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ふゆやすみのじゆうけんきゅう2
2SK30A-12SN7-EL34/6CA7 all-differential amplifier

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おしながき

2SK30A-12SN7-EL34全段差動アンプについて

やはり来るべきときが来たのです。「情熱」を買ってから早2年?、やはりここは3段構成の全段差動アンプをつくらなければなりません。なんで「つくらないといけない」のかはさておき、作ることにしました。お正月だし。
いろいろ考えることがありますが、ソフトンの電源トランスPWT260-300を使ってどうやってEL34で3段構成のアンプをつくるか、ということがメインテーマです。アンプ部の回路については、あんまりアレンジすることもなさそうです。
というわけで、はじまり。

ドライバ段の真空管

ソフトンのPWT260-300はRコアというものをつかった電源トランスです。容量の割に廉価なので、購入された方もおおいと思います。問題は6.3V 3.5A ×2というヒーター用の電流容量です。
3段構成として、当初考えていたドライバ段の真空管は6N7でした。私の製作した2段増幅の全段差動アンプの初段が6SC7なので、それに対応する低μの双3極管というと、多少μは大きいのですがこれが該当しそうでした。この球はメタル管で、6SC7より背も高くてカッコイイのですが、ヒーターが6.3V 0.8Aも喰うのです。すでにEL34の4本でヒーターだけで6Aも喰ってます。6SN7にするとさらに1.2Aです。ソフトンのトランスでは0.2Aほど足りません。6N7にしたら、0.6Aほど足らなくなります。
ところで6SN7には、8SN7と12SN7という兄弟がいます。12SN7はクラシックコンポーネンツとかでも売ってますが、1本2000円~3000円くらいします。8SN7というのもマイナーですね。
「6.3Vの球以外は安い」の法則にのっとり、オークションで12SN7をウォッチかけまくります。が、ペアでよさそうなのは手に入りません・・・
ある日、思い立ってeBayで落札してしまいました。振り込みはPaypalでクレジットカード決済だし、送料込みでも1本1500円以内では済みそうです。英語のやりとりもそれなりに楽しいです。
勢い余って、イタリアから2本、アメリカから4本(4本で2000円くらい)落札してしまいました。

ヒーター電流の捻出

もくろみとしては、PWT260-300の未使用18V/0.5Aタップを理由しようと考えてました。12SN7のヒーターの規格は12.6V 0.3Aです。直列にすると25.2V 0.3Aです。18Vタップをブリッジ整流したらちょうどそのくらいではないのかな?
ちょうど秋月でよさげなブリッジのショットキーダイオードが売り出されています。これを使えばダイオードの順方向電圧をちょっと節約することができるでしょう。
初段に使う20Vもひょっとしたらここから作れるのではないか?

回路

関連する回路図は上記の通り。18Vタップを秋月電子で売っているSDI2100なるショットキーブリッジで整流し、平滑して1Ωと3500μFで一応リプルフィルタを通し、24.0Vをつくります。本当は12V管のヒーター電圧は12.6Vなので、ヒーターが12Vだと-5%ぎりぎりなのですが、せっかくの直流点火なので多少はリプルをとった方がいいのでしょう。6SN7はヒーターハムを引きやすいらしく、さらに高電圧でハムを引きやすそうな12SN7ですから・・・
さらに、初段2SK30Aに供給する20Vにはツェナダイオードを用いてシャント型定電圧回路とします。24Vからのドロップであればツェナダイオードはなくして、抵抗1本だけでもよさそうです。初段電圧を多少しっかりさせておいた方が安定するであろうという気持ちでこれもオリジナルのままとします。電圧の帳尻を合わせるため、75Ωで多少ドロップさせています。
ぺるけさんのオリジナルは240Vからのドロップで、これは結構熱源になるよな、そーすると18Vタップ使用も悪くないな、と思いながら、実際動くかわからずにどきどきもので開始することにします。
ドライバ段の12SN7へは、B電源からの抵抗1本のドロップです。もともと39KΩがついていたところを、12〜13KΩ/3Wに交換します。実際は手持ちの15KΩを使用しています。これを忘れていて、12SN7に100Vしか供給されていなかったのですが、なぜかしっかりちゃんと鳴るんですよね。不思議だ・・・
その他、EL34のグリッドーリーク抵抗をもともと560KΩから470KΩに変更しています。6G-B8への差し替えを考慮したのと、結合コンデンサとの時定数が長くなりすぎていたのを修正したためです。実は3段化に伴いハムが出たので、いろいろ退治のためにやっていた一環なのですが、ハムは実はプリアンプ由来であったという。

製作

初段まわりとヒーター電源の追加基板

ヒーター直流点灯のための整流回路とリプルフィルタ用に1枚、初段のために1枚、それぞれ万能基板で製作しました。オリジナル回路では標準シャーシアンプを3段化する際は、フロントの空いている領域に貼り付け式ボスで平ラグを取り付けています。今回はヒーターの整流回路があり、それだとどうしても空きが足りなさそうです。リアの空きスペースは、空き穴をふさぐために黒いフタがついています。そこにむりやり貼り付け式ボスを貼り、整流回路基板を貼り付けます。
元初段周りは、球が6SC7から12SN7へ変わるために、配線が大幅に変更になります。左右振り分けて並列接続していたヒーターの配線も変更です。ドライブ段の定電流ダイオードの代わりに、選別した2SK30Aを接続、負帰還まわりの配線も全て変更することになりました。クロス中和に使っていた4.7pFのディップドマイカコンデンサも外します。これは貴重品なので、ジャンク箱でなく新品のコンデンサ箱に差し戻しすることとします。
新しい初段回路は、負帰還抵抗と2SK30Aのバランスのために調整箇所が片チャネルあたり2箇所増えます。25回転のポテンショメータを用いましたが、これが「上から調整する」タイプです。横に基板を貼り付けてしまうと、ちょっと調整が不便です。この辺を考えて基板の配置を設計しなければならないと痛感しました。端子台を使うと収まりがよいですね。
他には、トランスの配線がもったいないので残していましたが、さすがに収まりがつかなくなったので少し切り落としてあります。前の実装が気に入らないので、いろいろ直したりしたのですが、かえって混乱したような。

調整

初段の2SK30は、Id=0.75mAでのバイアスをかなり厳密に合わせた4本なので、本来ソース間に接続する100Ωの半固定抵抗は不要そうです。でも、一応動かした段階でこれを調整します。
初段だけの調節であれば不要ですが、これをいじることでドライバ段のバランスもちょっと調節できそうです。テスターを用いて厳密に調整します。
実はここで、12SN7の1つがどうやっても左右のバランスがとれない、という問題が発生しました。当初2本あったRCAの12SN7をつけていたのですが、どうやっても左右のアンバランスが解除できません。初段のK30のせいか、と思い一端外して再度測定してみたのですが、バイアスにはほとんど差がありません。さてはと思いドライバ段の12SN7を格好が似ているWestinghouseのに差し替えたところ、全く問題なく調整できました。どうも球のバランス不良のようです。
現在はRCA/westinghouse組ではなく、SICTEというイタリアのメーカーの12SN7がささっています。こちらをeBayで最初に落札したのですが、珍しすぎて使うことができなかったのでした。
終段のバランスも適宜合わせたところで、負帰還量を調整します。測定器がまったくないので、とりあえず左右75Ω(7dBくらいか?)に合わせてみることにしました。

トラブルシューティング

難なく動いたのですが、いろいろミスをやってのけました。

  1. ドライバ段の電圧ドロップ抵抗の交換忘れ
  2. 片チャネルだけ正帰還に

ドロップ抵抗がもとのままで、12SN7に100Vしかかかってなかった、というのは上述の通り。
3段構成にして、トランスの1次側をひっくり返すのを忘れ、正帰還になり発振してしまったというのがもう一つ。どうも、ドロップ抵抗の交換を忘れた状況だと、利得が小さすぎて正帰還にならなかったんじゃないかと思う。正帰還のときって、スピーカーつながらないでもなんか音がするからわかりますよねぇ・・・


Last modified: Mon Jan 14 16:51:03 JST 2013