5.ローヌ・ジュラ・南仏

Georges Blanc(M:赤4、3 G:赤3、黒19)
ブレス地方のヴォナVonnas村の中心にある。最高級ホテルとやや格下(M、G:黒2)のホテル、売店、そして最高のレストランとやや庶民的なレストラン(M:黒1、0)が駐車場になっている広場を挟んで点在しており、独特の世界を形成している。歴史のある宿屋であるので、徐々に拡張して今日の姿になったのであろう。ホテルには残念ながら泊まった事はない。
さて、この最高のレストランは言う迄も無くブレス鶏が名物であり、各テーブルには銀製の雄鶏が飾られている。クリームやバターをたっぷりと使った伝統的な料理法の他に、シヴェ風に作った重い料理が出て来たりもして驚かされる。鶏にはこの地方特産のジャガイモ入りの小さなクレープを注文するのを忘れてはいけない。鶏だけではなく、勿論魚料理や肉料理も出されるので、数日滞在しても飽きる事はなかろう。伝統的なアントレはグルヌイユであるが、他にも工夫を凝らしたものが多数ある。デザートはワゴンではなく、10種類近くある中から選んで作って貰う。
ブラン氏は最近ブルゴーニュにブドウ畑を購入し、そこの白ワインとクレマンを売店で買う事が出来る。また、売店では食材が多数販売されており、観光客のみならず、地元の上流階級の惣菜にも利用されている様である。

Jean-Paul Jeunet(M:黒3、2 G:黒2、赤17)
ジュラ県のアルボワArboisの中心にある。入り口は一見普通のホテルであるが、部屋は明るい内装で十分広く、浴室もゆったりしている。
レストランの席の配置はゆったりしており、マダムがメトレス・ドテルであるが、実際には若い女性のソムリエールがギャルソンを取り仕切っている。料理は如何にもゴー・エ・ミヨー赤帽子17点と云う感じで、香草や野菜の使い方が面白いし、東洋的な要素もある。ワインはアルボワを中心にジュラ各地の品揃えが素晴らしい。

Chapon Fin、Paul Blanc(M:黒3、1 G:黒2、15)
ボジョレーから河を渡ってブレス地方に入った所、トワセーThoissey村にある。中心街にあるが、一部林になっている広い庭があり、周囲も住宅地であるので極めて静かである。部屋は極安いものでも十分快適である。
レストランはやや古めかしい内装であるが、格調がある。ブレス鶏、グルヌイユ、クレープの他にも様々な料理が楽しめる。普通にブレス地方の高級料理を楽しむのなら、ヴォナまで行かなくてもここで十分であろう。ムーラン・ナ・ヴァン迄10km足らずと云う事もあり、クリュー・ボジョレーの品揃えが素晴らしいが、他産地も豊富に取り揃えている。コーヒーの時に出る砂糖入れは銀製で、両側に雄鶏の飾りがある。

Alliance-Metropole(M:黒3、0 黒3、0)
モンペリエの中心にあるホテル。古い建物であるがそこそこ奇麗に改装されている。部屋は広く、可成高級な感じである。レストランは特筆すべき程のものではない。

Burnichon(M:黒1、0 G:0、0)
ローヌ県からロアール県へ抜ける国道の峠の手前のタラールTarrare村のモテル。ここでも食事は出来るしそこそこ上等なものも出すが、ボキューズを平らげてトロワグロへ行く前にここで1泊してジャン・ブルーイーをやっつけようと言う人にお勧め。この先の峠越えは絶景。

Paul Bocuse(M:赤5、3 G:−、黒17)
リヨン郊外コロンジュ・オー・モン・ドールCollonges-au-Mont-d'Or村の国道沿いにある。先代から街道沿いの食堂であったらしいが、ポワン氏の所で修行したポールが世界最高のレストランの一つにしてしまった。派手な外装の写真を一度見ておけば、地図が無くても違う道を走らない限りは確実に辿り着けるであろう。
ボキューズ氏はヌーベル・キュイジーヌの草分けの一人と見られがちであるが、料理の基本はやはりエスコフィエであり、一時期流行った無茶苦茶な現代料理とは一線を画するし、むしろ今日ではオーソドックスにさえ感じられる程である。例えばかの有名なスズキ(とは云ってもバールではなくリーニュ)のパイ包み焼きを思い浮かべれば、ムースを加える事、折り込みパイ生地を使う事、伝統的なソースを掛ける事等、古典の手法を守った上で工夫を凝らしている事は明白であろう。デザートはワゴンが3つ位来て、その場で選ぶ。
ここにワインを置いて貰う為にはワインの品質が良いだけではなく、然るべき挨拶をしなければならない。

 
6.ロアール、南西部

1)ロアール

Troisgros(M:赤4、3 G:黒3、黒19)
ローアンヌRoanneの駅前のホテル・レストラン。小田急百貨店が提携しているので日本でも有名。駅前にある事から、当然アメリカ人と日本人が多いが、厨房にも外国人が多いらしい。ホテルには泊まったことがない。
料理はやや重めであるが、量はそれほど多くないので日本人でも何とか平らげられるであろう。トロワグロ氏不在の時には各コックさんが自分の料理を主張し過ぎて無茶苦茶になると云う話を聞いた事もあるが、筆者が訪れた時には幸いトロワグロ氏が厨房を取り仕切っていたし、大雪で鉄道、高速道路が寸断されて凡そ他所者が来れる状態では無かった為(筆者は国道を走って辿り着いた)、客は地元の人と長期滞在者が殆どで、最高の状態でサービスされた様である。有名な鮭のスカンポ風味は鮭の状態、ソースのバランス共に流石であるし、赤ワインソースのシャロレ牛やアントレのフォアグラも素晴らしい。定食のデザートは、ワゴンで果物が色々運ばれて来たと思ったら、そこから選ぶのではなく、全ての果物を少量ずつ皿に盛り、生クリームを使ったソースを流し込んでその上にフランボワーズのソースで鳥の絵を描くと云う凝ったものであった。
ワインはブルゴーニュが中心になるが、地元のワインをグラスで取る事も出来、確か1杯僅か20フランであった。

Rivage(M:黒3、1 G:赤2、14)
ジャンGienの町の東側の川沿いにあるホテル・レストラン。部屋は快適でロアール川の眺めが素晴らしい。レストランは木張りの床に落ち着いた内装で、料理は比較的オーソドックスであるが、色々と工夫を凝らしている。デザートも手間の掛かるものばかりで最初かメインの前に注文を聞かれる。ワインは地元のCoteaux du Giennoisの他ロアール各地のワインだけでなく、ボルドーやブルゴーニュも各種ある。

Gloire(M:黒3、1 G:黒1、14)
モンタルジMontargisにあるホテル・レストラン。ミシュランのフォーク3本はレストランに対する評価で、ホテルはやや低レベルである。部屋は広いが暖房やシャワーがやや不安定、国道の車の音がうるさい。レストランは明るい感じであるが、よく見ると蛍光燈を間接照明に使っている。料理はまずまず、ワインはロアールの他、ボルドー、ブルゴーニュ各種のやや古いものもある。家族経営プラスアルバイトにしてはよくやっている店ではある。

Solognotte(M:黒2、1 G:黒2、13)
ロアール川支流のソードル川沿いのブリノンBrinon-sur-Sauldre村にあるホテル・レストラン。ホテルは泊まった事はないが、如何にも静かそうである。古い建物であるが上品な内装で、サービスも素晴らしい。料理は素晴らしいが、非常に安い。ロアール上流のワインが中心で、以前はカラフでヴァン・ド・ペイ・ド・ジャルダン・ド・フランスの赤を付けた昼の定食(200フラン)もあったが、これは止めた様である。1人5千円足らずで十分満足出来るので、お城巡りの途中に立ち寄るか、いっそここに何日か泊り込んで遠征するのも悪くない。

Le Lanthenay(M:黒2、1 G:0、0)
ロモランタン・ラントネー Romorantin-Lanthenayの北隣、ラントネー村の教会の隣にある、一見田舎のさびれたモテルであるが、シーズンともなるとヨーロッパ中のナンバーの高級車が並ぶ。ホテルはまるでバンガローのようなもの(シャワー、テレビ、電話付き)が数室と、本館に風呂付きの部屋が数部屋あり、中庭のテラスでは宿泊者が日向ぼっこを楽しんで居る。レストランは石造りの古い建物にプレハブを繋いだような構造であるが、内装は美しい。定食は105フランからあるので、田舎のモテルだと思って迷い込んだ人でも困らないが、何を食べても十分満足出来るしかつ安い。

Italia(M:黒1、− G:0、−)
トゥール Tours市北部の住宅街の中にある小さな安宿。バリエの最期を見届けるためだけにトゥールへ旅行した折に泊まったが、シャワー、テレビ、電話が付いて200フラン前後は悪くはない。中心街から運動がてら歩くつもりなら、観光(シャトー巡りのバスツアー等)にも使えなくはない。

Charles Barrier(M:黒4、0 G:−、14)
かつての栄光のレストランはその後もミシュランの2つ星を永く保っていたが、バリエ氏が完全に引退した瞬間に星が1つも無くなってしまった。
素晴らしい料理が比較的安く食べられ、ロアールワインの品揃えも素晴らしい店であった。ワインリストは一見貧弱であるが、ソムリエと話していると古い年号のいいものが次々に出て来て驚かされたものである。果たしてこの店がその後どの様になってしまったのかは、残念ながら確かめる機会が無かった。

2)ボルドー Bordeaux市内

Burdigala(M:黒4、0 G:黒3、0)
市内で唯一の高級ホテル。確かに広くて快適ではあるが、他のホテルに比べるとコストパフォーマンスが悪い。中心部から若干離れているが、郵便局やスーパーマーケットのオーシャンのそばで、街外れと云うほどではない。プレステージが必要な人向け。

Normandie(M:黒3、− G:黒2、−)
メゾン・デュ・ヴァンの並び、観光案内所とワインショップのヴィノテークの向かいであり、車を使わずにボルドーを訪問する人には好適。責任の重い立場の人でなければ、ネゴシアンに迎えに来させても恥ずかしくはないレベル。

Quatre Soeur(M:0・94年まで黒1、− G:黒1、−)
一見安宿風ではあるが由緒ある建物であり、フランス風の古いホテルを希望される向きにはお勧め。

Royal St-Jean(M:黒1、− G:0、−)
駅前のホテルであるが、割高な割に居心地が悪く、一見の観光客向け。

Le Chapon Fin(M:黒4、1 G:−、黒17)
市内で最高のレストランと云う事になっているが、昼は160フランの定食もある。熱帯植物園風の内装で、屋根は開閉式(但し開いてもガラスがある)であるが、パリのラセールのように上品には開かない。アラカルトで調子に乗っていると一人千フラン(ワイン込み)を超える事もあった。昼の定食でもさりげない付け合わせに流石と思わせるものがあり、サービスも申し分ない。

Jean Ramet(M:黒3、1 G:−、黒17)
市内で唯一のオート・キュイジーヌ協会会員。小さな店であるが、評価は高い。筆者はボルドーで一番良い印象を持っているが、久しく行っていないので保証の限りではない。

Pavillon des Boulevards(M:黒3、1 G:−、赤17)
街外れの高級住宅街にあり、上品な雰囲気。夏期には中庭で食事が出来る。ゴー・エ・ミヨーが赤帽子を付けている店の典型、つまり東洋的な雰囲気の食器や斬新な料理が出る。

La Chamade(M:黒3、0 G:−、15)
カーヴ風の地下に客席があるが、照明がきつく、やや明るすぎるほどである。ミシュランが星を付けていた91年当時はまずまずの料理だったが、サービスに問題があった。その後評価が下がると同時に料理の値段も下げており、全般的にかなりレベルが低下したようである。

Le Cellier Bordelais
レストランと云うよりはワインバーで、隅のラックに入ったワインを選び、それからそのワインに合う料理を考える事が出来る。

3)ボルドー周辺

St-James(M:黒3、1 G黒3、赤17)
ボルドーの対岸、ブリアック Bouliacにある。レストランは極めて豪華な造りで、夏期は中庭の食事も良いし、室内からのガロンヌ川の夜景も素晴らしい。かつては高過ぎると文句を言われた店であるが、星を1つ失ってからかなり常識的になったようである。ホテルも高級らしいが、残念ながらまだ泊まった人に会った事はない。

Ch. Cordeillan Bages(M:赤3、1 G:赤3、黒16)
ポイヤック Pauillacにあるシャトー・ホテル。Lynch Bagesと同じ経営で、このホテルと同名のワインまで作っている(これはかなりレベルが高いワインである)。90年に行った時には古典の技法を守った素晴らしい料理が出て来たが、最近料理が変わったという話を聞く。ソムリエは日本人で、ワインリストは全盛時のラセールはかくあったであろうと云うようなのが出て来る。

Lion d'Or(M:黒1、0 G:−、12)
マルゴー Margauxの隣、アルサン Arcinにある。昼は殆どワイン関係者で、非常に賑わっている(或いは喧しい)。ワインの持ち込みも出来るので、ネゴシアンの人が得意先を連れてシャトー回りをするついでにサンプルを持って来て食事している姿もよく見られる。

Claude Darroze(M:黒2、1 G:黒2、16)
グラーブ南部の中心都市、ランゴン Langonの街中にあり、駅からも歩いて行ける。田舎のホテルに場違いな高級レストランをくっ付けたような感じである。古典の技法を守った重厚で素晴らしい料理を出す。ホテルは決して高級ではないが、値段も安く、快適に過ごせる。

4)コニャック

L'Echassier(M:黒3、0 G:0、15)
コニャックの隣村、シャトーベルナールにあるホテル・レストラン。プールや広い庭園等、リゾート型の高級ホテルである。レストランもそれなりで、ボルドーワインの品揃えも楽しめる。


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