの方が小さい子に見えてしまう。確かにマリの方が清香に比べて体は少し大きいが、時折見せる幼児っぽい面がマリを一層小さい子に見せる。
 「マリちゃん、ここはこうするのよ」
 「あっ、そうか…清香ちゃんって良く知ってるんだ…でもそれはあたしのよ…」
 「ちがう、きよかのよ。おわったらかしてあげるから、まっててね」
 「…う、うん…」
 マリは、持っていた人形を、清香に取られて今にも泣きそうな顔になる。
 「清香、マリちゃんに貸してあげないと。泣かしちゃダメでしょう」
 「じゃあ…かしてあげる。マリちゃん、泣いたらダメでちゅよ」
 半分清香にあやされているような感じで、一事が万事そうなのだ。

 マリは、清香以上に遊びに夢中になって、トイレのことなどすっかり忘れていた。

 絨毯にお尻をつけて遊んでいる途中、股間が急に熱くなってハッとして、それが何なのか直ぐに分かって恥しくなり真っ赤になってしまった。
 股間の一点に力を入れて、出かかったおしっこを何とか止めることが出来た。
 (わっ、おしっこでちゃってる!…トイレに行くのを忘れてた。一寸だけど、漏らしっちゃったなんて恥しいな。トイレ…)
 小さい子なら遊びに夢中になって、そのままお漏らしになってしまう。でもマリは小さな子供ではない。今までの経験で小出しにすることぐらいはできる。だから出掛かったおしっこを、何とか途中で止めることが出来た。
 穿いているパンツが暖かくなって直ぐに気付いたので、僅かなおしっこの量だとマリは思っていた。

 おしっこを止められても、トイレに行きたいことに気付かないほど夢中になって、おしっこを漏らしちゃう事は今まで殆ど無かった。それは、これほど小さい子と遊んだことが最近無かったからでもあった。
 小さい子になり切って、遊ぶことに夢中になってしまうそんなマリに幼児性が見て取れる。

 「あ、のー…ト、トイレ…かして…」
 言葉に出して立ち上がった時は、穿いているパンツに、おしっこを吸った重みを予想以上に感じた。
 パンツが少し垂れ下がって水玉の短いジャンプスカートから見えていた。お漏らしをした事を誰にも気付かれないように、ゆっくりと立ち上がったが、パンツの重みから、ナプキンならパンツから漏れ出ていただろうと思った。
 (わっ、パンツが重たい…思った以上に漏らしちゃったみたい…ばれないようにしなくっちゃ…人前で、しかも小さい子の前で漏らしちゃうなんて恥しいな…絨毯は…濡れてないな…)
 立ち上がって、自分の座っていた場所が濡れてないことを手で触って確認し、安堵の胸をなぜ下ろす。

 目の前で遊んでいる清香なら、お漏らしは失敗で済まされるがマリは十九才なのだ。失敗では済まされない。
 「トイレは…ドアを開いて右側よ…」
 清美が教科書を片手にもって答え、ドアを開けてくれたのは母親だった。
 「だいじょうぶ?一人で出来る?」
 「う、うん…できる」
 変に思った娘達の母親は、マリの押さえているパンツが厚ぼったいことに気付いた。子育てをした母親ならそれが何なのか直ぐに分かる。
 (あれって…トレーニングパンツみたいな?まさかね。でも妙に厚ぼったかったような…)
 急いでトイレのドアを開いてトレーニングパンツを降ろす。便器に腰をかけるとパンツの底が湿ったように変色していて、トイレの明りの下では、少し黒ずんで見える。トレーニングパンツの内側の白い部分が少し濡れていることに間違いなかった。
 幸いなことにトレーニングパンツから漏れ出すことは無かったから、誰にもおしっこを漏らしたことを知られることは無かった。でも用を足してパンツを穿き直すと股間が少しグニョグニョした冷たい塊の感覚で、自分がお漏らしをした事を実感させる。

 「あーあ、今までおしっこしたいと思う前に漏らすことは無かったのに…でも良かった、トレーニングパンツで…あまり目立たないし…家に帰ってからパンツに穿きなおせば…遊びに夢中になりすぎて気付かないうちに漏らしちゃったなんて…なんだか私の方が小さい子供みたい」
 そんな独り言を言いながらパンツを元に戻した。でも濡れた部分が肌に当たって少し冷たさを感じ、恥しさが蘇ってきた。
 「やっぱり恥しいな…分からないようにしなくちゃ。それにしてもお母さん、遅いなー」

 何食わぬ顔で部屋に戻った時、清美と母親の会話が聞こえる。どうやら勉強で分からないことがあって母親に聞いているようだった。
 「ママ、分数の引き算ってどうするんだっけ」
 「分数?…どうしたんだっけ…忘れちゃったわ。教科書にやり方が載っているでしょう」
 「去年の教科書に書いてあったけどなくしちゃって…やり方忘れちゃった…」
 「友達に聞いたらいいでしょう」
 「そんなこと恥しくって聞けないよ」
 「清美ちゃん、算数の宿題なの?」
 マリが、ちょこっと口を出した。
 「じゃ無いけど。分数の応用問題が出るから予習してるの…四年生の時に習ったんだけど忘れちゃって…マリちゃんは分かるの?」
 「馬鹿ね…マリちゃんは幼稚園よ。そんなこと分からないでしょう…」
 そんなやり取りを聞いているうちに、性分で教えたくなってきてしまったが、そのままストレートに教えるわけにも行かない。
 「うーんとね…下の数を同じにしたら、足したり引いたり出切るんじゃないかな…」
 マリは、年がばれないように、今まで以上に思いっきり幼児的な感じで言葉にした。
 「下の数を同じにって?マリちゃん、分数って分かるの?そう言えば、そうだったわね」
 清美の母親がまさかと思う感じで、マリの顔を見つめた。
 「うん…テレビでやっていたことを、覚えちゃったの」
 「じゃあ、下の数が5と2だよ。どうやって…」
 清美が、興味を示した。
 「数を倍倍にしていって…たとえば5の倍は10・15でしょう。2の倍は4・6・8・10でしょう。同じなのは10だから5の方の上の数字は2倍、2の方の上の数は5倍すれば同じになるでしょう。その何倍になったかを上の数に掛けてあげれば…そしてから上の数字だけを足し算や引き算すれば答えは…」
 「そ、そうか…マリちゃんって頭が良いんだね。習ったの?」
 「だからこの間テレビで皆覚えちゃった…」
 そうでも言わないと格好がつかない。
 「ほんとだ。答えが合ってる…すごいんだ。分かりやすいだ。マリちゃんは算数が得意なんだ」
 「そんなことないよ…」
 「マリちゃんって勉強できるんだ。本当に幼稚園なの?でもどうやって覚えたの?」
 「マリね、テレビでやっている事は覚えるの」
 マリは、その時になって余分な事をしたと後悔していた。弁解が苦しくなってくるからだ。
 「なんだかマリちゃんってコナンみたい」

 あどけない顔で遊ぶマリを、二人の姉妹は気に入ったようだった。そんな小さな子供みたいに遊ぶマリを、不思議がったのは清美と母親だった。清香と遊ぶ姿は確かに幼い感じなのだ。とても小学五年の算数が分かるようには見えない。清香と一緒に遊ぶ姿は、自分より年下としか清美には思えない。その可愛らしさと仕草が時折妹の清香より幼くマリを見えてしまう。

 清香も清美と同じように、マリの可愛らしさや一緒に遊んでくれるその幼さにに惹かれた。マリをほっては置けないという感じだった。
 清美は、可愛らしさもさることながら、マリの頭のよさ興味を抱いたようだった。

 そのうちに一時間もすると、幼稚園に行っている清香が疲れたらしく、欠伸をしてその場に寝転んでしまった。何時も日課のようで、母親が清香の横に布団を敷き、抱き上げて寝かせる。
 「清香がオネムしたいみたいね。マリちゃんも眠たそうだから一緒にネンネしたら…清香の横にお布団を敷いてあげるから。お母さんが帰ってきたら起こしてあげるからね」
 母親の横で清美も教科書を持ったまま、攣られる様に、清香と同じようにうつらうつら始めていた。

 マリも二人につられ、清香の横に敷かれた小さな布団の上で、清香と枕を並べて目を閉じてしまった。
 夕べは、徹夜で部屋の片づけをしていたから眠たいのは事実だったし、落ち込むような心地よい眠気が襲ってきた。
 (さっきトイレに行ったし…お昼寝くらいなら大丈夫。それにしてもお母さん、遅いな…)
 他人の家の布団で、眠たくても中々眠りにはつけない。それでも睡魔には勝てなくて、うとうと眠りに誘われる。しばらくするとマリの足下の方で人の動く気配を感じた。気配に気付いて、何だろうと思い薄目を開けて見ようとした。
 (何をしているんだろう?)
 マリの横で寝ている清香の足元で、なにやらごそごそと清香の母親が動いていた。今は清香に掛かっているタオルケットは、半分はぐられているから母親のすることが見える。
 薄目でも母親が何か持っているのか分かる。カラフルな色模様の入ったパンツのような物や、白っぽいタオルに金魚模様の入っているものを組み合わせている所だった。
 その動作と持っているもので、清香の母親が、パンツを履き替えさせているのだと思った。
 (清香ちゃん、おねしょでもしてパンツを穿き替えさせられてるのかな?そうか、まだ三才なんだ…でもわたしだって…)
 そう思うと恥ずかしくなってくる。いくら体の調子からきているとはいえ、十九にもなってトレーニングパンツなのだ。

 マリは、おしめカバーと布おしめを殆どと言って良いほど見た事はなかった。だから女性の持っているものを、模様の入った白いタオルだと勘違いしていた。おしめカバーもホックを閉じて畳んであればカラフルなパンツに見える。

 おしめカバーは、赤ちゃんか歩き始めた小さな子が、紙おしめの上から着けているのは、何度か見たことがあったが、布おしめは聞いたことが有るだけで殆ど知らない。それでもキッズ店に良く行くのでおしめカバーは何度か見ていが、もっとシンプルなものだ。
 清香の母親が持っているのは、カラフルな厚ぼったいパンツにしか思えなかったから、おしめカバーだなんて気付けない。
 (清香ちゃん、パンツを汚しちゃって取り替えているんだ。それにしても派手なパンツだけど可愛らしい…まだおねしょをしちゃっても可笑しくないんだった。私も清香ちゃんと同じ幼稚園児だと思われていたんだっけ…でそんなことも言ってられないか。こんな年にもなってまだトレーニングパンツだもんな…?)

 カラフルなパンツみたいなものを広げてなにやら白っぽい布と合わせているのが分かった。清香の足を持ち上げ、それをお尻の下に敷きこんでいる動作で、それが何なのかおおよその見当は付いた。
 (あれってタオルじゃなくておしめ?紙じゃなくて布?…じゃあ、あの可愛らしいものは、おしめカバーだったんだ。でもおしめカバーだなんて清香ちゃん、まだ赤ちゃんみたい…)
 マリの中のおしめカバーのイメージは、まだ歩けない赤ちゃんだが使うと言う思いしかない。よちよち歩きの赤ちゃんが、紙おしめの上におしめカバーを使っているのを何度か見かけたことがあったけど。おしめの取替えでそうだと分かっただけで、布おしめを実際に使っている赤ちゃんを見たこともなかった。
 母親のそれらしい動作で、それがおしめなんだろうと言う事ぐらいは何となく分かった。

 「ふう、清香も大きくなったわね。重たくなっておしめを着けるのも大変だわ。マリちゃんのおしめも用心して持っていたけど…賢そうだからおねしょは大丈夫だと思うけど…さっき見たのは…」
 小さな声で独り言を口にしてから、くるりと身体を横に回しマリを見つめてきた。マリと言う言葉がかろうじて聞き取ることが出来た。
 (私のって?…確か私のって言ったような…私にもおしめを…?まさか赤ちゃんに着けるおしめカバーだなんて。後一つ同じおしめがあるみたいだけど…清美ちゃんの?…確か清美ちゃんは五年生だし…おしめなんかするのかな?…でも私も清香ちゃんと同じに見られているから…マリって聞こえたような…もしかしてあのおしめは、わたしのなのかな…)

 清香の母の横には、まだおしめと清香に着けたのと同じカラフルなおしめカバーが、もう一組セットになって置いてあるのがわかる。
 マリは、なぜかドキドキしてしまった。もう一組あるおしめが、マリのと聞こえたようだからだし、着けられるかもしれないと思ったからだ。。
 確かに「マリちゃんに用意」と微かだが聞こえたような気がした。それに姉の清美は小学五年生だ。もうおしめはしないだろう。さすれば間違いなく清香の母の横に置いてあるおしめのセットは、微かに聞こえたように、マリの為に用意されたのだろうとしか思えなかった。

 薄目を開けてみていたマリの目に、可愛らしい模様の付いた薄いピンクのおしめカバーが映っていた。
 清香の母親は、おしめカバーのホックを外し、それを開いておしめとセットしていた。それに悪いところを見たような気がして、清美の母親がこちらを見た瞬間、寝た振りをしなければいけないような気がして目を閉じてしまった。

 「マリちゃんって…こうして見ると本当に人形みたいに可愛いし。こんなに可愛らしい子は見たことがないわね…頭が良いみたいだから、おねしょはしないと思うけど…一葉確かめてみようかな…さてマリちゃんはどうかな?…かわいらしいパンツ?…あれ…やっぱりこれって…」
 当然子育てをした母親なら、マリの穿いているパンツが少し違うことに気付く。マリもその時になって慌ててしまった。
 (そうだ…トレーニングパンツだった。それにさっき少し濡らしちゃったし…見られたら…)
 マリは、白地に淡いピンクのアニメキャラクターの模様の入っている小児用で一番大きなのトレーニングパンツを穿いていたし、さっき失敗してパンツの底が濡れているのだ。股当ての部分が吸収の良い化学繊維で何層にもなっているから、マリのおしっこの量なら外側に漏れる事はない。でも触られたり内側から見られたら、おしっこで濡れているのが分かってしまう。

 短いジャンプスカートの裾を少し捲り、マリのパンツに軽く触ってきた。トレーニングパンツを穿いている事を知られてしまっては、尚更起きるわけには行かなかった。

 (キャッ…見たらいや…トレーニングパンツだし、さっき汚しちゃってるから…)

 「これってやっぱりトレーニングパンツだわ。それに漏らしちゃってるみたいだし。マリちゃんはまだおしめ離れを練習しているようね…マリちゃんは清香とまだ同じようだし…でもまだ小さいからトレーニングパンツなんだ。失敗しちゃった所を見ると昼間もまだおしめが取れていないのかな?」
 少し安心したようにマリの顔を覗きこむ。
 「あら、よく寝てるわね、可愛い顔をして。でも安心したわ。良く出きる子だと思っていたけど、まだおしめ離れを練習中だったなんて」
 目を閉じて寝た振りをしているマリは、起きることもできずドキドキしてしまう。汚してしまったトレーニングパンツを見られてしまっては、尚のこと起きられない。起きて嫌だとも言えず、清香の母に身を任せる以外なかった。その時ばかりは、トレーニングパンツでなければ良かったと思っていた。

 (もうだめ。パンツ見られちゃったし。でもおしめしたっておねしょなんかしないわよ…でもそんな赤ちゃんに着けるようなおしめカバーだなんて…そんなの着けられたら赤ちゃんに…?)
 トレーニングパンツの汚れを見られてしまって、このまま何も言わなければ、おしめを着けられるのは当然なのだが、何か不思議な感覚が芽生えてくるのが分かった。
 確かにこの年になって、トレーニングパンツを穿くこと自体恥しい。だから見られても良いように小さい子の格好や、言葉遣いや仕草をしているのだ。いや、していると言うより、自然にそういったことが身に付いているのだが、おしめとなると全く違う恥しさが体の中に湧いてくる。

 それでも今までの、何度かおねしょを思い出していた。マリが、いくら頻尿だからと言っても、今は気を付けて、おねしょの回数は少なくなっている。パンツタイプの紙おしめなら、幼稚園の時に使っていた記憶も残っていた。でもかんなから振るなぬのおしめにおしめカバーは見たことが無かった。
 トイレで夜中に起きることが多かったが、トイレの便器を見てしまうと、気が緩んで我慢が出来なくなってくる。パンツを下すのも間に合わなくなって、穿いているものを少し濡らしてしまうことは多い。でも、おねしょは、余程疲れて眠った時以外していない。夜中に起きてパンツを濡らす行為は、おねしょと余り変わりはなかった。
 日中でも同じ事で、パンツを汚してしまうから考え抜いて。トレーニングパンツにしたのだ。

 風邪で下痢をして、トイレまで持たなくてパンツを汚ししまった。それを母に見られ、紙おしめを着けたらと言われた時に、猛反対した記憶は残っていた。家の中では義父が居るから、トレーニングパンツでも恥しくって着けるわけには行かない。

 義父は、マリを可愛がり、まるで小さな子供に接するようにしてくる。だから親子3人で良く買い物など一緒に行くのだが、膝までの長さの子供用のスカートを穿き、トレーニングパンツが見えないようにしていた。でも一度、風にあおられてスカートが捲れ、パンツを見られたことがあった。
 「おや、今日は一段と可愛らしいパンツなんだね」
 動物柄のトレーニングパンツだったが、ただのパンツと思ったようで気付かなかったようだった。
 そんな言い方を聞いていると、マリを大学生だとは思っていない証拠だった。
 「今日は、お出かけだもの…可愛いパンツにしたの。恥しいからあんまり見ないで…」
 トレーニングパンツだと悟られないように、注意する必要が有った。
 義父は、マリが大学生と分かっていても、そうは見ていないのは確かだ。幼児用のパンツは、見れば誰だってわかる。大学生が穿くようなものではない。そんなパンツを見たら変に思うのが当たり前なのだが、無頓着のような感じだった。

 でも頻尿のせいで、夜中何度もトイレに起きるが、おねしょの回数は年に数えるほどだが、全くしていない訳ではない。この年になっておねしょで医者に行くなんてことも出来ない。それでも頻尿のせいで何度か医者に行った事は有った。医者はマリの膀胱が小さいせいで頻尿なのと、そう思い込んでいるからだと答えただけだった。

 娘達の母親が持っていたのは、知っているパンツタイプの紙おむとは見た目上全く違う、
 赤ちゃんしか着けないようなおしめを着けられると思うと、恥ずかしくなったが、トレーニングパンツを汚しているのを知られてしまっていては、今更起きることも、起きて拒むことも出来ず、眠った振りを続ける以外なかった。
 (やっぱりおしめを…?…やっぱり私におしめ着けるんだ。もう起きる訳にも行かないし…わたし、トレーングパンツを汚しちゃったし…赤ちゃんに見られても仕方ないのかな…赤ちゃんじゃ無いのに…あんな可愛らしいおしめカバーを着けられたら、赤ちゃんになっちゃうのかな?)
 色々な考えが心の中を駆け巡る。
 だが次の瞬間、その恥かしい予測通りになった。マリの両足が急に宙に浮いて、穿いていたトレーニングパンツがすっと脱がされてしまった。
 (アン…やっぱり私のおしめ…)
 一瞬心臓の鼓動が早くなり、パンツを汚した恥ずかしさ、無毛の股間を見られれる恥しさで真っ赤になってしまった。でも清香の母親は、トレーニングパンツを汚しているマリが、年相応の股間の茂みだったら余計に驚くだろうが、無毛が当たり前のように思っている感じだった。
 「吸収がいいトレーニングパンツね。外側からだと余り漏らしてないように見えたけど…パンツこんなに濡らしちゃって。まだトレーニングパンツを穿いていたんじゃ仕方ないか…これじゃ昼間もまだおしめが要るみたいね…あれ、マリちゃんは幼稚園児にしては結構早熟みたいね」
 マリのパンツの下から現れた性器は、無毛ではあるが、明らかに清香の幼児の性器とは違っていた。はっきりと分かる陰唇、恥しさで何時もより大きくなっているクリトリスが目立つ。陰毛が生えていないマリの股間を見て、最初から幼稚園児と思い込んでしまったから、清香の母親は、その違いに深く考えてもみなかった。
 「早熟な子も居るのね…でも清香と違ってお尻がしまっていて小さいんだ」
 その程度にしかマリの年齢を考えなかった。いくら頭が良くてもトレーニングパンツでは小さい子供にしか見えないことも事実だ。

 あっという間にパンツ脱がされ、簡単に両足首を片手で一つに掴まれて、そのままおなかの方に持っていかれる。宙に浮いたマリのお尻の下に何かが敷きこまれた感じだった。お尻が下がって次に触った感触は、柔らかい布の感覚だった。ベビーパウダーでお尻から股間にかけて真っ白にされてしまう。
 (なんだかとっても柔らかい。おしめってこんなに柔らかだったんだ…アーン…そんなところを刺激しちゃったら…こ、こんな赤ちゃんが着けるような、お、おしめ…恥ずかしいー…幼稚園児より小さい赤ちゃんに思われちゃったんだ。そんなもの着けられたら…赤ちゃんに…)
 紙おしめならば、病人や老人や子供のものが有る事は知っているが、おしめカバーは使わない。その上布おしめは知らなかったし、第一おしめカバーを着けるのは、赤ちゃんしかいないと思っているマリは、赤ちゃんに戻っていくような錯覚を覚えてしまう。

 「あらら、大変。早くおしめを着けないと…チッチまだしちゃだめでちゅよ…」
 幼児言葉で言われるとその気になってしまう。
 恥しさと股間への刺激で、マリの会陰から透明な液体が滲み始めていた。それを清香の母親はおしっこと勘違いしたようだった。

 おしめカバーに布おしめの横当てをずらして三枚を重ね、おなか周り合うようにしてから、股当てのおしめを縦折に2枚とそのままのおしめを3枚、計5枚を重ね、マリのお尻を覆っていく。その格好は、まるで赤ちゃんのおしめ替えと同じで、誰が見たって母親が赤ちゃんのおしめを替えているようにしか見えない。
 マリは起きて、清美の母親におしめを拒むチャンスを完全に失ってしまい、寝た振りをせざるを得なかった。

 慣れた手つきでおしめがマリの股間を包み、あっと言うまにおしめカバーを着けられてしまう。思った以上に柔らかな優しい布おしめの感触にびっくりしたし、それにおしめを着けられてしまうと、手足が萎縮したようになり、痺れたような感じで体を自由に動かせなくなった。
 「マリちゃんて細いんだ、清香のおしめカバーじゃまだおしめの枚数を増やしても使えそうね。少しおしめカバーが大きかったみたい」
 言いながら、おしめカバーからはみ出した布おしめを、おしめカバーの漏れ防止の内側に指で押し込んでいく。

 マリの持っている人形の中には、ミルク飲み人形もあって、おしめカバーだけを着けて遊ぶようになっているのがあった。何か自分が、その人形のようになったような気分になった。

 鼓動が、自分の耳に聞こえてるような大きさになった感じがしていた。
 (恥かしい…幼稚園の子と一緒に、赤ちゃんみたいなおしめをされるなんて…私のお人形もこんな感じなっているのかな?…)

 恥ずかしいと思う反面、おしめの感触にうっとりとした心境になり、安堵感が湧き上がってきた。明らかにマリの会陰からは、おしっことは違うねっとりとしたものが溢れ出しおしめを濡らしていった。
 (なんだか恥しいけど…き、きもちいい…)
 こんな気持の浮揚した感覚は、マリも初めてだった。触って欲しい欲望が湧き上がる。
 (あん、もっと強くさわってほしい…)
 寝て振りをしているのだから、手を動かすことも出来ない。

 「清香より体が細いし…一寸おしめカバーは大きいみたいだけど、失敗しても漏れる心配はない見たいね。これなら清香の使わなくなった小さい方のおしめカバーでも使えるわね…マリちゃんは、赤ちゃん見たくおしめが着けやすいし…こんなにおしめが似合って可愛らしい子はそういないわね。テレビでも出ているみたい」 
 清美の母親は、独り言を言いながらマリをじっと見つめた。
 清香とマリにおしめをしてから、マリと清美のタオルケットを直し、マリの顔をもう一度見つめ直して部屋を出て行ってしまった。


 股間を包む布は、マリに何か懐かしい赤ちゃんだった頃のことと、自分の持っているミルク飲み人形を思い出させていた。でも不思議と嫌な感触ではなく、むしろ心地よかった。
 (これならさっきみたいにお漏らししちゃっても大丈夫なんだ…赤ちゃんに戻っていくみたい)
 タオルケットの下で分からないように手をおしめカバーの上に持っていく。パンツとは違いざらざらした厚ぼったい感触が手に伝わってくる。
 (お、おしめなんだ…わたし、赤ちゃん見たくおしめなんだ…あああー)
 強く手を押し付けると、会陰からあふれ出ておしめを濡らしていくのが分かる。

 記憶に残ってないはずの、赤ちゃんだった時のことを思い出し、また自分が人形になったような気がし、痺れたようになり体を動かせなかった。

 それが夢なのか、本当のことなのか分らないまま、マリは強くおしめを意識しながら、何時の間にか自分の世界に入っていった。

 (恥ずかしい、おしめなんかされて…でも私って赤ちゃんなのかな?それとも人形なのかな?恥ずかしいけど…こんな気持ち初めて…なんか気持ちいい……)
 そんな倒錯した思いも次第に薄れて行き、ふんわりとした気持ちの中、疲れのためかおしめをされている意識が薄れていき、自分が赤ちゃんだったころの記憶の中に戻っていった。

 清香の母親は、哺乳瓶を二つ持って部屋に戻ってきた。清美は母親に起され邪魔しないように自分の部屋に戻りなさいと言われていた。
 「二人とも寝ちゃったの?」
 「そうよ。何時も清香は寝ていジュースを飲むでしょう。だからマリちゃんにも持ってきてあげたのよ。飲ませてあげないとね。さあ、マリちゃんは飲むかな?」
 「あれ、マリちゃんもまだおしめなの?」
 タオルケットが肌蹴、体半分出ているマリの下半身は裾が捲れ、明らかにパンツと違うおしめカバーの生地と縦に並んだホックが見えていた。
 「そうよ。まだトレーニングパンツだったし、ほら、こんなに濡らしちゃっているでしょう。まだ昼間もおしめが要るみたいよ」
 「ほんとだ…でもマリちゃんって頭が良いみたいだし。おしめが要るのかな?絶対年上だと思うんだけどな。一寸おしめだなんて信じられない」
 「あんまり頭が良いから年上なのかなと思ったけど、そんな事は無いと思うわ。トレーニングパンツなのよ…まあ、おねしょはしなくても用心のためおしめを着けておいても良いんじゃない。あら、マリちゃんも寝ていても飲むみたいね」
 マリの口元に宛がった哺乳瓶のゴムの吸い口を咥えこみ、チュウチュウと音を立てて飲み始めた。
 「なんて可愛いの…清香よりずっと赤ちゃんみたいにみえる」
 「ほんとね…あらら、こぼしちゃって。まだ涎掛も清香と同じように要るわね」
 マリの口元から顎を伝ってジュースが一筋流れ出る。それをすばやく拭き取って、その布切れを広げ、マリの胸元に涎掛に付いている紐を首筋を回して括ってしまった。
 涎掛を着けられて哺乳瓶でジュースを飲む姿は、マリを益々赤ちゃんらしく見せてしまい、可愛らしさが引き立ってくる。
 「益々赤ちゃん見たく可愛くなって来ちゃったわね…こうしてみると、清香よりよっぽど赤ちゃんに感じちゃうわ」
 「うん、清香より赤ちゃんみたいに可愛いね。頭がいいなんて思えないわ」

 しばらくすると哺乳瓶も空になったが、マリはそれを吸い続けていた。取り上げるとそれを探すような素振りを見せ、今にも泣きそうな感じなのだ。
 「清美、清香の使っているおしゃぶりの予備があるから…引き出しに入っているから持ってきて。このままだとゲップで吐いちゃうから…取りあげたら泣きそうなんだから。せっかく寝ているんだから起しちゃったら可愛そうでしょう」
 清美が持ってきたおしゃぶりをマリに咥えさすと、クチュクチュと音を立てて吸い始めた。
 「きっと赤ちゃんの時の夢を見ているのね。おっぱいと間違えているみたいだし」
 「ほんとだ。とても頭が良いように見えないわ。それに赤ちゃん見たく見えるけど…あの頭のよさは清香と同じ園児には思えないわね」
 「園児にはって?マリちゃんの体は小さいしこんなにおしめが似合うのよ?」
 「じゃあなくて。体じゃなく年のこと。仕草や格好や言葉は小さい子に思えるけど…園児にしては頭が良すぎるし…作っているようには見えないけど…でもなんとなくそう感じちゃう」
 「そうかな?ママにはそう思えないけど…だってトレーニングパンツを汚しているのよ」
 「だから…なんとなくだってば…いくらテレビって言っても幼稚園じゃ理解できないんじゃ」
 清美は、違和感を感じているようだった。
 「天才かもしれないじゃないの」
 「でも天才に見える?」
 「でもおしめがこんなに似合う子なんてそう居ないわよ。頭は良いみたいだけど、清香と変わらないんじゃ…だとしたら天才としか…」
 「頭が良いのと、赤ちゃん見たく可愛らしいのは認めるけど。確かに清香と比べてもあまり変わらないのは…でも変に可愛いわね。まるでモデルみたいだもの」
 「モデル?」
 「赤ちゃんのモデル…ほら、雑誌なんかに出ているでしょう。こんなに整った可愛らしい赤ちゃんは見たことないし…それにこんな賢い赤ちゃんも…」
 「赤ちゃんじゃなくて園児よ。赤ちゃんの格好が似合う園児。ほらよくテレビに出ているでしょう。特技を持った小さな子が…日本中の駅名や地名を言える子とか…」
 「確かにそういう子が居るのは知っているけど。マリちゃんは、そんな風には見えないんだけどな」
 「でもまだトレーニングパンツだし…体も…」
 「ママ、久美ちゃんって知ってる?」
 「林さんでしょう。あそこの久美ちゃんでしょう。確か…中学に入ったと思ったけど。最近は見かけないけど知っているわよ」 
 「そうよ。私より2つ年上だけど。体の大きさは中学の中で一番小さくて…マリちゃんより少し大きいくらいかな。小さいけど可愛らしくないけどね。学年は上でも体の小さい子は大勢いてるわよ」
 「それはそうだけど。でもトレーニングパンツは穿かないでしょう。病気なら仕方が無いけど。マリちゃんは病気には見えないし…こんなにおしめが似合うなってありえないわよ。きっと天才なんじゃないかな?」
 「病気か…病気ならこんな可愛らしい格好も納得できるわね」
 「病気?マリちゃんが…成長が止まるような…それなら奇形になるんじゃ…そんな奇形には見えないわね」
 「かもね。それとか、成長を止められているとか…それで変に思われないために、こんな可愛らしい格好をしているんじゃないのかな?」
 「前に大学病院に行った時、病気で成長を止められている人を見たことが有ったけど、全体的にアンバランスだったし、服装は子供用だったけど…なんとなく雰囲気で直ぐに分かるわよ」
 「そうなのかな?でも学校で聞いたことがあったの。それにテレビでやっていたこともあったし…」
 「ママには天才にしか見えないわね」
 「天才なんてそう居るものじゃないわよ」
 母親と清美は、眠っているマリを見ながらそんな話をしていたが、清美は納得できない感じだったし、かなりマリに対して興味を持ったようであった。
 (うふふ…小さな子の振りをしているけど…私より年上なんじゃないかな…そうだとしたら一寸遊べる相手が見つかったかも)
 清美は、そう思ったが確固たる確信があるわけではなかった。

 清美は、母には隠していたことが有った。体も気持ちも見てくれ通りかなり早熟だった。同年代の子供たちでは相手が幼稚に見えていた。
 五年生になって、上級生の女の子達と付き合うようになってオナニーも隠れてしていた。付き合っている年上の友達との話しは、性に関する話が殆どだった。異性の話が主だったが、清美は異性にあまり興味が無かった。同姓の方が好きだったが、そんな事を誰にも話してはいなかった。でも自分の思う通りに出来る可愛らしい女の子が居なかったからでもあった。妹の清香も可愛いと思うのだが、身内ではそんな感じが湧かなかった。当然マリをその対象に見てしまった。たが、本当に清香と同じ幼稚園児では対象にしずらかった。でも清美は、マリを自分より年下とは思えず、頭の良さから年上の感じを持っていた。


 マリの母夏見は、自宅の玄関のドアを開けようとして、後ろから声を掛けられた。
 「あっ、鈴木さん。マリちゃん一人だったから、預かっているわよ」
 「あ、それは。すみません。お手数をかけてしまって…」
 「いえ、良いんですよ。娘の清香も清美も大変喜んでいるし。今は、寝ているので起してあげてください」

 夏美が部屋に案内されて入ると、二人並んでおしゃぶりを咥えて幸せそうな顔をして眠っていた。
 (あらあら、マリもおしゃぶりを咥えちゃって。どっちが赤ちゃんだか分からないわ)
 可愛らしい寝姿に夏美は噴出しそうになった。
 「本当に可愛らしいですね。横で寝ているのが妹の清香です。こっちが姉の清美なんです」
 「こんにちわ…」
 「こんにちわ…確か…小学五年生…大きいね」
 「なりだけは大きいんですけど…まだまだ子供でして。それにしても可愛らしいお子さんで…子供たちが気に入ってしまって…」
 「ありがとうございます。家ではダダばっかりこねて…ご覧の通りまだ赤ちゃんと同じですよ…」
 夏美は一寸苦笑いして見せた。おしゃぶりを咥えた格好で、大学生だなんて言い難いから口裏を合わせる以外なかった。
 「マリちゃんって頭が良いんですね。清美の五年生の問題が分かるなんって。なんでもテレビで覚えたって言っていましたけれど」
 「そうですか…確かによくテレビは見ていましたけど…」
 当たり前だろう。大学生なんだから小学生や中学生の問題くらいは簡単に解けるのは…。そう言いたくなったが、こんな格好で眠っていては、尚更本当のことが言えなくなった。
 「叔母ちゃん、マリちゃんって天才なの?何でも知っているようだけど。
 「そうね。確かに物覚えは良いと思うけれど…天才じゃないわよ。でも何でも良く覚えていると思うから、もし分からないことがあったらどんなことでも聞いてみたら良いわよ」
 夏美は、娘の頭は良かったのは知っている。
 大学も主席で入っているし、専門学部からも期待されているのは知っているが、ここでは言葉を濁らす以外はなかった。
 「なんでもって?それじゃあ…」
 「物覚えがいいのは本当よ。一度見たり聞いたりした事は覚えているから。特にお星様の事は何でも知っているわよ」
 「星?マリちゃんってなんだか変なの…」
 「変って?」
 「だって…赤ちゃんみたいなのに何でも知っているなんておかしいもの」
 「清美ちゃんは、好きなことなら覚えられるでしょう?マリは特に不思議な事が好きなの。それに分からないことがあったら興味を持っちゃうのよ」
 「じゃあ、理科が好きなんだ…でもすごすぎるよ。なんだか中学生みたいに頭がいいなんて…」
 

 「マリちゃん…起きなさい」
 身体を揺り動かされる感覚にマリは、気付いて大きく伸びをした。そのとき口元から何かが落ちた。その時は、何だろうとマリは思ったが、寝起きのせいか余り気にしなかった。
 確かにマリは、赤ちゃんでおしめを着けおっぱいを吸っていたころの夢を見ていたような僅かな記憶があった。そして母親に抱かれておっぱいを吸いながらおしめを濡らしていたころの…。でも母の顔を見たとたん、そんな事は一切忘れてしまった。
 「ウウーン…」
 何時の間にか眠ってしまい、母が迎えにきて起こしていた。目を開けたマリの目に母が映っていた。
 「あっ、お母さん!…ここは?」
 「何寝ぼけているの。お隣のお家でしょう」
 「あっ、そうか…家じゃなかったんだ」
 その声に隣で寝ていた清香が目を覚まし、掛かっていたタオルケットを跳ねのけ、マリの後ろから立ち上がった。
 寝ぼけているのかマリの母に一旦寄りかかり、実の母と違うと分って、急いで離れて自分の母親の方に歩いていった。
 おしゃぶりを咥え、可愛らしいシャツの上から涎掛を着け、下半身には可愛らしいピンクおしめカバー以外下には何も着けていなかった。
 (可愛いおしめして…そうかまだ幼稚園年少っていっていたっけ…まだおしめが必要なのね…それにしても…マリまで同じようにおしゃぶりを咥えて寝てるなんて、幼い顔が余計幼く見えるわ。これじゃ幼稚園児と思われても仕方ないか)

 マリの母親は、その後姿をちらりと見てマリの方に向き直った。
 「起きた?」
 首から下は、まだ大きなタオルケットが掛かっていたから母からは涎掛が見えていなかった。
 「うん…」
 「どうしたの、初めてのお家で寝てしまうなんて…それに何を咥えて…」
 一寸あきれた様な感じでの言い方をした。
 「まだ小さいんですから仕方ないんじゃ。私どもは一人増えても同じですから…でもマリちゃんは小さいのにしっかりして頭も良いし。物覚えが良いみたいですね。とても清香と同じ幼稚園児とは思えないですわね」
 「えっ、ええ…」
 確かにそう言われれば、清香と同じようにおしゃぶりを咥えていたマリの寝顔は、幼稚園児というより赤ちゃん見たく見えていたことを思い出した。
 その言葉に母が少し恐縮したように答えたが、これでマリの本当の年齢は、益々言えずらくなってしまったと思っていた。
 「すみません…普段、人様の家で寝るようなこんなことないんですが…夕べ遅くまで引越しの後片付けをやっていたもので…」
 「そうですか。まだ小さいのに後片付けが出来るなんて。つい今まで仲良く遊んでいたもので、それで疲れて眠ったものかと思いまして」
 マリはタオルケットを自分でよけ、もそもそと起きようとした。半そでのシャツとジャンプスカート着ているマリの首元に、清香と同じような黄色い涎掛が括られていた。それには大きな染みがついていた。おしゃぶりの咥えていれば涎が出るのは当然だった。
 明らかに頬に涎の跡がある。マリの涎で涎掛を汚したものだと分かる。
 「まあ…可愛い涎掛まで着けてもらって…まるっきし赤ちゃんね」
 一寸笑いそうにマリに言った。
 幼稚園児の清香より、涎掛を着けられているマリの方が、小さな子供、いや赤ちゃんらしく思える。それはマリの持つ幼児性をより強めていた。
 マリは、母の言っていることが何のことだか分からない。
 起き抜けで、目の焦点が合わない事もあるが、自分の胸元に何が着いているのかわからない。
 母の言葉で胸元を見た。そこには覚えの無い布切れが付いていた。
 「よ、よだれかけ…なんで?」
 腕で顎を拭うように触る。確かに何かカバカバした感じが頬に残っていた。それにほんのりとジュースの臭いが残っている。確かに頬や顎に残る感触は、涎の後のように思えた。
 涎掛を着けられいた恥しさで、清香と同じおしめを眠る前に着けられたことなど完全に忘れていた。
 「マリちゃんに寝ているとき清香と同じようにジュースを飲ませたら…いつも娘の清香に寝る前に飲ませているんですが今日は眠っちゃったもので。マリちゃんにも同じように上げたら、すごい勢いでおいしそうに飲んで…それに哺乳瓶のジュースが空になっても哺乳瓶を咥えてなかなか離さないから…それで清香と同じようにおしゃぶりを咥えさせたら落ち着いて…飲ませる時、着ているものが汚れると思って涎掛を着けてあげたんです…でもマリちゃんには、涎掛がとっても似合っていて可愛いわね…私、そんなマリちゃんが気に入っちゃって…」

 マリは、清香達の母親が言っている事に記憶が無く、意味が良く分からなかった。
 マリには、ジュースを哺乳瓶で飲んだとは全く知らないが、夢の中で母親に抱かれお乳を飲んでいた事を思い出した。
 (哺乳瓶って…あれって夢じゃ無かったのな?)
 「私は哺乳瓶なんかで……」
 そう言いながら、タオルケットを自分から跳ね除けて、すっと母の前に起き上がった。 
 清香の母に、おしめを着けられた事など忘れていたから、何の恥じらいもなく母の前に立ち上がった。ジャンプスカートの裾が捲れていて、清香と同じ可愛らしいおしめカバーが殆ど見えている状態だった。縦に並んだホックが目に入り、それが清香が着けていたおしめカバーと同じ物だと、おしめカバーを使ったことのある夏美にも、直ぐにそれがおしめだと分かったが、直ぐには信じられなかったし、言葉も一瞬出なかった。

 それと同時に清美もマリを見つめて口を開いた。
 「マリちゃんておしめって…清香と違って赤ちゃん見たく見えるし、とっても可愛い…」
 確かに涎掛を着けられ、可愛らしいカラフルなおしめカバーの姿で、あどけない顔で立っているマリは、赤ちゃん見たく見えて可愛かった。しかも、お尻の部分が垂れ下がるように膨れていては、尚更赤ちゃん見たく見えてしまう。
 「マリちゃん、何を着けているの?可愛い物をお尻に着けてもらって…」
 夏見は、わが子の姿を見て噴出しそうになった。
 その言葉でマリは、寝てから清香と同じようにおしめを着けられた事を思いだした。
 (しまった…忘れてた。おしめを着けられたんだっけ…)
 「キャッ…み、みちゃいや…」
 そう言ってスカートの裾を押さえた時に、じゅくじゅくと湿った冷たい感覚が股間に蘇ってきた。
 マリは真っ赤になった。いくら体が小さく見えても十九才である。三才の清香と同じようにおしめを着けられていては、恥かしくてしょうがない。しかもこの湿った感触は、おしめを汚してることは間違いないような気がした。
 その場にうずくまろうとした。
 (や、やだ。お、おしめを汚しちゃったのかしら?汗じゃ…こんなに濡れているんじゃ…。こんなの恥ずかしい…)
 十九才にもなって、おしめを着けられたことも恥ずかしいが、それを汚してしまったほうがもっと恥ずかしかった。
 「清香も最近になっておねしょをしなくなったのですが、用心のためおしめをして寝かしています。差し出がましいと思ったのですが、マリちゃんのパンツが濡れていたんで…マリちゃんもおねしょすると思いまして…確かまだトレーニングパンツでしたよね。だからマリちゃんにも同じおしめをしてして上げたんです。清香のおしめカバーでは、マリちゃんに少し大きかったのでおしめの枚数を多めにして合わせて、丁度良いようにしてあげたので…それにしてもマリちゃんは可愛いですね。おしめがそんなに似合う…すみません」
 マリのおしめ姿を見つめるように、清香の母親がマリの母に説明した。
 確かに清香のおしめ姿より、マリのおしめの方がお尻が大きく下に垂れ下がっていることに夏美にも分かった。

 マリを十九才の大学生とは見ていないことは事実だし、隣の家だから何時までもこれから先大学生だなんて言い難くなった事は明らかだ。それに首からは涎掛、お尻には可愛らしいおしめカバーの姿を見れば、誰でもマリを大きな赤ちゃんと思うだろう。
 当然マリが涎掛やおしめを着けている姿を母、夏美から見ても、全く違和感はなかった。
 「それは、それは…マリちゃん良かったね。おしめしてもらって…ところでおしめは…おねしょは大丈夫だったの?」
 確かめるように、マリに母親は他の人には分からないようにクスッと笑いながら聞いてきた。
 マリは、赤くなって下を向いた。
 「あらあらどうしたのその顔は…さてはおしめを汚しちゃったのかな?」
 急に母は、幼児言葉でマリに話し掛けてきた。
 「だ、だって…」
 もうマリは、汚していないと言えなくなってしまった。もうごまかすことは出来ないと思ってしまう。股間の冷たさが伝わってくるのだから。
 母親は、少し驚いたような表情に変わった。冗談かと思っていたようであった。
 「だ、だってって…本当におしっこ…おねしょしちゃったの?」
 小さな子にするように母は、マリの少し垂れ下がったおしめカバーに鼻を付けてきた。とたんに母の鼻に、おしめとおしっこの交じり合った赤ちゃん特有の臭いが鼻をついた。
 「あらあら…本当にチッチしちゃったみたいね」
 そういってマリの耳元に誰にも聞こえないように囁いた。

 「幾つになったの?間違いでおしめを着けられたのは仕方ないとしても、おしめを本当に汚しちゃうなんて。前はあれほどおしめを嫌がったのに…仕方ないからここでは、何時ものように小さな子の振りをしてよ。小さな子の前で恥ずかしいでしょう。おしめをいつも使ってるってことにするわよ。このまま家に帰てからおしめは外してあげるから」
 マリは仕方なしに首を縦に振った。こんな格好を他人にさらしてマリは恥ずかしくて仕方ないが、なぜか股間にキュンとしたうずきが走った。

 「すみません奥さん。おしめを汚したみたいなので…あとで洗って返しますのでこのまま少しの間貸しておいてください」
 母は、思いもよらないことが起こって、マリを目の前にしておろおろして、少し恐縮した言い方をしてしまった。
 「それはかまいませんけど。昼はトレーニングパンツのようですけど…マリちゃんは、いつもは紙おしめなんですか?…紙おしめより布おしめの方がおしめ離れも早いですし。そのおしめカバーはマリちゃんに上げますわ。まだ清香が、おしめを使うかなって思って…使っていたおしめカバーが古くなったので…可愛らしいむつカバーを在庫処分していたので何枚か纏めて買ってきたんで…そうしたら清香もおねしょをしなくなってきたので…もう要らなくなると思いますので。…だからマリちゃんが、おしめを必要ならおしめカバーごとおしめも差し上げますわ。でもそのままでは…濡れたままでは、マリちゃんが可愛そうですから。おしめかぶれにもなってしまいますので…どうぞ今も言ったようにおしめカバーはまだ新品で何枚もありますし…こんなに大きいおしめカバーですと、要らなくなったからと言っても、あげるところが無いので。マリちゃんにはちょうどいい大きさみたいですし…」
 夏美の言動を聞いて、何時もマリが紙おしめをしているみたいな言い方に思ったようだった。何時の間にか用意したおしめと、真新しいおしめカバーを広げられると、夏美も無碍にも断れなかった。
 「そ、そうです。いつも紙おしめなので布おしめは使ったことが…でも…それではあまりにも…」
 「いえ、さっきも言ったように清香にもおしめはほとんど要らないので…さっきも言ったように濡れたまま何時までもいると、おしめかぶれになってしまいますので…」
 「そうですか…ではお言葉に甘えて…マリちゃんここにねんねして」
 夏見も行き掛かり上、マリを赤ちゃん扱いにせざるを得なかった
 「お、おしめはもう…」
 力なくマリは抗議しようとしたが、着けられているおしめが、濡れていると言う事実が皆に知られていては抗議は空しい。諭されるようにして今まで横になっていた布団に寝かされてしまった。
 夏見は、マリが赤ちゃんだった頃、紙おしめしか使っていなかったから、布おしめに少し戸惑ってしまう。それを清香の母親が見ていて言葉を出した。
 「布おしめは慣れてないみたいですね」
 確かに夏美は、マリを目の前にしておしめ換えを少し躊躇していた。使い方が良く分からないのだ。
 「ええ、いつも紙おしめですんで…こう言う可愛らしいおしめカバーに布おしめは扱ったことが…」
 清香の母は、夏美を押しのけるような格好で代わってきた。
 「私がやってあげますわ。良く見て覚えておくと良いですよ。それにマリちゃんみたいな可愛い子のおしめ替えは楽しいし、…布おしめは紙おしめと違って少し当てにくいですけど。濡れた感覚が子供にも分かって、早くおしめ離れが出来て良いですよ。少々洗濯が大変ですけど、だけど経済的ですし。でもよかったですわ。可愛いマリちゃんにあげることができて…マリちゃん、おばちゃんがおしめを換えて上げるからね」
 「おしっこ、出ないから…お、おしめはもう要らない…」
 拒もうと小さな声を出した時、耳元で母親が他の人に聞かれないように小さな声で囁いた。
 「さっきも言ったでしょう。マリちゃんはいつもおしめを使ってるんだって…おしめを汚しちゃったんだから、今更本当の事を言ったら余計恥しいでしょう。…おしめをここで断ったら変に思われちゃうわよ」
 そう言われてしまうと言葉を返せなくなる。
 そんなやり取りを見ていた二人の子供達は、マリが泣きそうな感じに見えたようだった。
 「マリちゃん、なんだか泣き出しそうね」
 「清香もマリちゃんのおしめの交換の間、泣かないようにあやしてやるのよ」
 清香が嬉しそうに返事をしてマリの頭の方にやってきた。
 「うん、そうしてあげる。マリちゃん泣いたらダメだよ」
 幼稚園児の子供にあやされながらマリは仰向けに寝かされた。恥しさを通り越し、心臓はなぜか早鳴っていた。母に言われたように断れなくなっていた。
 (いやだー、こんな小さな子の前で…あやされながらおしめを交換されるなんて…これじゃあべこべじゃない…恥ずかしいけど。何か、あそこが…変になっちゃう)
 おしめカバーのホックを外す音が、マリにも聞こえてくると、今まで以上に恥ずかしさがこみ上げて、股間の疼きも大きくなってくる。
 「ね、マリちゃんのおしめ、とっても似合って可愛いね。赤ちゃんみたいでしょう」
 確かめるように清美が清香に対して言う言葉が、マリにも聞こえてくる。
 「うん、お人形みたいに可愛い…マリちゃんオムチュにチッチしちゃったの?清香は今日、オムチュ汚してないよ」
 清香は、おしめを汚してないことを得意そうに言う。
 それを聞くと余計恥ずかしい気持ちになり、股間のうずきも増してしまう。
 (幼稚園児でもおしめを汚さなかったのに…なんでおしめなんか汚しちゃったんだろう…やだ…感じてきちゃう…こんなの初めて…)
 「そうね、もうおしめは要らないわねね。マリちゃんも大きいんだし、おしめは恥ずかしいから、すぐ取れるようになるわね」
 最後のホックが外れておしめカバーが開かれた。股当ての白地に紺色の動物模様のおしめが、マリのおしっこでうす黄色く変色していた。

 「マリちゃんはいつもオチメなの?起きていてもなの?」
 清香が、マリの母の夏美に聞いてきた。
 「そうよ、マリちゃんはいつもおしめなのよ」
 清美と清香は、マリのおしめに関心があるような口ぶりで言う。
 「でも、家に来た時マリちゃん、オチメはしてなかったよ」
 「そうね、マリちゃんもおしめ離れが出来るようにレーニングパンツを穿いて練習してるのよ。清香ちゃんだったかな。清香ちゃんもトレーニングパンツは穿いていたでしょう」
 「うん、清香だよ。穿いていてけど…でも今は普通のパンツだよ」
 「もう普通のパンツなんだ。でもマリちゃんはまだ普通のパンツを穿けなくて、おしめが取れるように練習しないといけないでしょう。だからおしめをしてなかったのよ」
 「ふーん…それじゃ清香とちがう。清香はおしめ…眠るときだけだよ」
 清香がそれを聞いて、得意そうな感じで答えた。
 「じゃあ、清香ちゃんの方はマリちゃんよりおねえちゃんだね」
 「でもマリちゃんは、清香より年上だし…」
 「そうね、でもマリちゃんはおしめだし、清香ちゃんはパンツでしょう。だから清香ちゃんのほうがお姉ちゃんよ」
 「そうか。マリちゃんはおしめだからか…」
 清香が嬉しそうに笑顔をこぼした。

 清美は、マリのおしめに最も関心を強く示した。清美から見れば、清香よりマリのほうが年齢はずっと上に感じていたのだ。確かに見た目は可愛らしい赤ちゃんのような感じなのだが、幼稚園児が難しいものが解けるはずがないと思っていた。当然頭がよければおしっこぐらい自分で出来るはずだからおしめの必用はないと考える。精神障害や自律神経失調症の感じにも見えない。その為、何でマリがおしめをしているのか不思議だった。でも自分の母が、清香と同じくらいと言っても信じられなかった。
 清美は、マリのおしめ替えを、目をらんらんと輝かせて見ていた。

 元々子供にもサディスティックな所もある。清美はそれが強かった。それにマリの事を自分より頭が良い様に感じていたから尚更だった。年齢も見た目より上かもしれないと疑っていても、おしめをしていては、と言う半信半疑な部分もあった。でもその可愛らしさは清美の好みでも有った。

 清美の母親によって開かれたおしめは、動物柄で股間の布地の白い部分が黄色く汚れ、つんとしたおしっこ特有の臭いがマリの鼻をついた。
 (やだ、みんなの前で…でも本当におしめを着けられ、しかもそれを汚しちゃったんだわ。いまさら十九歳なんて本当に言えやしないわ…みんなにおしめにお漏らした所を見られて恥ずかしい…)
 マリは、着けられたおしめを冷たいと思っていても、それまでおしめを汚してないことを願っていた。股間の濡れた感覚が汗であって欲しいと…でもそれは空しい願いでもあった。

 恥しいと思えば思うほど、余計股間がざわめいてくる。
 (なんか…変?変になっちゃいそう…でも・・・なんか恥しいけど変な感じになるぅぅ…)
 みんなの視線を感じてマリは恥ずかしく思い、それを強く意識するほど股間が潤んでくるのが分かった。
 (アン…み、見ないでー)
 「あまりしてないみたいね…横当てまで濡れていないし。マリちゃんは、元々おしっこの量が少ないんじゃ…マリちゃんもうすぐおしめが外れそうね…」
 清香の母が赤ちゃん言葉を交え、マリのおしめを外しながら手馴れた手つきでおしめをめくった。
 マリは、子供言葉で相手が話すのは慣れている。こんな赤ちゃん言葉で言われた事は初めてなのだが今の状態では、恥しいが赤ちゃん言葉で話しかけられても仕方がないと思っていた。
 「すみません…マリはまだおしめにお漏らしをするようじゃおしめが必要みたいです。済みませんが替えのトレーニングパンツを持ってきていないのでおしめを貸しておいてください。このままおしめをして帰らせますので…清香ちゃんみたいに早く取れれば良いんですが」
 夏美もいくらなんでも、下穿きを何も穿かせない状態でマリを家まで連れて帰らす事も出来ない。
 うっとりとした表情のマリの顔を見て、夏美が何かを悟ったように言った。
 (そんな…お母さん。マリはもうすぐ二十歳よ。おしめなんか…)
 「さっきも言ったように、おしめは差し上げますわ。足らなければいくらでもありますから。ところでマリちゃんは早熟みたいですね」
 マリの汚したおしめを広げ、娘たちの性器と少し違うことに気付いていた清香の母が言った。
 「では、おしめははありがたく貰っておきます…体格の割にはおませな子でして…でも、まだおしめを使っているんで、まだまだ子供ですよ……よかったねマリちゃん。可愛いおしめをもらえて」
 (そんな…私は十九歳よ、おしめなんか貰ってどうするのよ…)
 心の中で何度も否定するが、おしめを汚していては言葉に出せない。
 「そうですね。うちの清香は幼稚園では大きいけど…あらあら、早くおしめをしないと…マリちゃん、まだお漏らししたらダメですよ」
 股間の湿り具合を見て、おしっこだと思っているようだった。でもそれはじっくり見られたらおしっこと違うと分かるのだが、清美の母親は、マリがおしめの必用な子と見ているから、濡れ出したのを当然おしっこと思ったのだ。
 まるで赤ちゃんのおしめ換えのように、軽々とマリの両足首を片手でくくり、上に持ち上げてお尻を浮かし、おしっこで濡れたおしめをおしめカバーごと引き抜いた。新しく用意して置いたおしめとおしめカバーのセットをお尻の下に敷きこんだ。
 「マリちゃんはスマートでおしめが着け易いですね。これから着けるおしめカバーは、清香のお古ですが殆ど使っていないので…このおしめカバーは、使っていたものより少し小さめですので、清香よりお尻の小さなマリちゃんには、丁度良い大きさだと思います。今は昼ですので股おしめだけでいいと思いますが、でもお昼寝や夜は股当てだけですと横漏れしますので横当ても必用になります。おしめの枚数を多めに着ける時は、こちらのおしめカバーのほうが合っていると思います。マリちゃんはとってもおしめが着けやすくて楽だわね。…起きている時におしめを当てる場合は、こんなものです。股当てだけなら動きやすいので股関節脱臼にならないで済みます。もしおしっこの量が多いようでしたら股当てのおしめの枚数を多めにしてください。今は汚して直ぐですから、マリちゃんのおしっこの量なら、おしめの枚数は少なめにしておきます。もしおしめカバーから漏れ出すようなら股当てのおしめの枚数を多めに変えてくださいね」
 「…あ、はい」
 「寝る時など、取り替える時間がない時などは、大き目のこのおしめカバーにしないとおしめの枚数を増やせます。大き目の方のおしめカバーは、皆新品ですので…大き目のおしめカバーを使う時は、マリちゃんの場合横当てを使わないとゆるゆるですので…おしめをおしめカバーに合わせて…おしめは赤ちゃんでも使える大きさなのでお腹まで回るようにお尻の部分で重ねて長さを調節してください。横当てを当ててあげれば寝ていても漏れ出るような事はなくなりますから。最後に食み出したおしめを漏れ防止の内側に押し込んでやって下さい。紙おしめと違っていつも同じとは行かないんです」
 「あっ、…そうですか。股当ては何枚くらいが」
 夏美もまた布おしめの事は分からなかった。
 「そうですね。寝るときならおしめを縦折にして三枚と…寝ているときは長時間になりますから、そのままのおしめを四枚を重ねれば十分だと思いますが、何回もおねしょをするようでしたら枚数を増やしてください。大きい方のおしめカバーでしたら股上に余裕がありますのでマリちゃんには、おしめの枚数を増やせると思います。とりあえず横当て3枚くらいと股当てで合計十枚もあれば、朝まで替えなくてもいけると思います」
 「よく分かりました」
 マリは、新しいおしめの上にお尻を下ろされその感触のやわらかさにさっき以上に驚いた。布おしめは濡れると硬くなる。その違いにうっとりとしてしまった。
 (あっ、恥ずかしい…赤ちゃんが着けるようなおしめはもうやめて…で、でもおしめってこんなに柔らかいんだ…なんだか気持ちいい…)
 間違いでも十九歳にもなっておしめを着けられたことも恥しいが、おしっこで汚れたおしめを、しかも年の離れた年下の子供達の前で、おしめを外されるのではなく、汚れたおしめを新しいおしめに交換される恥ずかしさが強かった。
 汚していては「おしめは要らない」とも言えず、皆の見ている前で、又してもおしめを着けられることは、この上なく恥ずかしい。相手がマリの年を知らないとは言え十九歳なのだから。
 でもその中になんとも言えない痺れと、ふんわりとしたものがあった。赤ちゃんしか着けないような可愛らしいおしめカバーに布おしめだから、マリも自分が余計に赤ちゃんに戻っていくような錯覚や心地よさが有った。それがおしめのもつ魔力であることをマリは知らなかった。

 マリは、布おしめとおしめカバーは、赤ちゃんが着けけるものだと思っていた。特にこの可愛らしいおしめカバーは、マリを赤ちゃんに戻す強力なアイテムになっていた。もともと小さい時から孤独だったマリには、無意識なのだが着けられたおしめの印象が強く、マリはおしめの必用な赤ちゃんに戻り始めていることに気付かなかった。

 この瞬間からマリは、おしめを外せなくなってしまう運命にあることとは思っても居なかった。


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