home / hardware / Here

闘って勝ち取る6B4G single amplifier

accs #Counter


おしながき Under construction

はじめに:なぜ6B4Gシングルか?

注意! 途中の回路図通りにつくってもうまくいきません!

手元に6B4Gという真空管が2本あります。
いつかは直熱3極管、いつかは全部自分で設計、いつかは・・・ ということで、ついに来るべきときが来てしまいました(こんなんばかりですな)。直熱3極管といえば、音はいいけどドライブが難しい、電源回路がめんどい、といろいろ闘わなければいけない問題がいっぱいあります。
何台か半田付けしてきて、組み立てはともかく、やはり設計をできるようにしないとおもしろみがありません。そういうわけで、敵は直熱3極管です。さあどうなることやら。

全体の構成

出力管が2本しかないので、シングルアンプというのは動かせません。回路を2段構成とするか、3段構成とするかが悩みどころです。2段増幅は考えることは少なそうですが、初段に高μ3極管を用いるか5極管を引っ張り出してこなければいけません。よくwebで見かけるのは高μ管を用いたもので、コンデンサ結合であったり、Loftin & White型の直結であったりします。あるいはWE91型の5極管を初段としたものです。
2段増幅では初段で増幅率を高くしなければいけないために、プレート抵抗が比較的高抵抗となることに加え、初段球の高内部抵抗が災いし、高域が狭帯域になってしまうという欠点があります。ただシンプルな構成は設計としてはわかりやすく、とりあえず2段構成で設計を始めることにします。
電源トランスが手持ちのPMC-100で100mAしか流せないので、6B4Gはやや軽い感じで使うことになると思います。出力トランスは考えていませんが、手持ちの春日のトランスをとりあえずつなぐことから始めようと思います。

初段

2段構成とするにあたり、初段は100Vp-pの出力を必要とします。12AX7をもってしても3極管だと初段の馬力が足りなさそうです。ここでは5極管というものに登場いただこうと考えました。
5極管でもなんでも、ロードラインをひっぱって負荷抵抗を決めるわけですが、よくわからないのはスクリーングリッド電圧・電流の決め方です。スクリーングリッド電圧は自由に設定できるらしいのですが、適切なEp-Ipカーブがないとロードラインが引けません。困った。結局はデータシートに乗ってるEp-Ip曲線になるようスクリーングリッド電圧を調整しましたが、この換算式があるようです。
5極管もいろいろありますが、手元にある6AU6というのを採用しました。MT7ピンの真空管は初めて使います。12AU6とか3AU6とか、びみょーなのも何本かあるな。
とにかく回路図を適当にでっち上げたのが以下の通りです。まだ具体的な数値は入っていません。トランスのインピーダンスもまだ設定していません。

6AU6のデータシートのうち、Eg2=100VのEp-Ip曲線にロードラインをえいやと書き込みます。綴りが違ってますが勘弁してください。ポイントは、「電源電圧=250V(と決めた)、なるべくEp-Ip曲線を有効に使えるようにする」ことで、実際こんなものでしょうか。6AU6の5結自体は330Vまでかけることができるので、このロードラインにこだわる必要はなさそうです。負荷抵抗Rpは33KΩとしてみました。バイアスは-1.5Vくらいが適当のようです。そのときのプレート電圧は150V、プレート電流は3.2mAくらいであることがグラフから読み取れます。初段カソードバイアスとすると、3.2mA, 1.5Vを作るのにだいたいカソード抵抗Rk1は470Ωくらいでよさそうです。(下図)

それにしても最初によくわからなかったのは、スクリーングリッド電圧を100Vにするためにはどのようにしたらいいか、です。もちろんB電源からある程度の抵抗をもってドロップすることなのはわかるのですが、そもそもスクリーングリッドに流れる電流が分かりません。
しばらくデータシートをみていたところ、グリッドバイアス電圧の値とプレート電流・スクリーングリッド電流の非についてのグラフを発見し、ここにいろいろ書き込んでみました。今回のバイアスは-1.5Vを想定しており、そこからグラフをY軸方向にみていったとき、IbとIg2の値が読み取れます。もちろんIbはEp-Ipから読み取れる3.2mA程度ですが、Ig2は1.3mA程度となりそうです。初段回路に流れる電流はおそらく4.5mA程度となります。Ig2=1.3mAということは、Rg2は(250-100)V/1.3mA=115KΩ≒120KΩとしてみます。

ところで、6AU6を5結にしたとき、プレート電圧250V、スクリーングリッド電圧100Vでは、データシートより内部抵抗は実に1.5MΩになるそうです。プレート抵抗33KΩとの合成抵抗は約31.9K、次段のグリッド抵抗は470KΩの予定なので、合成抵抗は501.9KΩ、これと0.33μFとでつくられるハイパスフィルタの3dB低下点は約0.25Hzとなります。結合コンデンサはこれでよさそうです。最初はここに0.022μFなんてのがついてました。これだと実に低域時定数が14.5Hz弱となります。全く低音は出そうにありません。
出力インピーダンスは上記の33KΩ、1.5MΩ、470KΩの並列合成値すなわち30.2KΩで、次段の入力容量がだいたい65pFくらいになる(とのこと)ので、高域3dB低下ポイントは159000/(30.2x65)=80.9KHzとなります。
これがいい値か悪い値かはよくわからんのですが、もうちょっと後ろ(高域側)に持ってった方がいいのかもしれません。また考察することにします。

出力段

2A3系の出力は2.5KΩ負荷、bias -45V、Ip=60mAなる条件が一般的のようです。RCAのデーターシートにも書いてあります。今回は電源トランスがPMC-100であるということから、総電流量を100mAに押さえないといけません。初段で4.5mA程度使ってしまっているので、終段で使えそうなのは片チャネルあたり45mA程度です。それを踏まえてロードラインを引っ張ってみますと、280V, 45mA, bias -55V, 負荷3.5KΩあたりがいいのではないかということになりました。

電源電圧を280V、バイアスが55Vなので、カソードバイアスにするとなると335V程度のB電源が必要となります。PMC-100の出力電圧はAC280Vなので、大体maxの整流後電圧として1.2倍でだいたいちょうどっぽいです。電源回路には型のごとくFETリプルフィルタを使うことにしましょう。初段へのドロップ抵抗は、(335-250V)÷4.5mA=18.9KΩということで、とりあえず18KΩとしてみます。定電流バイアスとしているので、グリッド抵抗はカソードバイアスの制限いっぱいの470KΩとしてます。定電流回路については別に考えてみます。カソードバイアスでもいいんだけど、ここでは2.5W位の消費電力となるので、10W規模の巨大な抵抗の手持ちがなく、また発熱体をシャーシ内に飼うのがちょっといやで定電流回路としました。結局熱を出しているのが抵抗かトランジスタか、という違いしかないので、シャーシ内に発熱源を飼っていることには変わらないのですが。C3は毎度の手持ちの180μFを使います。出力トランスは、回路図では7Kとなっていますが、3.5KΩの端子を使う予定です。

ここまでの数値を入れた回路図を以下に示します。

電源回路

B電源の回路はいつものようにFETリプルフィルタです。2SK3067を用います。特記すべきことはあまりありません。初段のヒーターは交流点火でトランスから直接引っ張ってきます。出力段のフィラメントは、とりあえず6.3Vをブリッジ整流し、4700μFで受けて0.1Ω、4700μFのリプルフィルタ(というほどでもないですが)を通して点火します。リプルはそれなりに取り除かれていると考え、ハムバランサはなしでtryしてみようと思います。ちょっとビジーな図ですみません。

定電流回路

秋月電子で、TL431なる3端子電圧リファレンスICが安く売っていたので買ってきました。確か10本で100円だったと思う。LM317を用いた定電流回路がおなじみでしたが、今回はTL431とパワーTRでやってみようかと思います。当初の回路は図の左の通りでした。ところが、実際組み付けてみるとちゃんと動作しません。どうもTL431の耐圧が37Vと低く、対応不可能みたいです。仕方ないので図の右のように変更しています。さらにこれだと2SD2012の耐圧ギリギリなので、あとで何かに変更しないと・・・

とりあえず製作

問題が何点かあって、1.初段のインピーダンスが高い、2.負帰還を考慮してない、3.ハムに関しては出たとこ勝負、という感じです。とにかく詰め込んで片チャネルつくってみました。つないだところ、やたら音が悪いです。この時点で結合コンデンサが0.022uFだったり定電流回路が上記の図左のもので効能を発揮しないとかの問題があり、そのために低域がえらい出ない、というところをさっぴいてもとにかく何か音が悪い。ハムも出ている。ちょっとそのままでは実用にならなさそうです。闘いはまた続きます。
音が小さいことについては、どうもスクリーングリッドへ供給する電圧をコンデンサで交流的にバイパスしないといけないということでした。5極管ではプレート電圧の変化によってスクリーングリッドの電流が変化することで、一種の電流負帰還がかかり増幅率が低下するとのことです。これが全くわからなくてぺるけさんの掲示板で質問したり、かなり遠回りしました。
(自分用メモ)**6AU6のスクリーングリッドに実機通り電解コンデンサを挿入した回路図を追加**

SRPPに挑戦する

結合コンデンサを上記の通り0.33uFに変更したあと、考えたのは初段のインピーダンスを下げる方法です。カソードフォロアかSRPPか、ということになりますが、ここではSRPPを導入します。回路図は以下の通り。V2を33KΩの真空管抵抗とすれば大丈夫そうです。
球は何にするか迷いましたが、手元にいっぱいある4H/6H-RR2を使うことにします。双三極管でセンターシールドもしっかりしている球なので左右共用で1本、というのも考えたのですが、贅沢にも1本投入します。双3極管を使うなら3段増幅にすればいいじゃん、という声がありますが、それはまた今後の課題ということで。半分余らせてもったいない・・・

4R-HH2のEp-Ip曲線に30KΩのロードラインを引き、Ep-Ip曲線との交点を調べます。

Bias-1-2-3-4
Ip(mA)1.82.94.25.5
---1.11.31.3

おおむね一次関数的に増加することがわかります。ここで必要となるバイアス抵抗は、3(V)/4.2(mA)=714Ωで、手持ちの750Ωを使用することとしました。4R-HH2のμはだいたい30くらい、rpは4.3KΩくらいなので、SRPPの出力インピーダンスは4.2KΩくらいになるようです(AyumiさんのHPを参考にさせていただきました)。高域の3dB減衰ポイントを先ほどと同様に計算すると、159000/(4.2 x 60)=630KHzとなりました。よくわかりませんが高そうな気がします。結局回路図は以下の通り。なお、4R-HH2のヒーター・カソード電圧の制限がかかりますが、この回路ではカソード電位は100Vくらいなので、問題ありません。

負帰還を設定する

片チャネルしかできていないけれどもこの時点で小さい音で鳴っています。ハムはありますが。
直熱三極管は無帰還にしなければいけない、という流派もあるようですが、今回は闘って勝ち取るのがテーマなので、ちゃんと負帰還も設定します。一般的なのは、出力トランス2次側から初段カソード抵抗の上流に帰すものです。その前にこの回路全体の増幅率を考えます。

負帰還をどのくらいかけるかは思想の問題もあるようですが、これもとりあえず470Ωの10倍の4.7KΩとしてみて、クローズドループゲインを(15.6 x 11) / (15.6 + 11) = 6.45倍、と設定してみました。ただ、この回路だと初段のカソードバイパスコンデンサを効かすことができないので、ぺるけさんのミニ・ワッターのような下図の方式にしてみます。

ハムを退治する

ここまでは、新しい回路を付け加えて闘う、という内容だったので、それなりにおもしろいところではありました。ハムを退治するという問題が残りました。
まだこの時点ではバラック組みに近いため、アースラインの引き回し等でハムを引いている可能性があります。アースループはこの時点でかなりがんばって排除しているので、あんまり問題にはならないと思います。
6B4Gのフィラメント回路にハム対策がまったくなされていないという点が一つ、ひょっとするとスクリーングリッドがハムを引いてるかもしれないという可能性が一つ、トランスの配置が問題かもしれない、というのが一つです。こいつらをやっつけていくことになります。
ここでは、図のごとくハムバランサを入れてみることにしました。50Ω 2Wの大きめの可変抵抗を買ってきて導入します。定電流回路も書き加えてみました。


Last modified: Mon Jan 14 16:51:03 JST 2013