大好きな先生


 私は学校に、大好きな先生がいます。
 そして最近、その先生と秘密の間柄になっちゃったんです。そのことを報告します。興味のある人は読んでみて下さい。



 その朝、妙な胸騒ぎを感じて私は目を醒ましました。
 枕元に置いてある目覚まし時計を布団の中に引き入れて、ぼんやりマナコでその数字を読んだ途端、私は布団から飛び出しました。ディジタルの数字が午前七時四十分になっていたからです。
 慌ててパジャマを脱ぐと、たたみもせずにベッドの上に放って、制服を着ました。スツールに腰かけるのももどかしくって、立ったままで髪をとかし、カバンを抱えると、ドタバタという足音をたてて階段をおりました。
 ダイニングには、ママの姿がみえます。
「どうして起こしてくれなかったのよ?」
 私はちょっとばかり怒ったような声を出してました。だって、そうでしょう? 娘が学校に遅刻するかもしれないっていうのに、起こしに来てもくれなかったんだもの。
「知りませんよ。昨夜、早く寝なさいって言ったのに、『このテレビ観てから』って言ったのは誰だったかしらね? それに、『もう子供じゃないんだから、いちいち指図しないで』とも言ってたんじゃなくって?」
 ママが、ざまあみなさいとでもいうような顔で応えました。
 私には反論することができません。みんなママの言う通りだったからです。それに、今は言い争ってる余裕なんてないんです。
 私は口を閉じて、廊下を走り始めました。その私のうしろ姿に、ママはこんな言葉をかけてくるんです。
「朝ごはん、食べないの? 今日のゆで卵、あなたの好きな固さの半熟にできてるわよ」
 私は、振り向きもせずにアッカンベーをしました。この状況でゆっくりとゆで卵の殻を剥くような人がいたら目の前に連れてきて見せて欲しいわよ。

 私が息を切らせながらS女学院の正門をくぐったのは、八時二十五分のことでした。なんとか遅刻だけは免れたようです。途中、バスが渋滞に巻きこまれずに来れたことがラッキーだったみたい。
 自分の机の前に座るのと、担任の杉田雅美先生が入ってくるのとが殆ど同時でした。
「八神千尋さん」
 出欠を取る先生の声に、明るく、はーいという返事をした時には、呼吸は正常に戻ってました。やれやれだわ。
 なんたって、ここS女学院は躾の厳しいことで有名なんです。勉学やスポーツにも力を入れてるんだけど、それ以上に、躾やマナーっていうのが建学の精神らしいんです。だから、校則もそれはそれは厳しくって、遅刻なんてもってのほか。
 噂なんだけど、遅刻を何度か繰り返した生徒が半年の間、家に帰してもらえずに学校の宿直室で寝泊まりさせられたっていう話さえあるんだから。
「本日も、欠席・遅刻ともにないようで、まことに結構なことです」
 出欠を取り終えた杉田先生が、眼鏡のレンズを光らせて言いました。
 この先生、年齢は二十六歳だったかな。大学を卒業すると同時にS女学院に採用されたらしいんです。もちろん、先生の中では若い方です(若いけど、校則を守らない生徒にはキツイのよ)。そういえば、この学院の先生の平均年齢、いくつくらいなんだろ? 五十に近いんじゃないかしら?
 ほーんと、おもしろくないんだから。若い男の先生も一人くらいは採用して欲しいわ。
 私は心の中でブチブチ言ってたんですが、先生の次の言葉を聞くと同時に、頭の中がまっ白になっちゃいました。先生は、こう言ったんです。
「今日のホームルームは持ち物検査を行います。カバンと机の中の物を机の上に広げてください」
 うちの学校では、時おり、こういうことがあるんです。マンガやおやつ、タバコなんかを学校に持ってきていないかどうかを確認するためです。でも、そんな物を持ってきてる人はさすがにいません。私も、そんなのを持ってきたりしたらどんな目に遭わされるか知ってるんだから必要な物しか持ってきてません。その点は大丈夫。
 私の頭がパニックになった理由は、他にあるんです。
 持ち物検査の時には、服装検査もされることになってるんです。校則の厳しい学校の常として、制服は上から下まで細かく規定されてます。頭はヘアバンドの色から、足先のソックスの長さや柄まで。
 しかも、下着の色まで指定されてるんです。いまどき、そんなこと信じられます?
 お年頃の、おしゃれに目覚めた女の子に、学校が許可した色の下着しか着けさせないなんて校則、あんまりだと思うでしょ?
 でも、まあ、仕方ないって言えば仕方ないのかな。親は、校則が厳しければ厳しいほど安心するでしょうし。それは(納得はできないけど)理解はします。
 だけど、それにしても、よりによって今日というのはイヤ。今日だけは、どうしてもイヤなんです。だって……。
 とか言ってるうちに、先生は、もう私の列まで回ってきちゃってる。
 どうしよう、なんて思いながらも、カバンの中身を机の上に広げてると、
「なんですか、これは」
 先生の冷たい言葉が教室に響きました。
 机の上を見てた目を上げると、私の二人前の子(前田ゆかりさんだわ)のスカートを、先生が大きく捲り上げてるんです。
 捲り上げられたスカートの中には、飾りレースがいっぱい付いたピンクのショーツが見えてます。あーあ、と私は思いました――あれじゃ、校則違反は明らかだわ。
 ゆかりさんの足が小刻みに震えてるみたい。顔はうなだれてるし、返事もできないんじゃないかしら。
「どうすればいいのか、わかってますね?」
 先生は、無言のゆかりさんの肩に手を置きました。
「幸い、あなたは初犯です。校長先生への連絡はしません。その代わり、どんな罰を受けるかは、自分でわかりますね?」
 ゆかりさんは身動き一つもしませんでした。でも、しばらくすると、小さく頷いてから、自分のショーツを脱ぎ始めたんです。
 この学院では、規定外の衣類を着けている者には、その反則回数によって幾つかの罰則が用意されています。
 一番重いのは、校長への報告が四度を越えた場合。自動的に放校処分(考えてみれば、きついわよね。ちょっと変わった服装をするだけで放校なんて。でも、これは確かに効果があるんです。S女学院を放校になったなんてことになったら、この近所じゃ道も歩けなくなるくらいだもの)です。
 逆に最も軽いのが、ゆかりさんみたいに初犯の場合。校長への報告は免除されます。一種の処分猶予です。でも、恥ずかしい『実刑』もセットになってるんです――違反した衣類を先生に預けたまま、その日を過ごさなきゃいけないんです。ゆかりさんの場合はショーツが規定違反だから、ショーツを脱いで先生に預けちゃうことになるんです。これが、スカートの丈が長かったり短かったりすれば、スカートを脱ぐことになるわけです。いくら男性の目がないっていっても、若い女性には恥ずかしい罰です。
 ……そしていよいよ、先生は私の前に立ちました。
 先生は私の机の上を見渡すと、持ち物は異状ないようねと言ってから、私の体を、頭のてっぺんから足の先までずーっと観察しました。
「外観は結構。でも、髪が少し乱れてるようだから注意なさい」
 先生の言葉が聞こえました。
 時間に間に合わせるため、適当にブラシでといただけだったものね。でも、それはどうでもいいことです。今の私にとっては、スカートの中に着けている下着を見られることが一番の問題なんだから。
 先生は私の足元にかがみこむと、スカートを僅かに捲りました。視線が私の下腹部に突き刺さるのを感じると、足が赤く染まり、小刻みに震えちゃいます。
 ゆかりさんみたいにスカートを捲り上げられちゃう、と私は観念しました。その時、クラスメートは、どんな反応をするでしょうか?目の前がまっ暗になりました。
 そうです。私は、校則に違反する下着を着けてるんです。それも、私の下着に比べればゆかりさんのショーツなんておとなしいものだと思うような。
 先生は、まだ私のスカートの中を覗きこんでます。予想もしなかった下着を見つけて、ショックを受けたんでしょうか?
 やがて、先生が立上りました。
 でも、ゆかりさんみたいな罰を言い渡したりはしませんでした。一言だけ、私の耳元に囁いただけです。
「放課後、職員室へいらっしゃい」
 私は、へなへなと椅子に座りこみました。

 その後の授業の内容なんて殆ど耳に入らないまま、放課後になりました。
「ああ、いらっしゃい。もうすぐ私の用事も終わるから、そこに腰かけて待っててくれる?」
 職員室に入った私に、先生はソファを薦めてくれました。
 はい、と応えてソファに腰をおろしたものの、私の胸はドキドキいってます。
 一体、何を言われるんだろう?
 どんなふうに事情を説明しよう?
 私は、そんなことばかり考えてました。だって、あのままで済むわけがないんだもの。
 二十分ほども待ったでしょうか。
「ごめんなさい、待たせたわね」
 先生が私の前に立ちました。
 「あ、いいえ……」
 私は口の中でもごもご応えながら、さっとソファから立上りました。
「じゃ、行きましょう」
 先生は、立ち上がった私を見ると、さっさとドアの方へ歩き始めました。
「え、あの、行くって、どこへ……?」
 私は不要領な声を出しました。だって、どこかへ行くなんて、聞いてないのよ。
「決まってるじゃない、あなたのお家よ」
 先生は、何を今更なんていうふうな顔をして応えました。
「それとも、校長先生に報告した方がいいのかしら?」
「……いえ、それは……」
「じゃ、行きましょう」
 私は、先生に連行されるようにして家への帰路につきました。校長先生に報告されるよりはママに話してもらう方がマシだと思ったからです。ママなら、私が校則違反の下着を着けてる事情も知ってるんですから。

「あの……、先生がわざわざいらっしゃるようなことを千尋がいたしましたんでしょうか?」
先生をリビングルームに案内したママは、コーヒーカップをテーブルに並べて不安そうな声で訊きました。
 連絡もなしに急に担任が家にやって来たんだから、驚くのが普通です。
「単刀直入に伺いますが……千尋さんは御病気でしょうか?」
 先生が真顔でママに話しかけました。
「え? あの、どういうことでしょう?」
「実は本日、服装検査を行いました。御存じかとは思いますが、学院の服装検査では下着のチェックも行っています」
「はぁ、存じておりますが……」
「その検査において、二人の違反者が見つかりました。そのうちの一人が千尋さんです」
 ママは、ちょっと怖い目で私の顔を睨みました――ちょっとママ、そんな怖い顔しないでよ。これには事情があるんだから。
「ただ、千尋さんの下着のことで気にかかることがございまして。それで、お母様にお尋ねしようかと」
「もうひとつわかりにくいんですけれど……千尋が病気にかかっているかどうか、ということと下着とが関係あるんですの?」
 ママは顔を先生の方に戻しました。
「はい……。千尋さんが身に着けていたのは、校則違反の派手なショーツやスキャンティといったものではありません。なんというか……私が見たところでは……オムツのように思えたんです。それが本当にオムツなら、校則違反云々よりも、病気か何かかと心配になりまして……」
 ママの口が半分ほど開きました。目が点になりました。肩がピクピク震えてます。
 でも、なんとか元の顔に戻ると、ママは先生に言いました。
「すみませんが、しばらく待っていただけませんでしょうか? ちょっとこの子と話してみますので――三十分ばかりお待ちいただけますか?」
「ええ、私は構いませんけれど……」

 ママと私は、私の部屋の床に座りました。
「いったい、どういうこと? 学校にまでオムツをあててくなんて」
 ママが小さな溜息をつきました。



 ちょっと事情を説明しておきましょう。
 実は私、中学校三年生の二学期頃からオネショが始まっちゃったんです。
 ママの話では、私は二歳でオムツが外れて、三歳になる時にはオネショもしなくなったという、とてもいい子だったらしいんです。それが、中学でまた始まったんです。その時のショックったらありませんでした。
 泌尿器科と精神科で診察してもらったんだけど、泌尿器科の方では異状がないということでした。そして、精神科で、徐々に近づいてくる高校受験がプレッシャーになってストレスがたまってるんでしょうねと言われたんです。
 原因はわかりました。でも、治ったわけじゃありません。
 毎晩のように布団を汚しました。
 或る日、私が布団に入って寝ようとしてる時、ママが部屋に入ってきました。そして、私の枕元に何かを置いて言ったんです。
「お布団を毎日干してると変に思われるかもしれないでしょう。だから、これを探してきたの。どうかしら?」
 私は、枕元に置かれたものを見ました。そして、それが何なのかわかると、顔がまっ赤に染まりました。
「でも、これ……」
 「恥ずかしいのはわかるわ。でも、お布団は外に干さなきゃいけないけど、これならお家の中でも干せるのよ。そうすれば、近所の人にバレちゃう心配がなくなるでしょう?」
 それは、オムツとオムツカバーだったんです。確かに、オムツをあてていれば布団を汚すことはなくなるでしょう。洗濯したオムツも家の中で乾かせるから、ママの言う通り、私のオネショが近所の人にバレる心配はなくなるかもしれません。
 でも……と躊躇う私に、ママは優しい声で言ったんです。
「オムツカバーは新しく薬局で買ってきたものだけど、オムツは千尋が赤ちゃんの時に使ってたものなのよ。なつかしいでしょう?」
 ママの言うように、オムツの方は少し使いくたびれてるような感じです。誰が使ってたのでもない、赤ちゃんだった私が使っていたオムツ。そう思うと、私は決心がつきました。オムツをあてるのも仕方ないやと思ったんです。毎日布団を干すママの苦労が少しでも減るんなら、という気持もあったんだろうと思います。
「千尋のお尻、大きくなったわね」
 なんて言いながらママは、私のお尻を動物柄のオムツでくるんでゆきました。それから、クリーム色の大きなオムツカバーでお尻を包んじゃったんです。
 その間、私は顔を赤く染めて目を固く閉じていました。どんな理由をつけてみても、中学生にもなった大きな体にオムツをあてられることで、羞恥と屈辱とが胸をいっぱいに満たしました。
 オムツカバーに包まれて大きく膨らんだ私のお尻にパジャマのズボンを穿かせたママは、私の側で横になりました。そして、私の背中やお尻をポンポンと優しく叩き始めたんです。久しぶりにママの匂いを間近で嗅いだ私は、赤ちゃんに戻ったような気になっちゃって、顔をママの胸に埋めてみました。ちょっと息苦しかったけど、甘ーい香りがして、とても懐かしい所に帰ってきたように思ったものです。
 ママもちょっと昔を思い出したんでしょうか。自分のブラウスのボタンを外すと、ブラジャーのホックも外しちゃったんです。
 私の目の前に、ママの乳房が現われました。ママが背中を叩くのがきっかけになったみたいに、私はママの乳首を口にふくんでみました。
 さすがにおっぱいは出てこなかったけど、しばらくの間ママの乳首を咥えてるだけで、私の心の中は温かくなってきました。オムツをあてられたことで感じた羞恥や屈辱はどこかへ飛んで行っちゃって、温かな柔らかい感じで胸がいっぱいになりました。鼻の奥がツンと痛くなったようにも思いました。
 そうしてママの乳首を口にふくんだまま、私は眠っちゃったみたいです。とても気持のいい眠りだったように覚えてます。

 朝になって目覚めた私は、布団に手を触れてみました。そして、やったー、と嬉しく思ったものです。布団が濡れてなかったからです。これで、オネショともサヨナラだわ。
 その時、ママが部屋に入ってきました。そうして私の顔を見ると、こう尋ねたんです。
「どうしたの、そんなに嬉しそうな顔をして。何か、いいことがあったの?」
「うん」
 と私は頷きました。
「お布団が濡れてないのよ」
「よかったわね。……でも、オムツはどうかしら?」
 私は、ママの言葉にショックを受けました。そうです。私は、オムツをあててることなんてすっかり忘れてたんです。だから、『布団が濡れていない』イコール『オネショをしていない』だと思ってたんです。
 ママは私のパジャマのズボンを脱がせ始めました。自分でできるって私が言うのに、いいえママがしますって言うの。まるで、私が赤ちゃんに戻っちゃったみたいに思ってるみたい。
 その頃には、私は自分がオネショをしちゃってるかどうかがわかってました。だって、下腹部のあたりがジクジクして気持わるかったんです。その感触の正体が最初はわからなかったんだけど、自分がオムツをあててることを思い出すのと同時に、それが濡れたオムツの感触だって思いついたんです。
 それからは、毎日オムツをあてられるようになりました。
 そうするうちに、次第次第にオムツがイヤじゃなくなってきたんです。あれほど恥ずかしく思ったオムツなのに、あてずに眠ろうとすると下腹部が頼り無い感じで、寝付かれないんです。
 それに、私がオムツをあてるようになってからママがとても優しくなってきたんです。パパが会社で部長になって帰宅が遅くなり始めてから、ママはいつも苛々してるように見えてました。それが、私がオムツをあてるようになると、私が小っちゃい頃にそうだったように優しく接してくれるようになったんです。
 私が眠る時には、いつもママがオムツをあててくれるし、朝、濡れたオムツを外してくれるのもママです。私が自分でしたことはありません。自分でしようとしても、ママが許してくれないんです。最初の頃、自分でオムツをあてた時も、そのオムツを外しちゃって、ワザワザあて直しちゃったくらいだもの。
 そうして、眠る前には、ママの乳首を口にふくむのが日課になっちゃいました。ママの乳房に顔を埋めたまま、ママの子守歌を聴いて眠るようになったんです。
 そんな生活を送っていると、私の心の中のモヤモヤやイライラが徐々に消えてゆきました。ずっとママに甘えることで、ストレスが消えていっちゃったんでしょうか。
 それと同時に勉強がはかどるようになって、同級生や先生を驚かすような成績を上げるようになりました。
 そのおかげで、入学できるかどうか微妙なところだったS女学院の入学試験をパスしちゃったんです。
 勝手なもので、合格の報せを受けた日にはオネショは治っちゃったみたいです。合格通知を貰った日の翌朝、目が醒めた私はオムツカバーの中に手を入れてみたんだけど、濡れたような感触は全くありませんでした。
 精神科の先生が言ってたように、プレッシャーがなくなるのと同時にオネショも治ったんでしょう。もう、オムツをあてなくてもよくなったんです。
 ……だけど。
 それは、あまり嬉しくありませんでした。オムツが要らなくなれば、ママに甘えることができなくなっちゃう――私には、オネショが治った喜びよりも、その寂しさの方が強く感じられたんです。
 私は、布団の中でわざとオムツの中にオモラシをしてみました。それは思ったよりも難しいことでした。オネショは私がしたくなくても出ちゃうのに、わざとしようとするオモラシはなかなかできないんです。
 座ったり、立ったり、いろいろな姿勢をとって体の緊張をほぐしてみました。そうして、やっと最初の一滴が膀胱から出てきました。そうなれば、あとはなんとか続けて出てきます。やがて、私の膀胱に溜っていたおしっこが全部出て、オムツをびしょびしょに濡らしちゃいました。
 オムツの中でおしっこが股間からお尻、腿へと広がっていく感触は、私には予想外の……快感でした。私の胸は高鳴り、下腹部がジーンと痺れたように感じました。
 しばらくすると、いつものようにママがやって来ました。だけどその日は、真っ先にオムツが濡れてるかどうかを確かめようとはしませんでした。私の側に座ると、なんだか寂しそうな表情で話しかけてきたんです。
「精神科の先生のおっしゃる通りなら、もうオネショは治った筈よね。それなら、オムツも必要じゃなくなってるんでしょうね」
 私は、強く首を横に振りました。
 幼児がダダをこねる時のように、思いきりイヤイヤをしてみせたんです。
 ママの顔が少し輝いたように思いました。
 躊躇うようなママの手が、ゆっくりとオムツカバーの中に差し入れられました。そして、濡れたオムツの感触を味わうように、ママの手はオムツカバーの中を移動していったんです。
 ママの表情が一変しました。目が強く光りました。唇がニコッというように動くと、嬉しそうな声が聞こえてきました。
「あらあら、この子ったら。高校を受かったっていうのに、まだオムツが外れないんだから。本当に困った子だこと」
 そして私の耳元に口を寄せると、小さな甘い声で囁いたんです。
「本当はオネショしてなかったんでしょう? 明け方にね、オムツの様子を見にきたことがあるのよ。千尋はぐっすり眠ってたから知らないだろうけどね。でも、その時はオムツ、大丈夫だったわよ」
 私は、エヘヘと笑ってごまかそうとしました。ママはそんな私に抱きついてきて、だーい好きよと言いながら、私の頬にキスをしたんです。
 私はオネショが治ったにもかかわらず、眠る時には、それまでと同じようにママにオムツをあててもらうことになりました。
「オネショは治ったんだけど、オムツをあてて欲しいの」という私の申し入れ(ほんと、口にする時の恥ずかしさったらなかったわ)を喜んで聞き入れてくれたんです。
 そうしてるうちに、ママは段々と私を本当の赤ちゃんみたいに扱うようになりました。赤ちゃん用の可愛いいデザインのくせにサイズだけは大きく仕上げられてるオムツカバーや、私の体にぴったりフィットするベビー服なんかをどこからか手に入れてくるようになったんです。
 休日でパパが外出しちゃうと(これがまた多いの。ゴルフだ、接待だって、パパが家にいる休日なんて、ほんと数えるくらいしかないわ)、昼間でも私にベビー服を着せてオムツをあてるんです。私もそれが楽しみで、オムツの中へのオモラシも上手になっちゃいました。
 ついでに言っとくと、今朝、私が脱いだパジャマもママが買ってきたヤツなの。ピンクのコットンでできてて、胸や袖口にレースのフリルがいっぱい付いてる、可愛いいベビードレスなんです。

 というわけで、私が赤ちゃんみたいにオムツをあててても不思議じゃないことをママは知ってるんだけど、それでも、それは家の中でのことです。
 今日みたいに、オムツをあてたままで学校へ行っちゃうなんてことは想像もしてなかった筈です。
 だからそれを先生から聞かされるとビックリしちゃって、私がそんなことをした理由をきくつもりで私を連れてこの部屋へきたんです。



「私だって、好きでオムツをあてたまま学校へ行ったわけじゃないわよ」
 私はママに反論してみせました。
「ママが起こしてくれないから、目が醒めた時にはオムツからショーツへ穿き替える時間がなかったんじゃない」
「あら、よく言うわね。穿き替える時間なんて、そんなに要るものじゃないでしょ」
「何言ってるの。私のちゃんとした下着をベビー箪笥の奥に隠しちゃったのは、いったい誰よ。『千尋は赤ちゃんだから、こんなショーツなんて要らないわね。オムツの奥に置いとくよ』なんて言って」
「ああ、そうだったわね」
 ママは、くすくす笑ってみせました。だけど、すぐに何かを思い出したように怖い顔になったんです。
「でもね、早く起きれば、こんなことにならなかったのよ」
「……だから、どうして起こしてくれなかったのよ?」
 私は口を尖らせました。
「だって、昨夜も千尋の側に添い寝してあげようと思ったのに、千尋ったらママを布団から追い出すんだもの。それで腹を立てちゃったのよ」
「……だって、どうしても観たいテレビ番組があったんだもん」
 私は口の中で言い訳しました。
 でも。なーに、ママったら。そんなことで拗ねちゃって、私を起こしてくれなかったっていうの? そんなの、あんまりだわ。勝手だわ。
「ま、それはいいとして……」
 私の呆れたような表情を見たママが口調を変えました。
「先生に、どういうふうに説明するか、よ」
 そうです。今は、親子喧嘩をしてるような場合じゃありません。
 先生のあの様子じゃ、下着の校則違反を咎めるよりも、私がオムツをあててる理由を知りたくってウズウズしてるみたい。
「先生が言うように、私は病気でオモラシしちゃう心配があるってことにしちゃう?」
 私は首をかしげて提案してみました。
「……それはダメね」
 少し考えてから、ママが応えます。
「どうして?」
「だって、考えてもみなさいな。もしも千尋が病気だってことにしたら、千尋はこれからずっとオムツをあてて学校へ行かなきゃいけないのよ。『もう病気は治ったから、オムツはやめました』じゃ済まないのよ」
 そりゃそうです。
 でも、どうすればいいの?
 中途半端な説明じゃ、先生は納得しないでしょうね。

 しばらく相談して、やっと結論が出ました。ちょっぴり荒っぽいやり方で、ほんとに大丈夫かな?という気持もあるけど、これしか方法がないみたいなのでやってみようってことになったんです。
 私は学校の制服を脱いで、ベッドの上に横になりました。そしてママが、ベッドの上に広がってたベビードレスを着せてくれます。それだけじゃなくて、ベビー箪笥(いつのまにか、私の部屋に置いてあった整理箪笥がなくなって、代わりにベビー箪笥が置いてあったんです。きっと、ママの仕業だわ)からよだれかけやベビー帽子を取り出してきて、私に着させました。
 これで、私はすっかり赤ちゃんになっちゃいました。
 ママは私のベビースタイルを目を細めて見た後、天井から吊ってあるサークルメリーのスイッチを入れました。かろやかな音楽が流れて、人形が踊り始めます。
 そうなんです。私の部屋は、すっかりベビールームになっちゃってるんです。壁に作り付けの棚は動物やアニメキャラクターのヌイグルミでいっぱいになってるし、玩具箱には、置き上がりこぼしやガラガラ、布製のボールなんかが詰まってます。だから、お友達が遊びにきた時は、別の部屋に案内するんです。この部屋を見たら、目を回しちゃうことでしょうね。

 さて、これで準備完了です。
 ママは部屋を出て行きました。
 階段をおりる足音が聞こえてきます。
 しばらくすると、今度は階段を昇ってくる足音が聞こえます。それも、二人分の足音。
 やがて部屋のドアが開き、ママの顔が見えました。そして、そのうしろに先生の顔。
 ママが位置を入れ替えて先生の背後に廻ると、トンと先生の背中を押しました。先生が部屋の中に入ってきます。すぐにママも入ってきて、ドアをロックしちゃいました。
 先生の目が、ベッドの上に寝ている私の姿を映しました。
 その目は大きく開いたまま私を見つめています。
 私は先生に向かって、ニコッと微笑みかけてみました。
 先生も、引きつったような笑顔になりました。でも、その笑顔は長くは続きませんでした。説明を求めるようにママの方を振り返ると、パクパクと口を開けたり閉じたりしてます。
「おわかりになりませんか? 千尋は病気なんかじゃありません。ただ、赤ちゃん返りしてるだけなんです」
 ママが、おもしろそうに先生に説明しました。
「赤ちゃんだもの、オムツをあてるのは当然ですわ。だから、それを心配していただく必要もないんですのよ」
 先生の目は、ママと私の顔を交互に見比べるようにキョロキョロとせわしなく動きました。そして、しばらくその動作を繰り返した後、ゆっくりと瞼が閉じられたんです。
 体中の力が抜けるように、ヘナヘナと床の上に座りこんじゃいました。
 若いくせに融通のきかない固い性格をしてるから、自分の想像もつかない事態になるとウロがきちゃうのよ。もっと柔軟な気持を持ってれば、こんなに簡単に気を失うこともないのにと私は思いました。
 もっとも、先生が自分から気を失ってくれたのはラッキーです。そうでないと、ママと私とで力ずく、なんてことになってたでしょう。いくらなんでも、それでは後ろめたいもの。
 私はベッドからおりると、ママと一緒に先生をベッドの上に放り上げました。それから二人で先生の洋服を脱がせて、スッポンポンにしちゃったんです。
 スカートを脱がせると先生のショーツが丸見えになったんだけど、それがなんと、黒のレースだったんです。生徒には厳しいこと言って、自分ではなによ。もうこれで、私の心は決まりました。これから先生をひどい目に遭わせちゃう、ごめんね、なんて同情はしないわよ。
 先生をまっ裸にしちゃうと、私は着替えを始めました。先生をビックリさせるためにベビースタイルになってたんだけど、もうこれは必要ありません。だいいち、この格好じゃ動きにくいんだもの。
 でも、私が脱いだベビードレスやブルマーは箪笥に収納されるわけじゃありません。床に落ちた私のベビー服をママが拾って、先生が寝ているベッドの側に持って行くんです。
 そろそろ、私たちが何をしようとしてるのかわかってもらえたかな?
 ママは先生のお尻の下に、箪笥から取り出した新しいオムツとオムツカバーを敷きこみました。オムツは三色の水玉模様ので、カバーは、淡いレモン色の生地にアニメふうの動物がプリントされたのです。
 先生のお尻がオムツカバーに包まれた頃には、私の着替えも終わってました。
 着替えを終えた私が先生の上半身を抱き起こしてる間に、ママがベビードレスやよだれかけを着せていきます。
 ベビー帽子で頭を覆って、純白のレース製のソックスを履かせると、先生の変身は終わりました。
 ママと私は思わず、へぇーって声をあげちゃいました。だって、眼鏡を外した先生の顔は予想外に童顔で、ベビースタイルがとってもよく似合ってるんです。日頃の厳しい先生とは、とても思えません。
 でも、感心してばかりもいられません。先生が目を醒ます前に、もう少しやっておくことがあるんです。
 いざ、となると流石に顔が赤らんじゃうんだけど、私は意を決して先生の横に寝ました。私の格好は、キュロットスカートとTシャツだけの簡単なものです。そのTシャツの裾を捲り上げると、ブラジャーをしていない胸から乳房が現われます。私は、ツンと上を向いたピンクの乳首をおずおずと先生の唇に寄せていきました。
 先生の唇のプヨンとした感触に触れると、私の体がビクッと震えちゃいます。でも、ここでやめるわけにもいきません。
 私は先生の後頭部を抱くと、その手に力を入れました。先生の顔が私の方へ寄ってきて、乳首に当たる唇の感触が強くなります。
 ママが、手の指で先生の唇を開かせました。同時に、私の乳首が先生の唇の間を通って舌の上に辿り着きました。
 すると驚いたことに、先生の唇が動き始めたんです。まるでお母さんのおっぱいを吸う赤ちゃんみたいに、先生が私の乳首を吸い始めたんです。気を失ってる先生の、本能とか無意識とかがそうさせてるんでしょうか。
 だけど、私の驚きはすぐに消えちゃいました。私の乳首を無意識のうちに吸う先生がとても可愛らしく思えてきたんです。私よりも十歳ちかくも年上なんだけど、そんなことはどうでもいいように思うようになりました。ここにいるのは、私のおっぱいを求める、可愛いい赤ちゃんなんです。
 その時、私には、ママの気持がわかったような気がしました。
 オネショをするようになって、大きな体にもかかわらずオムツをあてるようになった私に接するママの優しい仕草。私が甘えて求めればいつでも吸わせてくれる柔らかな乳房。ママは、私が赤ちゃんに戻ったことを喜んでいたんでしょう。
 常識的に考えれば異常とも思える方法だけど、それがママの愛情表現だということを私は心の底から感じとりました。
 それは、私の年齢には関係のないことです。実際の年齢が十七歳ではあっても、ママは私を赤ちゃんとして可愛いがってくれてるんです。私という赤ちゃんの年齢が、たまたま十七歳だっていうだけのこと(おかしな表現だけど、結局はそういうことだと思います)なんだ――ママは、そう思ってるんじゃないかしら。
 だから、私が先生を可愛いいと思ってもなんの不思議もないんです。私は、先生の背中を優しく撫でてみました。

 それがきっかけになったんでしょうか。
 先生の目がゆっくりと開きました。とろんとした目に、私の顔が映ってます。
 やがて先生はハッとしたような表情になると、私の体を突き飛ばしました。そうして、怯えたような声で話しかけてきたんです。
「私、どうしたの?――八神さん、その格好は?……胸をはだけちゃって」
 私はクスクス笑いながら、先生に応えました。
「先生こそ、自分の格好をよーく確かめた方がいいと思いますよ」
 私の言葉に不審そうな表情になりながら、先生は自分の体に視線を移しました。ハッと息を飲む気配がして、先生の体が固まっちゃったみたい。
「どう、自分の格好を確かめた御感想は? とっても可愛いいわよ、先生……ううん、雅美ちゃん」
 私は、先生の顔を下から覗きこむようにしながら話しかけてみました。
 先生の顔はまっ赤で、紙を近づけたら火がつくくらいでした。
「そうそう、いいものを見せてあげましょうね」
 それまで黙って私たちの様子を眺めていたママが、会話に割りこんできました。
「ちょっと、テレビの方を見てごらん」
 私は先生の顔の下から移動して、棚の上のテレビに目を向けました。先生も、おそるおそるって感じで視線を動かしたみたい。
 ママがリモコンを操作すると、テレビの画面が明るくなりました。
 しばらく待つと、その画面に一人の女の赤ちゃんが映り始めました。
 頭は白いベビー帽子にスッポリ覆われて、胸にはよだれかけが着けられてます。可愛いいベビードレスとお揃いのブルマー。お尻はオムツで大きく膨れてるんだけど、ブルマーが大きなカボチャみたいな格好になってるから、それほど窮屈でもないでしょう。
 徐々に画面がアップになると、赤ちゃんの顔がハッキリ映るようになってきました。私の横で、先生が、アッという声をあげました。そうです。テレビに映ってる赤ちゃんは、ベビースタイルの先生だったんです。
 しばらくはそのシーンが映って、その後には、私の乳房に顔を埋めている先生の様子が映し出されました。目を閉じたまま、私の乳首を吸う先生の顔。さっき見たままに、それはとても可愛いい表情でした。
 やがて映像は、先生の顔を映したままストップしました。そして、リモコンを操作していたママが先生に向かって言ったんです。
「これからも、千尋が多少変わった格好で学校へ行くことがあるかもしれません。でも、それは校長先生や他の先生方には御内密にお願いできますわね?」
 先生は顔を伏せ、体を震わせているばかりです。ママが言葉を続けました。
「このビデオテープをダビングしていろいろな所へお送りすることは簡単ですわ。みなさん、喜んでくださるでしょうね」

 私たちはビデオテープを使って、先生の口を封じることに成功しました。
 そして、私たちが先生に『お願い』したのは、それだけじゃありませんでした。
 先生のベビースタイルをとても気に入っちゃった私は、先生を私の妹にしたいって思ったんです。だから、学校へ来る時には、ショーツの代わりにオムツをあててくるように先生に『お願い』したんです。
 最初はイヤがってた先生も、ビデオテープを校長先生の家に送ろうかなぁなんていう私の独り言を聞いた途端に快く承諾してくれました。ほんと、素直ないい子なんだから。
 だから毎日、学校へ行く度に、私が先生の下着検査をしてるんです。なるべく人の来ないトイレの個室へ二人で入ると、私が先生のスカートを捲り上げて、ちゃんとオムツとオムツカバーをあててるかどうかを検査するのが日課です。そのために、私のお気に入りのオムツカバーを何枚も先生にプレゼントしたんだから。
 それだけじゃありません。先生は休みの前の日には私の家に泊まりに来ることにもなってます。いつもは赤ちゃんになってママに甘える私も、その日には、お姉ちゃんです。雅美ちゃんのオムツを取替えてあげたり、哺乳瓶でミルクを飲ませてあげたりするんです。
 この頃では雅美ちゃんったら、学校でも私のことを「お姉ちゃん」って呼びそうになることがあるんです。その度に口を手でおさえて、まっ赤な顔をしてます。そんな時の雅美ちゃんの表情も、すごく可愛いいんだよ。みんなに見せてあげたいくらい。



 わかってもらえたかしら?
 大好きな先生は、いつのまにか、大好きな妹になってたんです。
 可愛いい妹・雅美ちゃんのこと、もっと書きたいんだけど、今回はこの辺にしておきます。チャンスがあったら、またね。


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