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CV4097(5A6) mini watter


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おしながき

CV4097(5A6) mini watterについて

「真空管アンプの素」、おもしろいです。勉強にもなりますし、何かさっそくつくりたくなります。
出張に何回か持って行きましたが、内容の充実さと比例して本も重い。
本家のweb pageには直熱管を用いてmini watterをつくろう、というページがあります。「ここから先は、自分で拓いてゆかねばなりません」、ではちょっと軽く拓いてみようというのがこのページです。アンプばっかり作っていて部屋にアンプがごろごろしているのですが、それもさておき。

はじめに

今回は在庫部品を可能な限り使うこととします。直流重畳電流が20mAであるところの春日OUT-41-357が2個余っているので活用しようというのが大前提です。平ラグの在庫があまりないことから、「・・・別に平ラグなんて、使いたくもないんだからねっ・・・」ということで可及(ツンデレ)的に万能基板で作製します。電源トランスは手持ちがありませんし、代わりになるものもなさそうなのでこれは購入することとします。真空管は、直熱管というものを使ってみたいという不純な動機で、春日で売っていたCV4097を使います。4R-HH2やら7DJ8やら、使ってみたい球が手持ちにあります。探してみたら6Z-DH3Aやら6G-B6やら6C6なんてのもあるぞ。自分が死ぬまでにはちゃんとこいつらの嫁ぎ先を探さないといけません。
前回の全段差動アンプはいろいろ計算してつくってみたのですが、結局ぺるけさんの設計の掌中から飛び出すことはおろか、指の間から落っこちるのをかろうじて防いだ、というところでした。というわけで今回はあんまりオリジナリティを出す予定はありません。
そもそも、ケースを考えずにいろいろ作り出しちゃって、どうなることやら。

製作・トラブルシューティング

今回は回路はぺるけさんの通りです。(追記:最近はなるべく回路図を載せる方針にしています。今描いていますのでもし見ている人がいたらお待ちください)
オリジナルでは2SC3425というトランジスタを初段の2SK30A-GRにカスコード接続しています。秋葉原を探しましたが、2SC3425は秋月にも千石にも鈴商にもありません。鈴商で代わりに売っていた2SC4003というのを買いました。「Excellent hFE linearity」とか書いてあって強気でいい感じだし、Cob 4pFだし、これはいいのではないかと思い4本購入(1本50円)。家で測定するとhFE=100くらいのとhFE=110くらいので各ペア組みができました。
リプルフィルタ用のMOS-FETは3N90を愛用(?)していたのですが、毎回24V ZDが必要になるので千石で2SK3067を購入。
カソードのショートカットのコンデンサは手持ちの180u/420Vを使用しています。
小学校1年の上の子供がラジオをつくりたい、というのでその部品を集めるというのをいいわけに自分用の部品をあわてて購入します。でも一番困ったのはAMラジオ用バーアンテナの入手だったりします。
さて、製作にあたり、まず、ユニットを5つに分けました。B電源作成用の平滑回路・リプルフィルタ回路が1つ、フィラメント電源のためのDC点火ユニットが1つ、出力段の信号ループバイパスCのユニットが1つ、真空管2本のマウント+カソード抵抗のユニットが1つです。合計で4枚の秋月C基板(両面)を使っています。
・・・平ラグでしたら20P2枚で済むのに。個人的にはユニバーサル基板上に組み上がったなんとなく密度の高いユニットがすきなのだけれども・・・
ユニットにするとカッコイイのですが、ユニット間の配線は混乱を極めます。もうちょっと精進すると基板間をコネクタつきケーブルで接続できるようになると思うのですが、まだまだですな。
シャーシの手配ができず、とりあえずユニット間を接続してバラックで組んでみました。電源回路は双方ともうまくつながっているようです。真空管を刺さない状態では、それぞれのユニットからほぼ適正と思われる電圧が出力されています。
それでは真空管を接続して、適当に入力回路をでっちあげ、iPodをつないでみます。
・・・が、音が小さい。
なんか真空管がありえないくらい熱くなっている、なんとなく赤いヒーターの他に青い放電様のものが見える・・・
というわけで、トラブルシューティングです。
電源ユニット単体ではちゃんと動いています。
初段の消費電流は、初段への電圧ドロップ抵抗でモニターしましたが、3mAくらいでおおむね問題ないようです。
真空管とカソード抵抗のユニットは目を皿のようにして見ましたが間違いはありません。
各ユニットの接続も問題なし、GNDの配線もちゃんとつないでいる・・・
どこもおかしくないじゃないか・・・・
わけがわからないので、掲示板で質問かとも思ったのですが、オリジナルの回路(と、平ラグの配線図)をよくみてみたところ、平ラグの配線図にはフィラメントはGNDに落とさずにフィラメントだけに電圧を供給しているようです。それに倣い、フィラメントへの配線だけはそこで完結させるようにしたところ、あっけなく問題は解決しました。
すみません。2SK30を疑って新しいのに交換しました・・・ 部品のせいにするのは間違いです。

今回のナカミ

ようやくケースにいれました。エスエス無線で買ってきた500円くらいの弁当箱シャーシです。
出力トランスがケースなしのものなので、無理矢理シャーシ中に納めています。側面にネジが3つありますが、ここに出力トランスが横向きについています。天板にネジが8本ほど露出していますが、これは初段ユニットを止めているものと、真空管ソケットとカソード抵抗を止めている秋月C基板の固定用のネジです。
近所のイエローハットに行き、日産車用のパールメタリックホワイト的なスプレー缶を買ってきました。塗装はあいかわらずうまくいきません。外で作業すると、途中で風が吹き砂が塗装最中のシャーシにかかります。まだまだです。ナカミについては以下の写真の通りです。いろいろいじりたおして部品が溶けちゃったりしてますが・・・

測定

ミリボルトメータとWaveGeneを用いて測定したデータは上記の通りです。ミリボルトメータはオークションで落札したのですが、なんというか、真空管を落札したときとは別の興奮がありますね。自分のできる範囲が広がったというか、それがいいのでしょうか。測定にあたってはJK1EYPさんのページを参考にし、というか、そこで公開いただいたexcelファイルを用いています。
出力が小さいうちは驚くほど低域が出ています。ほとんど最大出力であろう0.8Wでも100Hzくらいまでは何とか出ているようです。ただしシングルの限界か、この辺りが限界なのでしょう。出力トランスは別のものを使用しています。
測定系の誤差がどうなのかわかならないのですが、なんとなくこんなものなのかな、と思います。確かに聴感上低域もかなり出ています。測定器では1000Hzを超えるとちょっとだけメーターの読みが下がるのですが、こんなもんなのかな?
他の自作アンプも測定しています。やはりプッシュプルは有利ですね。そのうち更新していきます。

考察

万能基板をメインとして真空管アンプをつくることはできました。
シャーシ収納なしのバラック状態から、完成品にいたるまで、動作は比較的安定しており、製作のレベルを担保するには悪くないと思いました。初段部品の集合の基板は見た目にもしっかりしており、信頼性は高いと思われました。しかし、ケースに組み込むにあたり、実は実装密度が平ラグと余り変わらないことが判明し、平ラグの利点を再確認することとなりました。
真空管回路・カソード抵抗は別の万能基板に組みました。これが結局のところサブシャーシとなってシャーシから真空管を数ミリ落とし込むことができ、これはこれで気に入っています。が、このくらいであればシャーシに普通にソケットをネジ止めするのと大差なさそうです。自作は完全に趣味の世界であるので、「球落とし込み」が結構カッコイイのは新しい発見でしたが、簡単のためには真空管固定基板は不要です。シャーシのレイアウトも制限される結果となりました。
シャーシ内のレイアウト、配線については "think before soldering" というような反省を得ました。考えなしに己の欲望のままにハンダ付けをしてはいけません。
ぺるけさんの回路構成はすばらしく、同じような部品を使うにあたりシロートが手を出す余裕はあまりありません。が、次のステップに踏み込むにあたり、これらの回路のデッドコピーで終始することなく、自分で定規を使ってロードラインを引くようなことを行っていくことが薦められると思います。さもないと自作といえども部品集め+エレキットの域を超えることはないでしょう。結局「ここから先は自分で拓かないと」いけないのはわかりつつ、ほとんど全部の答えが書いてあるのですから。

「ほとんど」と書きましたが、本家のページには、171Aでは有効に二次歪みの打ち消しが行われたのに対し、CV4097では「こちらはそれほどでもない」という計測結果が得られています。宿題があるようなので考えてみます。
もともと直熱管は直線性がいいということを前提に考えると、(1)171Aは感度が悪いために初段の2SK30Aで発生する歪みが適切にマッチして、うまく打ち消しがはたらいている、(2)一方CV4097は「171Aより2倍ほど感度が高い」ので、初段の歪みがそのまま打ち消しされず出てくる、ということが原因なのでしょうか。
lそうするとEL34 3結アンプその2のように初段に局部帰還をかけてあげたり、そのためにいっそ2次歪み強打ち消しシングルアンプのように初段を差動にして二次歪みを減らすような努力をするとひょっとするとうまくバランスがとれるのかもしれません。
音の感想も書いておきます。後日作成したCV4079シングルと比べると、これもぺるけさんの表現をお借りすることになりますが、澄んだ音、という感じがします。CV4079がこってり系のような気がしますが、こっちはあっさり系です。といっても音が悪いわけではなく、気がつくとずっと鳴らしている、という感じの音がします。初段は双方のアンプでほとんど同じですから、球の個性になるのでしょうか。それとも直熱管と傍熱管の違いなのでしょうか。どれをつないで聴くか、といううれしい悩ましさがあるような気がします。


Last modified: Thu Feb 7 22:01:45 JST 2013